合同会社から株式会社に組織変更しよう!メリット・デメリットや手続き方法などを解説
なぜ合同会社から株式会社に変更する人が増えているのか?
合同会社を設立したものの、株式会社に変更する人が増えています。
株式会社に変更する理由は、社会的な信頼性の向上、出資を受け入れやすくするため、IPOの準備など様々です。
株式会社に変更することで具体的にどのようなメリットがあるのでしょう。
今回は、合同会社から株式会社に変更する流れ、メリット・デメリット、変更すべきタイミング、費用などについて解説します。
株式会社への変更を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
合同会社と株式会社の主な違いを比較
合同会社と株式会社では、役員の任期や株式による資金調達、上場の可不可など様々な違いがあります。
どのような違いがあるのか、それぞれの特徴を比較してみました。
合同会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
会社の所有者 | 各社員 | 株主 |
会社の経営者 | 業務執行役員 ※選任しない場合は全社員 |
取締役 |
会社の代表 | 各社員 ※代表社員を定めることは可能 |
代表取締役 |
役員の任期 | なし | 最長10年 |
監査役の人数 | 不要 | 1人以上 |
意思決定 | 社員総会 | 株主総会 |
決算公告 | 不要 | 必要 |
定款 | 認証は不要 | 認証が必要 |
資金調達 | 株式発行が不可 | 株式の発行が可能 |
上場 | 不可 | 可能 |
設立費用 | 6万円~ | 17万円~ |
信用度 | やや低い | 高い |
このように、合同会社と株式会社では細かい違いがあります。
株式会社に変更すると合同会社の時には不要だった株主総会の実施、取締役会・監査役の設置など組織体制や運営方法が変わるため、違いをよく理解して組織変更を検討することが大切です。
合同会社から株式会社へ変更の流れ
合同会社から株式会社に変えるためには、正しい手順を踏んで手続きを行う必要があります。ここで、組織変更する流れを解説します。
1.組織変更計画を作成する
まずは、組織変更計画を作成します。
組織変更計画では、組織や体制に関する事項や社員が取得する株式の事項、社員に持分に代わる金銭を交付する際の事項、変更の効力発生日などを決めなければなりません。
例えば、組織や体制に関する事項では、運営目的や商号、本社の所在地、発行可能の株式総数、役員などを定めることになります。
社員が取得する株式の事項では、組織変更で社員が取得する株式数や算定方法などを定めます。
社員に持分に代わる金銭を交付する際には、その内容や数、金額、算定方法などを決めなければなりません。
また、いつから株式会社へと組織変更するのか、効力発生日も決めて、計画的に手続きを進めていくことになります。
2.総社員から同意を得る
組織変更計画が完成したら、次に総社員に計画に対する同意を得なければなりません。ここでいう総社員とは、合同会社に出資したすべての社員(経営者)のことです。
例えば、出資した社員が3人いれば、その3人から同意を得る必要があります。
なお、総社員からの同意は、組織変更の効力発生日の前日までに得なければなりません。そのため、後述する債権者保護手続きと前後しても問題ないこととなっています。
3.債権者保護手続きを行う
債権者保護手続きとは、債権者の利益を保護することを目的に行われる手続きです。
合同会社から株式会社に変更することは、債権者にとって不利な影響を与える可能性があります。
そのため、債権者が組織変更に対する異議を唱えられる機会を与える必要があります。
国が発行する官報に、「一定期間内に異議を述べることができ、異議がなければ組織変更を承認したものとする」という旨を公告し、さらに債権者に個別の勧告を行わなければなりません。
債権者から異議が唱えられ、組織変更による影響を受ける際は、弁済が必要になります。
4.効力発生日後に組織変更の登記申請をする
総社員から合意を得て、債権者保護手続きも終了し、組織変更計画で定めた効力発生日を迎えると、株式会社として運営できるようになります。
効力が発生してから2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局で登記申請をしてください。
必要な登記は、合同会社の解散登記と株式会社の設立登記の2つで、同時に行わなければなりません。
登記も完了すれば、組織変更は完了です。
合同会社から株式会社に変更するメリット
合同会社から株式会社に変更することは、会社にとって様々なメリットがあります。具体的なメリットは以下のとおりです。
低コストで株式会社を設立できる
合同会社から株式会社に変更する場合、株式会社として一から設立するよりもコストを抑えられるメリットがあります。
株式会社の設立にかかる費用は、約17万円からとなっています。それに対して合同会社は約6万円からとなるため、株式会社よりも低コストです。
