エンジェルからクラウドファンディングまで、ベンチャー企業の資金調達アドバイス【木嶋氏連載その3】

創業手帳

エンジェル投資家、木嶋豊氏に聞く「スタートアップのステップ別成長テクニック」


『企業の成長戦略が10時間でわかる本』の著者でエンジェル投資家の木嶋豊氏は、これまで20社以上のベンチャー企業を上場させてきました。成長する企業の特徴は、創業時からビジョンが大きく、柔軟性を持ち合わせていることだと言います。そして何より重要なのは、起業の時点でスケールする考えを持っているかどうかということ。

それにはビジネスチャンスを逃さないための起業アイディアのまとめ方や、資金調達を可能にするビジネスプランの作成などが欠かせません。第3回目である今回は、ベンチャー企業がするべき資金調達の方法について、詳しくご説明いただきます。

木嶋豊

木嶋 豊(きじま ゆたか)
株式会社アイピーアライアンス代表取締役社長。亜細亜大学都市創造学部・亜細亜大学大学院MBA教授。1986年東京大学法学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。ハーバード大学に留学。テクノロジー系VCの取締役、投資総括常務執行役員を務め、現在、ベンチャー投資、成長戦略支援、IPO支援を行う。20社以上を上場させたベンチャーキャピタリスト。20社のエンジェル投資家、4社の会社オーナー、15社以上の成長企業の社外役員・アドバイザー。サンフランシスコ州立大学客員教授を兼職。行政府や企業などでの講演多数。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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ベンチャーにとって追い風となる資金調達


大久保:起業にあたっては、政府や自治体の創業支援金・助成金、エンジェル(個人投資家)からの出資、ベンチャーキャピタルの出資など、成長ステージに応じて資金を調達することになりますが、いざ起業となると資金面の心配が頭から離れない方も多いと思います。

木嶋:資金調達に関してはすごく環境が良くなってきていると思いますよ。昔は数千万円借金して起業するパターンがほとんどでしたが、最近は創業資金でも自分が保証人にならずに済んだり、エンジェル(個人投資家)やVC(ベンチャーキャピタル)から調達してもそれが負債にならなかったり、そういう形が常識になってきましたよね。

連帯保証人制度そのものが改善されてきたということも契機になってきたと思いますが、政策公庫も民間の創業資金もあえて個人保証はさせません。

昔は出資サイドも今のようにエンジェルではなくデビルのような人が多く、失敗したら全額返金を要求し、金利も高額でした。そういうことでしか資金を調達できなかった時代もありましたが、最近は出資型のクラウドファンディングも活発になってきていますし、エンジェルも失敗したからといって追い詰めるようなこともしない。ここ5年ぐらいのことですが、環境が整ってきていると感じます。

大久保:なるほど。木嶋さんは著書『企業の成長戦略が10時間でわかる本』の中で「起業時の自己資金は最低でも100万円ぐらいは欲しい」と書いていますね。

木嶋:経産省が1円起業などと言っていますが、これは誤解です。確かに1円で起業できますが、会社を登記するには20万ぐらいかかるので、起業の次の日には早速20万の債務超過ということになる。月次決算でいきなり債務超過になるわけですから、最低限最初の起業資金だけは自分で用意しておいて欲しいということで100万円としました。

また、著書では創業期は4Fからの資金調達が最適と書きましたが、最初はファウンダーである自分たち、親などのファミリー、友人のフレンド、普通はこれらをまとめて「3Fからの資金調達」と言います。ですが私はもうひとりのFということで、フール(リスクを取る向こう見ずな人)を付け加えました。起業すると言ったら、採算度外視でお前の心意気は買った!と言ってくれるようなフールもいますので、そういう人から集めて起業するということでいいのではないでしょうか。

投資家も勧める公庫融資と制度融資


大久保:木嶋さんはエンジェル投資家としてこれまで20社以上に投資していますが、投資家の視点から、政策金融公庫の「公庫融資」と行政の「制度融資」をお勧めする理由を教えてください。

木嶋:起業時は信用もないので、融資はなかなか受けられませんよね。ただ例外があって、それが公的資金ということになります。政策金融公庫は「起業率や開業率を上げて、日本経済を活性化しよう」という日本の政策を実施するための機関ですから、ベンチャー企業に融資するお金はある程度許容範囲だと。

具体的には、公庫がやっている「新創業融資制度」を使えば3,000万、「中小企業経営力強化資金」は最大7,200万まで借りることができるので、公的機関の創業資金融資はどんどん活用していただきたいですね。公的機関ということで敷居が高いと思われるかもしれませんが、皆さんの税金でできている制度なので、使わないと損です。公的機関の場合は、返済できなくなったからと言って、サラ金のように追い立てられるようなこともなく、保証人を立てなくても借りられる制度がありますからね。

大久保:公庫融資は起業時の資金調達の方法としては一番メジャーですからね。自治体がやっている制度融資も同じようにお勧めですか?

