M&Aは個人でも可能?必要な費用と内訳から買収までの進め方をわかりやすく解説!

事業承継手帳

M&Aで個人が企業を買収することは可能!


M&Aは、企業間で行われるものというイメージを持つ方も少なくありません。
確かにこれまでは企業間で行われるケースが多くみられましたが、最近は個人で会社を購入するM&Aが増加傾向にあります。
少額で会社の購入ができるマッチングサイトが普及しはじめたことが大きな要因です。
個人でM&Aができるとはいっても、「具体的にどのような流れで行うのか」「どのくらいの費用がかかるのか」などはイメージしにくいでしょう。
そこで今回は、必要な費用と内訳、買収までの進め方などについて詳しく解説していきます。

創業手帳では、中小企業や個人事業主の方のための「M&Aガイド」を無料でお届けしています。M&Aと聞くとネガティブなイメージになりがちですが、事業を加速化させるためには有効な手段にもなります。また起業したい人についてもおすすめの起業方法のひとつです。是非こちらの「M&Aガイド」を参考に、M&Aについて知って頂ければ幸いです。


M&Aガイド

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個人M&Aとは?


個人M&Aは一般的に行われている企業間のM&Aではなく、買い手が個人になる小規模な買収です。
一般的なM&Aと同様、仲介会社などを利用し、マッチングするケースが多いです。
規模が小さい会社であれば、数十万円~数百万で買収できる場合もあるので、個人でも手を出しやすくなっています。

M&Aは企業間で行われるものというイメージから、数千万や数億円など大きなお金が動くと思われがちです。
それに対して個人M&Aはかなり小規模なので、スモールM&AやマイクロM&Aとも呼ばれています。

個人M&Aが増加傾向にある理由


個人M&Aは、近年増加傾向にあります。続いてはなぜ増加しているのか、その理由を開設します。

後継者問題の解決手段になるから

個人M&Aは、後継者問題を解決するための手段として効果的です。後継者のいない個人事業主が後継者問題を解消するためにM&Aを利用するケースが増えてきました。
価値観の多様化や少子化などが原因となり、親族承継が難しい状況になるパターンも少なくありません。
そのような中で、個人事業主がM&Aを行うケースも増えています。廃業するという選択肢もありますが、それでは雇用が失われるなどの問題が生じます。
そのため、個人M&Aを含むM&Aを視野に入れる個人事業主が増加しているのです。

独立・起業の労力やリスクを減らせるから

個人M&Aを行うと、独立や起業にかかる労力やリスクを減らすことができます。それも、個人M&Aが増加している要因のひとつです。
ゼロイチでビジネスを立ち上げるよりも、すでに経営が成り立っている会社や少しだけ手を加えれば利益が出ると想定される会社を買収したほうが、投資の回収もしやすくなると考えられます。
黒字経営の会社を買収すれば、M&Aが成立した直後から利益を獲得できる可能性もあります。

また、買収した会社が取得していた許認可の引き継ぎも基本的にはできるので、新規取得する手間が省けるのも大きなメリットです。

個人M&Aの認知度が高まってきたから

個人M&Aの認知度は、どんどん高まっています。認知度が高まっていけば、それだけ興味を持つ方も増えることになります。
個人M&Aに関する情報量も多くなるため、情報収集も以前より格段にしやすいです。
少し前までは企業間で行われるケースが一般的だったので、個人が参入する余地はありませんでした。
しかし現在は、中小企業や小規模事業者間での取引きも活発に行われていて、個人M&Aが行われるケースも徐々に増えています。

小規模なM&Aを取り扱う仲介会社・マッチングサイトが増えたから

以前と比べると小規模なM&Aが増えていて、それを取り扱う仲介会社・マッチングサイトも増加しています。
個人で交渉したり、契約を結んだりするハードルは非常に高いです。
しかし、小規模なM&Aにも対応している仲介会社やマッチングサイトを利用すれば、そのような不安を払しょくできます。

今後はさらに個人M&Aは活発化していくと考えられるため、利用できる仲介会社やマッチングサイトの幅も広がる可能性が高いです。
どこに相談や依頼をするかという選択肢が広がれば、より個人M&Aを行いやすくなります。

個人M&Aにおすすめの業種


個人M&Aは、企業間のM&Aと比べてみると予算も低めになるため、買収額も小さくなります。
買収する業種に制限があるわけではありませんが、小さい買収額で買収できる業種を把握しておく必要があります。
個人M&Aにおすすめの業種は、以下のとおりです。

