決算書にはどのような種類がある?各書類の読み方・役割を解説

創業手帳

決算書の種類や読み方は経営に欠かせない知識


決算書は会社の経営状態や財務状況がわかる書類です。
内容や読み方などを把握していないと数字の意味が理解できず、自社が今どのような状況にあるのかを見極められません。
決算書作成は税理士などの専門家に依頼するケースが一般的ですが、記載の内容を読み取れると今後の方針立てに役立ちます。

今回は起業検討中の方や経営を始めたばかりの方へ、決算書の種類や読み方などを解説します。決算書を読み解きたい方はぜひ参考にしてください。

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決算書とは?


決算書とは、その年度における会社の経営状態や財務状況などを報告するための書類のことで、正式には「財務諸表」または「計算書類」と呼ばれます。
確定申告時に決算書の開示義務があるため、事業年度の終了後2カ月以内に年度ごとの帳簿を作成しなければなりません。
また、決算書を見ると会社の経営状態や優れている点などがわかるため、確定申告時だけでなく金融機関への融資申請の際にも使用されます。

会社によって事業年度は異なりますが、3月や12月を決算月とする場合が大半です。ただし、個人事業主は1月から12月までの1年間が会計年度となります。

決算書の主な種類


一般的に決算書と呼ばれるものは、「財務三表」の貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つです。
そのほかにも株主資本等変動計算書・個別注記表・補足説明資料の附属明細表・事業報告書もあります。続いて、それぞれの書類の役割や読み方などを解説します。

貸借対照表

バランスシート(B/S)とも呼ばれる貸借対照表は、会社において特定期間の資産・負債・純資産の状態を表す書類です。

役割

貸借対照表を見ると会社の「資産」、返済義務のある「負債」、純資産から負債を差し引いた「純資産」の情報がわかり、財政状況を読み解くことが可能です。
これにより負債・純資産の調達方法や運用方法を確認できるほか、「自己資本比率」と「流動比率」の算出も可能です。

自己資本比率とは会社の資産のうち、返済義務がないお金の割合を判断する指標のことで、流動比率とは会社が1年以内に支払える能力の判断指標をいいます。
2つを算出すると、資金繰りの見直しにも役立ちます。

読み方

貸借対照表は左側が資産、右側が負債・純資産となり、左右の金額は常に同じです。左側の資産は、会社が保有する現金や建物などの資産や種類を示します。

資産には「流動資産」と「固定資産」があり、決算から1年以内に現金化できるかどうかで区分されます。
具体的には、現金化が可能な現金・売掛金・有価証券などは流動資産、現金化ができないもしくは支払いの必要がない土地や建物などは固定資産です。

そして、右側にある負債は返済義務のある借入金や買掛金など、そして純資産は返済が必要ない資本金や利益準備金などです。
例えば、社用車のローンを組んだ場合だと車は左側の資産の部、ローン額は右側の負債となり左右の合計金額は同じになります。

損益計算書

損益計算書は、会社の特定期間における利益または損失状態を表す書類です。「Profit and Loss Statement」を省略して、P/Lとも呼ばれています。

役割

損益計算書では、費用の使用方法や売上金額、どれだけ儲かったなどが読み取れます。また、本業と本業以外のどちらで利益が出ているかの見極めも可能です。
例えば、食品販売業と不動産業を営む会社の場合、商品販売による得られたお金が本業の利益、不動産売買などによる収入が本業以外の利益となります。

また、黒字と赤字の境界線「損益分岐点」を見極める役割もあります。
損益分岐点とは、どこまで売上げを上げると赤字から黒字になるのか、またはどこまで売上げが下がったら赤字になるのかを判断する目安です。

読み方

損益計算書は、売上純利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つの利益で構成されています。
以下の5つの利益によって経営状態がわかり、業績向上へのヒントが見つかる場合もあります。

  • 売上純利益:売上げから原価を差し引いた年間の粗利益の合計
  • 営業利益:売上純利益から販管理を差し引いた利益
  • 経常利益:事業全体から得た利益
  • 税引前当期純利益:営業とは関係ない臨時的な損益も加えた利益
  • 当期純利益:事業における1年間の最終利益

売上高と利益は似ているようでまったくの別物です。売上高とは商品やサービスの提供により獲得した売上金の合計を指し、関連する費用は計算されていません。
一方で利益とは、売上高から費用を差し引いて実際に得た利益額を指すため、売上高=利益ではないと覚えておいてください。

キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書は、現金の流れを表すための書類でC/Fと記載されることもあります。損益計算書の補足書類として作成されるものです。

