リーンスタートアップとは?プロセスや実践のポイント、時代遅れとされる理由を解説

創業手帳

本当に時代遅れの手法?リーンスタートアップの基本を知って理解を深めよう


リーンスタートアップは、コストをかけることなく製品やサービスなどの試作品を短期間で作り、顧客の反応をチェックするマネジメント手法です。
しかし、現在では時代遅れの手法といわれています。

今回は、リーンスタートアップがどのようなマネジメント手法なのか特徴をご紹介しつつ、なぜ時代遅れだといわれてしまうのか解説します。
成功のポイントもご紹介するので、リーンスタートアップを取り入れようか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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リーンスタートアップはどんなマネジメント手法?


まずは、マネジメント手法のひとつであるリーンスタートアップとはどのようなものか解説していきます。

製品・サービスの開発に関するマネジメント手法

リーンスタートアップは、製品やサービスの開発に関するマネジメントの手法です。
低コスト・短期間で必要最低限の機能を兼ね備えた製品やサービスを作り、実際に顧客に使ってもらいます。
そして製品やサービスについて検証し、ブラッシュアップしていきます。

リーンは、「痩せた」「細い」「脂肪のない」といった意味を持つ言葉です。ビジネスに置き換えた場合、無駄をそぎ落としたビジネスモデルということになります。
事業の見通しが立ちにくいスタートアップは無駄が多くなってしまいがちですが、リーンスタートアップを採用すればその無駄を省きながら効率的な製品・サービスの開発も可能です。

リーンスタートアップで重要なMVP

リーンスタートアップにおいて重要となるのが「MVP」です。
これは、Minimum Viable Productの頭文字からとった言葉で、実用最小限の製品という意味になり、プロダクト開発ではないことを示しています。

技術や製品のニーズが激しく変化する世界では、自社のアイデアが市場で受け入れてもらえるかという判断が難しくなります。
そのため、実際に製品やサービスを市場に投入するまで、本当にニーズに合うものを提供できているのか知ることはできません。
そこで、市場に出しても問題ないある程度のレベルの製品をとりあえず投入してみて、実際にその製品を利用した顧客からフィードバックをもらい、改良を重ねていきます。

リーンスタートアップの4つのプロセス


リーンスタートアップは、仮説の構築、計測・実験、計測・実験のデータに基づいた学習、うまくいかなかった時の再構築、という4つのプロセスで行われます。
続いては、それぞれのプロセスについて詳しく解説していきます。

1.仮説を構築する

まずは仮説を構築していきます。
新たな製品・サービスの制作、顧客のニーズを考慮した望ましいと考えられる製品・サービスのアイデア考案、練り上げたアイデアの製品開発を行うフェーズです。
開発をする際は、できるだけコストや時間をかけないことがポイントになります。製品やサービスを思いついたら、完璧でなくても問題ないので形にして、MVPを作ります。

スタートアップは実際に事業がスタートしていないケースが多いです。そのため、仮説がうまくいくかどうかは未知数です。
うまくいかない可能性もあるので、まずはMVPで顧客の反応を見ることが重要になります。
仮説の構築をしっかり行っておけば、それ以降のプロセスも円滑に進めやすくなります。

2.計測・実験を実施する

仮説を構築したら、計測・実験を実施します。実際に製品を完成させ、市場の反応を確認するフェーズです。

この時に押さえておきたいのは、製品づくりに全力投球したり、キャンペーンを適用したりしないことです。
計測や実験を行うのは、あくまでもMVPレベルなので本気を出す必要はありません。
MVPであれば、制作費用や時間をそこまでかけずに済むため、うまくいかなくても修正しやすいです。
まずはできるだけ無駄のないMVPを市場に投入してみて、顧客の反応がどのような感じかチェックしてみてください。

ただし、盛り込み過ぎてしまうと実験ではなくなってしまいます。データを集めることが目的なので、それを加味した上で製品づくりをすることがポイントです。

3.計測・実験データをもとに学習する

計測や実験でデータが集まったら、学習のフェーズへと進んでいきます。データをもとに、MVPに改善を加えていき、より良いビジネスモデルを構築していくために重要です。
顧客の反応が思ったほど良くなかった場合は、その原因を追究し、商品やサービスの改善を図ります。

