起業理念を社会実装するための「課題解決と魅力」 Holoeyes杉本真樹氏インタビュー(後編)

創業手帳

後編は、杉本真樹氏の起業のきっかけや経営哲学に迫ります

(2019/06/07更新)

医療VRの開発で、医療領域のコミュニケーションにイノベーションを起こすHoloeyes株式会社の杉本真樹取締役兼COO。前編では、杉本氏がどのような経験を経て起業し、医療現場の次世代コミュニケーションツール「HoloeyesXR」を作ったのかについて聞きました。

XR(VR/AR/MR)とAIで医療を革新する外科医起業家 Holoeyes杉本真樹氏インタビュー(前編)

後編では、医療領域での起業で超えてきたハードルや、杉本氏の起業・経営哲学に迫ります。

杉本 真樹(すぎもと まき)Holoeyes 取締役COO取締役COO
医師/医学博士。1996年帝京大学医学部卒業。外科医として臨床現場から医療・工学分野での最先端技術の研究開発と医工産学連携による医療機器開発、医療ビジネスコンサルティング、知的財産戦略支援や科学教育、若手人材育成に精力的に携わる。医療・工学分野での最先端技術開発で多数の特許、学会賞などの高評価を受ける。
医用画像解析アプリケーションOsiriXの公認OsiriX Ambassador。2014年にAppleにて世界を変え続けるイノベーターに選出。2016年に株式会社Mediaccelを創業、代表取締役CEOを勤め、2017年Holoeyesを創業、取締役COOを勤める。

起業への転機はVRのコンテスト

ー起業のきっかけを作った転換点を教えてください

杉本:2016年に、「VRクリエイティブアワード」という、VRのコンテストへの出展の誘いがありました。現状エンタメ業界で圧倒的に開発が進んでいるVRですが、すでに社会実装されて役立っているVRコンテンツも紹介したい、という気持ちがあったようです。

私はこの誘いを受けて、HoloEyesXRのプレゼンを行いました。そこで、優秀賞をもらいました。それによりVRを使った起業を支援するファンド「VRコンソーシアム」の代表から声がけをいただき、投資を受けることができました。

その他にも、事務手続きから会計士、事務所まで支援してもらい、起業をしました。

ー商品として流通するまで、どのようなプロセスを経たのでしょうか

杉本:HoloeyesXRの技術を学会などで発表すると、「うちの病院でも使ってみたいから持ってきてほしい」と言われることが増えました。そこで出張して、実際に一緒にオペをして、プロダクトを導入してもらうという流れができました。しかし、このやり方だと病院まで行って個別に設定やインストールをする必要があるので非効率です。

これを、インターネットを経由して自動でアプリを構築したり、インストールできるようにすれば楽になるんじゃないかと思って、共同代表の谷口と仕組みを開発しました。

(動画)HoloeyesXRとMixed Realityグラス(Magic Leap One)を手術室で活用する様子
※「この動画はYouTubeでご覧ください」のリンクをクリックすると再生されます


システムが完成したら、次はネットワークだ、と準備を進めている時、マイクロソフトさんのコンテストに推薦されてピッチをしました。そこでも優秀賞をもらい、マイクロソフトのアジュールというクラウドシステムを自由に使って良いという特典を受けました。我々は今このサーバーを利用しています。これによって、世界中からサービスの利用があってもパンクせず高速でデータを提供できる環境が整いました。

こんな形で、大手企業や実力のあるプログラマーが協力してくれたことで、サービスをローンチできました

医療とゲームの技術の意外な親和性

ー事業としての強みは何でしょうか

杉本:医療系ソフトウェア企業の多くは直売りのビジネスモデルです。オンラインで提供しているところはほとんどありません。これは、医療情報が基本的に個人情報だからです。

これに対して、我々が提供しているのは医療情報そのものでなく、それをもとに作ったポリゴンデータなので、個人情報ではありません。この仕組みを作ることができたので、全国で自由にサービスを使ってもらっています。
さらに、高額なハードを買う必要がなく、ゲームなどで使われる安価なVR端末を使えばデータを利用できる点も強みですね。

