Retty 武田 和也|スマホ時代の実名型グルメサービス「Retty」でコロナ禍で課題を抱える飲食店を救いたい

飲食開業手帳

実名型という特徴から「批判」よりも「おすすめ」のクチコミが集まるRettyの差別化ポイントとは?

「食べログ」や「ぐるなび」など強豪ひしめくグルメサービスの領域に、スマホ時代の新しいグルメサイトとして2010年にリリースされたのが、実名型グルメサービスの「Retty」です。

実名制という特徴から、「批判」よりも「おすすめ」というポジティブなの口コミが集まる文化を作ったのがRettyの武田さんです。

Retty創業までの経緯や、他のグルメサービスとの差別化ポイントについて、創業手帳の大久保が聞きました。

武田 和也(たけだ かずや)
Retty株式会社 代表取締役
愛媛県出身。青山学院大学理工学部卒。ネットエイジ(現ユナイテッド)に入社。起業準備のため同社を退社し単身サンフランシスコへ移住し、事業構想を練る日々を送る。 SNSによる情報革命を確信し、Rettyの構想を練り上げる。2011年、元同僚の長束と共にRettyを創業。代表取締役を務める。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

ネットエイジを経て「Retty」を創業

大久保:起業までの経緯を教えてください。

武田:私は学生の頃から起業しようと決めていて、そのためにまずはインターンシップ先の人材会社でECサイトの立ち上げにチャレンジしました。

ECサイトの運営に興味を持ったのは、商品の仕入れ、選定、売る方法やお金を回収する流れなど商売のサイクルが全て入っていて、起業のステップとして大事なことを学べると思ったからです。実際にやってみて、ECサイト運営で商売の面白さを感じました。

ECサイトの運営はとても楽しかったので、大学を卒業してからもインターン先の企業でずっと携わっていましたが、人材会社のビジネスがうまくいかなくなり、ECサイトもやめる事になりました。

その後すぐに起業することも考えましたが、企業勤めを一度経験しようと思い、2007年に「ネットエイジ」に入社し、モバイル広告の仕事を3年くらいやりました。そして起業のために退社しました。

大久保:ネットエイジを退職後すぐにRettyを起業したのですか?

武田:ネットエイジを辞めた後、起業の領域選定のために、1年間アメリカに行き、どんな事業をやるかについての市場調査を行いました。

起業の準備に時間をかけたのは、ソフトバンクグループの孫正義さんが何かの記事でお話しされていた「どの山を登るかで人生の大半が決まる」という言葉がきっかけです。

領域を決めたら成長させるために努力をしますが、どの領域にするのかを決めることが成長への努力と同じくらいの価値があるという意味だと思っています。

自分で自信を持って領域を決めるために1年くらい海外に行き、帰国してから、共同創業者と共に「Retty」を起業しました。

サンフランシスコで目の当たりにした「スマホ時代」の訪れ

大久保:なぜRettyの事業領域を選びましたか?

武田:サンフランシスコに行ったのは2010年頃で、当時はスマホが普及する前段階でした。

日本ではSNSといえば「mixiか?Facebookか?」という論争が始まる少し前くらいだったんですが、サンフランシスコではすでにFacebookがかなり浸透していて、時代が進化するんだなと実感しました。

サンフランシスコに行く前から、既存の様々な領域がスマホやSNSで大きく変化するのではないか、と考えていて、それをサンフランシスコで確信したんです。

なので、いくら競合がひしめくような環境でも関係ないと思い、どんな領域でやってもうまくいくのではないかと妄想を膨らませた2010年でした。

大久保:そこでグルメサイトの領域に的を絞ったんですか?

武田:はい。サンフランシスコにいたからこそ、日本の食の素晴らしさを感じる機会が多くありました。美味しいお店は世の中の人にとって役立つものだと感じたんです。

以前ECサイトを運営していた時に扱っていたのはサプリメントや化粧品だったのですが、私自身はサプリメントを飲まないんです。一方で「食」は私ももちろん毎日触れることですから、非常に身近で、喜びを知っています。

起業する時は、自分が自信をもって「これは人の役に立っている」と思えることでやりたいと思うようになりました。だから「食」の領域を選んだんです。

さらに言うと、スマホの普及によって情報発信者が爆発的に増えると確信していたので、実名&口コミの可能性を感じたというのもあります。Rettyでは口コミを発信してくださる方の存在が重要なんですが、既存のグルメサイトはPCで口コミを投稿する仕様で文字数に指定もあったので、スマホで簡単に口コミが投稿できるようになった方が良いと考えました。

実名型の新しいグルメサービス「Retty」の差別化ポイント

大久保:Rettyと他のメディアはどんなところが違うんですか?

