会社設立が税金対策になる?どのようなメリットが得られるのか徹底解説!

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賢く節税!小さい会社でも税金対策のメリットは大きい!


事業を個人事業で行う人もいれば、会社を設立する人もいます。事業が軌道に乗ったことで所得が増えると納める税金も増えるため、節税を考えなければいけません。
会社設立は規模に関係なく税金対策になるため、必要に応じて立ち上げを検討してください。

この記事では、会社設立による税金対策の効果や設立するタイミング、注意点について詳しく解説します。
節税や事業の成長のために会社設立を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

税金は制度を有効に使えるかどうかで支払額が変わってきます。しかし、内容が難しく何から取り組めばよいのかわからない方が多いのも現状です。

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会社設立によって恩恵を受けられる8つの税金対策


せっかく自分の事業で多く稼いでも出費のほうが多ければ、経営者の生活にまで支障が出るかもしれません。
事業の成長に合わせて税金が増えていくのであれば、会社設立を行うことで税金対策につながります。

会社設立をすると、以下8つの税金対策が可能です。

1.役員報酬による節税

役員報酬とは、取締役や監査役など会社経営の重大なポジションに就く役員が受け取る報酬です。
会社を立ち上げて代表取締役となれば、役員報酬という形で給与が支払われます。

個人事業主であれば、事業の売上げを丸ごと収入にすることが可能です。この場合、事業所得として確定申告を行い、金額に応じた所得税を支払わなければなりません。
一方、役員報酬は給与所得と扱われます。

青色申告をしている経営者であれば、事業所得では最大65万円までの特別控除で所得税を減らすことが可能です。
しかし、給与所得であれば、65万~220万円とさらに控除額が大きい給与所得控除が適用されます。
控除額を比べれば、給与所得のほうが節税においては有利です。

2.家族と所得を分散することによる節税

会社を設立すれば、配偶者や子、兄弟姉妹など家族を従業員として雇い、事業を手伝ってもらうことが可能です。
雇っている家族に給与や役員報酬を支払うことで、所得を分散できます。
所得が分散されると所得税率が下がるため、納める所得税を少なくすることが可能です。
さらに、家族一人ひとりの給与には給与所得控除が適用され、税金の負担をより抑えられます。

個人事業主も税務署に事業専従者の届出を提出していれば、家計を共にする親族を従業員として雇い、給与を出すことが可能です。
しかし、年間38万円の配偶者控除や年間38万~63万円の扶養控除が受けられなくなるといった制限があるため、自由度で考えると会社設立のほうが有利といえます。

3.欠損金の長期にわたる繰り越し控除が可能

青色申告承認申請書を税務署に届け出ている場合、欠損金を翌年に繰り越すことができます。
翌年以降に黒字が出れば繰り越した赤字と相殺できるため、結果的に黒字が出た年の法人税を減らせます。

個人事業主の場合、欠損金を繰り越せるのは最長3年までです。しかし、会社設立をしている場合は10年(2018年4月以降より)の繰り越しが認められています。
3年と10年では、繰り越しできる期間に大きな差があります。

起業して数年は安定した売上げが出せず、赤字が続いてしまうケースは珍しくありません。
比較的順調な会社でも業界や経済全体が陥った際に、大きな損失を出してしまう可能性があります。万が一赤字が長期化しても、税金は払い続けなければなりません。
そう考えると、10年にわたって欠損金の繰り越しによる節税ができる会社設立のほうが、安心して経営を続けられます。

4.退職金の支給による節税

個人事業主の場合、青色専従者も含めて退職金の支払いが認められていません。
個人事業主本人が退職金を得るためには、退職・廃業時に共済金を受け取れる小規模企業共済制度か、掛け金と運用益を老齢給付金として受け取れるiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する必要があります。

一方、会社を設立すれば、勤続年数5年以上の役員や従業員に対して退職金を出すことが可能です。退職金の支払いより会社の所得が減れば、法人税の節税になります。

また、退職金は税法上だと退職所得となり、退職所得控除が適用されます。退職金にかかる所得も控除による節税が可能です。
ただし、小規模企業共済制度とiDeCoにも税制優遇があるため、一概に会社設立が有利とはいえません。

