飲食店開業に資格は必要?取るべき資格の種類と必要な届け出を解説

飲食開業手帳

飲食店開業に必要な資格は2つだけ。資格取得の方法などを解説します。


これから飲食店開業を考えている人にとって、どのような資格が必要なのかが気になるかもしれません。
飲食店開業に必要な資格はそう多くなく、取得方法も難しくないため、資格の種類と取得方法を覚えておくと良いでしょう。
資格だけではなく飲食店開業にかかる届け出も各種必要になるため、今回は、飲食店開業に必要な資格と届け出について解説します。
併せて、知っておくと便利な補助金も紹介します。

いつぞやかは一人のお店を持ちたい!と思いながら飲食関連のお仕事に従事されている方は多いかと思います。
創業手帳別冊版「飲食開業手帳」では開業するために必要な資金集めの方法や、出店するまでに抑えておくべきポイントを1冊にまとめた「飲食開業のためのガイドブック」として発行しています。無料でお取り寄せ可能ですので、あわせてご活用ください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

飲食店開業にあたって資格はいるのか


飲食店開業にあたって、必要な資格は2つあります。2つの資格を詳しく紹介します。

必要な資格は2つのみ

食品衛生責任者

食品衛生責任者とは、飲食店だけではなく、食品の製造・加工・販売を問わず食品を取り扱う店舗や工場など、すべてに適用される資格です。
食品を取り扱う事業所1カ所につきひとりの有資格者が必要であり、複数の店舗を持つことになっても、ひとりずつ設置することが求められます。
食品衛生責任者とは、取り扱う食品における衛生管理を行うために必要なポジションで、この資格を有している人がスタッフ内にいないと、飲食店の開業はできません。

・食品衛生管理者との違い
食品衛生責任者とは別に、「食品衛生管理者」と呼ばれる資格も存在します。前者と後者の違いは、より繊細かつ衛生状態に注意を払わなければならない食品を扱うか否かです。
例えば、乳製品や肉など、食中毒などの大きな問題が起こりやすい食品加工では、衛生学に関する専門的な知識を持った管理者が求められます。
専門知識を証明する資格が食品衛生管理者であり、食品衛生責任者とは異なります。一般的な飲食店開業においては、食品衛生管理者の資格は必要ありません。

防火管理者

防火管理者は、不特定多数の人々が集う施設で防火管理を行うための資格です。飲食店のほか、小売店や学校のような施設全般(防火対象物)に適用されます。
防火管理者は、甲種と乙種に分かれており、防火対象物の延べ面積や収容人数(従業員含む)により選任できる種類が異なります。

飲食店を例にした場合、それぞれの要件は以下のとおりです。

・甲種
防火対象物の延べ面積・収容人数にかかわらず、すべての場合において防火管理者となることができます。

・乙種
防火対象物の延べ面積が300平方メートル未満、および収容人数が30名以上の飲食店であれば適用されます。

調理師免許は必要ないのか

調理師免許は、調理や食品衛生全般の高い知識と技術を持っていることを証明する国家資格です。
しかし、飲食店開業においては、必須ではありません。
もちろん、資格取得者が在籍していれば、調理の知識と技術を裏付ける証明にはなりますが、飲食店に必須ではないため、心配は不要です。

飲食店開業における資格の詳細


食品衛生責任者・防火管理者の2つの資格について、詳細を説明します。

2つの資格はなぜ必要なのか

食品衛生責任者に関する法律と役割

食品衛生責任者は、食品衛生法第30条および第48条に記された規定により、設置を義務付けられているものです。
法律上では、大まかに以下のような人が食品衛生責任者となれると定められています。

  • 都道府県知事が認めた講習修了者
  • 食品衛生管理者の有資格者
  • 調理師や栄養士などのように、食品衛生の知識に長けた各種の資格取得者

食品衛生責任者を置く義務は、食品衛生法第51条で定められた、食品の取扱い営業を行う事業者に課せられるものです。
この資格は、事業所の衛生管理を徹底するために必要であるほか、日々変化する食品衛生への知見を積極的に取り入れて業務を行うことが求められます。

