コロナ禍で業績UPした企業とは?主な業種や好調の理由、業績を伸ばした工夫を解説

創業手帳

コロナ禍で業績UPした企業にはどのような秘密がある?思わぬところにある需要にスポットを当てます。


新型コロナウイルスが蔓延する中、人々の生活は大きな打撃を受け、生活様式の変更を余儀なくされています。
混乱の中にあり、需要の変化で業績を伸ばせない企業も多数存在していますが、コロナ禍の状況を逆手に取り、業績をUPさせている業種もあります。

今回は、実際にコロナ禍に業績を伸ばしている業種がどのようなものかを解説します。

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この記事の目次

コロナ禍で業績UPしている主な業種


では、コロナ禍でも業績がUPしている業種とはどのようなものでしょうか。

衛生用品製造

日々の生活において、感染予防のためにマスクをつけることが日常的になりました。そのため、マスクの売上げは大幅に伸びを見せています。

さらに、手指の消毒やこまめな手洗いも推奨されていることから、消毒用アルコールやハンドソープなどの衛生用品も需要も高まり、購入する人も多くなりました。
そのため、衛生用品製造業は結果的に業績を伸ばしている業種の最たるものです。

家電品製造

外出を控える機会が多くなった中、食料品を備蓄する冷蔵庫や、家にいる時間に使用するエアコンなどの白物家電の需要が伸びています。

また、在宅時間が増えたためテレビやDVD、音楽を鑑賞する機会も増えていることから、黒物家電の販売も増加していると考えられます。

通信・IT業

コロナ禍で大きく変わった事象のひとつが、働き方です。リモートワーク・テレワークを行う企業が大幅に増加し、国でもリモートワークを推奨する動きが活発です。
家で働く人が増えたことにより、自宅の通信環境を整えるためPCはもちろん、各種周辺機器や通信サービスを扱う業種は好調な業績を見せています。

ゲーム開発・販売業

巣ごもり需要の中で、家での時間を楽しむためにゲームで遊ぶ人も増えてきました。そこで、ゲーム機器本体やソフトへの需要が伸びています。

さらに、コロナ禍で新型ゲーム機をリリースすれば売切続出となり、ゲーム開発や販売に携わる業種には追い風が吹いています。

物流業

外へ買い物に出かけられない状況にあり、ネット通販を利用する率も高いです。
そこで、通販事業者(EC事業者)および商品を運ぶ物流業も、需要を伸ばしている状況です。
大手通販事業者では、ネット通販の利用増加に伴い、新たな物流ルートを開拓する動きもあり、物流業は好調の一途をたどっています。

コロナ禍における業績の上方修正を行った業種


ここからは、コロナ禍にありながら業績の上方修正を行った業種を、データから見ていきましょう。

業績UP企業とDOWN企業の二極化

2020年度決算のデータでは、外出自粛の動きが始まると同時に、業績をUPしている企業とDOWNする企業が大きく分かれ、二極化した結果が出ています。

上場企業のうち、決算で利益を上昇させた企業と、下降および赤字を出した企業はほぼ半数ずつとのデータもありました。
利益上昇企業と下降企業の業績グラフを見ると、外出自粛を起点としてちょうどK字型のように示されます。

コロナ禍ならではの業種が上昇傾向にある

上場企業の中で、実際に決算時に上方修正を行った企業は、全上場企業のおよそ14%とのデータが出ました。

そして、約14%を占める業種は、前述した「コロナ禍で業績UPした業種」とほぼ合致します。
コロナ禍で業績を伸ばした企業は、2020年の決算時点で次年度も業績の上昇を見込んでいるということです。

伸び率が大きかったのは総合小売企業

業績の上方修正を行った企業の中で、特に伸び率が大きかったのは、数多くの品物を幅広く扱う総合小売企業です。
上方修正の金額を見ると、最高5,000億円といわれており、今後の見通しも明るいものとわかります。

上方修正に至った理由は総合小売店ならでは

上記の総合小売企業では、巣ごもり需要において下記のような需要が高まった結果、業績を伸ばしていると考えられます。

・食料品などの生活用品の販売
外出の機会が減り、食料品や衣類・日用品などの生活用品を買い溜める消費者が増加しました。

上記のような商品は、総合小売店1カ所でおおよそ買い求められるため、その店舗の売上げが全体的に上昇すると考えられます。

・マスクなどの売上げ増加
前述したように、マスクの需要はもちろん消毒用アルコールやハンドソープなどの衛生用品は、今やなくてはならないものです。

衛生用品に関しても、総合小売店で購入できるため、業績UPに拍車をかけています。

製造業全体の伸びもよい

業種全体を見ると、製造業全般の伸び率が好調です。業績の上方修正を行った企業のうち、製造業は実に4割近くを占めています。
製造業の業績の伸びは、コロナ禍における各商品の需要とほぼ同じです。
巣ごもり需要で、消費者が家庭内で消費・使用する商品を製造する業種へは、多くの供給を求められるためです。