この設立費用に変更にかかる法定費用をプラスされますが、総額は株式会社の設立費用よりも5万円程抑えることができます。
設立時点で初期費用を抑えたいのであれば合同会社として設立し、事業の軌道が乗ったら株式会社に変更するというのもひとつの手段です。
社会的信頼度が高まる
社会的な信頼度を高められることもメリットです。株式会社のほうが知名度は高いため、世間の信頼度は高くなる傾向があります。
また、株式会社の設立は手続きが複雑でハードルが高いことも、信頼度が高くなる理由のひとつです。
株式会社の信頼度が高まれば、顧客や取引先、金融機関などからも信用されやすくなります。
その結果、売上の向上や取引数の増加、資金調達の成功などの恩恵を受けられる可能性があります。
外部の投資家から資金調達できるようになる
株式会社では、株式の発行ができるようになり、外部の投資家からの資金調達が可能です。
業績が伸びて組織が大きくなれば、証券取引所に上場して株式の売買ができるようになるため、多くの投資家から出資してもらえます。
合同会社の場合、出資した人は役員の立場になり、会社経営に関与しなければなりません。
しかし、株式会社では経営に関与しない外部の投資家を純粋な出資者として募ることが可能です。
合同会社から株式会社に変更するデメリット
合同会社から株式会社に変更することには、デメリットも存在します。そのデメリットは以下のとおりです。
定期的に役員登記が必要になる
株式会社に変更した場合、定期的に役員の重任登記を行う必要があります。合同会社は役員の任期を定める必要がないため、重任登記は役員が加入または脱退した時で十分です。
しかし、株式会社では、役員の任期を定める必要があります。任期は最長10年であるため、少なくとも10年に1回は重任登記を行わなければなりません。
そのたびに費用や事務負担がかかることがデメリットです。
決算公告の義務が発生する
株式会社になると、決算公告の義務が発生することもデメリットです。決算公告は、株主総会で前年度の決算について承認を受けた後、決算について公表することです。
これは株主や債権者などに対して経営成績や財務状況などを明らかにし、取引の安全性を保つ目的があります。
合同会社には決算公告の義務はありませんが、株式会社は上場・非上場問わず、定款で定めた方法で公告が必要です。
自社サイトで賃借対照表を掲載する方法もあれば、自サイトがない場合は官報で公告することになり、5~6万円ほどの費用が発生します。
決算公告を怠ると100万円以下の過料が科せられる点にも注意が必要です。
合同会社から株式会社に変更すべきタイミングと判断基準
合同会社から株式会社への変更を成功させるためには、目的ごとに適したタイミングで行うことが重要です。
ここで、株式会社に変更すべきタイミングと判断基準を紹介します。
資金調達を受ける予定がある
事業拡大や設備投資などを目的に資金調達を行う予定があれば、株式会社への変更がおすすめです。
株式会社になると、株式の発行によって外部から出資者を募ることができたり、社会的な知名度や信用度が向上することで金融機関の融資を受けられやすかったりするので、資金調達が有利になります。
特に大規模な資金調達を成功させたいのであれば、株式会社に変更してから行うと良いでしょう。
大手企業や自治体との契約を予定している
大手企業や自治体との契約を予定している場合も、株式会社に変更するべきベストなタイミングです。
株式会社のほうが社会的信用度は高いので、取引先から信用を得られやすくなり、取引きの幅が広がります。
特に大手企業や自治体と取引きを行うのは難易度が高いため、少しでも信用を得るために株式会社に変更するのはひとつの手段です。
上場を見据えている or 社外取締役制度などを取り入れたい
上場や社外取締役制度の導入を検討している場合も株式会社への変更がおすすめです。
株式上場することには企業の成長を促すメリットがあります。
しかし、合同会社のままでは株式の発行ができず、証券取引所に上場ができないので、上場準備の第一歩として株式会社への変更が必要です。
また、合同会社には取締役という役職がないので、社外取締役制度も基本的に存在しません。
利害関係のない外部の人材を取締役に加えることには、ガバナンス強化や透明かつ公正な経営につながるといったメリットがあります。
より健全な経営体制を整えるために社外取締役制度を導入するのであれば、株式会社への変更が求められます。
社員数が増増加し、ガバナンスや組織運営を強化したい
社員数が増加し、ガバナンスや組織運営の強化が求められるタイミングも株式会社に変更すべきタイミングになります。
社員数が増えてくると管理するべき範囲が広くなり、内部統制やリスクマネジメントの強化が必要です。
株式会社の場合、株主総会や取締役会、監査役などを設置することになるため、合同会社と比べて厳格な運営体制となります。
それがガバナンスや組織運営の強化につながり、社員数が増えても健全な経営体制を維持することが可能です。
合同会社では制約のある機関設計(監査役など)を導入したい
