【最大5,000万円】ローカル10,000プロジェクトが要件緩和!地域密着型起業に
古民家の活用や特産物の普及などを目指した事業が採択!要件緩和で使いやすく!
地域密着型の起業や新規事業を計画している方に朗報です。総務省が推進する「ローカル10000プロジェクト」が、令和6年度から要件を大幅に緩和し、より利用しやすくなりました。これまで通り、国庫補助事業では最大5,000万円、新設される枠組みでは最大1,500万円の補助が受けられます。
今回はそんなローカル10,000プロジェクトの概要をわかりやすく解説。地域の特色を活かした起業、地元を盛り上げる事業などを考える方は、ぜひ以下を参考に、ローカル10,000プロジェクトの利用をご検討ください。
※令和6年度分の申請については8/9の応募締切をもって予算を超過する見込みとなったため、現在募集を停止しています。
ただし令和7年度の総務省の概算要求をみると、令和6年度の倍額での要求額となっていますので、令和7年度実施に向けた準備を今のうちから進めておきましょう。
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この記事の目次
ローカル10000プロジェクトとは
ローカル10000プロジェクトは、地域における新たなビジネス創出を目的とした、総務省主導の支援制度です。民間事業者の初期投資費用に対し、公費による補助金を交付することで、地域経済の活性化と雇用創出を狙います。
令和6年度から要件が緩和されて使いやすく!
令和6年度からはローカル10,000プロジェクト(国庫補助事業)に準ずる市町村の地方単独事業に対する特別交付税措置を創設。「ローカル10,000プロジェクト(地方単独事業)」おいては、国庫補助事業よりも各種要件が緩和され、小規模事業者にも使いやすい内容となっています。
具体的には、以下の点が変更になりました。
- モデル性の要件が撤廃されました:これまでは地域密着型起業の先行事例となるようなモデル性が求められましたが、これが廃止され、ハードルが低くなりました。
- 少額融資や担保付き融資も補助対象に:融資額が小さい場合、交付額が小さい場合、担保付融資の場合、ソフト経費(広告宣伝費、商品開発費)が中心となる場合でも活用が可能になりました。
- 国の審査不要、市町村単位で採択:国庫補助事業では国の有識者による審査がありますが、地方単独事業では自治体や商工会議所の審査のみで採択が決定されます。
ローカル10,000プロジェクトの特徴
ローカル10,000プロジェクトの特徴や魅力は以下の通りです。総じて使い勝手の良さが目立ちます。
1. 補助上限額は最大5,000万円
ローカル10,000プロジェクトの補助上限額は最大で5,000万円です。地域単独事業においても最大1,500万円の交付を受けられます。
交付額の上限は、地域金融機関による融資額(またはファンドによる出資額)との割合で決まる仕組みです。融資額・出資額が上限となり、融資額が増えるほど交付額も増加します。
国庫補助事業 | 地域単独事業 | |
---|---|---|
補助率(措置率) | 1/2 | 0.5 |
上限額 | 2,500万円(融資/公費 1~1.5) 3,500万円(融資/公費 1.5~2.0) 5,000万円(融資額/公費 2.0~) |
1,500万円(融資/公費 1~) 800万円(融資/公費 0.5~1.0) 200万円(融資/公費 ~0.5) |
補助対象経費 | 施設整備費、機械装置費、備品費 | 施設整備費、機械装置費、備品費、広告宣伝費、商品開発費等 |
2. 初期投資費用が幅広く補助対象経費に
ローカル10,000プロジェクトでは、地域密着型起業における初期投資費用が幅広く補助対象となります。地域単独事業においては、広告宣伝費や商品開発費などのソフト経費も補助対象。幅広い初期費用の調達に役立てられます。
ローカル10,000プロジェクトの補助対象経費
- 施設設備・改修費(用地取得費用除く)
- 機械装置費(著作権の取得やシステム構築なども対象)
- 備品費(リース・レンタルにかかる費用も対象)
- 調査研究費(連携する地域の大学が行う調査研究にかかる経費)
- 広告宣伝費(地域単独事業のみ)
- 商品開発費(地域単独事業のみ)
3. 地域金融機関から融資を受けることが要件