5.消費税の納税義務が免除

課税期間と基準期間において課税売上高が1,000万円以上となると、個人事業主や法人は課税事業者として消費税を納めなければなりません。
課税期間と基準期間は個人事業主と法人で異なり、以下のようになります。

課税期間 基準期間
個人事業主 1月1日~12月31日までの1年間 前々年
法人 事業年度 前々事業年度

開業した時点では消費税の計算対象となる期間がないため、原則2年間は免除されます。この免除は、新たに会社を設立した際にも適用されます。

個人事業主と法人は別人格であるため、法人化した際の課税売上高はゼロです。
つまり、個人事業主から法人化すると2年間は原則消費税の納税義務が改めて免除されるというわけです。

納税義務の要件を満たしていなければ、3年目以降も免税事業者を継続できます。
ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合でも、特定期間で1,000万円以上の売上高を出していると2年後は課税事業者となるので注意してください。

特定期間も個人事業主と法人で異なり、法人の場合は最初の事業年度(1期目)の開始日から6カ月の間です。

6.保険活用による節税

生命保険の中には法人として加入できるものがあります。個人事業主となると保険は個人で加入することになるため、支払う保険料は経費と認められません。
また、生命保険控除を利用しても限度額は年間12万円までなので、大きな節税とはいえないでしょう。

会社を設立して法人保険に加入する場合、支払った保険料を全額、または半分を経費にすることが可能です。経費にできれば所得を減らして法人税を抑えられます。
ただし、解約返戻金がある法人保険では、解約・満期時に課税されてしまう点に注意してください。
解約返戻金や死亡保険金の受取りで法人税が増えるため、経営者の退職金や設備投資などに充てるなど、節税対策の工夫が必要です。

7.持ち家を家賃として経費に計上可能

一人社長として会社を立ち上げた場合、持ち家を役員社宅にできます。役員社宅は、会社名義で借りた住まいを役員に貸し出す制度です。
持ち家を役員社宅にして、会社が家賃を支払うことによって地代家賃で経費計上し、法人所得を減らせます。

住宅の一部を事業所として使っている場合、仕事で使う部屋の面積をもとに経費に計上する家賃を求めなければなりません。
トイレやキッチンなど共有スペースも仕事中に使用するのであれば、家賃の一部として計上可能です。

8.出張日当を経費計上可能

会社では、出張旅費を正確に経費として処理できるように、規程を設けるのが一般的です。
出張旅費規程で出張日当(出張時に発生する宿泊費・交通費などの全体的な経費)を定めておけば、全額経費として計上できます。
例えば、1日5,000円と定めていても、実際にかかった出張費が4,000円であれば、5,000円で計上可能です。
個人事業主は実費しか計上できないため、出張旅費規程を定めた会社のほうが節税効果は大きいといえます。

なお、日当の相場は1日2,000~3,000円が相場ですが、役員の場合は4,000~5,000円前後で定めているケースが多いです。
出張中の休日を挟む場合、その日の日当は支払う義務がないため、規程でしっかりルールを定めておくと安心です。

副業をしているならどのタイミングで会社設立すべき?


副業として自らビジネスを展開している人も少なくありません。事業がうまくいき始めると、独立を考える人もいるかもしれません。
副業から会社を設立する場合、タイミングに注意が必要です。ここで、副業から会社設立をするのに適したタイミングの目安をご紹介します。

税務上に有利になる時

会社を立ち上げたほうが税務上有利になると判断した時が、会社設立のベストタイミングです。
具体的に会社設立に良いとされるタイミングは、利益が500万円前後となった時だとされています。

所得が195万~329万9,000円の範囲の税率は15%です。
しかし、330万~694万9,000円で20%、さらに695万~899万9,000円で23%にまで引き上げられ、最終的には45%にまで引き上げられます。
普通法人の場合、法人の所得が800万円以下であれば法人税の税率は15%、800万円以上で23.2%となります。
同じ所得金額なら個人事業主よりも税金を安く抑えることが可能です。

このことから、利益が500万円前後になった時点で会社設立をしたほうが節税効果は大きいとされています。

勤務先の副業に関する方針が提示された時

会社設立を判断するタイミングとして、勤務先で副業に関する方針が示された時もおすすめです。その理由は、副業を解禁するかしないかは企業によって異なるためです。

勤務先が積極的に副業を受け入れる方針であれば、副業として事業を継続しても問題ありません。
しかし、禁止とした場合は就業規則違反となり、発覚すれば勤務先とトラブルに発展する恐れがあります。
隠れて副業をしていても、住民税が増えたことで給与以外の収入を得ていると会社が気付くケースもあります。
何をやっているかまでは特定されないものの、副業をやっている事実確認が行われる可能性もあるので注意が必要です。