役割

キャッシュ・フロー計算書を見ると何に対して現金を使用し、どのような方法で現金を得たのがわかります。
もし、利益が出ているにもかかわらず、会社の資産として現金が残っていないのならお金の流れに問題があると判断できます。

キャッシュ・フロー計算書と損益計算書はどちらも利益に関する書類ですが、2つの役割は異なるものです。
損益計算書は収益と費用を示しますが、キャッシュ・フロー計算書はお金の流れや増減を表す書類のことで、どちらも大切な決算書です。

読み方

キャッシュ・フロー計算書は、営業活動・投資活動・財務活動の3つに分けて作成します。

  • 営業活動:事業活動におけるお金の流れ
  • 投資活動:投資活動(固定資産の購入など)におけるお金の流れ
  • 財務活動:資金調達と返済によるお金の流れ

営業活動の数字はキャッシュ・フロー計算書の初めに記載されるもので、プラスであればお金を生み出す力が高い、マイナスが継続すると倒産リスクが高いとわかります。
投資活動は設備や有価証券への投資額を示すため基本的にはマイナスになりますが、資産の売却時にはプラスになるものです。
また、財務活動の数字からは資金調達や返済状態の把握ができます。プラスなら借金が増えている、マイナスなら返済を行っていると読み取れます。

株主資本等変動計算書

S/Sとも呼ばれる株主資本等変動計算書とは、会社における株式資本の変動状態を表す書類で、決算書のうちのひとつです。

役割

株主資本等変動計算書は、貸借対照表や損益計算書だけではわかりにくい株式資本の流れがわかる書類です。
株式資本の変動状態を項目ごとに記載することで、どの部分がどのような理由で変動したのかが詳細に把握でき、自社の分析に活かせます。

また、過去の株主資本等変動計算書と比較しながら見ていくと企業の利益や資産調達の傾向も読み取れるので、今後の経営戦略を検討する際も役立ちます。
すべての企業で作成が義務付けられている大切なものです。

読み方

株主資本等変動計算書は主に、資本金・新株予約権・資本余剰金・利益余剰金の4つで構成されています。

  • 資本金:株主の出資金
  • 新株予約権:事前に定められた条件で株式交付を受けられる権利
  • 資本余剰金:株式からの出資金のうち、資本金として計上しなかったお金
  • 利益余剰金:これまでの利益積立額

また、株主資本等変動計算書は会社の経営状態を把握するために重要な書類で、項目ごとに当期首残高・当期変動額合計・当期末残高の3つに区分されます。

  • 当期首残高:会計年度が始まった時の残高
  • 当期変動額合計:当期における新株発行や余剰金配当、積立金など株主資本以外の変動額の合計
  • 当期末残高:当期首残高と当期変動額合計の累計

なお、当期首残高と前期の貸借対照表で計上の数値は必ず一致し、さらに貸借対照表の純資産で計上される科目や金額は当期末残高と同じになる点も確認するポイントです。

個別注記表

個別注記表は決算書だけではわかりにくい情報を一覧にした書類です。すべての企業で作成が義務付けられています。

役割

個別注記表は貸借対照表や損益計算書などの補足情報をまとめた書類で、経営状態の判断に役立ちます。
株式会社は経営と所有が分かれているため、会社は所有者の株主に対して自社の経営状態や財務状況を報告しなければなりません。

そのための書類が決算書と呼ばれる貸借対照表や損益計算書ですが、それだけでは企業方針や経営に影響をもたらす問題の有無などの見極めは困難です。
そこで、株主や関係者が融資を検討する際に個別注記表が役立ちます。

読み方

株式会社には「公開会社」と「非公開会社」の2種類があり、それぞれで個別注記表の記載内容は異なります。
公開会社とは、全部または一部の株主を譲渡制限なしに発行できる会社のことで、すべての株式に譲渡制限をかける会社を非公開会社といいます。
記載が必要な項目は全部で19個ありますが、そのうち、以下の6個はすべての企業で注記が必要です。

  • 重要な会計方針に係る事項に関する注記
  • 会計方針の変更に関する注記
  • 表示方法の変更に関する注記
  • 誤謬(ごびゅう)の訂正に関する注記
  • 収益認識に関する注記
  • その他の注記

小さな会社の中には貸借対照表と損益計算書は作成しているものの、個別注記表は作成していないところもあるかもしれません。
未作成でもペナルティはありませんが、融資申請時や許認可を受ける際にスムーズに進まないことも考えられるため、作成をおすすめします。

計算書類の附属明細書

計算書類の附属明細書とは、貸借対照表や損益計算書の内容だけでは見極められない事項を、補足的に説明する書類です。

役割

計算書類の附属明細書とは、その名のとおり計算書に関する補足説明書類のことです。
そもそも計算書類とは、貸借対照表や損益計算書などの定時株主総会で提出する決算書をいい、企業の財務状況や成績などが示されています。