武田:まず前提として、人の好みやシーンによって「いいお店」は変わります。なので、Rettyはその人のその時のベストなお店を見つけられるサービスにしていっています。

Facebookなどの実名型SNSがより世の中に普及したことで、「誰が」発信しているのかが重要になっていく時代になりました。

Rettyは実名型という特徴から、「誰が」発信しているのかが明確です。そのため、情報の信頼性があり、食の好みが近い人の口コミを見たり、この人がおすすめするお店なら行ってみたいという気持ちになったりと、お店を「人から探す」体験ができるサービスになっています。

また、Rettyはお店の批評ではなく、自分のおすすめを投稿する場所です。

ユーザーさんがポジティブな情報を発信して、それを見た人がお店に行って、またポジティブな情報が発信されるという、プラスの情報の循環を作れています。

大久保:食べログは「お店探しを失敗しない」という、マイナスにならないお店探しを提案していますが、Rettyはマイナスじゃない、その先を目指しているのかなと感じています。

武田:もちろん、お店選びを失敗しないことも大きな価値だと思います。一方、Rettyは”新たな「食体験」を創り上げ、人生をもっとHappyに。”をビジョンとしているので、どちらかというとプラスの体験をしてもらうことを目的にしています。

大久保:日本の食文化は低価格でも味がよく、レベルが高いお店が多いですよね。

武田:私は東京が世界で圧倒的にNo1だと思っています。ミシュランの星つきレストランの数も三つ星レストランの数も、日本は世界で1番多いです。さらに、東京は世界で1番レストランの数が多い都市なんです。

東京の食文化は成熟期を越えて、多様期になっているのかなと思います。

コロナが与えた飲食店への影響

大久保:コロナで受けた影響と変化があれば教えてください。

武田:コロナの影響は飲食店にとって、ものすごく大きかったです。それはRettyにも影響しました。

影響が短期であればなんとかなったかもしれないですが、もう3年近く続いているので、飲食店は本当に苦しいと思います。

影響はずるずると長引いていますが、確実に人の行動抑制の度合いは少なくなっていると思うので、徐々にコロナ明けも見えてきたのではないでしょうか。

コロナ期間で変わったことは、飲食店のデジタル化、ネットで集客をすることに興味がなかったお店も向き合うようになったということです。コロナで飲食業界もデジタル技術を使った変化が進んだと思います。

大久保:飲食店はコロナで大変なイメージもありますが、それでも予約が取れないお店があったり、生き残るお店はどんなお店なんですか?

武田:本当にコロナで1番大変な時期でも、お客さんがしっかりついているような人気店への影響は比較的少なかったように思います。

創業初期に訪れた苦難を何度も乗り越えて今のRettyがある

大久保:起業してからこれまでに苦労したことはありますか?

武田:実は創業した時からピンチだったんです。

1番初めの仕事は、共同創業者の長束と本屋に行き、プログラミングの本を買うことから始まりました。

今だったらエンジニアのチームを組んでからサイト構築を始めますが、当時は知り合いもいなかったので、自分たちで本を読みながらサービスを0から作ったんです。

できるかどうかも分からないという危険な始まりでしたね。

読者の方にこんなことをする方はいないと思いますが、「こんな感じでも起業は大丈夫ですよ」と伝えたいです。

その後、開発スピードを上げるためにいろんな勉強会に行って、先生になりそうな人に来てもらい、データベースの設計方法から教わりました。

そしてもっとスピードアップするために、今度は経験者を雇い、結果的に作り始めて半年くらいでリリースできました。

大久保:経営の危機はありましたか?

武田まだ社員がデザイナーとエンジニアの5人だった時は、1人でも辞めると会社が回らなくなるんです。そういう危機が何度かあり本当に大変でした。

仲間を見つけるためになりふり構わずTwitterでDMを送ったり、なんでもしました。2011年の当時はまだ誰もそんなことやっていませんでしたね。

会社が止まらないように必死でやっていたら、なんとか乗り越えていました。

経営者は何度も危機にぶつかるので、良くも悪くも感覚が麻痺していきます。もちろん初めは落ち込むんですが、だんだんまたこのパターンが来たかと慣れていくしかなかったですね。あとは、それを忘れるくらい必死に動き続けるくらいしか対処法はなかったです。

大久保:経理面で苦労したことはありますか?