主に好調である業態とは

上記を踏まえると、以下のような業態の製造業が特に業績を伸ばしていることがわかります。

・食品製造
在宅時間が多くなることで、消費する食品も多く買い溜める必要があります。そのため、食品製造業の業績は軒並み好調です。

・衛生用品製造
こちらも前述のとおりで、各衛生用品の売上げが伸びている状況には、衛生用品の製造を行う企業が多くの供給を行っている背景があります。

・家電品製造
白物家電・黒物家電に限らず、家電品全般は、家庭内で過ごす時間を快適にします。そのため、家電品を提供する製造業も業績を伸ばす結果を見せています。

テレワーク普及による通信業界にも注目

働き方の変化で、テレワークが普及したことにより、通信業界にも追い風が吹きました。
大手通信業者では、携帯電話はもちろんのこと、通信インフラに関するサービスの提供も順調で、決算時には大幅な業績の上方修正を行っています。

インターネット関連企業は好調

インターネットやクラウドサービスなどを提供する企業では、大手に限らず新たに事業を起ち上げたベンチャー企業も大幅に業績を伸ばしました。
特に、業績好調による株価の上昇が顕著で、上場しているベンチャー企業の中で、2020年に株価を大幅に上げた企業では、前年の数倍もの伸び率を見せているところもあります。

さらに、リモートワークのみならず、会社における業務全般にもITを導入し効率化する(デジタルトランスフォーメーション)動きもよく見られるようになりました。
業務形態の変革は、今後も普及していく見込みが強いため、インターネット関連企業はさらに業績を伸ばすと考えられています。

2020年時点で前年より業績好調な企業


前項で紹介した業種のほか、2020年時点において前年より業績をUPさせている企業も存在します。以下では、その主な事例を紹介します。

ルームウェアの需要が高まった

自宅にいる時間が多くなったことで、ルームウェアを買いそろえる人が多くなりました。
その結果、ルームウェアを取扱うアパレル企業が業績を上げています。
さらに、特に夏場において、自宅で快適に過ごすための素材を開発しているアパレル企業は、より好調な動きを見せています。

人気アニメとのコラボでコロナ禍の暗い雰囲気を変えた

業種の性質上、コロナ禍にあっては営業の制限をかけられている飲食業界ですが、ある企業では大人気アニメとのコラボレーションで沈みがちな業界の空気を吹き飛ばしました。
グッズ展開のみならず、メニューにもアニメの世界観やキャラクターをイメージしたものを打ち出し、アニメファンを多数呼び込むことに成功しています。

巣ごもり需要で家族で遊べる玩具

巣ごもり需要の影響で、売上げを伸ばしている業種が玩具製造・販売業です。特に、ブロックなどのように子供と大人が一緒に楽しめるものが人気を博しています。

さらに、販売ルートとしてECサイトを展開したことのほか、SNSを利用してブロックの活用方法を紹介し、アクセスを伸ばす工夫もなされています。

家で遊べるゲームが大ヒット

自宅にいることが多くなり、自宅時間を楽しむためにゲームへの需要が高まっています。その中で、大手ゲーム会社がリリースしたソフトが大ヒットしました。
特に、ゲームの内容はゴールを目指したり勝敗を決めたりするものではなく、スローライフを楽しむコンセプトでした。
自宅でゆったり楽しめることも人気の要因のひとつと言えそうです。

コロナ禍で業績DOWNの業種でも生き残れる方法とは


コロナ禍の煽りを受けて需要が落ち込みがちな業種でも、工夫次第で業績DOWNから回復し、持ち直せる可能性があります。

業績DOWNしている主な業種

旅行業

県外や海外への移動が制限されている中、旅行業全般については業績が落ち込んでおり、特に遠方への移動に利用する航空業は、軒並み厳しい状況です。
大手航空会社でも、国内線の旅客数は通常の3割程度とされており、今後回復の見通しは立っていないのが現状です。

また、鉄道業でも同様で、特に中長距離の利用状況は通常の4割弱というデータが出ています。

飲食業

人が集まり客同士が会話をしながら食事をすることは、密になる好ましくない状態と認識され、コロナ禍では営業を制限されている状態です。
営業時間の短縮のほかに、酒類の提供も思うようにできないことから、夜に営業する飲食店は大きな打撃を受けています。

加えて、商業施設内のフードコートやレストランも、施設自体の休業により売上げを伸ばせない事態に追い込まれました。

旅行業が生き残るためのポイント2つ

1.ホテル内で楽しめる工夫をする

あるホテルグループでは、県内もしくは近隣のゲストに的を絞り、その土地の名産品でもてなす施策を立てました。
また、別のホテルグループの施策では、宿泊料の大幅な割引に加えて、施設内のルームサービスやフィットネス施設の利用を促進させ、ホテル内で過ごす時間を充実させています。

いずれも、宿泊客が外出せずにホテルの中で特別な時間を過ごし、楽しんでもらおうというサービスです。

2.タブレットの活用でスタッフとの接触を減らす

客室の中で、タブレットを設置してすべての操作を行えるようにすれば、人がよく触れる照明のスイッチやリモコンに触れずに済み、非接触の環境が成立します。
また、レストランや浴場の混雑状況についても、スタッフに確認することなくタブレットで確認できるシステムを導入しているホテルもあります。