・食品衛生責任者を置くべき飲食店とは
飲食店で食品衛生責任者を置くのは、前述した食品衛生管理者が必要となる事業所以外のすべての事業所です。
なお、食品衛生管理者を置くべき事業所は、食品衛生法第48条に規定されており、前述したように乳製品や肉などの加工を行う事業者に限られています。

防火管理者に関する法律と役割

先の説明で触れた防火対象物と防火管理者の規定は、消防法第8条および消防法施行令第1条に定められています。
防火管理者になる要件は、都道府県知事が認めた講習の受講、もしくは、防災にかかる管理者の経験を有していることなどです。
消防法第8条では、防火管理者の役割として「防火管理にかかる消防計画」を作成し、これに従って適切な防火対策を営業者に指示することと記載されています。
また、消防法第3条で、防火管理者の責務として、消火・避難訓練の実施、消防設備の点検などが求められています。

・防火管理者を置くべき飲食店とは
消防法第8条および消防法施行令第1条によれば、防火管理者を置くべき飲食店は、従業員を含む収容人数が30名以上である場合です。
反対に、収容人数が30名未満の場合は、防火管理者を必ず置かなければならないわけではありませんが、防火管理を行う代表者は決めておくのに越したことはありません。

資格取得の方法について

食品衛生責任者資格を取るには

食品衛生責任者の資格を取るためには、決められた講習を受講することが必要です。講習は6時間程度で、1日で取得できます。
受講内容は、以下のようなものです。

  • 食品衛生学……食中毒の防止や感染症対策、衛生管理方法など
  • 食品衛生法……法律に記された責任者の義務や衛生管理基準など
  • 公衆衛生学……環境衛生および労働衛生に関する内容
  • 確認試験……受講内容の理解度を確認するための試験

なお、以下に挙げる資格を取得していれば、上記の講習の受講は免除され、そのまま食品衛生責任者になることができます。

  • 調理師
  • 製菓衛生士
  • 栄養士
  • 食品衛生管理者、または、食品衛生監視員の資格要件を満たす者
  • 船舶料理士
  • と畜場法で規定された衛生管理責任者
  • と畜場法で規定された作業衛生責任者
  • 食鳥処理衛生管理者

食品衛生責任者の講習を受けるには、講習会場に出向くか、オンラインによる受講方法があります。詳しくは各自治体に問い合わせてください。

防火管理者資格を取るには

防火管理者になる場合にも、都道府県知事もしくは消防署に在籍する消防長、総務大臣に認められた講習を受けることが求められます。
甲種と乙種では、受講カリキュラムが異なり、受講時間は甲種新規講習(甲種は再講習もあり)では10時間程度、乙種では5時間程度です。
そのほか、以下のような場合には講習を免除されます。

  • 消防署の管理職経験1年以上
  • 市町村の消防団員の管理職経験3年以上
  • 防火対象物点検資格者の講習を修了し、免状の交付を受けている
  • 甲種危険物取扱者
  • 消防事務の管理職経験1年以上
  • 警察職員の管理職経験3年以上
  • 建築主事や一級建築士で防火管理実務経験1年以上

防火管理者の講習は、基本的に講習会場に出向く必要があり、特に甲種新規講習のカリキュラムは10時間程度あるため、2日間に分けられています。
なお、甲種においては再講習も設けられており、カリキュラムは2時間程度です。それぞれ、受講内容は以下のようなものです。

・甲種新規講習
防火管理制度、火器や施設の維持管理、防火管理における消防計画など

・乙種講習
甲種新規講習の内容で、基本的な知識と技能

・甲種再講習
法令改正やその概要と、近年の火災事例など

また、甲種新規講習において、消防設備点検資格者および自衛消防業務講習の修了者は、事前申請により一部科目の免除が適用されます。

飲食店開業における届け出について


飲食店開業にあたって、各種届け出も必要です。

食品営業許可

食品を取り扱う事業所が保健所に提出するもので、この許可証を得た後に開業が可能となります。

ただし、届け出前に店舗の設計図を提出して相談しなければならないほか、審査に通過する必要があるため、店舗完成の10日前までに届け出を行ってください。

菓子製造業許可申請

和洋菓子店やパン店など、持ち帰りや卸売りを行う店舗を開業する場合に必要で、こちらも保健所に提出します。
例えば、カフェのように店内でお菓子を提供するケースでは、食品営業許可証を取得すれば問題ありません。

