決算月はいつがいい?決め方のポイントを徹底解説

創業手帳

決算月が会社の動きに対応しやすいかどうかシミュレーションして決めよう


決算月は自由に事業者が決定できるものの、なんとなく3月を選ぶケースが少なくありません。
しかし、決算月がいつになるかによって会社の業務に多くの影響が生じます。
決算月を決める時には、その月が決算月で決算業務や納税に無理が生じないかシミュレーションしてください。
決算月の選び方についてまとめました。

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決算月とは


法人を設立する時に、決算月を決めます。自由に決められるといってもいつを決算月にすればいいのかと頭を抱える事業主もいるかもしれません。

そもそも決算月とは企業の事業年度の最終月のことで、決算期と呼ぶこともあります。
企業は、1年以内の任意の期間で区切って収支をまとめて関係者に報告する決算をおこなわなければいけません。この区切った期間が事業年度です。

法人は自由に決算月を決められる

個人事業主は決算月を12月とするルールがあり、事業年度は1月から12月です。一方で、会社の決算月は事業主が自由に決定できます
3月が決算であるとイメージしている人も多いかもしれません。しかし、3月にこだわらなくても事業者が自由に決算月を選べます。

日本企業はいつを決算月にしている?


決算月はいつでも問題ないといっても、多くは3月や9月に決算月を設定しているイメージがあります。
実際に日本企業がいつを決算月にしているのか調べました。国税庁がホームページで公表している決算月別の法人数は以下のとおりです。

国税庁のホームページで公開している決算期月別法人数を見ると、3月決算が一番多く、全体の20%程度を占めています。
3月に続いて多いのが9月、そして12月と続きます。

3月を決算月にしている会社が多い

日本では3月決算の会社が最も多く20.6%を占めています。そもそも、日本の会計年度の区切りは3月です。
国の年度が4月はじまりになったのは明治時代のことで、納税や稲作の時期に合わせたという説や徴兵制度に合わせたといった説があります。

学校や国の機関は国の年度に合わせて動きます。
国や地方公共団体を取引先にしている会社が、国の年度に決算月を合わせたほうが都合が良いことが3月決算が多い理由です。
税法に関わる法律改正も4月1日付で適用されることが多いため、会社にとって期中に処理を変える手間がかからない点もメリットといえます。

9月決算が次いで多い

3月に次いで決算が多いのは9月で、11%を占めます。
3月から4月は新入社員の入社や人事異動といったイベントが多いので、あわただしい時期を避けるために9月決算にする場合があります。
また、3月は監査法人や税理士の繁忙期のため、この時期を避けて9月にしているケースも多いです。

グローバル化によって12月決算の企業も増えている

9月決算に次いで多いのが12月で9.3%を占めています。
これは、海外企業の多くが12月決算であるため、海外に合わせて12月とする企業が増えていることが理由です。

中国では12月決算と決められている上、海外企業の多くが12月決算です。そのため、外資系企業の日本法人も同じように12月決算としています。
大企業の中にも海外進出して決算期を統一できるように12月決算を選ぶ企業が増えています。
企業が決算月を選ぶ時には、海外進出の可能性も視野に入れておかなければいけません

決算月の決め方のポイント


決算月は、期間が1年を越えなければ自由に決められます。しかし、自由に決められるとなれば、かえって迷ってしまうかもしれません。
決算月を決める時のポイントを紹介します。

繁忙期を避ける

繁忙期がはっきりしている会社では、繁忙期を避けて決算月を設定していることがあります。
法人税の申告期限は、決算期末から2カ月間です。期限までは、決算の処理業務に追われることになります。

業務の繁忙期を決算処理業務が重なれば事業に支障をきたしてしまうこともあります。
社内の業務負荷を集中させないためには、繁忙期を避けて決算月を設定する方法が有効です。

資金繰りから逆算する

決算月を決める時の方法のひとつとして、資金繰りからの逆算もあります。決算月が3月の場合、2カ月後には法人税と消費税を申告して納税します。
資金繰りが苦しい時期になると、納税や事業に影響が出てしまうかもしれません。
そのため、資金が少なくなる月の2カ月前は決算月にしないようにします。
資金が少なくなる月は、具体的には売上の入金が少ない月や仕入れ、経費の支払いがある月です。