ー医療現場でゲームの端末を活用する、と聞くと、なんだか意外な気もします

杉本:これもポイントなんですが、プロダクトをゲームとして売ると、「たくさん開発されて、安くなって、安全になる」んです。子どもの利用を想定しているので、電波や熱、耐久性など、医療機器レベルの安全性が担保されます。そして、ヘビーユーザーが多いので、世界中からバグに対するフィードバックが来るし、酷使に耐えられるハードが作られます。だから、医療の現場でも活用できるのです。

我々は、医療のプロとゲームのプロがタッグを組み、ゲームのテクノロジーと医療を融合させた、という点がこれまでになかったユニークポイントだと思います。

ー今後の事業の展望を教えてください

杉本:我々が展開している技術の活躍の場は、外科医療に限りません。例えば医療機器メーカーが、我々の提供する患者のモデルを使ってシミュレーションしながら機器の開発に活用したり、歯科医が保険を使わない自由診療に使ったり、獣医師などペット業界からも引き合いが強いです。医療以外でも、人間ドッグなどで結果を直感的に伝えるために活用したり、ヘルスケアビジネスにも徐々に参入しつつあります。あとは、学校の授業でも取り扱ってもらっていますね。

こんな形で、HoloEyesXRを医療以外の、医療を取り巻くヘルスケア事業だったり、教育事業に活用していきたいなと考えています

HoloeyesXRは、治療だけでなく、教育などにも活用できる

起業家は「ビタミンじゃなくて痛み止め」を作るべき

ー4月に総額約2億5千万円の資金調達を実施したというニュースが注目を集めました。反響はどうでしたか

杉本:まず、ソフトバンクインベストメントさんから2億円、三菱東京UFJとみずほ銀行という銀行系のファンドから6千万円、計約2億6000万円の投資をしてもらいました。金融系と、通信キャリア発のベンチャーキャピタルが投資してくれたということは、非常に大きいです。例えば5Gの導入で、今後データの共有が圧倒的に高速化されます。これによって、今まで難しかった、ホログラムの情報をリアルタイムで映し続けることが簡単にできるようになります。この技術を使って、遠隔医療を行おうと考えています。これによって、医師不足や地域医療の格差を減らしていけるんじゃないかと思います。

金融系は病院に融資している場合が多いので、我々のサービスを金融に紐付けられた病院で導入してもらえれば、出資元にもお金が回っていくというサイクルができます。

ー今後医療系の領域を含め、起業を考えている人にむけて、メッセージをお願いします

杉本:これから起業を考えている人は、一つの分野で誰にも負けないプロフェッショナルであること、創業者自身が作ったサービスやプロダクトの一番のビッグユーザーであること、が最低条件だと思います。事業を心から愛し、圧倒的なプロフェッショナルであること。そこからビジネス化しようと思う人に起業してもらいたいです。
「何ができるかわからないけれど世の中を救いたいから起業する」という方も少なくないですが、これはまだちょっと早いと思います。

事業を起こすだけでなく、継続していくことも大事です。そために必要になってくるのが、「社会実装」です。よく言われる“ビタミン オア ペインキラー“ですね。「ビタミンはあるといいけどなくても困らないですが、痛み止めはないと困る」。世の中の課題を見つけて、これがないと解決できないというモノやサービスを作る。特に若い人には、是非、痛み止めを作る事業を起こしてほしいです。

やっていて楽しい」というのもポイントです。自分がハッピーかどうかより、周りをハッピーにしてるかどうかが大事です。人が集まるところにお金が集まるので、「この人といるといいな」とか「この人と組むとメリットあるな」と思ってもらえるような人になって欲しいですし、そんなビジネスを作って欲しいです。実現するためには、すでに同じことをやっている人たちがいる環境に身を置くことです。そのためには、自分から価値ある発信をし続けること必要があるでしょう。

あとは、やらないことを決めることも大事ですね。切らなきゃいけないことを切り、やらないけど、大事なことを誰にやってもらうか考える必要があります。だから、味方は多いほうがいいです。ギブアンドテイクではなく、一緒に成功して、一緒に良くなっていくという意識があれば、自然に人が集まってくると思います。

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(取材協力:Holoeyes/杉本 真樹
(編集:創業手帳編集部)

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