場合によっては仮説そのものを見直し、大幅な方向転換をしなければいけないパターンもあります。
軌道修正をして事業内容を一新すべきかどうかを把握するためにも、学習というフェーズは重要です。
仮に失敗だったとわかっても、それは次に活かすことができます。そしてそれは、事業の成功率を高めるためのヒントにもなるでしょう。
また、学習の結果で続けるメリットがないとわかれば、早期撤退も決断しやすくなります。

4.うまくいかない場合は再構築する

思ったような結果が得られないとわかったら、できるだけ早く再構築するのが無難です。
再構築は方向転換するきっかけにもなるので、バスケットボール用語からピポットと呼ばれています。
顧客にとって最高の価値を与えられる製品やサービスはどのようなものか見極められるまで、仮説の構築から計測・実験、学習、再構築を繰り返していきます。
再構築すると遠回りになると思うかもしれません。しかし、試行錯誤しながら経営戦略を練ることはイノベーションの成功率を高める効果が期待できます。

スタートアップ企業だけではなく大手企業の新規事業立ち上げでもこのプロセスを採用しているパターンが見られるので、新たなビジネスをはじめるなら取り入れるべきだといえます。

リーンスタートアップの3つのメリット


近年SNSの拡散力が強くなっていて、キャンペーンを行う企業も増えています。
それらに敵わないという理由からリーンスタートアップは時代遅れなどと批判的な意見も見られるようになってきました。
しかし、リーンスタートアップならではのメリットもあります。

低コスト・短時間で検証できる

完全版と呼べる製品を開発するためには、莫大なコストや時間がかかります。
しかしリーンスタートアップであればMVPを作ることが最初の一歩になるので、コストを抑えつつ短時間での検証も可能となります。

MVPの提供を繰り返し行うことにより、顧客のニーズを把握しやすくなるのも魅力です。顧客の反応がいまいちだった場合の原因究明もしやすくなります。

リリースまで素早く市場で優位に立ちやすい

MVPを最低限に抑えれば、いち早く計測ができるため、先行利益を獲得できます。
市場において優位に立てるだけではなく、利益を出しやすくなるというメリットも享受できるのは大きな魅力です。

製品やサービスの改良にもスピーディに対応できるため、成長性が早い業界の中でも優位に立てます。
企業や新規事業の成功率も格段に高まる方法といわれているので、競合他社との差別化にもつながるでしょう。

顧客の声を早く拾うことができる

できるだけ早く製品やサービスを市場に出すことで、顧客から具体的なフィードバックが得られます。
それをしっかり拾えれば、改善点や伸ばせる要素なども把握しやすくなります。

顧客からのフィードバックがどれほどニーズに応えられているかを把握する重要な指標です。
フィードバックを製品やサービスに落とし込んでいけば、より満足度の高いものが提供できます。

リーンスタートアップは時代遅れといわれる4つの理由


リーンスタートアップはすでに時代遅れの手法だといわれています。なぜ、リーンスタートアップは時代遅れだといわれているのか解説していきます。

業界によってはリーンスタートアップが向かない

リーンスタートアップはすべての業界に向いているわけではありません。MVPで検証や改善のプロセスを繰り返していきます。
そうすることでコストを抑えられるケースも多いですが、製品やサービスの開発コストが高いとMVPでも高コストになってしまう可能性があります。

ニーズの移り変わりが激しい業界においても、リーンスタートアップはあまり意味を成しません。
Webサービスやセミオーダーメイドの業界は向いていると考えられるため、一概にはいい切れませんが、必ずしも効果的とはいえないのが現状です。

最新技術を使用する場合はコストの削減が難しい

最新技術を使用する場合も、リーンスタートアップでコストを削減しにくいです。
品質の良い製品やサービスはたくさんあるので、質で差別化するのは難しい状況になっています。

新規事業を立ち上げる際は、既存の商品やサービスを差別化できるようなものを生み出すことも必要だといわれるようになってきました。
そのためには最新技術を使わなければいけない場合もあります。
最新技術を駆使した商品やサービスも魅力的ですが、検証と改善を何度も繰り返すと金銭的な負担が大きくなる可能性が高いです。