防火管理者選任届

防火管理者を設置した際、その旨を開業前に消防署に届け出ます。前述したように、収容人数(従業員含む)が30名以上の場合に必要です。

防火対象設備使用開始届

同じく消防署に提出する届け出で、消防法に規定される防火対象物の使用開始を知らせるものです。
営業開始7日前までに提出する書類であり、防火管理者選任届と一緒に提出すると間に合わない場合があるので、注意してください。

火を使用する設備などの設置届

火器を使用する場合に、消防署に届け出を行うもので、厨房のコンロや可燃性ガスなどを用いる場合に必要です。
提出するタイミングは、これらの設備を設置する前です。

個人事業の開廃業等届出書

飲食店を個人で経営する場合、個人事業主として開業したことを税務署に届け出ます。提出は、開業から1カ月以内です。

労災保険の加入手続き

従業員を雇用する際には、労災保険の加入は義務です。そのため、従業員の雇用日翌日から10日以内に、労働基準監督署へ届け出を行います。

雇用保険の加入手続き

従業員の中で、契約した雇用期間が31日以上、かつ1週間の労働時間が20時間以上である人は、雇用保険の加入が必須です。
公共職業安定所で、雇用日の翌日から10日以内に手続きを行います。

社会保険の加入手続き

社会保険は、個人事業であれば任意ですが、法人として開業した場合に従業員への加入が求められ、年金事務所に届け出を行います。
従業員を雇用してからできるだけ早めに手続きを行うこととされています。

深夜における酒類提供飲食営業開始届出書

居酒屋・バー・クラブのように、深夜0時以降にお酒を提供する飲食店である場合は、警察署にこの届け出を行わなければなりません。
届け出は、営業開始の10日前までに行うようにします。

風俗営業許可

警察署に届け出る風俗業営業許可には、細かな条件が存在します。
業種はキャバクラやホストクラブ、パチンコ店やゲームセンターなどで、カテゴリー別に8種類に分けられます。

さらに、開業場所や客室面積、明るさなどで厳しい基準が設けられているため、専門家に相談しながら営業開始の2カ月前までに届け出てください。

知っておくと便利な飲食店開業の補助金・助成金


飲食店開業において、利用できる補助金や助成金がいくつかあります。

補助金・助成金の種類

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、全国商工会連合会が運営するもので、小規模な事業を行う事業者に対して持続的な経営への取組みを促進させるための補助金です。
基本的には、補助範囲は開業資金の3分の2まで、金額の上限は200万円までとされています。

様々な条件やカテゴリー別の枠により変動があるため、詳細は問い合わせてください。

小規模事業者持続化補助金について、詳しくはこちらの記事を>>
小規模事業者持続化補助金(一般型) 第8回の概要が発表!新設された特別枠とは?対象者やスケジュールも解説。

ものづくり補助金

中小企業庁が運営しており、正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と呼ばれる制度です。
小規模・中小企業が新しい商品やサービスの開発、生産工程の効率化などを図るための資金を補助し、新たなビジネスの創出をサポートします。
補助範囲は小規模事業者で3分の2、中小企業で2分の1とされており、最大1,000万円の補助を受けられます。

ものづくり補助金について、詳しくはこちらの記事を>>
【2022年】「ものづくり補助金」10次締切以降の変更点まとめ。申請枠、補助額、対象事業者が見直し・拡充されます