また、従業員にボーナスを支払う月なども資金が不足することがあります。
売上や仕入れを計上した月ではなくて、実際に入出金がある月によって資金繰りが変わるので注意してください。

入札や記念日に合わせる

事業の中には、許認可や免許の更新が必要であったり、公共事業の入札があったりするケースもあります。
例えば、介護や社会福祉に関わる業種や建設業、社団法人といった業種が該当します。
官公庁とのやり取りが発生する会社の場合には、決算月を3月にしておいたほうが便利かもしれません。
なぜなら、官公庁が用意する規則や書類は3月末を基準にしていることが多く、3月決算のほうが書類作成や切り替えの手間が少なくなることが多いからです。
会社の手続きや提出書類にどのようなものがあるのかを事前に確認しておいてください。

また、思い入れがある日を決算月にする考え方もあります。
会社の創立日の月や創始者の誕生月を事業の節目となる決算月にすることも検討してください。

消費税の免税期間を最大化できるようにする

消費税の課税を減らすためには、消費税の免税期間を考慮して決算月を決めることも検討してください。
消費税が免除となるのは2事業年度なので、最初の事業年度が1カ月であった場合には1年1カ月しか免除を受けられません。
納税免除を最大化するには、開業日からできるだけ決算月を離すようにします。

ただし、これは資本金が1,000万円未満の会社の場合です。また、適格請求書発行事業者となった場合にも消費税の免税を受けることはできません。
消費税の免税を受けるためには、条件を満たさなければならないので国税庁のホームページで確認するか専門家に相談するようにしてください。

棚卸の負担が少ない時期に合わせる

決算月には、店舗や倉庫で商品在庫を数える実地棚卸もおこなわれます。
月次決算では仕入れた数から売上た数を差し引いて在庫を計算するだけでも十分ですが、期末の決算では実際に目で在庫を確認して帳簿と照らし合わせる必要があります。実地棚卸は、時間や労力がかかるため現場の負担が大きいことが難点です。

また、実地棚卸のために店舗や職場の稼働をストップするケースもあります。
そこで、在庫が少ない月や売上が少なくて作業負担が増えても対応しやすい月を決算月にしている会社も多いです。
例えば、アパレルなどでは売上のピークの直後に決算月を設定して、在庫の数を減らしているケースもあります。
小売販売やメーカーのように扱う商品が多い業種では、棚卸の負担も考慮して決算月を決めてください。

売上げの高い時期を選ぶ

決算月を決める時に基準となるのは、節税と決算書の見映えです。事業の中には、季節による売上変動が大きい業態もあります。
例えば、レジャーや観光産業では夏の売上が多くなることがあるかもしれません。そういった場合には、決算書の見栄えを考えて売上が多い9月を決算月にします。
決算書は金融機関からの融資を受ける時にも重要な要素です。
売上が多い月が期末だと決算書の改善が図りやすく、外部から評価される決算書を作るために有利に働きます。

逆に、節税を考えるのであれば売上が多い月が期初になるような決算月を設定します。
売上が多い時期の実績を年度の初めで確定できれば、その事業年度の利益予測も容易になるかもしれません。
この場合、売上げのピークを過ぎてから節税の方策を練ることが可能です。

決算月を後で変える方法は?


新しく設立した会社でなくても、後からいつでも決算月を変更することは可能です。
資金繰りや業務負担が問題になったり、節税対策が必要になったりして決算月を変更する会社は珍しくありません。
消費税の課税対象の基準となる売上が1,000万円以上になったため、事業年度を変更するケースもあります。

ここでは、決算月を変更するための手続きについて紹介します。

株主総会で定款の変更を決議する

会社の決算月は、定款に記載される内容です。決算月を変更するために、株主総会で定款の変更を決議しなければいけません。
定款の変更は特別決議となり、議決権数で過半数の株主が出席した上で、出席した株主の3分の2以上の賛同が必要です。
株主総会での決議や議事録作成は必要ですが、登記は不要です。

税務署へ届け出る

株主総会で決議を受けて、税務署に「異動事項に関する届出」をおこないます。
金融機関や行政機関に届け出る必要がある場合もあるので、添付書類など間違いなく準備してください。

