トビラシステムズ 明田 篤|日本初の迷惑電話フィルタからクラウド電話で急成長!社会課題の解決がビジネスに。

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年09月に行われた取材時点のものです。

時代に合った社会の必要性に応えるサービスを次々に開発し成長

オレオレ詐欺など特殊詐欺は令和3年で14,498件と、高齢者を中心に多数の被害が発生しています。そんな詐欺の入り口にもなる迷惑電話をブロックする商品「トビラフォン」を開発しているのが明田社長が創業したトビラシステムズです。

電話には迷惑電話をブロックする仕組みがないことに気づいたトビラシステムズが開発に成功しました。

またコロナ禍でリモートワークが当たり前になった現在、固定電話だと対応できない状況に対して、どこでもスマホで電話を受けることができるクラウド電話「トビラフォン Cloud」を開発しています。

トビラシステムズは時代の必要性に合った商品を次々に開発し、上場するまでに成長しました。

今回明田さんには、創業から迷惑電話フィルタの開発に至るまでの経緯や、法人向けクラウド電話「トビラフォン Cloud」について、また上場後の会社の変化やメリットを創業手帳の大久保が聞きました。

明田 篤(あきた あつし)
トビラシステムズ株式会社 代表取締役社長

1980年、愛知県生まれ。2004年、ITエンジニアとして創業。06年、株式会社A&A tecnologia(現:トビラシステムズ株式会社)を設立。11年、日本初となる迷惑電話防止機器「トビラフォン」を開発・発売。19年、東証マザーズに上場。20年、東証一部に市場変更。22年、東証プライム市場へ移行。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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起業当初の受託開発業務から自社製品にシフト

大久保:起業までの経緯を教えてください。

明田:元々は受託開発を中心に行うソフトウェア会社でエンジニアをしていましたが、2004年に独立してフリーランスのエンジニアになりました。

フリーランスとして受託開発の業務を請け負い、少しずつ仕事が増えたので、エンジニアを採用しはじめ、売上も増えてきたので、独立から2年後の2006年に法人化しました。

創業当初は受託業務を中心に会社経営を進めていたのですが、リーマンショックをきっかけに自社製品の開発を加速させていきました。

受託開発の業務は軌道に乗れば一定的な受注が受けられる反面、外的要因により急に受注が無くなった場合、赤字になりやすいリスクを抱えていると気がつきました。

そこで、外的要因があってもリスクを最小限に抑えるため、自分たちの力で利益を生み出せる仕組みを作らなければならないと思い、自社製品の開発に注力し始めました。

現在自社製品を開発している、またはこれから自社製品を開発していきたい起業家の方には、一つの事例として参考になるかもしれませんね。

自社製品の場合、自分自身も、エンジニアも「自分たち自身のブランド・製品」ですから愛着もわきますし、モチベーションが上がります。

やりがいを感じられる事業をすることで自ずと採用や生産性など経営に良い影響があります。

また自社製品を開発して運営するようになると、エンドユーザーから直接声が届くようになります。

ポジティブでもネガティブでもエンドユーザーから直接フィードバックを頂けることで、開発に関わった全てのメンバーの「喜び」や「成長」につながっていきます。

ココ重要!受託開発から自社製品への切り替え
  • リーマンショックを機に、外的要因に左右されにくい売上を作るために自社製品の開発に注力
  • 自社製品にはエンドユーザーから直接フィードバックが届くため「喜び」や「成長」につながる

迷惑電話フィルタ開発の経緯

大久保:なぜ迷惑電話フィルタを作ろうと思われたのでしょうか。

明田:このサービスは悪徳商法被害に遭った私の祖父を助けたいと思ったことがきっかけでした。

世の中にはオレオレ詐欺などの詐欺被害が多いので、固定電話につけるセキュリティシステムは当然開発されているだろうと思いましたが、全く見つかりませんでした。

そこで、世の中にないのであれば、自分で作るしかないと思いました。

電子メールもデータベース化されてフィルタリングされているので、固定電話も同じことをやればできるかもしれないと思い、元々ITエンジニアをしていた私が自分で回路の設計やプログラミングを行い、完成したのが固定電話に取り付けるアタッチメント型の端末です。

しかし、開発が大変で電話につけるハードの端末を開発しなければなりませんでした。回路やハードの部分を勉強するところから始めました。

製品が完成した後には、「日本初の未知なる迷惑電話をフィルタするシステム」を作ったことで、地元のメディアにも取り上げてもらい、愛知県警と連携して実証実験をスタートすることになりました。

警察と連携したことで、またメディアにも取り上げてもらえて、信用という面でも大きい功績となりました。

開発から収益化までに約6年!大手通信キャリアとの連携で飛躍

明田:しかし反響とは裏腹に製品が売れだしたのは、約6年後と苦労しました。

一番問題だったのが、振り込め詐欺に騙される人ほど、防犯製品に興味がないというミスマッチが起きたことです。

警察もメディアもバックアップしてくれていたのにもかかわらず、売り上げが立たないという期間が続きました。

ハードウェア製品なので、大量生産して在庫を抱えなければいけないですし、製品トラブルも起きて大変でした。

電話機メーカーから通信機メーカー、消費者庁などと、様々な方々と面談を重ねる中で、大きな転換期が起きました。

大手の通信キャリアからお声がかかり大規模な提携が実現しました。

ユーザーが電話に自分で迷惑電話フィルタをつけるのではなく、通信キャリアが迷惑電話フィルタを導入してくれることになりようやく収益化できました。

電子メールのサービスは迷惑メールフィルタが付いていますがそれと似た構造ですね。

今では大手通信キャリア各社全てにシステムを導入することができました。

詐欺は年々手法が巧みになっているので、迷惑電話を防止できるシステムをさらに伸ばしていきたいと思っています。フィッシング詐欺が増えている近年は迷惑SMS対策にも力を入れています。