武田:起業当初は、最初に準備した資金がなくなったら会社が潰れると分かっていたんですが、日銭を稼ぐ事業はやらずに、サービスづくりに集中することを決めたのは大きかったと思います。

半年でサービスをリリースした頃には資金はほとんどなくなっていましたが、その時にきちんと投資家から2000万円くらい調達できました。なんとか会社が継続するための動きをリリースに合わせてできたと思います。

共感したメンバーに支えられてできたRettyの文化

大久保:グルメメディアはすでに競合がいて、真新しいアイディアではなかったと思いますが、投資家をどう説得したんですか?

武田スマホやSNSによってネットが大きく変わる周期に来ている、と思っている人が多かったので、Rettyに投資することに抵抗を持つ投資家はいなかったです。

一方で、エンジニアやプロダクトマネージャーなどの一緒に働く仲間探しでは、グルメメディアに対して今さらだと思う人もいたので、説得するのが大変でした。

大久保:一緒に働く社員に自分たちの目指す方向や目的をどのように伝えましたか?

武田:口頭でのプレゼンも大事ですが、よくやっていたのは当時まだボロボロのRettyのオフィスに一度来てもらうこと。そうすると、直に私たちの本気度や熱量が伝わっていくようでした。

3〜4人に1人くらいの割合で、私たちの思いが伝わり自分も関わりたい思ってくれて、1人ずつ着実に仲間が増えていきました。

大久保:創業初期の人材選びの基準はなんでしたか?

武田:我々が選んだのではなく、僕らが未来を信じていたので、そこに共感してくれる人が自然と残っていったんだと思います。一方で、共感できなかったり、自分には合わないということで離脱して行った人ももちろんいました。

当時は給料もよくないですし、本当にRettyのことを考えてくれる人でないと頑張れなかったのは当然だと思います。結果的に良い人にたくさん残ってもらってありがたかったです。

今後は飲食店向けの機能を拡充して集客効果を向上させる

大久保:Rettyはユーザーも多く、有料のお店会員が1万店近くあるので違うビジネスもできそうですが、これから先に考えていることはありますか?

武田:そもそも外食、食の領域は市場が大きいので、Rettyの1万店弱の有料お店会員も多いとは感じていません。まずは有料加盟店舗数を3万、5万と増やすことが1番の優先順位です。

そして加盟店を増やしながら、飲食店のデジタル化支援のプロダクトを少しずつ提供していきます。飲食店側の固定費が重いので、集客で入り口を広げて、もっと売上を上げるチャンスや業務を効率よくする支援をしていきたいと思っています。

大久保:Rettyの加盟店にはどんなメリットがありますか?

武田:無料プランではRetty上にメニューや写真を載せたり、自分のお店の情報を店舗側からも上げたりすることができ、集客効果を得られると思います。

有料プランはより効果的な集客のために、比較的安い固定費でRettyの広告の枠に優先的に露出されたり、ネット予約の機能が追加されたり、1度来店してくれたお客様に今後も来てもらうためにコミュニケーションを取れるような受け皿を用意しています。

これからも飲食店向けの機能を拡充していきたいと思っています。

飲食ビジネスは固定費や初期投資にお金がかかるので、オープンしたばかりで集客に悩んでいる飲食店にぜひ利用していただきたいです。

起業前にじっくり時間をかけて事業領域を選ぶべき

大久保:起業してから今までを振り返って、何かやっておいた方が良かったことはありますか?

武田:仲間探しの点で、スキルよりもRettyのカルチャーに合う人が自然と集まってきたのは一体感が生まれて良かったんですが、特定の領域に専門性のある人にも早い段階から参加してもらった方が、組織や事業の拡大がよりスムーズにできたかなと思います。

カルチャーは大事なので、そこはブレないように保ちつつ、2〜3年後を想定して、経験値やスキルをもった人を仲間に入れるという動きをするのがオススメです。

大久保:これから事業を選ぶ方に何かアドバイスがあれば教えてください。

武田:私はアメリカに行き、本当に良かったと思っています。アメリカでいろんな気づきがありました。

国内しか見ていないとものごとを国内の感覚でしか考えられなくなるところ、日本と海外の環境の違いから、広い視野で比較できるようになり、日本の未来を想像したり多くの視点を持つきっかけになったことは大きかったと思います。

すぐにでも動き出したくなるかもしれませんが、起業してからの人生が数10年続くとして、最初の1年を残りの期間をレバレッジさせるための準備期間と捉えれば、実はコスパがいいと思うんです。

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(取材協力: Retty株式会社 代表取締役 武田 和也
(編集: 創業手帳編集部)

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