共同創業者の持ち株比率の決め方や行使できる権利の違いを解説
持ち株比率は、会社の未来をイメージして考えよう!代表者は1人に絞るとスムーズ
起業する際に、創業メンバーの間で株式を持ち合うことは一般的に行われていることです。その時に慎重に考えなければいけないのが、それぞれの持ち株比率についてです。
持ち株比率は、今後会社をどう成長させていきたいかという展望と密接に関わり合っています。
もし起業後に出資や資金調達を受けることを検討しているならば、その後の資本政策について考えておくのも大事なポイントです。
では、創業メンバーの持ち株比率はどのように決めればいいのでしょうか。今回は、持ち株比率ごとの名称や、メリットやデメリットなどを詳しくお伝えいたします。
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この記事の目次
持ち株比率とは?
持ち株比率とは、株式会社が発行済みの株式総数に対してその株主が持つ株式の割合のことです。
株式会社は所有しているのが1株だけでも行使できる権利もあれば、一定数株を所有していなければ行使できない権利もあります。
持ち株比率は議決権比率と同じ意味で使われるケースが多いですが、厳密には議決権を持たない株式も発行できるため異なります。
しかし一般にはほぼ同じ意味で使うため、この記事では持ち株比率を議決権比率と同様として解説します。
持ち株比率ごとの株主の名称
持ち株比率により株主の名称が変わるため、ここでは比率の順に名称を解説します。
<主要株主>
持ち株比率10%以上の株主を主要株主とすると、金融商品取引法で定められています。
<大株主>
はっきりした基準はありませんが、株主の中で多くの株式を持つ人をさすことが多いです。
<筆頭株主>
株式会社の中で、最も所有する株式数が多い人を筆頭株主と呼びます。
<親会社>
株式会社を子会社に持つ会社や、その株式会社の経営権を支配する法人を、法務省令で定めた会社が親会社です。
親会社に該当する条件をあげておきます。
・持ち株比率40%以上、かつ5つの要件のうちひとつがあてはまること
【5つの要件】
1.他の法人がもつ議決権の総数に対して、自分の所有する議決権(a.自己の議決権・b.投資や人事、取引などにおいて緊密な関係にあり、自分と同じ意思を持ち議決権を行使できると認められた者が持つ議決権・c.自分の意思で同じように議決権を行使できると同意した者の議決権)が50%を超えている
2.他の会社の取締役・執行役員・使用人か使用人であった者の数に対し、自社の取締役などの合計が50%以上
3.相手会社に対し、重要な財務と事業方針の決定を支配する契約を結んでいる場合など
4.他社が資金調達する際、その総額に対し融資した場合、他社などから資金調達する総額に対して自社による融資割合が50%を超える場合
5.その他、他社の財務や事業方針の決定を支配する事実がある場合
<他社に対する自己所有等議決権が50%を超え、かつ上の2~5の要件を満たす場合>
自己所有「等」議決権の割合がポイントで、自社では所有していなくても、bとcの合計で50%を超えるケースです。
<持分法適用会社>
主に関連会社のことで、子会社ではないものの他の企業の財務などの決定に重要な影響を及ぼします。
以下のいずれかを持つ場合、持分法適用会社にあたります。
・持ち株比率15%以上20%未満、かつ役員関係などにある
・持ち株比率15%以下だが、投資などで緊密な関係にあるため、自分の意思と同じく議決権を行使できると認めた者の持ち株比率と、それに同意した者の持ち株比率を合計して20%以上になる、かつ役員関係などある
<少数株主>
親会社とその親会社が支配する、別の子会社以外の株主のことです。
持ち株比率や持ち株数により権利が異なる
まずは、どれくらい株を持っていればどのような権利が得られるのかを見ていきましょう。
1株以上 | 議事録の閲覧や、株主代表訴訟を起こす権利が発生します。また、議案の請求権も生じるようになります。 |
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1% | 株主総会における議案を提出できる権利が発生します。総会の検査役を選任する請求を出す権利も生じるようになります。 |
3%以上 | 株主総会の招集や、会社の帳簿など経営資料を閲覧する権利が発生します。また、役員を解任させる請求を出すことも可能となります。 |
10%以上 | 訴えにより、会社の解散を裁判所に対して請求できる権利が発生します。 |
1/4以上 | 重要事項の特別決議を単独で阻止できる権利が発生します。具体的には、定款変更、監査役解任、自己株式の取得、募集株式の募集事項の決定、事業譲渡、合併・会社分割など組織再編などを阻止することができます。 |
1/3以上 | 監査委員会 委員会設置会社での業務の「外部監視」機関。(ほかに指名・報酬委員会) |
1/2以上 | 株主総会の普通決議を単独で阻止することが可能となります。取締役や監査役などの報酬の変更や解任、剰余金の配当といったことを単独で可決できる力を持ちます。 |
2/3以上 | 株主総会の特別決議を成立させることが可能になります。取締役の解任、定款の変更、合併や解散、分割、他社への事業譲渡など、その権利の及ぶ範囲は非常に広いものです。特に、事故株式の所得の関する事項についての決定権は大きく、募集株式の募集要項の決定も可能となります。また、会社経営に関する重要なファクターを単独で可決することができます。 |
100% | すべての事柄において、自分の意志で決定することが可能です。 |
このように全体に対して何割持っているかによって、行使できる権利がかなり違うことが分かりますね。これを踏まえて創業メンバー間の持ち株比率を検討しましょう。
株式を創業メンバーで分散させるメリットとデメリット
では、株式を創業メンバーで分散して持つメリットはあるのでしょうか?
