酒類販売業免許取得にかかる費用は?開業前に準備しておこう!

飲食開業手帳

酒類販売業免許の種類や取得方法、申請にかかる費用を解説


酒類販売業免許は、酒類を飲食店で提供したり、店舗で販売したりするために必須の免許です。
取得するためには、一定の要件を満たした上で申請書を提出、審査を受けなければいけません。

酒類販売業免許を取得するための審査には2カ月程度かかるだけでなく、審査を受けるために書類を準備することも大変な手間です。
忙しくて時間を取れない場合には、自分ですべての作業を負担するのではなく代行業者や専門家に依頼することも検討してください。

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酒類販売業免許の基礎知識


食事や食べ物に関わるビジネスは、私たちの生活に密着した存在です。
食に関わる仕事には、レストランや居酒屋、食品販売業や農業といった幅広いものがあります。
飲食店であれば、食事とともに酒類を提供することで客単価や利益率を上げやすくなり、販売業でも酒類があることで商品のバリエーションが広がります。

お酒を販売するビジネスをスタートする時に準備しなければならないのが、酒類販売業免許です。
以下に、酒類販売業免許についての基礎知識をまとめました。

お酒を売るには酒類販売業免許が必要

酒類販売業免許はお酒の販売に必要な免許です。
酒類販売業免許は、その販売形態によって酒類小売業免許と酒類卸売業免許に分けられます。
対象となる事業や特徴がそれぞれ異なるので、違いを押さえておきましょう。

個人事業主でも酒類販売業免許は取得できる?

酒類販売業免許について、個人事業主で酒類を扱う場合にも酒類販売業免許は取得できるかどうかを疑問に感じるかもしれません。
結論からいうと、酒類販売業免許は個人事業として申請しても問題なく取得できます
ただし、個人事業主として開業届を提出しておくようにしてください。

酒類販売業免許を取得するには審査があり、今までの源泉徴収票や通帳のコピーが求められることもあります。
余裕をもって取得できるように準備しておくようおすすめします。

飲食店と酒販店では免許が違う

酒類販売業免許で重要なのは、お酒を開封することなくそのまま販売するか、それとも開封してから販売するかです。
飲食店の営業は、食品衛生法に基づいて行われます。
飲食店では保健所から飲食店営業許可を取得して、メニューのひとつとしてお酒を提供する形をとります。

ビールや日本酒などを開封した容器(ボトルなど)から提供する場合には、飲食店営業許可の範囲です。
ただし、深夜(午前0時~6時)の場合は「深夜酒類提供飲食店営業開始届」が必要となります。

一方で、未開封のお酒をそのまま販売すると「酒税法上の酒類の小売業」となるため、酒類販売業免許が別途必要です。
メニューとしてのお酒と販売商品としてのお酒では免許が異なるため、どちらに該当するのか事前に確認しておく必要があります。

お酒を売るために必要な免許の区分

お酒を売るために必要とされる免許は1種類ではありません。
例えば、近年は実店舗だけでなくインターネットでお酒を通販購入する人も増えています。
インターネット通販でお酒を取り扱う場合の免許は、「通信販売酒類小売業免許」です。

酒類販売業免許を取得するには、どのようなお酒をどこから仕入れて、どのように販売するのかを具体的に計画します。
酒類販売業免許はその形態によって細分化されているため、事業計画は決まっていないものの、とりあえず酒類販売業免許を取得するといった方法はできない点に注意してください。
まずは、お酒を売るために必要な2つの免許区分を紹介します。

酒類小売業免許

酒類小売業免許は、一般の消費者や飲食店を対象とする販売免許です。
免許区分には以下のものがあります。

・一般酒類小売業免許
酒類の販売店やコンビニエンスストアでお酒を販売する時の免許です。
実店舗があっても、無店舗でもすべての酒類の小売りができます。
ただし、一般酒類小売業免許で酒類の通信販売をしようとする時には1都道府県の消費者のみが対象です。

現実的に考えて、1都道府県だけで通信販売を行うのは困難です。
そのため、通信販売をする場合には、以下の通信販売酒類小売業免許を取得します。

・通信販売酒類小売業免許
通信販売酒類小売業免許は、インターネットやカタログを使って販売する時に必要な免許です。
2都道府県以上の広範囲の消費者に販売可能ですが、店頭での販売やほかの酒類販売業者に対して、酒類販売はできません。