ココ重要!自社製品を軌道に乗せるまでに起きた「3つの転換点」
  • 1:世の中に存在しない、社会のニーズを反映した製品を開発
  • 2:警察と連携して実証実験を開始
  • 3:大手通信キャリアとの連携に成功

時代の流れに乗った法人向けクラウド電話で会社が飛躍!

明田:その間も、次の柱になる事業を育てていきます。最近では法人向けの事業に注力しており、今後の成長を牽引する事業となるよう取り組んでいます。

特に2020年に提供開始した「トビラフォン Cloud」は、偶然にも時代の流れに合ったサービスとなりました。

会社の電話というと以前は固定電話が当たり前でしたよね。

しかし、コロナでそもそも出社しない、固定電話だと対応できないということも多くなってきました。

トビラフォン Cloudはビジネスフォンをすべてクラウド化することで利便性が飛躍的に向上するサービスで、個人のスマートフォンさえあれば、ビジネスに必要な電話業務をいつでもどこでも対応可能になります。

トビラフォン Cloudには大きく3つのメリットがあります。

1つ目のメリットは、「社内の電話をすべて集約して管理できる」ことです。今ある代表番号、支店番号、社用携帯など、これまでバラバラだった電話業務の全てをトビラフォン Cloudで管理することが可能です。

2つ目のメリットは、「ビジネスフォンのコストを大幅削減できる」ことです。オフィスにビジネスフォンを導入する際には、固定費や導入費用、維持費、管理コスト、端末代、工事費用など、様々なコストが発生します。

しかし、トビラフォン Cloudでは、クラウドベースなので固定型でかかる様々な設備やコストが無かったり、大幅に削減できます。そのためトータルコストを大幅に削減可能です。

そして、3つ目のメリットは、「電話業務を可視化できる」ことです。トビラフォン Cloudを通じて行われる電話業務は、全てダッシュボードで管理することができます。

発着信や通話時間を可視化することでマネージメントや社員教育にも活用いただけます。

トビラフォン Cloudは、全社的に大規模に導入していただくこともありますが、特定の部署のみの導入から始めるお客様や、独立・開業を機に少人数で使い始めるお客様など、あらゆる事業規模で柔軟に対応しています。ぜひ起業家にも使っていただきたいサービスですね。

上場して感じた3つのメリット

大久保:上場して変わったことを教えていただけますか?

明田:上場して感じたメリットはすごくたくさんありました。

1つ目に、上場する過程で会社がすごく綺麗になっていきます

上場するためには上場審査がありますが、上場審査に通るには会社を管理面で整備する必要があります。その過程で会社の未整備だったところが整えられ、会社が「綺麗」になっていきます。

株主だけでなく、働いている人、これから働く人、取引先など全ての関係者に取って安心感や信頼に繋がる部分だと思ってます。

2つ目に、資金調達の面はかなりスムーズになりました

市場から直接大きな資金を調達でき、同時に金融機関からの調達も容易になります。

使える資金が大きくなるので思い切った投資ができるのもメリットです。

3つ目に、未上場の時に比べて、株主の数も増えました

これは応援してくれている人が増えたということを意味します。

自分の私的な会社ではなく、パブリックな会社として成長させていけることは、会社や社員、お客様にとっても良いことだと思います。

起業は最初は創業者の会社にならざるえない面もありますが、会社が大きくなっていく、上場を目指す過程で、組織化、仕組み化していく必要があります。

ただ、上場は会社を成長させる手段でしかないですし、様々な間接コストもかかるので、起業したばかりの方は売上や利益につながる社会のニーズをしっかり捉えた製品開発に注力していくと、その先に、選択肢の一つとして上場も出てくると思います。

起業家の不足をチームで補おう

大久保:最後に読者の方にメッセージをお願いします。

明田:私自身もそうですが経営においては「自分が得意な部分と、他の人に任せる部分を見極める」ことが大事だと思います。

自分の限界を見極めた上で、足りないところをチームで補うというのが、会社をやる上で重要だと言って良いと思います。

一人でなんでもできる人は滅多にいないので、みんなで補って最終的に勝てば良いんじゃないかなと思います。私はできないことばかりでしたが、みんなが応援してくれて一緒にやってくれたので、上場もできました。

読者の方は、自分一人で抱えず、チームで起業を成功させていただければと思います。

ココ重要!起業を成功させる「コツ」
  • 任せるポイントを見極める
  • 自分に足りない部分はチームで補う
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(取材協力: トビラシステムズ株式会社 代表取締役社長 明田 篤
(編集: 創業手帳編集部)



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