1,700店舗を手がけた開業のプロに聞く、繁盛店と潰れる店舗の差とは
失敗する店舗の共通点を学んで、飲食経営に活かそう
(2016/10/28更新)
飲食店の経営を志す人は、立地、客層、メニュー、資金繰り…多くの悩みを抱えていることと思います。数多くの飲食店が立ち並ぶ中、経営を成功させるためにはどうすれば良いのでしょうか。
今回は、1,700店舗をプロデュースした実績のある三浦正臣さんに、繁盛する立地の選び方や、飲食店を成功させるポイントについて教えて頂きました。
2002年、店舗流通ネット株式会社に入社し、2年後に取締役営業本部長に就任。上場期の同社を牽引。居抜き物件を活用して多くの飲食店をプロデュースし、さまざまな専門業態の店舗を集めた「横丁」と題したビジネスモデルがオープンで注目を集める。2012年にストアクリエイティブ株式会社を設立、海外展開を開始。2015年に店舗ナンバーワン株式会社を設立。これまでに手がけた店舗の数は、1,700にのぼる。
潰れる飲食店に共通するたった1つの理由
三浦:ずっと飲食店の開業コンサルティングをやっています。居抜き店舗(中古店舗)を活用したリノベーションスタイルの開業を中心に、これまで1,700店舗を手掛けました。最近は、個性のある専門業態が集まる「横丁スタイル」の店舗をプロデュースしています。
三浦:ちょうど事業を始めた14年前は、駅前にフランチャイズの居酒屋が一気に出店した頃でした。「ここは良いな、美味しいな」というお店はみんな立地が悪かったんです。そういった店舗の店長たちに「なぜここで事業をやっているのか」と聞くと、全員が「良い場所に行きたいけど、保証金が高くて無理」と口をそろえて答えていました。
そこで、渋谷の居酒屋ビルの真ん中に腕のある人がお店を開いたら、大手に勝てるんじゃないかと思ったんです。その時から、潰れかけの店舗を中古店舗にして、新しく店を出したい人に紹介するという事業を続けています。
三浦:潰れる理由を散々聞いてきましたが、ダントツ一番は出店にお金をかけすぎたこと。
フランチャイズに加盟しているから売上も良いし、立地も良いから集客も問題ないのに、開店の際に8,000万円とかかかっているんです。とてもじゃないけれど回収できず、売上が良くても儲からない状況が続いて潰れていくお店が多かったです。
売上を倍増させるためには◯◯を増やすこと
三浦:志のある方は、みなさん店舗数を広げたがる方が多いですね。焼肉屋さんなら「牛角みたいになりたい」、居酒屋さんなら「いつかは和民のように」という感じです。私も似た考えで、店舗数を広げないかぎり、売上も利益も絶対に伸びないと言い続けています。
三浦:やっぱり、1つの店舗がどんなに頑張っても、半年後に売上と利益が2倍になるかと言ったら、絶対そんなことはありません。席数の問題もありますし、物理的に無理なんです。1つの会社として考えるのであれば、売上を2倍にするには、絶対に店舗数を2倍にするしか方法が無いんです。
潰れない事業計画の方程式
三浦:どんなに料理がおいしくても、数字で計画が立てられない人は絶対にダメです。「これだけの売上を上げるには、いったい一日何人入れれば良いのか」というところまで計算できていない人が多すぎるんです。席数や時間を考えて、お客さんをどのくらい入れればどのくらい稼げるかという基本的なことを理解していない人すらいます。
三浦:結構多いのが、人件費オーバー。大して売上もないのに人を入れすぎたり。そういう店舗は、結局潰れてしまっていますね。
三浦:月々の固定費である家賃と返済に当たる部分が、売上予測の23%に収まるかどうかですね。77%残っていれば、FL(F=Food(食材原価)、L=Labor(人件費))で60%使っても、広告を使っても、利益は少しずつ出てきます。以前は「家賃を売上予測の10%で」とか言われましたが、都内は家賃も高いし、現実的には無理。人件費や原材料費は変動するので、予測は難しいです。でも、経験上、固定費を合わせて23%に収まっていれば何とかなっているかな。
コンセプトと立地のマッチングが最優先
三浦:私自身は成功する秘訣よりも、失敗する理由のほうがよく分かっているんです。飲食業をやったことない人は、「あのお店は、美味しくないから潰れたんだよ」と言うんですが、これは全くの間違いで。この5年位で飲食のレベルはかなり上がっていますから、コンビニの弁当でも、レストランでも、居酒屋でも、美味しくないところなんてありません。
三浦:先ほどの数値理論もありますが、何より業態と立地のマッチングができていないからという理由が一番潰れる理由だと思います。「確かに美味しいけど、ここじゃないよね」ということです。若者に大人気のハンバーグ店が渋谷にあったとして、多分それを新橋に持っていっても失敗しますよね。大袈裟に言うと、めちゃくちゃ美味しい海鮮居酒屋を雪山でやってもダメ、ということです。
三浦:そうですね、場所から入る人は多いです。コンサルティングや不動産屋さんも「どこでやりたいんですか」と立地から考えている。でも、私のアプローチは違います。まず聞くのはコンセプト。そして、考えているメニューや客単価も聞きます。そこから、そのコンセプトにマッチする場所を選んでいます。第一に、コンセプトから立地を選ばないと、失敗すると思うからです。その次に、お金の話が始まるんです。とは言え、お金をかければうまくいくというわけではなく、立地と業態のマッチングができていなかったら、お金はいくらかけてもムダですね。
“専門店”で勝機をつかめ
三浦:多くの店舗を立ち上げてきて、確実に言えることがあります。今、特に都内で開店するのであれば、絶対に専門店であること。理由は、スマホと飲食に着目したメディアの普及です。
昔は、駅前に大手飲食店が軒を連ねて「とりあえず入ってみよう」「メニュー見て考えよう」という形でした。しかし、今はテレビやスマホの効果もあって、「あれを食べにいこう」というメニュー先行の飲食店選びになっているんです。スマホで手軽に情報を調べられるので、アレを食べるためにあの店に行こうという流れが生まれています。だから、「何でも並んでいます」という居酒屋では集客が弱くなります。
三浦:先程も言いましたが、今は「美味しい」のはあたりまえ。それ以上に、どんな付加価値をつけられるかだと思います。面白さとか、楽しさとか、居心地の良さとか、物珍しさとか、“あの人を連れていきたい”とか…。そういう「行ってみたい」という気持ちを刺激する仕掛けが大切ですね。あとは、見た目を良くすること。美味しい以上に、写真を撮りたくなっちゃうようなものを作ると、料理写真がSNSに掲載されて、それを見た人がまた来店してくれます。
三浦:今は、専門店の時代です。いろいろなものを提供する必要はないんです。飲食店は、お腹を満たすための場所というだけではなくて、誰かが誰かを連れて行くところですから、誰かを誘いたくなる店作りが重要だと思います。そういうお店にならないと、勝ち目はないと思います。
三浦:「あそこのこれが美味しい」という言葉を、最近よく耳にするようになってきました。「あの店に行こう」じゃなくて、「あの店のあれを食べに行こう」という専門性。それをいかに高めるか、考えてみてください。
(取材協力:店舗ナンバーワン株式会社/三浦 正臣)
(編集:創業手帳編集部)