  • エステサロン
  • 飲食店
  • 学習塾
  • 予備校
  • 介護事業
  • Webサービス

個人M&Aで多い300万円~500万円の取引きでは、このような業種を売買するケースが多いです。飲食店の場合は、居抜き物件で開業するパターンも多くなっています。
飲食店事業者数は多いので、マッチングサイトなどでも見つけやすいです。
そのほかに、予備校や学習塾、整体院、民泊施設、特化農業(ミカンやいちごなど)、歯科医院などは個人事業に適しているのでおすすめです。

個人M&Aに必要な費用と内訳


個人M&Aを行うのであれば、どのくらいの費用がかかるのか、内訳はどうなっているのか、などを把握しておくことも重要です。

約300万~500万円が費用相場

前述したように、個人M&Aは約300万~500万円の取引きが多くなっています。案件によって規模が異なり、費用にも差が出るので一概には言い切れません。
しかし、いずれの場合でも買収後の運転資金も加味し、1,000万円程度は用意しておくべきだといえます。

規模が大きい会社を買収してしまうと、個人での経営が難しくなってしまう可能性があります。
また、相場とかけ離れた金額で買収すると、投資で回収することができず、失敗のリスクが高まるので注意が必要です。

【内訳】基本的に必要な費用

個人M&Aにかかる基本的な費用には、企業価値の評価費用と税務関連の費用が挙げられます。
企業価値の評価費用は、買収対象企業の価値を専門家に評価してもらう時にかかるものです。企業買収の基本価格を決めるために必要となります。

税務関連の費用は、契約書の作成や法的な問題の解決、税務処理などにかかるものです。
専門家に依頼することで後々のトラブルを防げるなどのメリットが生まれるので、基本的に必要な費用に含まれます。
個人で企業の価値や税務処理のやり方などを調べたとしても、わからない部分は出てきます。
そのまま進めてしまうと予期せぬトラブルにつながる可能性が高いので、必要経費だと考えてください。

【内訳】場合によっては必要になる費用

基本的な費用だけではなく、追加で費用がかかる場合もあります。それが、経営改善のために必要な投資費用、予期せぬトラブルに対応するための費用です。
経営改善のために必要な投資費用は、新たな設備の投入や人材の採用などが該当します。これらは企業を成長させるために必要です。
経営状態で改善すべき点がある場合は、これらの費用も用意しなければいけないかもしれません。
>予期せぬトラブルに対応するための費用は、買収してから発覚するケースが多くみられます。訴訟費用や修繕費用なども、この費用に含まれます。

個人M&Aが可能なスモールM&A案件を探す方法


個人M&Aが可能なスモールM&A案件の探し方には、いくつかの方法があります。ここでは、4つの方法をピックアップしてご紹介します。

M&A専用のマッチングサイトを活用する

ひとつ目は、M&A専用のマッチングサイトを活用する方法です。
M&A専用のマッチングサイトは、インターネット上のシステムを利用し、譲渡企業と買収先をマッチングするサービスを提供しています。
サイトには多くの企業が登録していて、希望条件に合致する候補を探せるようになっています。
後継者がいなかったとしてもM&Aを行えば廃業を回避できるので、お互いにとってメリットが生まれる方法です。

売上げや業種、エリア、希望などの条件を入力し、条件に合う案件を探せるというシステムは、マッチングサイトの強みです。
ただし、専門家が仲介するわけではないのでトラブルが発生しやすいというデメリットもあります。

事業承継・引き継ぎ支援センターに相談する

2つ目は、事業承継・引き継ぎ支援センターに相談する方法です。
事業承継・引き継ぎ支援センターは、各都道府県に窓口が設置されている国営の公共機関です。中小企業や小規模事業者のM&Aのサポートを行っています。
公認会計士や中小企業診断士などの専門家からアドバイスを受けることもできます。
手数料は無料で、親身に相談に乗ってもらえるという点が大きなメリットです。ただし、事業承継が目的の案件が多いため、少額の案件は見つけにくい可能性が高いです。

また、デューデリジェンスやバリュエーションを取る時に外部の専門家に依頼する場合は、別途費用がかかるという点にも注意しなければいけません。

M&A仲介会社に相談する

3つ目は、M&A仲介会社に相談する方法です。
個人でもM&A仲介会社に相談してみると、小規模な案件を紹介してもらえる可能性があります。
M&A仲介会社であれば、希望条件に合う案件を紹介してもらえたり、M&A全般の相談に乗ってもらえたりというメリットを享受できます。
初めてのM&Aで不安な部分が多い場合でも安心です。