SNSの普及で評判が早く回りやすい

SNSの普及で評判が早く回りやすいことも、リーンスタートアップは時代遅れだといわれる理由のひとつとして挙げられます。
SNSは多くの人が利用していて、インフルエンサーと呼ばれる影響力が大きいユーザーもいます。
拡散性が高いのでポジティブな口コミ・評判だけではなく、ネガティブなものも瞬く間に広まってしまう点に注意が必要です。

中途半端なテスト製品を出してしまうと、ブランド価値や信頼を損なう可能性も考えられます。
このことから、SNSの影響力が大きい現代社会には適していない手法だと考えることもできるのです。

「計画より先に実行」という考え方が広まっている

リーンスタートアップが時代遅れだといわれるようになった背景には、「計画より先に実行」という考え方が広まったことも挙げられます。
この考え方は2014年にピーター・ティール氏が手掛けた『ゼロ・トゥ・ワン』に記されています。

ゼロ・トゥ・ワンは、ゼロから新しい市場を想像し、独占的な地位を確立する戦略です。
この書籍ではリーンスタートアップと真逆の「計画より先に実行」を提唱しています。
この考え方を支持する層から見ると、リーンスタートアップは時代遅れだと感じ、それが広まりつつあるのです。

リーンスタートアップを成功させる4つのポイント


リーンスタートアップを成功させるためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
最後に、成功させるために知っておきたいポイントを4つピックアップしてご紹介します。

リーンスタートアップの本質を正しく理解する

リーンスタートアップはあくまでもツールのひとつです。リーンスタートアップ事態に固執してしまうと、手段が目的になってしまいます。
そのような状態になると、本質的なビジネスの成功からは遠ざかってしまうため、ツールのひとつであることをしっかり理解しておかなければいけません。

本質を理解しないまま取り入れてしまうと、表面的なものになってしまう傾向があります。
適切な意思決定を行うためにも、リーンスタートアップを適切に取り入れることが重要です。使うことが目的にならなければ有効活用できます。

明確な目的やビジョンを持つ

リーンスタートアップは最小限の機能を備えた商品やサービスを提供し、ブラッシュアップしていく方法です。
改善を図るためには、顧客の表面的なニーズに振り回されて方向性を見失わないようにしなければいけません。
方向性を見失わないようにするには、明確な目的やビジョンを持つことがポイントになります。

明確な目的やビジョンを定めたら、それをメンバー内で共有することも大切です。軸にブレがない事業開発を進めることに役立ちます。
リーンスタートアップの目的はあくまでも無駄を省き、少ない経営資源で最大の利益を出すことだと忘れないようにしてください。

効果が発揮できる市場なのか見定める

市場によってはリーンスタートアップの効果が発揮できない可能性もあります。
そのため、市場をしっかりとリサーチし、効果が発揮できそうか見定めることも重要です。
特に、顧客の声が広がりやすい対消費者向けの事業では慎重にならなければいけません。

しかし、市場のトレンドや顧客のニーズが複雑で読み切れない分野、サービスを最適化することで顧客体験を向上させるべき分野、製品やサービスを作り込む段階で臨機応変な耐おいが必要な場合には適しています。
それを踏まえた上で見定めてください。

情報を集めて利活用する

リーンスタートアップを成功させるには、情報収集も必要不可欠です。仮説を立てて検証するというサイクルをできるだけスピーディに行う必要があります。
スピーディに行うには、有用な情報を顧客からヒアリングしたり、市場調査を的確に行ったりすることがポイントになります。

仮説の裏付けは社内で共有し、関係者の間で共通認識を持つことも大切です。それはプロジェクトを円滑に進める要因になります。
網羅的な情報収集や情報の活用は、顧客のニーズに応えられる商品やサービスの開発にも欠かせません。

まとめ

リーンスタートアップは、仮説や懸賞などを繰り返して商品やサービスのブラッシュアップを行う手法です。
完成系ではない商品やサービスを提供し、顧客の声を反映させていきます。
適した業界ももちろんあり、顧客のニーズに応えられる商品やサービスの開発に役立ちますが、SNSの普及などで時代遅れだといわれるようになっているのも事実です。

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(編集:創業手帳編集部)

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