木嶋:もちろんです。制度融資についてはそれぞれの自治体のホームページで検索すれば出てくるので、しっかり調べて極力使いましょう。中には金利0.2%なんていう制度もあります。それらを使えば500万ぐらいはすぐに集めることができるでしょう。起業はカッコ良くするものではなく、「使えるものは何でも使い倒す」。スムーズに起業するためにも、そのぐらいの貪欲さは欲しいですね。

大久保:VCから出資を受けるなんていうのは起業後かなり経ってからになってしまいますからね。

木嶋:そうですね。Webサイトやアプリなら、それ相応のビューや会員数が数字として現れてきた頃、サービスやモノなら売れる予兆が見え始めた頃でないと出資してもらうのは難しいですからね。一歩進んだ話をすると、出資による資本政策も難しい問題で、起業したての頃に投資家などから低い株価でお金を入れてしまうと、その人に支配権を取られて後々の成長に支障をきたしてしまうじゃないですか。

なので、株価1万で100万円の資本金で起業したとしたら、将来的な見込みをよく説明した上で、例えばその20倍の1株20万円で買ってもらう交渉をしていく。その時点でたとえ売上げが上がっていなかったとしても、どれだけの潜在顧客が集まっているか、どれだけ評判を呼んでいるかといった情報が、株価を20倍にする説得材料になります。

株価が10倍、20倍になる、何らかのエビデンスができたところでエンジェルやVCに話をする。これが資本政策の重要なポイントです。ある程度見込みが立ったところでVCやエンジェルを入れる、そのタイミングを間違えると後悔します。

大久保:資本政策は起業時から考えるべきですか?

木嶋:考えておいた方がいいと思います。せっかく増資を受けられても、自分の分身である株をどんどん取られて自分よりもエンジェルやVCの比率が多くなってしまっているベンチャーもいますから。そういうところは、調達はうまくいったけれど資本政策は失敗したと言われてしまいます。

エンジェルと株式投資型クラウドファンディング


大久保:エンジェル投資家の最近の動きはいかがですか?

木嶋:国内では経営者や医者、弁護士などがエンジェル投資家として活動していますが、エンジェル活動が活発なアメリカに比べると、プレイヤーの数はまだまだ少ないですね。ただ、2015年に法令が改正されたことで、サラリーマンでも株式投資型クラウドファンディングに出資できる、小口エンジェルの仕組みが解禁されましたよね。

投資型クラウドファンディングに関しては上限が50万円ですが、普通のサラリーマンでもエンジェルの経験ができる土壌が育ってきたということは、かなりの進歩ではないでしょうか。まずは少額から始めてみるのがいいと思います。

大久保:起業前であれば、10万円でもいいからエンジェル投資をすると、きっといい勉強になりますよね。投資の際に事業計画書を見たりしますし。

木嶋:そうですね。自分が事業をする前に、他人の事業を評価するというのはいい経験になると思います。

大久保:評価する側の視点が持てるわけですからね。自分で事業を始めると、どうしても必死になってしまって、目の前のことしか見えなくなるので、その前にやっておくのは確かにいいかもしれない。出資型クラウドファンディングはまだ流行っていますか?

木嶋:国内最大のクラウドファンディングであるCAMPFIREが、2020年の夏にローンチした「CAMPFIRE Angels」など、投資型のクラウドファンディングはいくつか始まっています。これからも増えていくでしょうね。栄枯盛衰はありますが、全体的には伸びていると思います。

大久保:「イークラウド」や「ユニコーン(Unicorn)」など、他にもいくつかありますよね。最大でも50万円なので、呑み代をちょっとプールしておく程度のノリでもできますからね。

投資をする際はエンジェル税制(ベンチャー企業に投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度)も活用できますし。個人投資家の方は、こういった制度もチェックしておいた方が良いですよね。

木嶋:そうですね。私はエンジェル税制を創設する時に経済産業省にアドバイスをした関係で、なるべくベンチャー企業にはエンジェル税制の要件を満たす手続きをするようアドバイスしています。もちろん自分の投資先にもエンジェル税制を受けるように指導しています。投資と売却の両方で優遇措置が受けられるので、もっと活用する方が増えて、ベンチャー企業が潤えばいいんですけどね。

大久保:木嶋さんは日本政策投資銀行のご出身ですが、以前「政策投資銀行にいるより自分で投資をした方がリターンが良い」とおっしゃっていたのが面白いなと思いまして。

木嶋:政策投資銀行で取締役になってもそれほどの金額はもらえないでしょう。その後移ったベンチャーキャピタルでもリターンは20%しかもらえないんですよ。他人から資金を集めてやるものなので、かなりの責任が生じるにも関わらずね。今はエンジェル投資家として、20社以上に数億円の投資をしていますが、責任は100%だけどリターンも100%ですからね。

コロナ禍におけるVCやCVCの変化

大久保:コロナ禍において、資金調達の面で変化は感じますか?