取締役や監査役などの機関設計を導入したい場合も株式会社への変更が求められます。
合同会社は出資した社員全員に代表権と業務執行権があり、取締役や監査役などの役職はありません。
したがって、合同会社は社員総会・代表社員・業務執行社員などを設定する必要があり、それぞれの立場に与えられる権限のレベルによって組織運営が変わってきます。
それに対して株式会社は、取締役や監査役といった組織体制と運営規定が定められているので、厳格かつ健全な経営につながります。
合同会社には機関設計に制約があるため、経営健全化のために取締役や監査約などを導入したい時は株式会社への変更を検討すると良いでしょう。
組織変更による登記申請で必要な書類
合同会社から株式会社に変更する際、法務局で合同会社の解散登記と株式会社の設立登記が必要です。
その際に、組織変更計画書や定款など様々な書類が必要になります。具体的に必要となる書類は以下のとおりです。
-
- 組織変更計画書
- 定款
- 総社員の同意書
- 代表取締役の選定に関する書面
- 役員の就任承諾書
- 広告官報
- 債権者に個別催告したことを証明する書面
- 資本金の計上に関する証明書
- 代表取締役の印鑑証明
- 役員の本人確認書類
書類の準備や登記手続きに不安や悩みがあれば、司法書士や法務局に相談して確認しておくと安心です。
合同会社から株式会社への変更にかかる費用相場
会社を株式会社に変更する際、登記や官報への公告に費用が発生します。費用は専門家に依頼するかどうかによって変わってきますが、内訳ごとの相場は以下のとおりです。
内訳 | 費用相場 |
登記費用 | 6万円 |
官報公告の掲載料 | 3万5,000円~4万円程度 |
専門家への報酬 | 数万円~10万円程度 |
専門家に依頼して手続きを行う場合、合計で20万円近くの費用がかかります。ここで、株式会社への変更にかかる内訳について紹介します。
登記にかかる費用相場
登記申請を行う際に、登録免許税が発生します。登録免許税は、合同会社の解散登記と株式会社の設立登記の両方で発生します。
どちらの登記も3万円の登録免許税がかかるため、合計で6万円の費用が必要です。
官報公告への掲載料の相場
官報に公告することも、合同会社を解散するために必要な手続きであり、掲載料が発生します。
官報への掲載料は掲載される文字数によって変動しますが、目安は3万5,000円~4万円程度です。
専門家に依頼した場合の報酬相場
税理士や司法書士などの専門家に相談や依頼して組織変更を行う場合、報酬の支払いが必要です。
業務内容や複雑さなどによって報酬は変動しますが、数万円から10万円程度が相場になります。
合同会社から株式会社に変更する場合によくある質問
ここからは、合同会社から株式会社への変更でよくある質問を紹介します。
変更にかかる期間はどのくらい?
株式会社に変更するまでにかかる期間は、約2~3カ月と考えてください。
変更する際に組織変更計画の作成や社員の同意、各種法的手続きなどが発生し、それぞれに時間がかかります。
特に債権者保護手続きでは、官報公告を行ってから少なくとも1カ月間は期間を空ける必要があります。
社名の変更や事業の追加は可能?
組織変更にあわせて社名を変えたり、新しい事業を追加したりすることは可能です。
社名を変更する際は、新しい商号で解散登記・設立登記を申請してください。事業に関しては、追加だけではなく変更や削除も問題ありません。
本店所在地の変更はできる?
株式会社の変更時に本店所在地の変更はできません。
本店の所在地を変更する場合、旧管轄と新管轄で本店移転登記が必要です。解散登記と設立登記とはまた別の登記申請が必要になるので、一括で申請はできません。
役員を変更できる?
株式会社への変更にあわせて、役員を別の人に変えたり、増減したりするなどの変更は可能です。
例えば、合同会社時代は代表社員が1人だけだったところ、組織変更後は取締役5名に変更するといったことができます。
増資はできる?
組織変更と同時に資本金を増やして登記申請をすることはできません。
資本金を増やす場合、増資登記が必要です。この増資登記は設立投資と一括では行えません。
したがって、株式会社に変更する前、または変更後に別に増資登記を行う必要があります。
変更後の法人番号はどうなる?
株式会社に変更しても法人番号が変わることはありません。
税法上、組織変更は商号変更に該当するため、法人番号や登記上の会社法人等番号は引き継がれます。
まとめ・合同会社から株式会社への組織変更を成功させよう
合同会社から株式会社に変更すると、社会的信用度が高まったり、株式の発行による資金調達が可能になったりなど、様々なメリットがあります。
大規模な資金調達をしたり、上場を検討したりしているのであれば、株式会社に変更すると良いでしょう。
しかし、株式会社になると組織運営の体制が大きく変わるため、デメリットも理解して、入念に変更計画を立てることが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)