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Physiaura(フィジオーラ)高橋 賢 | ヒト臓器チップによる創薬イノベーションが注目の事業

ヒト臓器チップによる創薬イノベーション事業で注目なのが、Physiaura(フィジオーラ)の高橋賢さんです。

私たちの生活を豊かにしてくれたり、命を守ってくれる医薬品や化粧品の開発を行う際、日本において必ず行われているのが動物実験です。
公益社団法人日本実験動物協会が行った平成31年調査によると、マウス:299万匹、ラット:64万匹、モルモット:5万匹、ウサギ:3万匹、イヌ:3千匹、ブタ:5千匹、サル類:2千匹が実験用の動物として扱われました。

しかし、これほどの数の動物の命が犠牲になっているにもかかわらず、その実験結果として市場に出回らなかった医薬品の割合は実に9割以上という結果も得られています。
つまり動物には効いても人には効かない、あるいは動物には効かないが人には効く医薬品が多数存在するわけです。

動物実験を行う本来の目的は、人の体に有効な医薬品の開発であるにもかかわらず、これでは動物の命を無駄に奪っている状況と言わざるを得ません。

こうした状況を打破すべく、人の細胞で臓器機能を再現し、人に効果がある医薬品開発を推進するある起業家の取り組みに今大きな注目が集まっています。
この事業が進めば、ゆくゆくは個人の体に合った医療の開発、治療薬の開発、病気の予防にも繋がることが期待されています。

Physiaura(フィジオーラ)の高橋賢さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

創業手帳別冊版「創業手帳 人気インタビュー」は、注目の若手起業家から著名実業家たちの「価値あるエピソード」が無料で読めます。リアルな成功体験談が今後のビジネスのヒントになるはず。ご活用ください。

・この事業の特徴は何ですか?

フィジオーラの臓器チップは、ヒトの細胞を使用して心臓、腎臓や脳(血液脳関門)などの臓器の機能を再現し、薬の効果と毒性を正確に調べることができる革命的なプロダクトです。動物を犠牲にせず、より安全で効率的な医薬品開発を実現します。
フィジオーラの臓器チップは、ヒトの細胞をマイクロ流体流路上で共培養してつくられる小型の臓器モデルです。心臓や肺などの臓器の機能を再現し、薬の薬効・毒性の評価実験を行うことができます。
この技術を応用すると、アルツハイマー病や心不全などの疾患のモデルを作ることができます。さらに、個人由来のiPS細胞を用いることにより、個人の臓器モデルをつくることが可能になります。これにより、「その人に効く」薬の開発、すなわち個別化医療が可能になります。

・どういう方にこの事業を知ってもらい、活用してもらいたいですか?

製薬企業、健康食品・サプリメントの開発企業、医療機器開発企業さんの使用を想定しています。
また、将来的には個人由来のiPS細胞から個人の臓器チップを製造することで、その人に効く薬を提案する「個別化医療」の実現を目指しています。この場合、サービスを提供する主体は個人となります。フィジオーラは、さらなる技術開発を通して個別化医療の普及に貢献します。

・この事業の解決する社会課題はなんですか?

製薬における動物の犠牲です。薬物の効果はヒトと動物とでは異なります。動物実験で効果があるとされた候補薬物の92%は、ヒトに対する効果が不十分であるか、あるいは有害であるために候補から外されてしまいます。また、動物では効果が低いもののヒトには有効である薬物の取り逃しが起こります。この非効率なプロセスにおいて、毎年5,830万匹もの動物が世界で犠牲になっています。これに加え、動物で有効だったもののヒトでは効果が低い、あるいは有害である薬物を除外するために、何百億円ものコストがかかります。フィジオーラは、この問題の解決に挑みます。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

創業者は大学の研究者なので、ビジネスに関する知識も経験も全くなかったことです。起業家を育成する岡山イノベーションスクールや、大学発スタートアップを支援するNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)のTechnology Commercialization Programなどで多くを学びましたが、本格的な活動はこれからです。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

大学の学術研究が社会の問題を解決するモデルを確立したいと考えています。心臓、肺、腎臓、脳、肝臓など、ヒトの多様な臓器の機能を再現することは、企業が一手に担うには極めて大きな課題です。米国では、トランジスタや遺伝子工学など、大学でなされた発明が社会の発展に大きく貢献した事例が多くあります。このように、大学の研究が企業活動を生み、企業活動が大学の研究を活性化する、社会のダイナミックなサイクルを回すのが夢です。

・今の課題はなんですか?

資金調達とチームビルディングです。事業計画をブラッシュアップし、多くの方の共感・ご理解をいただくことでこの課題を達成します。

・読者にメッセージをお願いします。

これまで、ヒトに安全な薬を開発するためには動物を犠牲にする以外方法がありませんでした。しかし、臓器チップ技術の発展により、この前提がいままさに覆されようとしています。近い将来、「人類は昔、薬を開発するために動物実験をしていた」と言える社会を実現できるよう、皆様のご支援・ご協力をお願いいたします。

事業名 Physiaura(フィジオーラ)
代表者名 高橋 賢
社員数 2名
事業内容 ヒト臓器チップを用いた製薬スクリーニング、薬物の薬効・毒性試験のソリューション販売および受託試験
サービス名 ヒト臓器チップによる創薬イノベーション
所在地 岡山県
代表者プロフィール 岡山大学学術研究院医歯薬学域・准教授。
2018~2019年、米ハーバード大学医学部・客員研究員。名古屋大学大学院医学研究科修了(医学博士)。獣医師。日本生体医工学会・代議員、日本生理学会・評議員、欧州心臓病学会・心臓ワーキンググループメンバー。
アイアンマントライアスロン完走、東京2020オリンピック聖火ランナー。
臓器チップフィジオーラの事業計画ピッチ発表により、岡山イノベーションコンテスト(中国銀行・山陽新聞社・サンマルク財団主催)ビジネスプラン一般部門・大賞を受賞。
岡山テックグランプリ(株式会社リバネス社主催)オルバヘルスケア賞、BIPLOGY賞。NEDO Technology Commercialization Program(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構主催)ファイナリスト。
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