木嶋:アメリカでも日本でもVCは比較的抑制気味で、新規投資についても勢いがなくなっていると感じます。新規よりすでに投資した先に対するディフェンシブなアドオン投資がメインで、どうディフェンスするかという守りに入っているのではないでしょうか。

ベンチャーの大部分は資金がマイナスなので出資を続けないといけませんが、出資しぶりが起きています。自分が投資した先だけは少なくとも守るという傾向になってきていて、将来性があるけれどコロナで苦しんでいるという会社に対しては、その会社をディフェンスするためのアドオン投資が大きな流れとしてあります。コロナが収まり、景気が回復してくると、潮目も変わってくると思いますが。

大久保:少しマニアックかもしれませんが、中には固有の目的を持って活動しているVCもありますよね。

木嶋:そうですね。日本ではまだメジャーではありませんが、アメリカでは有望な未上場企業に対して投資を行い、数年で企業価値を高めてから売却か上場を目指すサーチファンドが増えてきています。国内では、あらかじめ特定の未上場企業に投資する目的で作られる「ターゲットファンド」を設立する動きも始まっていますね。

大久保:VCに関してはまだまだ動きがありそうですね。ではコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)はいかがですか?

木嶋:CVCは、ここ最近ものすごい勢いで、プレイヤーとして大きな比重を占めてきています。企業の利益率が上がって余剰資金が多くなり、オープンイノベーションが叫ばれる中でCVCのプレイヤーが増え、ファンドの金額も大きくなってきました。

ただ、このコロナ禍においては当たり前ですが、大企業も皆さん本業の方が赤字になってきている。本業回帰ということで、新規投資も絞られてきています。

あとは日本企業の良くないところとして、オープンイノベーションと言っている時は猫も杓子もCVCを作り、一度逆風が吹くと一斉に手を引くような風潮がありますよね。オープンイノベーションは一種のブームのようなところがあり、乗り遅れたらダメという空気感でした。ですが本業が赤字になると経費節減、黒字確保で真っ先にそこを切る。CVCの中には、新しい投資を凍結しているところも結構見受けられます。

一方、少数ではありますが、そんな中でも優れた経営者は将来に対する投資の必要性を感じていて、良識あるCVCはこういう時期だからこそ逆にチャンスと捉えてやっています。

大久保:大企業はこれまで余剰資金があったからCVCをやっていたというのもありますし、新しい事業の芽を探したいという考えもありましたよね。

木嶋:そうですね。それがブームのような形で流行ってしまい、AIやブロックチェーンというキーワードだけで中身がないのにお金が集まり、無茶な時価総額が付くようなベンチャーも散見されていました。今はそのあたりのバブルが落ち着き、適正な株価に調整されてきています。そういう意味ではCVCやエンジェルにとっては投資しどきですが、皆さんなかなかそこまで行っていないという感じがしますね。

大久保:自分は2005年頃からベンチャーにいますが、時々バブルが来て、事業計画書だけで資金調達できてしまうようなベンチャーが増えると、そろそろ相場が危ういなと思いますね。でもGoogleやAppleをはじめとしたGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)はうまく買っていますよね。国内では良識あるCVCはどのあたりだと思います?

木嶋:自動車系のトヨタなどは、足元に関わらずしっかりやられている印象があります。かつて、富士フイルムからフィルムがなくなったという変化や、IBMがフレームワークがなくなってソリューション会社に変更したのと同じように、トヨタも将来的には本業のガソリン車がなくなってしまうような状況の中で、他の事業も必要だということでやられている印象を受けます。

大久保:富士フイルムもIBMも結果的に良くなっていますからね。

木嶋:そうですね。富士フイルムはフィルムで培った乳化技術をうまくプラスにして新しい事業を生み出しましたし。でもその際、再生医療を始めた新しいベンチャーに投資したり企業を買収したりしているわけで、そういう面では今がチャンスなのかもしれませんね。

大久保:なるほど。コロナ後のCVCの動きも楽しみですね。次回は資金調達を可能にするビジネスプランの作り方についてうかがっていきたいと思います。

(次回へ続きます)

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(編集:創業手帳編集部)

(取材協力: 株式会社アイピーアライアンス代表取締役社長 木嶋 豊
(編集: 創業手帳編集部)

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