また、販売できる酒類には制限があり、酒類の品目ごとの年間販売量が、計3,000キロリットル未満である酒類製造者が製造販売した酒類でなければいけません。
輸入酒類の場合には規制は設けられていませんが、酒類を輸入する時には食品衛生法などに基づく届け出(「食品等輸入届出書」)が求められます。

・特殊酒類小売業免許
特殊酒類小売業免許は、会社役員や従業員に対しての社内販売などに応じるために、酒類の販売が許可される免許です。
かなり珍しいケースでしか使われない免許なので、知識として知っておく程度で問題ありません。

酒類卸売業免許

酒類卸売業免許は、酒類販売業者や製造者を対象とした卸売販売の免許です。
酒類小売業免許は以下のように区分されています。

・全酒類卸売業免許
全酒類卸売業免許は、原則としてすべての酒類を卸売りできる免許ですが、新規での取得は困難な免許といわれています。

・ビール卸売業免許
ビール卸売業免許は、ビールを卸売りできる免許です。
こちらも、新規の取得は困難といわれています。

・洋酒卸売業免許
果実酒・甘味果実酒・ウイスキー・ブランデー・発泡酒・その他の醸造酒・スピリッツ・リキュール・粉末酒・雑酒を卸売りできる免許です。

・輸出入酒類卸売業免許
自分が直接輸出する酒類や、自分で直接輸入した酒類を卸売りできる免許です。
自分で直接輸出入することが要件なので、国内の業者から仕入れた外国産酒類はこの免許では卸売販売できません。

・店頭販売酒類卸売業免許
自社の会員である酒類販売業者に対して、店頭にてお酒を引き渡し、会員が酒類を持ち帰る方法による酒類の卸売りができる免許です。
自社の会員にのみ販売でき、酒類を共同購入する場合などに使われています。

・協同組合間酒類卸売業免許
自分が加入する事業協同組合の組合員に対して、酒類を卸売りできる免許です。

・自己商標酒類卸売業免許
自分が開発した商標または銘柄の酒類を卸売可能な免許です。

・特殊酒類卸売業免許
酒類事業者の特別な必要に応じるため、酒類の卸売りを認められる免許です。

酒類販売業免許を取得するためにかかる費用は?

酒類販売業免許の申請は、開業する場所を管轄している税務署で手続きします。
酒類販売業免許を申請するには、手数料は不要なものの、1申請あたり30,000円の登録免許税がかかります。

卸売業免許の場合には、1申請あたり90,000円が必要です。
もしも、複数店舗や販売場所が分かれる場合には、店舗ごとの申請となり、その都度登録免許税を支払います。

酒類販売業免許を取得するには


酒類販売業免許は、国税庁が管轄している免許です。免許を取得する場合には、税務署に申請して審査を通過しなければいけません
酒類販売業免許を受けるための要件から、実際に取得するために必要な手続きまでをまとめました。

酒類販売業免許を取得するための要件

酒類販売業免許の取得は、酒税法に基づき4つの要件が定められています。
これらの要件を満たすことによって、酒類を販売する事業者として適切かどうかの指標となります。
以下の4つの要件を確認してください。

人的要件

人的要件とは、申請する人が酒類を販売するために適切であるかどうかの指標です。
人的要件では、禁固や罰金といった刑に処されていないこと、処分から一定期間が経過していることが求められます。
詳細は下記のとおりです。

  • 酒類の製造免許・酒類の販売業免許・アルコール事業法の許可の取消処分を受けた時には、取消処分を受けた日から3年を経過していること
  • 酒類の製造免許・酒類の販売業免許・アルコール事業法の許可の取消処分を受けた法人や役員の場合は、取消処分を受けた日から3年を経過していること
  • 国税や地方税に関する法令などに違反して、罰金または通告処分を受けた場合には、それぞれ、その刑の執行を終わったか、執行を受けることがなくなった日、通告の旨を履行した日から3年を経過していること
  • 未成年者飲酒禁止法や風俗営業などの規制および業務の適正化などに関する法律(未成年者に対する酒類の提供に係る部分のみ)、暴力団員による不当な行為の防止などに関する法律・刑法・暴力行為など処罰に関する法律の規定により、罰金刑に処せられた者である場合に、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
  • 申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日または執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること

場所的要件

場所的要件は、酒類販売しようとしている場所が適切かどうかを判断する基準です。
飲食店を経営しながらの酒類販売もする場合には、同一空間での酒類販売業はできないと定められています。
スペースの一角を利用する場合にも、他の販売場所と区分されていることが必要です。

経営基礎要件

経営基礎要件は、免許を取得して酒類販売をしようとしている法人や個人が経営面や資金面で酒類の販売に適しているかどうかを判断します。
具体的には、以下の要件に該当していないかどうかが重要です。

  • 現在、国税または地方税を滞納している
  • 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている
  • 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本などの額を上回っている
  • 最終事業年度以前3事業年度のすべての事業年度において、資本などの額の20%を超える額の欠損を生じている
  • 酒税に関係のある法律に違反し、通告処分を受け、履行していない場合または告発されている
  • 販売場の申請場所への設置が、建築基準法・都市計画法・農地法・流通業務市街地の整備に関する法律・その他の法令または地方自治体における条例の規定に違反していて、店舗の除却や移転を命じられている
  • 申請販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明確である

また、以下に合致しているかどうかも要件となります。

  • 経験その他から判断して、適正に酒類の小売業を経営するために十分な知識および能力を有すると認められる者、またはこれらの者が主体となって組織する法人
  • 酒類を継続的に販売するために必要な資金、販売施設および設備を有していること、または必要な資金を有し免許を付与するまでに販売施設や設備を有することが確実と認められること

需給調整要件

需給調整要件は、酒類の仕入れと販売が適正な方法で行えるかどうかや、販売に際して価格や品質などを適正に保てるかどうかを判断する基準です。
通信販売小売業免許の場合には、国産のお酒を取り扱う場合はそのお酒の年間生産量が3,000キロリットル未満でないといけないと定められています。
輸入酒ではそういった要件はありません。

酒類販売業免許の申請

酒類販売業免許は、所轄の税務署に申請書を提出して申請します。不安がある場合には、事前に問い合わせて酒税官に相談してみてください。
事前に相談しておくと、必要な書類と書き方、添付書類の案内が受けられます。

書類提出後の審査はおおむね2カ月程度かかります。
すでに開店のスケジュールが決まっている場合には、早めに酒類販売業免許の手続きを済ませておきましょう。

審査後に税務署から連絡があるので、登録免許税を支払って「酒類販売管理者選任(解任)届出書」を提出し、酒類販売業免許を取得します。
国税庁のホームページで、免許申請の手引きや様式例がダウンロードできるので事前に内容を確認するようおすすめします。

申請する時のポイント

酒類販売業免許の申請自体は、手引きに沿って行えば難しくありません。
しかし、申請にあたって問題となる点もあります。

そのひとつが、販売場所の所在地がマンションの場合です。
自宅マンションで、通信販売小売業免許を受けようとする場合には、マンションの規約に違反していないかどうかを確認されることがあります。

また、通信販売で取り扱うお酒は、酒の年間生産量が3,000キロリットル未満と定められていて、蔵元が発行する証明書が必要です。
すでに蔵元とつながりがあって証明書を用意できる場合には問題ありませんが、そうでない場合には、まず蔵元探しからのスタートとなります。

専門家に依頼することも検討しよう

開業したての時には、多くの申請や許認可で負担が大きくなりがちです。自分だけでは手が回らない場合には、専門家に依頼することも有効な手段のひとつといえます。

起業したものの、酒類販売業免許が取得できなければ思うような事業は進められません。
開業の手続きと酒類販売免許の取得の両方を請け負っている専門家もいるので、探しみてください。

まとめ

酒類販売業免許は、酒類を販売するために必要となる免許です。
どういった状況で酒類を販売するかによっても必要な免許が異なるため、注意が必要です。

要件や手続きが面倒に感じるかもしれませんが、手引きを使って自分の事業がどれに当たるのかをチェックしてみてください。
書類の記載にも時間がかかるため、計画的に準備を進めておくほか、専門家を頼るのも有効な手段です。

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(編集:創業手帳編集部)

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