いきなり!ステーキ社長の「経営者として成功する秘訣」 一瀬邦夫氏インタビュー(後編)

飲食開業手帳

創業手帳代表の大久保が、一瀬邦夫氏の経営哲学を聞きました

(2019/11/06更新)

「いきなり!ステーキ」や、「ペッパーランチ」を運営するペッパーフードサービス。アメリカでは苦戦するなどメディアを賑わすことが多いものの、世界で1000店舗以上を展開。2018年11月「レストランにて、24時間で販売されたビーフステーキ最多食数」に挑戦し、ギネス記録にも載るなど、話題を集め続けています。
同社の名物社長である一瀬邦夫代表へのインタビュー前編では、一瀬社長がこれまでどのような壁にぶつかり、乗り越えてきたかを聞きました。後編では、77歳にしてなおスマホなどの最新技術や独自の仕事術を駆使して、エネルギッシュに経営の最前線に立つ一瀬社長の心得に迫ります。

【前編】
いきなり!ステーキ社長の「壁を乗り越える力」 一瀬邦夫氏インタビュー(前編)

一瀬 邦夫(いちのせ くにお)/株式会社ペッパーフードサービス代表取締役CEO
高校卒業後、東京赤坂の山王ホテルに入社。9年在籍後独立し、1970年に「キッチンくに」を開店。1985年に、資本金500万円で有限会社くにを設立。浅草周辺に4店舗の直営店を展開する。
1994年に、長年の構想から低価格ステーキ店「ペッパーランチ」の展開をスタート。1995年に、株式会社に組織変更すると共に、社名を株式会社ペッパーフードサービスに変更。

インタビュアー 大久保幸世/創業手帳株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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一瀬流、勝つ飲食店の方程式

大久保:事業で利益を出す秘訣を教えて下さい

一瀬:いきなりステーキは、アメリカ産の良質な牛肉を、厚切りのレアで提供しています。実は創業時の原価率は70%だったんです。普通飲食店はこんな形でやりません。でも私は、「原価率が高くても、お客様が喜んでくれて、大勢来たら利益は出る」という考えでやっています。何よりも大事なのは、顧客満足度です。質が良ければ、お客様は高くてもお金を出してくれます。

世の中は、まずお客様を勝たせることで、自分も勝つようにできています。起業家はこの方程式を覚えておいたほうが良いですね。もちろん、そのためには経営的にも危ない橋を渡りますが、自分を信じる力が必要です。

儲ける前に、お客様に儲けてもらうこと。これが成功した秘訣です。

格言

利益を出すには、まずお客様を勝たせることが大事

大久保:これから飲食店を拡大していきたいと考えている経営者に必要な心構えを教えて下さい

一瀬:まず、飲食店は小さく始めることが大事です。自分も小さな店からスタートしました。実力や経験が浅い中で、いきなり大きな店をやろうとするのは大変です。小さな成功を求めるなら、飲食店ほど失敗しないビジネスはないと考えています。

小さな成功を収めたのち、事業を大きくして多店舗経営にのりだそうか、となった時に考えなければならないのは、「何のために事業を拡大するか」です。いたずらに店を増やしても、満足度が低く、お客様がリピートしてくれないと意味がありません。

小さな店、大きな店どちらにも通じることですが、「いかにお客様に喜んでもらい、リピートしていただくか」。これをブレずに追いかけてほしいですね。

企業はコマと同じで、止まったら終わりです。事業を広げる方向を選ぶなら、新しいことをやり続ける必要があります。

自分との約束を守らないと、会社が潰れる

大久保:前編で、長年「社内報」をご自身で書かれているという話をされていました。なぜですか

一瀬:会社が危機になったタイミングで、社内報を書くことを決め、今も自分で時間を割いて、原稿を書き続けています。社員には、「社内報を書かなくなったら会社は潰れる」とまで言ってました。それぐらいの気持ちで、重要なメッセージを伝えています。

今は、270号。会社が生きるか死ぬかという時期から、270ヶ月経っているということです。一見業績には関係のないことのようにも見えますが、とても大事です。社員に対しての発信という点だけでなく、「自分に対しての約束を守る」ことに意味があります。人は、誰かが見ていない時の行動が大事なのです。人との約束は守るのは当たり前ですが、自分との約束は守らない人も多い。三日坊主で辞めてしまったりね。

社内報によって、自分の考えをまとめたり、世の中や商売・お店をウォッチする力がつきました。そして、社長がやろうと決めたことを、決意を持ってやり続けているという姿勢を社員にも見せられた。これが成長の肝だと考えています。