まず考えられるのは創業メンバー間に公平感が生まれ、仕事を進める上での軋轢が出にくいことが挙げられます。
特に、全員の持ち株比率を均等に設定するということであれば、行使できる権利は全員同じとなります。
そのため、メンバーの誰かがもし会社の経営をぐらつかせるような方向性に舵を取ろうとしても、他のメンバーの抑止力が働くので未然に防ぐことも可能となるのです。
全員の業務に対する実行度が均等で、力のバランスも同じくらいという場合には、株を均等に分散させておくのも1つの考え方です。
ただし、権利の平等性だけを理由に、安易に持ち株比率を決めてしまうのは避けておくべきでしょう。
創業メンバー同士で持ち株比率を均等にするということは、意思決定の軸となる人物が誰なのか明確にせず事業がスタートするということになりかねません。こちらはデメリットと言えそうです。
実際の経営権を誰に持たせておきたいかについて決めておく必要が出てきます。
代表者の持ち株比率は初めの段階で明確にしておく
創業メンバーが複数いたとしても、代表となる人間は1人に絞り込むのが経営をうまくいかせるコツです。そして、代表者の持ち株比率は、できればほかのメンバーより多くしておくのがよいでしょう。
極端な話ですが、会社についての全責任を負う立場である代表者の持ち株比率が仮に1/2以下であれば、他の人の意志で代表を解任されてしまうという可能性もあります。
名の知れた大企業であっても、株式保有者である親族間の不仲や、社内派閥を原因とした争いはよく聞きますね。こうした問題が起きた場合、自分が代表だったとしても、持ち株比率が低いと自分の思うように動かせず、経営方針が全く違う人により変えられてしまうこともあり得ます。
そうさせないためにも、代表者が高い持ち株比率を有しておくことの意味は大きいのです。
1/2以上の持ち株比率があれば、取締役などを解任させる権利も持てるので、一定の経営権は確保できるということに繋がります。
さらに、安心して会社経営を行い代表者の不利益にならないようにするには、2/3以上の持ち株比率が理想的です。
特別決議を成立させられるということは、いざという時には会社に関わるほとんど全てを自分1人で決定できるということになります。
出資や資金調達を受ける場合は注意も必要!
事業を始めるために、もしくは発展させるために、出資を受けたり資金調達をするのは重要なことです。
しかし、受ける出資・資金調達の割合が増えていきそうな場合は、持ち株比率について改めて考え直しておく必要があります。
それは、出資を受けることによって伴う新株の発行等を原因として、発行済みの株式総数が増加し、1株当たりの価値が低下してしまう可能性があるからです。
例えば、創業時に代表者に株の2/3を集め、それ以外のメンバーに残りの1/2を振り分けた場合を考えてみましょう。
経営に対して行使できる権利は、あくまでも全体に対する持ち株の「比率」によって決まるという点が重要です。
資金調達を受ければ、その投資家へ新しい株を発行しなければいけません。
代表者をはじめとした創業メンバーの持っている株の数は変わらないので、創業メンバーが全体の株の何割を所有しているか、という「比率」が変わる可能性がほとんどです。
つまり、気が付いたら代表者の持ち株比率が2/3を切っていた、という事態が発生します。
そうすれば当然行使できる権利内容も変わり、代表者1人の意志では特別決議の成立が出来なくなる、といったことも起こってしまうのです。
結果、「代表者に2/3以上の持ち株比率を集めておく」という目標が達成されなくなり、経営権が危うくなるリスクがあります。
これを「株式の希薄化」「ダイリューション」と呼び、資金調達の際に特に慎重に進める項目として知られています。
こうしたリスクを年頭に置き、創業メンバーの持ち株は誰に集めるのか、もしくは分散させるのか、どれくらい出資や資金調達を受けるのかということを決めていく必要があるでしょう。
創業手帳では、「出資ガイド」をご用意しています。出資獲得のためのポイントや、出資者の特徴など解説しております。ぜひ参考になさってください。
持ち株比率が下がってしまった場合に経営権を守る方法
安定した経営権に必要な2/3以上の持ち株比率から下がった場合、その後も継続して経営権を守るには、適切な信頼関係の構築が大切です。
定期的にコミュニケーションを取り、株主の利益を最優先した経営方針を提示して、情報は透明性の高さを重視した開示をしましょう。
株主からの意見を聞き、できる限り尊重した企業の将来的な計画や戦略を心がけてください。
少数株主の同意を得て買い取り持ち株比率を上げる方法や、少数株主の同意なしで排除できる、「スクイーズアウト」という方法もあります。
スクイーズアウトを行う場合は、事前に丁寧に説明し、理解を得るようにしてください。
説明もなく強引に進めると、少数株主から訴訟を起こされることがあり、裁判になれば差し止めの可能性があります。
まとめ・起業時の持ち株比率の決定は慎重に
起業する際に創業メンバーごとの持ち株比率をどう決めるかということは、会社の舵取りの方向性を左右すると言っても過言ではありません。
代表者に寄せるにしても、分散させるにしても、安易に決定せずよく考え抜くことが重要です。
どの程度の持ち株比率を有していればどの程度会社に対して行使できる権利があるのかを正確に知り、自分たちが希望する持ち株のボーダーを考えておくことがポイントとなります。
特に、創業メンバーが経営権を握っておきたい場合には株の希薄化のリスクを考えておくのも、会社を経営する上で重要でしょう。
自分の会社を今後どういう形で発展させていきたいかという展望と照らし合わせ、後悔のない選択をするよう、創業をする最初の段階で慎重になっておきたいですね。
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(編集:創業手帳編集部)