また、会社側がなかなか副業の方針を示してくれないケースもあります。その場合、副業がうまくいっているのであれば、会社を立ち上げて独立を検討してください。

副業で納税義務が発生するようになった時

副業において、課税売上高1,000万円以上となり消費税の納税義務が生じた際も、会社設立のベストタイミングです。
先に述べたように、個人事業主から法人化すると売上げがリセットされます。
消費税の納税義務が生じた時点で会社設立を行えば、2年間の免除期間を得られます。その結果、納税までの期間を引き延ばすことが可能です。

ただし、資本金1,000万円以上で会社設立を行うと、特例によって初年度から課税事業者に該当します。会社設立時は資本金の設定に注意してください。

税金対策で会社設立する際の注意点


節税のことばかりに目を向けて会社設立を行うと、後々苦労する可能性があります。
今後の事業にも影響を及ぼす可能性があるので、税金対策で会社を設立する際の注意点も把握することが大切です。

節税効果が薄い場合もある

会社の設立前後には様々なコストが発生します。税金対策のために会社設立を行ったものの、手元にお金が残るどころか支出が増えてしまうケースは珍しくありません。
会社設立時には定款の作成や登記の手続きに経費が発生します。例えば、株式会社の設立であれば定款の作成にかかる費用は、24万2,000円(電子定款で20万2,000円)です。

また、事務所がある地域の自治体に、法人住民税を納めなければなりません。
これは黒字・赤字に関わらず、自治体ごとに定められた税金を支払う必要があります。そのため、赤字の時は負担の大きい経費の一つです。

ほかにも会社を立ち上げると厚生年金や健康保険といった社会保険に加入し、その保険料は会社が折半することになります。
社会保険料も、業績に関係なく払い続けなければならない経費です。
経営をサポートしてもらうために、企業コンサルタントや顧問税理士などの専門家との契約が必要となれば、毎月それなりに高い契約料を支払わなければなりません。

会社設立により節税できたとしても、支出が多ければ節税効果は薄まってしまいます。
設立や経営にかかるコストも考慮して、会社を立ち上げるかどうか検討することが大切です。

節税制度を活用したほうが良い場合もある

法改正により、今まで通じていた税金対策の効果が失われてしまうこともあります。
また、新たな税金対策が生まれたとしても、法改正による効果がなくなるという流れが延々と続けば、長期的かつ安定した節税効果を得られません。

そこで、国が用意する節税制度を利用し、節税の安定化を図るのもひとつの手段です。活用できる節税制度は以下のとおりです。

小規模企業共済 個人事業主や中小企業の役員が退職・廃業する際に、共済金を受け取れる制度です。毎月掛け金を払うことになりますが、全額所得から控除できます。
所得控除額は年間最大84万円となり、大きな節税効果に期待できます。
経営セーフティ共済 取引先が倒産した際、連鎖倒産や経営難になることを防ぐために貸付けが受けられる共済制度です。掛け金の最高10倍(上限8,000万円)まで、無担保かつ保証人なしで借入れできます。掛け金は、全額を損金として経費計上が可能です。
中小企業経営強化税制 国が認定した中小企業が設備投資を行う際に受けられる税制優遇制度です。設備投資の費用を初年度に全額経費に計上できる即時償却、設備取得価格の7%、または10%が法人税から控除される税額控除のどちらかを選択できます。
適用期間は2023年3月末まででしたが、2025年3月末の延長が決まっています。

まとめ

自らのビジネスで利益が増えていくのは嬉しい反面、支払う税金が増えてしまう点は悩みどころのひとつです。
利益が大きくなり、税金の負担も大きくなるのであれば、税金対策も兼ねて会社設立を検討してみてはいかがでしょうか。

ただし、税金対策ばかりに目を向けて安易に会社を立ち上げると、失敗に終わってしまう可能性があります。
節税以外の目的やビジョンを持ち、失敗を避けるためにも念入りに準備を行って会社設立を目指してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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