ローカル10,000プロジェクトでは、地域金融機関等による融資、もしくは地域活性化ファンドによる出資、民間クラウドファンディングを利用することが要件となっています。融資額または出資額を上限として、国費および地方費から交付が受けられる仕組みです。
地域密着型起業に取り組む事業者は、融資額+自己資金+交付額という手厚い初期費用で事業をスタートできます。
4. 公募は毎月、翌月末には交付決定
ローカル10,000プロジェクトは毎月10日が申請の締切りです。毎月、全国各地の中小・小規模事業に続々と交付が決まっています。一般の補助金に比べて申請のチャンスが多く、利用しやすいことが魅力です。
また申請してから採択決定(交付決定)までにかかる期間は原則1ヵ月半(締切り後の翌月末)。毎月10日に申請し、その翌月末には交付が決まるというスピード感も特長です。
なお、申請に必要な実施計画書は簡易的なものであり、小規模事業者でも気軽に申請できます。
ローカル10,000プロジェクトの要件をチェック
ローカル10,000プロジェクトで交付を受けるための主な要件は以下の4つです。
- 地域密着型(地域資源の活用)
- 地域課題への対応(公共的な課題の解決)
- 地域金融機関による融資等
- 新規性(新規事業)
上記をまとめると、地域の資源を使って地域課題の解決に取り組む新しい事業であることがローカル10,000プロジェクトの要件です。これらはまさしく地域密着型起業の性質であり、地域に根ざした事業計画であれば多くの場合に当てはまるでしょう。
なお、地域資源とは、エネルギー資源や食材などに限らず、例えば地域の空き店舗なども地域資源であり、こちらも幅広いものが対象になります。
また新規性の要件についても、格別な革新性やユニークさが求められるわけでは必ずしもありません。とくに令和6年度からの地域単独事業においては、モデル性の要件が撤廃されており、その地域でありふれた事業でなければ交付が受けられる可能性が十分にあります。
ちなみに過去には「伝統工芸品」や「グランピング施設」、「コワーキングスペース」など、多種多様な事業が採択を受けています。
ローカル10,000プロジェクト 活用のメリット
ローカル10,000プロジェクトの活用によっては以下のようなメリットが得られると考えられます。
安定した事業のスタートを切れる
ローカル10,000プロジェクトの交付を受ける場合、もれなく交付額+融資額(もしくは出資額)+自己資金等を初期費用として地域密着型事業を始めることになります。つまり初期投資費用を手厚くした上で事業のスタートを切れることがメリットです。
ローカル10,000プロジェクト毎月公募があり、翌月末には交付が決まるので、地方金融機関から融資を受けて地域で新しく事業を始める場合には、積極的に申請するのがおすすめです。
事業の話題性を集められる
ローカル10,000プロジェクトの交付を受ければ、その事実を活動や広告・広報、PRに活用できます。総務省では同プロジェクトに関連するビジネスコンテストも開催されており、上手に活用すれば、地域でのあるいは全国的な話題性を高められるでしょう。
なお、ローカル10,000プロジェクトは総務省による事業であり、国庫補助事業では国の有識者による審査を行われます。地域単独事業でも、市町村の有識者や商工会議所による審査があるため、審査に通ったという事実はその事業の信頼性や可能性のアピールにつながるはずです。
ローカル10,000プロジェクトの採択事例
以下では、ローカル10,000プロジェクトにおける過去の採択事例を列挙します。同プロジェクトの主な要件である「地域資源の活用」「地域課題への対応」「新規性」の3点に着目してぜひご覧ください。
1. 岩手県久慈市:持続可能な地域循環を実現!菌床しいたけ栽培
地元のきのこ園が、特産のしいたけ栽培を安定させるべく、テクノロジーを導入して生産体制の合理化に取り組んだ事例です。
事業者
有限会社 越戸きのこ園
資金調達額
公費による交付額:4,000万円 地域金融機関による融資:5,700万円
事業背景
- 岩手県はしいたけ王国と呼ばれ、久慈市は生産量の約4割を占める
- 猛暑による品質・収穫量の低下
- 生産者の経験と勘に頼った換気調整
取組内容
- ICTを活用したハウス内環境制御システム導入
- 低コスト高断熱ハウス導入
