インボイス制度における影響について|業務委託スタッフを抱えているサロンの相談事例

創業手帳

インボイス制度の影響は様々なところにある!?実際の相談事例をもとに解説していきます


インボイス制度の開始が2023年10月と差し迫ってきています。
しかし、現実的に今後どのような影響がご自身の事業において起こるのか、まだ想像つかずに身動きが取れない人も多いのではないかと思われます。

インボイス制度については、色々な側面から影響を考える必要があります。
今回は、税理士法人ハガックスの芳賀先生による業務委託スタッフを抱えているサロンにおいての事例をもとに、どのような影響が考えられるのかをみていきたいと思います。

創業手帳では、税理士法人ハガックスの芳賀先生監修の『インボイス登録ガイド』をリリースしました。未だ多くの方が登録すべきかどうかで悩んでいるインボイスですが、制度の基本から、職種別によるケーススタディや、登録すべきかどうかの判断の参考になるフローチャートなど、多くのコンテンツをご用意!無料でご請求可能ですので、是非登録に迷われている方は、こちらも参考にしてみてください。


インボイス登録ガイド

芳賀 保則(はが・やすのり)
経営革新等支援機関 税理士法人ハガックス 代表社員
1970年生まれ、渋谷区で生まれ育つ。東京大学大学院卒業後、東京ガス勤務を経て、税理士法人ハガックス(渋谷区、税理士4名・スタッフ合計14名)の代表社員に。
中小企業大学校にて経営改善計画策定支援研修の講師及び試験評価委員を務める。主な著書は『現場で使える創業相談の手引き』。趣味はゴルフ、ジム、輪ゴムでハエを落とすこと。

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インボイス制度における影響について|業務委託スタッフを抱えているお店側


インボイス制度の施行が控え、様々な業種の方から多くのご相談をお受けしています。
今回は業務委託スタッフを抱えているサロンの相談事例をもとにインボイス制度における影響を見ていきます。

業務委託スタッフを抱えているサロンの相談事例
年収300万円×10人の業務委託スタッフがいる場合

売上 6000万円(税額600万円)
原価 3000万円(税額300万円)

このような場合、現状だと、消費税納税額は300万円となります。(600万ー300万=300万円)

しかし、インボイス制度が開始後の場合、業務委託スタッフがインボイス登録をしていない免税事業者のままだとるすると消費税納税額は以下のように、経過年数により異なってきます。

令和5年から令和8年
    600万ー300万×0.8 =360万円 
    (実質60万円増税)
令和8年から令和11年
    600万ー300万×0.5=450万円 
    (実質150万円増税)
令和11年以降
    600万ー0円=600万円 
    (実質300万円増税)

インボイス制度施行後、免税事業者等からの仕入れについては経過措置として、当面の3年間は80%、以後3年間は50%が仕入税額控除可能になっています。

しかし、経過措置があるからというものの、業務委託スタッフ(免税事業者)への支払いについてもいずれは消費税分が認められなくなるため、この増税に対しお店としてどのような対策をしていくかを検討する必要があります。

インボイス制度における影響について|業務委託スタッフ側


一方、業務委託スタッフの場合を、以下の金額でシミュレーションしていきます。

現状の確定申告(一人当たり)
売上 300万(税額30万円)
経費  30万(税額3万円)

この場合、業務委託スタッフが免税事業者のだと、消費税納税額は0円となります。
インボイス制度開始後も、インボイス登録をせず、免税事業者のままでいた場合は消費税納税額は0円のままです。

もし、インボイス登録をする場合は、原則課税か簡易課税かを選び、その上で、当初3年間は緩和措置の特例(2割特例)があるため消費税納税額は以下のようになります。

令和5年から令和8年
    原則課税の場合 30万ー3万=27万円
    簡易課税の場合 30万ーみなし仕入50%=15万円
    特例(2割特例) 30万☓0.2=6万円(売上税額の2割を納税)

 

この場合、納税額が少なくてすむ特例を選択するため、消費税納税額は6万円となります。

令和8年以後は、特例がなくなるため、簡易課税を選択することで15万円の消費税納税額に抑えることができます。

今後の対応について

上記の例を見ていくと、お店側としてはインボイス登録をしていない業務委託スタッフを抱えることで後々消費税の仕入税控除ができなくなるため、スタッフにインボイス登録を求めていくことや実質増税分の売上税額の2%(一人6万円)分の歩合の引き下げをしていくなどの対策が必要となります。

しかし、人手不足の昨今、スタッフ側に転嫁すると離職につながる可能性もあるため、さらなる経営努力、料金価格改定などで対応せざるを得ない状況になるかと思われます。

なお令和11年以降は、業務委託スタッフがインボイス登録し簡易課税を選択することが、全体として有利だといえます。

その時には、スタッフにインボイス登録を促していくほうがいいと考えています。

いずれにせよお店側は、この増税にどう対処していくか、早めの準備が必要でしょう。

※ここではインボイス制度について簡潔に説明するため、「業務委託スタッフ」としていますが、責任や指示監督の状況、支給材など総合的に判断し、実態として雇用関係であり給与(課税仕入にならない)とすべきという論点もあります。今一度、ビジネスそのものから考えるいい機会ではないでしょうか。

創業手帳では、税理士監修の『インボイス登録ガイド』をリリースしました。未だ多くの方が登録すべきかどうかで悩んでいるインボイスですが、制度の基本から、職種別によるケーススタディや、登録すべきかどうかの判断の参考になるフローチャートなど、多くのコンテンツをご用意!無料でご請求可能ですので、是非登録に迷われている方は、こちらも参考にしてみてください。


インボイス登録ガイド

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(執筆協力: 税理士法人ハガックス 代表社員 芳賀保則
(編集: 創業手帳編集部)

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