受動喫煙防止対策助成金

地域の労働局が管轄しており、飲食店などで分煙を促し、受動喫煙を防止する施策へのサポートを行う助成金です。その対策とは、主に以下のものを指します。

1.一定基準を満たした喫煙室の設置
2.一定基準を満たし、閉鎖された屋外喫煙所の設置
3.一定基準を満たした換気装置の設置

飲食店の場合、従業員50人以下かつ資本金5,000万円以下の店舗であれば助成金受給の対象内です。
助成範囲は、飲食店に限り3分の2までで、100万円が上限金額とされています。
なお、上記に挙げた1~3までの設置を複数行った場合でも、上限金額はまとめて100万円であるため、注意が必要です。
助成金の申請タイミングは設備の設置前であり、設置終了後に請求書を労働局に提出することで、助成金を受け取れます。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、厚生労働省が運営している制度です。
パート・アルバイト・派遣などの非正規雇用者に対し、正社員への登用もしくは待遇の引上げなどを行った時に受けられる助成金です。
非正規雇用者のモチベーションをアップさせ、生産性向上や人材育成を積極的に行うことで、金額のサポートを受けられます。
対策の種類にもよりますが、助成金額は最大でひとり当たり72万円です。

キャリアアップ助成金について、詳しくはこちらの記事を>>
【専門家監修】キャリアアップ助成金 2022年4月における変更点とは

働き方改革推進助成金

様々な働き方が容認されるようになった昨今において、働き方改革への動きを推進した事業所に助成金を支給するものです。
厚生労働省が進めている制度で、時短勤務や有給取得のために何らかの対策を講じることが条件です。
これらにかかる費用の上限額か、費用における4分の3のいずれか低いほうが助成範囲となり、最大で240万円までの助成が受けられます。

働き方改革推進支援助成金について、詳しくはこちらの記事を>>
働き方改革推進支援助成金とは。4つのコースの内容や支給額などを紹介。

出生時両立支援コース・育児休業等支援コース

これらの助成金は、「両立支援等助成金」に含まれるもので、厚生労働省が運営します。
特に、仕事と育児の両立には何らかの施策を取ることは近年求められる課題であり、飲食店も例に漏れません。
出生時両立支援コースと、育児休業支援コースの概要は、以下のとおりです。

・出生時両立支援コース
男性が育休を取りやすいように施策を講じた際に、事業主に支給される助成金です。

・育児休業等支援コース
育休復帰プランを作成し、育休後に職場復帰した際などに、助成金が事業者に支給されます。

これら2つは、両立支援等助成金の中でも利用率が高いものです。
「出生時両立支援コース」では対象者ひとり当たり最大で75万円が、「育児休業等支援コース」では最大60万円が支給されます。

両立支援等助成金について、詳しくはこちらの記事を>>
社労士監修】両立支援等助成金(出生時両立支援コース)とは。概要から支給額や申請方法まで解説

教育訓練休暇付与コース

厚生労働省が実施する「人材開発支援助成金」の一部で、仕事のスキルを高めるための訓練にかかる費用や、訓練のために取った休暇の間の賃金を一部サポートするものです。
条件を満たす従業員が制度を利用した場合、訓練費用への助成は最大でひとり当たり36万円、休暇中の賃金助成はひとり1日当たり最大7,200円です。

補助金・助成金申請で注意すること

補助金や助成金を受給する条件や申請方法は、複雑な仕組みになっているものもあります。
手続きの過程でミスをすると、補助金や助成金を受け取れないだけでなく、場合によっては不正を疑われる恐れもあります。
不正と判断された場合には、法律に基づき受給金額の返金だけではなく、違約金の支払いなどの厳しい処罰を受けることがあるため、注意が必要です。
詳しい内容は、店舗の所在地である自治体に相談するのが良いでしょう。

また、各自治体独自で行っている制度もあるため、調べたり問い合わせたりしてみるのもおすすめです。

まとめ

飲食店開業に必要な資格は、開業前にほぼ必ず取得しなければならないもののため、資格取得のための講習や試験は余裕を持って事前に受けておきましょう。
さらに、飲食店開業前の各種届け出も定められた期間があるため、あらかじめ何が必要かを調べておき、適切な時期に届け出を行えるように準備しておくのがおすすめです。

開業直前になって慌てないように、周到な準備を行ってから開業に備えてください。

創業手帳の冊子版(無料)は、資金調達や開業計画など、飲食店の開業前後に必要な情報を掲載しています。開業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
関連記事
飲食店開業時の集客・マーケティングアイデア11選!無料の販促方法もご紹介
飲食店の事業計画書の書き方と融資のために押さえたいポイント

(編集:創業手帳編集部)

補助金ガイド
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】