- 木質バイオマスエネルギーによる熱供給
- 地域生産者への技術普及、一大産地化
現場からの声
地域には活用できる資源が眠っている。地域資源を活かしたしいたけ栽培に、大きなやりがいを感じている。
2. 山梨県郡留市:織物業再興とふるさと納税で町を活性化
地域の古民家を改築し、地元・織物産業を再興させるためのコワーキングスペースや、ふるさと納税の返礼品を開発する活動拠点に整備した事例です。
事業者
一般社団法人まちのtoolbox
資金調達額
公費による交付額:1,100万円 地域金融機関による融資:1,100万円
事業背景
- かつて織物産業が盛んだったが、現在は数えるほどの企業しかなく、後継者不足
- 市のふるさと納税の寄付額増額の課題
取組内容
- 古民家を改修し、織物製作拠点整備
- 製品は通常販売とふるさと納税返礼品に活用
- 手織り機を使用した傘づくり教室開催
- ウェブ販売支援
現場からの声
初期投資費用の負担軽減で、地元・織物産業の可能性が大きく広がった。長期間の空き家は地元住民のアクティブな活動拠点になった。
3. 長野県佐久市:環境と地域を繋ぐ循環型醸造事業
豊富な自然環境がもたらす地域資源と自然エネルギーを活かしたどぶろく醸造事業の事例です。
事業者
Brewing Farmers&Company合同会社
資金調達額
公費による交付額:433万円 地域金融機関による融資:433万円
事業背景
- 少子高齢化、耕作放棄地の増加、森林機能低下
- 地域活性化と環境保全の両立
取組内容
- 工場跡地を改修し、世界初の持続可能な「どぶろく」製造
- 地元産の間伐材を活用した薪ボイラー導入
- 空き店舗を活用した農家レストラン開業
現場からの声
人と自然の持続的な循環を生み出す事業でありたい。制度の利用で地域の方々と密に対話できる関係性が築けた。
4. 鹿児島県長島町:コロナ禍を乗り越え、地域を活性化する「茶ぶり」
特産品である養殖ぶりとお茶を掛け合わせ、餌にお茶を混ぜて養育した「茶ぶり」をプロデュースした事例です。
事業者
株式会社 夢ながしま
資金調達額
公費による交付額:2,350万円 地域金融機関による融資:2,500万円
事業背景
- コロナ禍の影響による養殖ぶりの販売停滞
- 特産品であるお茶の需要低迷
取組内容
- 餌に地元産のお茶を混ぜた「茶ぶり」の加工場整備
- 消費者に合わせた商品開発
- 地域の活性化
現場からの声
茶ぶりを通じて生まれた地域の連携。茶ぶりの知名度は、徐々に広まっていると感じている。
5. 島根県松江市:歴史文化を活かした宿泊施設とレトロなBARで地域を活性化
観光地としての再興を図るべく、古民家をリノベーションして新たな商業施設を作った事例です。
事業者
美保館
資金調達額
公費による交付額:1,900万円 地域金融機関による融資:1,900万円
事業背景
- 観光地としての衰退と過疎化
- 空き家となっている歴史的建造物や古民家
取組内容
- 3軒の古民家を宿泊施設へリノベーション
- 既存の宿泊施設に半露天風呂、国登録文化財にバーを新設
- 地域交流の場、観光情報発信の場、地元住民の発表の場として活用
現場からの声
思い描いたプランが実現したときは嬉しかった。リノベーションされた宿泊施設や古民家BARなどの活況ぶりに制度の必要性を改めて実感。
6. 徳島県美馬市:うだつの町並み周辺古民家等活用支援事業で滞在型観光地へ
地域の名所である「うだつの町並み」に飲食店や宿泊施設などを整備し、滞在型観光地へと生まれ変わらせることを目指した事例です。
事業者
株式会社MIMAチャレンジ
資金調達額
公費による交付額:3,790万円 地域金融機関による融資:7,700万円
事業背景
- 飲食店や宿泊施設が少ない
- 滞在時間が短い
- 年々来訪者が減少
取組内容
- 古民家を宿泊施設や飲食店に改修
- 重要伝統的建造物群保存地区の景観を守るための古民家の維持管理
現場からの声
地元住民から愛される観光地を目指したい。地域の意見に耳を傾けることに注力した。
その他の採択事例
以下は要件が緩和された令和6年度の採択事例です。食関連ではクラフトビールやジビエ、オリジナルコーヒー、日本酒など、ある意味定番といえるような事業が採択されています。