スタッフとの非接触はもちろん、各設備を利用する際に混雑を避けて出向くことも可能となり、感染リスクを抑えることが可能です。

飲食業が生き残るためのポイント2つ

1.テイクアウト・宅配・キッチンカーの利用

店舗での食事やドリンクの提供が難しくなった飲食業では、テイクアウトや宅配、キッチンカーを有効利用する動きが進んでいます。
上記の施策では、店舗内の密な状態を避けられるほか、自宅や外出先でできたての料理を提供できるのがメリットです。

さらに、店舗で得られない売上げの補填や、普段店舗に訪れない客層の獲得にも一役買います。

2.SNSやホームページでのアピール

飲食店でも、ランチ営業など昼間の営業で新たなサービスを提供している場合、SNSやホームページでサービスのアピールをすることで、集客増加のきっかけにできます。

自宅で過ごす時間が長くなった消費者は特に、SNSに触れる機会も多くなりました。
そこを狙い、戦略的にアピールを行うと消費者の興味を引くことも可能です。

コストカットも大きなポイント

業績が落ち込む中で、少しでも収益を上げるポイントとして、できるだけコストカットの施策を立てることも考えるのがおすすめです。
飲食業においては、主に以下のような点からコストカットを行いましょう。

・仕入れる食材を最小限にする
営業時間の短縮を余儀なくされる中で、食材の余分な仕入れを防ぐことは大切です。

短縮された営業時間の中で消費しきることができる分だけを発注し、ロスを減らすことは第一に考慮すべき点です。

・人件費を削減する
飲食店においては、繁忙期や時間帯によって最低限の人員を確保するため、改めて必要な人員を洗い直したほうが良いかもしれません。
シフトによってうまく人員を回し、1人あたりの人件費をできるだけ減らす工夫を行うことも大切です。

コロナ禍でも業績UPを狙った工夫


コロナ禍であえぐ業種が多い中、その状況を逆手に取って新たな商品やサービスを開発し、業績を伸ばしている例があります。

施設を取得しプレミア感のあるイベントを開催

あるウエディング関連企業では、昔ながらの旅館を買取り、この施設を有効活用するサービスを始めました。

具体的には、小規模な施設を利用して、結婚式および宿泊、温泉利用などを新郎新婦や家族のみの完全貸切りとし、アットホームな特別感を提供します。
結婚式にとどまらず、各種祝い事の食事会も貸切りで利用でき、利用者の満足度を向上させる取組みです。

インターネットの需要を狙った商品の開発

機器のバッテリーメンテナンスを行う企業では、人との接触が多くなるメンテナンスの機会を減らすために、持ちがよく高品質なリチウムイオンバッテリーを新たに開発しました。
新開発したバッテリーのメリットは、業績好調の動きを見せる物流業で役に立ちます。

物流に必要なフォークリフトに使用されているバッテリーのメンテナンス回数を減らすことができれば、担当者との接触が少なくて済みます。

飲食店で使用する肉をペットフードに

猪料理を提供する飲食店では、従来のように食材を提供できない分、飲食店へ卸す食材ををペットフードに替えました。
猪肉は、食用として捕獲されるだけではなく、害獣として駆除されることも多く、駆除後の利用が課題とされていた状況もあります。

そこで、飲食店が猪肉を原料としたペットフードを開発したことで、店舗の売上げ増にも、猪の駆除後の処理にも一役買った形です。
高たんぱく・低脂質の猪肉はペットフードに最適で、ペットを飼っている消費者が噂を聞きつけて購入に至っているようです。

老舗洋菓子店がネット通販に特化

地元密着で近隣住民から人気を得ていた老舗洋菓子店は、コロナ禍で営業の縮小を余儀なくされる中、ネット通販への特化を試みました。
この試みは、単純な販路の拡充だけではなく、老舗ならではの洋菓子のおいしさを全国に知らしめるチャンスにもなりました。

ネット通販により、自宅時間で心身ともに疲労している消費者がおいしいスイーツを味わいたい、楽しみたいという需要とマッチし、狙い通りに全国各地のファンを獲得しています。

どこでも手洗いができる製品を開発

水を再利用して循環させる機器のメーカーでは、どこでも手洗いができる製品を開発しました。
電気で動作する機器であるため、電源があれば水道のない場所にも設置でき、水を循環させることで、いつでも綺麗な水で手洗いができます。

この機器は、特に商業施設で重宝されており、設置する店舗が増加しました。

まとめ

コロナ禍にあって、業績が落ち込む業種がある一方で、主に巣ごもり需要や衛生面への配慮を理由として、業績をUPさせる業種があります。
一方、業績DOWNしている業種でも、工夫次第で新たな顧客を呼び寄せることに成功している事例もあります。
さらに、コロナ禍ならではの商品やサービスの提供を行う工夫も見られるようになりました。

今回紹介した事例を参考に、厳しい状況を切り抜ける方法を考えましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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