計算書類の記載事項は、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表の4つです。
固定資産や有価証券などの種類や数量、変動状態などを記載することで、計算書類だけでは読み取れない内容も明確にすることが目的です。

読み方

計算書類の附属明細書にはいくつかの種類がありますが、代表例が以下の5つです。

  • 有価証券明細表:会社保有の有価証券の内訳
  • 固定資産等明細表:会社保有の有形固定資産・無形固定資産の内訳
  • 社債明細表:社債の内訳
  • 借入金等明細表:借入金の内訳
  • 引当金等明細表:引当金の内訳

社債明細表、借入金等明細表に関しては、当期中に増減がなければその旨を記載した上で省略できます。
また、引当金等明細表に関しても、貸借対照表の期首もしくは期末に残高がある時に限り作成が必要です。
当期残高・増減額・期末残額を記載しますが、増減額を相殺してゼロにはせずにそれぞれを記載する必要があります。

事業報告書

事業報告書とは、事業報告とそれに附随する明細書の総称です。会社法により、事業報告書の作成が義務付けられています。

役割

事業報告書は、計算書類だけでは明確にはわからない定性的情報を補足する役割があります。定性的情報とは、事業内容や従業員・役員に関する情報です。

また、個別注記表と同じように、公開会社か非公開会社かによって記載内容は異なります。
さらに、公開会社でなくても親会社や子会社がいるなどの支配関係があると、事業報告書への記載内容が変わる点に注意が必要です。
したがって、公開会社でも支配関係がある会社でもない場合は、記載内容を大幅に省略可能です。

読み方

事業報告書の記載事項は主に、すべての会社に共通する記載事項「会社法施行規則118条」と、個別に判断が必要な記載事項「会社法施行規則124~126条」の2つに分けられます。

親・子会社がおらず、公開会社でない中小企業の場合は会社法施行規則118条の「株式会社の状況に関する重要な事項」と「業務の適正を確保するための体制に関する決定・決議、運用状況の概要」を記載します。
ただし、業務の適正を確保するための体制が整っていない場合は、「業務の適正を確保するための体制に関する決定・決議、運用状況の概要」の省略が可能です。

また、公開会社かどうかに関係なく、社外役員がいる、会計の専門家として役員と共同して帳簿作成をする会計参与を設置している、公認会計士や監査法人の監査を受けている場合は「会社法施行規則124~126条」の記載が必要です。

決算書作成の流れ


決算書作成は大きく分けると3つのフローがあります。
残高確認や税額の計算などを事業年度開始後の翌日から2カ月以内に決算書の作成が必要のため、事前にどのような流れなのかを把握しておくとスムーズです。

1.決算残高の確定

まず、帳簿や領収書など確認して決算日における各勘定科目の残高や合計残高試算表の科目残高などを確定します。
現金や預金、売掛金、買掛金など、すべての勘定項目を一つひとつ確認していく作業です。

その後、実際の数字と一致しているかを確認します。実際の残額と帳簿残高の違いや抜けや漏れがないかをチェックして、必要に応じて修正を行います。
チェックに手間をかけないためにも、日頃から準備しておくことが大切です。

2.税金などの確認

残額が決定したら、それをもとに消費税・法人税・法人住民税・法人事業税の金額を計算します。
消費税は売上げから預かった消費税から、仕入れや経費でかかった消費税を差し引いて計算しますが、帳簿上の金額とは若干の誤差が生じます。
この誤差を修正し、最終的な金額を「未払消費税額」として記載してください。

また、法人税の関しては専門知識が必要となるため、税理士などの専門家に作成を依頼するケースが多くあります。

3.決算書作成

決算残高の決定と税金の確認が済んだら、それをもとに経理担当者が貸借対照表や損益計算書などの決算書の作成を行います。
その後、取締役会で承認、株主総会へ提出・承認という流れになり、2つの会から承認を得て初めて決算書が確定となります。

なお、ここまでの作業を事業年度開始後の翌日から2カ月以内に完了しなければなりません。
そして、その後は法人税申告書を作成して決算書と一緒に提出・納税を行います。

まとめ

決算書には様々な種類があり、それぞれで記載内容や役割などは異なります。
確定申告の際に欠かせない書類なのはもちろん、売上げや利益、お金の流れなどの経営状態を正しく把握する際にも役立ちます。
また、事業年度開始後の翌日から2カ月以内に決算書を完成させなければならない点にも注意が必要です。

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(編集:創業手帳編集部)

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