また要件の一つである地域資源(の活用)としては、地元の食材のほか、「寺院」「ガソリンスタンド」「古民家」などが資源として活用されています。これらの資源も、地域の盛り上げ、再興といった事例では王道といえるかもしれません。
令和6年度 第1回(令和6年5月31日)
- 岩手県遠野市(持続可能なホップ農業と地域活性化を実現するクラフトビール醸造所整備事業)
- 東京都町田市(武相ブリュワリープロジェクト~地産地消のクラフトビールで地元飲食店と武相エリアを活性化!!~)
- 新潟県佐渡市(佐渡島の特殊性の高い地域文化・食文化の振興事業)
- 岐阜県高山市(ジビエ処理加工による地域雇用、鳥獣捕獲技術担い手確保事業)
- 岡山県高梁市(「風の通り道プロジェクト」~宇治農村公園の再生による地域経済循環創造事業~)
- 香川県小豆島町(歴史ある寺院の観光資源化及び小豆島ならではの子育て支援による地域活性化計画)
令和6年度第2回(令和6年6月28日)
- 長野県松川村(松川村の地域資源を活用した日本酒の新たな価値創造事業)
- 三重県いなべ市(「いなべのでんき館」を活用した脱炭素×地域財による移住・定住促進事業)
- 奈良県下市町(廃業した町内唯一のガソリンスタンドを復活整備し、「下市コミュニティスタンド(仮称)」として地域の賑わい創出を図るための環境整備事業)
- 広島県世羅町(農地と古民家活用による地域と観光客の拠点形成事業)
- 香川県小豆島町(オリジナルコーヒーと日本酒の提供を通じ、移住者を含めた地域コミュニティを形成・活発化させる事業)
ローカル10000プロジェクト 申請の流れ
ローカル10,000プロジェクトに申請する際の流れは以下の通りです。
- 事業の発案:地域活性化につながる事業を考案します。地方自治体が発案し、事業者を募集する場合もあります。
- 事業計画書の作成:事業内容、収支計画、資金調達計画などをまとめた事業計画書を作成します。地域経済への貢献度や持続可能性などが審査のポイントとなります。
- 交付申請:作成した事業計画書に基づき、地方自治体が総務省へ交付申請を行います。
- 交付決定:外部有識者による審査を経て、総務省が交付を決定します。
- 事業開始:総務省および地方自治体の交付決定後、いよいよ地域密着型事業がスタートします。
ローカル10,000プロジェクトでは、地方自治体を介して総務省に申請を行います。地域を盛り上げる事業のアイデアができたら、まずは自治体に相談しましょう。
ローカル10,000プロジェクトについてよくある質問
以下では、ローカル10,000プロジェクトについてよくある質問にお答えします。
Q. 令和5年度の採択率は?
ローカル10,000プロジェクトの採択率は公表されていません。
令和5年度には第1回(令和5年6月16日)から第9回(令和6年3月29日)までの計9回で、各回1〜4団体、合計22団体への交付が行われています。
令和6年度は第1回・第2回ですでに11の交付団体が決まっており、要件緩和による好影響もあって、応募団体および交付決定数も増えつつあるのかもしれません。
Q. 地域金融機関とは具体的に何?
ローカル10,000プロジェクトにおける地域金融機関とは、事業を実施する地域の第一地方銀行、第二地方銀行、信用組合、信用金庫、農業協同組合などを指します。
Q. 事業の事前着手は可能?
ほかの補助金同様、ローカル10,000プロジェクトでも事業の事前着手はできません。事前に着手した事業は交付対象外となるので注意しましょう。
同様の理由で、申請前にスタートしている既存事業も補助対象にはなりません。ローカル10,000プロジェクトの要件の一つには、新規事業であることが含まれます。
Q. 国の補助金との重複利用はできる?
ローカル10,000プロジェクトは原則として国の補助金と重複利用できません。ただし、事業として対象経費や収支を完全に切り分けられる場合は例外です。
まとめ
ローカル10,000プロジェクトは、要件の点でも公募頻度の点でも、地域に根ざした起業で利用しやすい交付制度です。令和6年度からは要件緩和型のローカル10,000プロジェクト(地域単独事業)が新設されたことで、さらに利用のハードルは下がりました。
地域密着型起業をお考えの皆さんは、ぜひローカル10,000プロジェクトに申請しましょう。同プロジェクトにあわせて、新たに地域を盛り上げる新規事業のアイデアを考えてみるのもおすすめです。
(編集:創業手帳編集部)