格言

人は、誰かが見ていない時の行動が大事。自分との約束を守ろう

経営者として「人に与えられて生きている」意識を持つ

大久保:社内報を始め、社員にご自身のビジョンを共有することを徹底されていますね

一瀬:会社を拡大する上で、「社員のまとまりが良い」ことはとても大事です。私は、今でも採用にあたって社員全てを直接面接しています。社員が掲載される写真もちゃんと笑顔かどうかチェックしていますし、朝礼では社員数千人に対して、「今会社がどこに向かっているか」をしっかり伝えています。

こうすることで、会社として皆で同じ方向を向いて進んでいけるのです。

大久保:社員と良い関係を築く秘訣を教えて下さい

一瀬:弊社は今年で50周年になりましたが、最初は親ひとり子一人の家庭からのスタートでした。今でも、母には心から感謝しています。

自分一人で生きていると思うのではなく、人の存在意義は人の役に立つことであり、人に与えられて生きていくことだと考えています。トップに立つ人間こそ、この気持を持たないと、社員とうまい付き合い方はできないですね。

「笑顔、チャレンジ、謙虚」で運を引き寄せる

大久保:常にビジネスの最前線に立ち続ける力は、どこから来るのでしょう

一瀬新しいことにどんどんチャレンジすることですね。今私は77歳になりますが、スマホのアプリを頻繁に使っています。ほかにも英会話とか新しいことをやっている。衰えも感じず、若い人と話をしていてもギャップを感じることはあまりありません。社内で新しいアイデアを出したり、新しいことを始めるのも、いつでも自分です。

また、自分の考えやひらめきをボイスメモなどで逐一記録し、家に帰って毎日書き起こしています。たくさんの考え事を言葉にして残すことで、気づきを得られるし、社員に対しても共有できます。

あとは、朝から寝るまでずーっと仕事のこと考えています。一つのことに一生懸命取り組むことができるバイタリティは、賜物だと思います。

ノートには、自筆のメモがびっしりと並ぶ

大久保:成功する経営者に必要な資質はなんだと思いますか

一瀬:「強運」ですね。運は、偶然つくものではありません。強運は自分で作るものではなく、人が与えてくれるものです。強運を引き寄せるために、私は以下の3つを心がけています。

  • 笑顔。笑顔がないとつきがまわってこない
  • 新しいことをチャレンジしていること。若い気持ちでいること、流行遅れにならないこと
  • 謙虚な心

この3つを持っている人は、人から好感を持たれます。好感を持たれるから、運がついてくるのです。
一方で、ものすごく頑張っているけれど会社を成長させられない経営者もいます。そういう人たちを見ていると、自分のことしか考えてないパターンが多いです。こうなると、頑張り方を間違ったり、視野が狭くなります。社長だからこそ、人一倍人に気を遣う必要があると思うのです。社員をものすごく大事にし、別け隔てなく接する。裏表なく、嘘をつかない。困難もたくさんありましたが、上手く行かない時こそ、これが大事です。

一瀬流・運の掴み方

1に笑顔
2に新しいことにチャレンジし続ける
3に謙虚な心

大久保:気持ちが沈んでいる時、どのように乗り越えていますか

一瀬:今でも売り上げが下がっているときなど、沈むこともたくさんあります。それでも笑顔で話していると、だんだん元気になっていく。数々の困難を超える中で、だんだん「不安な時に自分をコントロールする方法」が分かるようになってきました。特に不安になる時は、その原因を突き止められると半分くらい心が軽くなりますね。

大変なことがあっても、それが永遠に続くとは思わない。何が起きても楽しまなきゃと思えれば、これから起きることにもワクワクできます。

大久保:最後に、経営者にメッセージをお願いします

一瀬企業は、何より働く人たちにとっての幸せありきだということを忘れないでください。
私が事業を拡大してきたのも、人がやめていくと切なくて、皆がついてきて希望が持てる店にしようと思ったのが原動力です。自分だけ幸せになれば良いということではありません。

正しいことを正しくやり、悪い考えや悲観的な考えが出てきたら、自分でぱっと打ち消す。深刻な顔をせず、いつも笑顔で、経営に取り組んで欲しいですね。

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読んで頂きありがとうございます。最新号の創業手帳(冊子版)も併せて読んで見て下さい。

(取材協力: 株式会社ペッパーフードサービス/一瀬邦夫代表取締役CEO
(編集: 創業手帳編集部)

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