決算月の変更には、節税や繁忙期のタイミング調整、資金繰りの調整など多くのメリットがあります。
しかし、通常であれば事業年度は1年を超えられないため、決算月の変更によって通常よりも短い期間で決算業務が行なわれることになります。
短期間で決算処理から申告、納税の対応も必要であり、作業を前倒しにすることで専門家に依頼するコストは作業負担が増大するかもしれません。

決算期を変更することによって、前年度の財務データの比較が困難になったり、決算書類の数字を比較しにくくなったりするデメリットもあります。
決算期を変更する場合には、どういった負担が生じるのかまで考えて慎重に判断するようにしてください。

節税効果を高めるための決算月の決め方


決算月が自由に決められるといっても、決算月をいつにするかで企業は様々な影響を受けます。
決算月が変わることによって節税できるケースもあるので、確認してください。

決算月(事業年度)の変更で役員報酬を増額させることで損金を増やせる

決算月の影響を受けるもののひとつが役員報酬です。
役員報酬を損金として経費に計上するためには、期首から3カ月以内に変更する場合を除いて毎月同額にしなければいけません。
なぜ、役員報酬の同額が定められているかというと、期中に利益が増えた時に役員報酬を増額して経費を増やして課税逃れをする行為を防ぐためです。
そのため、期中に役員報酬を増やしたくても、増やした分は損金にできません。

しかし、事業年度を変えることによってこの問題を解決できます。
事業年度を変更すれば役員報酬の変更が可能となり、期首から役員報酬を増やせるのです。
例えば以下のようなケースを考えます。3月決算の法人が10月から役員報酬を30万円から50万円とするケースです。

X1期 X2期
6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月
30万 30万 30万 30万 50万 50万 50万 50万 50万 50万 50万 50万

このケースでは決算と月は上記のような関係となります。
10月から役員報酬が20万円増額されるものの、事業年度が変わる4月までは経費計上できません。
つまり、20万円×6カ月で120万円が損金とできないことになります。

そこで事業年度を変更したのが以下のケースです。

X1期 X2期
6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月
30万 30万 30万 30万 50万 50万 50万 50万 50万 50万 50万 50万

期首から3カ月は役員報酬を増額できるため上記のようになります。事業年度を変更することによって役員報酬が増額した分も経費算入できるようになります。

消費税の免税期間を長くできる決算月の決め方

事業を始めたばかりの間は、消費税も大きな負担です。
できるだけ消費税の納税を抑えるのであれば、設立の日から最も遠い月を決算月にする方法もあります。
会社を設立してから2期間は、消費税は免税にできます。例えば、以下のように1月1日を設立日にして決算月を1月にしたケースを考えます。

X1期
1/1~1/31
X2期 X3期
免税 免税 課税

設立してからすぐに決算月を迎える場合、実際に免税となるのは2事業期間なので1年1カ月です。
次に決算月が12月であるケースを考えます。

X1期
1/1~12/31
X2期 X3期
免税 免税 課税

決算月を遠い月にすることによって、1期目の事業年度が長くなって2年間の免税が受けられるようになりました。
ただし、消費税の免税は会社の条件によって受けられるかどうかが変わってきます。
インボイス対応するのかどうか、会社の規模によっても違うので事前に条件を確認してください。

税率の変更に合わせることで低い税率の適用を狙える

事業年度を決める時には、税率変更のタイミングに合わせることも節税のテクニックです。

法人の課税は、事業年度ごとに適用されます。法人税や消費税などの納付期限は、事業年度の終了日の翌日から2カ月以内です
会計年度が3月31日までであれば、納付期限は5月31日となります。
低い税率が適用になるような場合には、事業年度を変更すると早く新税率の適用を受けられます。
決算月を考える時には、これから支払うことになる税金の変更もあらかじめチェック
してください。

まとめ・決算月は様々な条件を考慮して決めよう

決算月は自由に事業者が決められますが、どの月が最適とは断言できません。会社の規模や売上げの動向、在庫数など様々な要因で適した決算月は違います。
会社の業務に多くの影響を及ぼすため、自社がどういった状況にあって、決算月の設定によってどのような影響が起こるかまで考慮して、決算月を決めるようにしてください。


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(編集:創業手帳編集部)

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