ただし、手数料は高めに設定されています。手数料は、成功報酬率も5%などといったケースが多いです。
また、依頼先によっては、手漬け金が必要になる場合もあります。
あらかじめどのくらいかかるのか確認し、納得した上で利用するならメリットが大きい方法です。

日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援を活用する

4つ目は、日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援を活用する方法です。
事業承継マッチング支援は、後継者がいないなどの理由から「事業を譲りたい」と考えている方と創業や新分野進出などのために「事業を譲り受けたい」と考えている方を結びつける無料のマッチングサービスです。
利用者は、小規模事業者が中心となっています。オープンネーム(実名)による後継者探しを行えるのも、特徴のひとつとして挙げられます。

また、専門の担当者がそれぞれの希望を加味した相手探しをしてくれるのもメリットです。
マッチング後の困りごとに関しても、できる限り対応してもらえるため、安心感も大きいです。

M&Aを個人が行う場合の流れ


個人M&Aを行う際、どのような流れで行われるのかも把握しておく必要があります。円滑に進めるために知っておきたい、M&Aを個人が行う場合の流れは以下のとおりです。

1.買収する業種や予算などを決める

まずは、どの業種に属する企業を買収するのか、予算はいくらに設定するのか、といった点を決めていきます。
あらかじめ決めておくことによって、どのようなM&Aを行うかが明確になり、案件を探す際のヒントにもなります。
条件が完全一致する企業が見つかるとは限らないので、いくつかの希望を出しておくのが望ましいです。

会社員として働いている方が独立のためにM&Aを行うのであれば、今の仕事に関連した業種を選ぶとスムーズな経営を実現しやすくなるのでおすすめです。

2.M&Aの相談先を決める

買収する業種や予算などの大筋が決まったら、M&Aの相談先を決めていきます。相談先には、前述したように以下の方法があります。

  • M&A専用のマッチングサイト
  • 事業承継・引き継ぎ支援センター
  • M&A仲介会社
  • 日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援 など

相談先によって得手・不得手があるので、ニーズに合うのはどこなのかを見極めることが重要です。それぞれのメリットやデメリットを考慮して決めるようにしてください。

3.相手企業を探す

相談先が決まったら、相手企業探しを行います。各サービスで確認できる企業情報などを参考にしながら、条件に合う企業を探していきます。
当然ですが、買収したら経営を行うことになるため、財政面などを全体的にチェックし、将来的に成長の見込みがあるか確認することが重要です。

SWOT分析や財務分析も欠かせません。
SWOT分析はStrength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)で自社の外部環境と内部環境の要因分析を行ってください。
財務分析は、企業の現状や問題点を把握するために行われます。

4.交渉・基本合意書を締結させる

買収したい企業が見つかったら交渉を行い、基本合意書を締結します。
売買交渉では、企業側に買収の意向を伝えてください。交渉のスタート地点となりますが、相手の人間性や条件を確認することが目的となっています。
店舗や工場の見学もさせてもらうのが望ましいです。

交渉を済ませたら、秘密保持契約を締結して、会社の詳細情報が記された資料をチェックします。基本条件の折り合いがつけば、契約を結べます。
基本合意契約書には、M&Aの方法、売買金額、今後の予定などを盛り込んでください。

5.デューデリジェンスを行う

基本合意書を締結したら、買い手と売り手が双方の実態を把握するためのデューデリジェンスを行います。
デューデリジェンスは、M&Aの専門家によって行われる各種調査を指します。
抱えているリスクの抽出が目的です。
デューデリジェンスで調査する内容は以下のとおりです。

  • 資産や負債などの財務状況
  • 約款や契約関係などの法務状況
  • 生産や販売活動などの事業状況
  • 会社組織や従業員などの労務状況

6.最終契約・クロージング日を定める

デューデリジェンスの後は、最終契約書を締結し、クロージング日を定めます。最終契約書には、売買価格や従業員の処遇などが盛り込まれます。
デューデリジェンスを行った買い手からドラフトを提示し、売り手が加筆・修正を行うという流れで進むのが一般的です。

また、クロージング日に関しても最終契約書の中で決めます。そしてクロージング日には、買収代金の支払いや対象事業の引き渡しを行います。

まとめ・個人でのM&Aは今後も増加が予想される

個人でのM&Aは、後継者候補がいない中小企業にとって魅力的な方法です。
従来の企業間で行われるM&Aよりも少額で取引きができるので、会社をつぶさないための選択肢として有効だとされています。
今後はさらなる後継者不足が懸念されているので、さらに個人でのM&Aは増加するでしょう。


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(編集:創業手帳編集部)

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