法人化にかかる費用は?設立後の費用や株式会社・合同会社のメリットも解説

創業手帳

法人化では法定費用や維持費など様々な費用が発生する!


法人化にあたっては、様々な費用がかかります。「どの程度の費用が発生するのか知りたい」「費用が高くなるのが心配」など、費用に関する悩みはつきものです。
個人事業主であれば0円からでも開業できるため、さらにイメージが湧きにくいかもしれません。
法定費用や維持費など、法人化では様々な費用が発生するため、前もって把握していなければ法人化までのコストが足りずに後悔する可能性もあります。

そこで今回は、法人化にかかる費用と相場を解説するとともに、法人化した後に発生する費用についても解説していきます。
費用を抑える方法や個人事業主から法人化するメリットもご紹介していくので、費用や法人化に関するお悩みをお持ちであれば参考にしてください。

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法人化にかかる費用と相場


法人化する際には、定款の認定費用・登記費用・資本金・印鑑代/印鑑証明書の取得費用といった様々な費用が発生します。
ここでは、それぞれの費用の相場をご紹介していきます。法人化を目指している方は、ぜひチェックしてください。

定款の認証費用

定款とは、会社を設立する際に必ず作成する企業の根本原則が記された書類です。「会社の憲法」とも言われています。

  • 会社の名称
  • 事業内容
  • 住所
  • 規則

上記の内容を記載し、認証された定款は承認されてから20年間公証役場で保存されます。
定款は、法人口座を開設する際や助成金の申請時、許認可申請といった手続きで提出が求められます。その際は、定款のコピーに原本証明を付けることが一般的です。

定款の認証は、本社所在地のある都道府県内にある公証役場で実施します。
法人化するためには認証が必須です。管轄区域外では認証を受けられないので、あらかじめ管轄先を確認してから公証役場まで向かうことが大切です。

定款の認証にかかる費用は以下の通りです。

  • 認定手数料:30,000円~50,000円
  • 謄本請求費用:2,000円程度
  • 収入印紙代:40,000円
  • 印鑑証明書:300円~

認定手数料は、認証を受けるためには必須となる費用で資本金の額によって異なります。

  • 資本金100万円未満:30,000円
  • 資本金100万円以上300万円未満:40,000円
  • 上記に該当しない額の資本金:50,000円

収入印紙代については電子申請をした際には発生しないため、節約したい場合は電子申請を活用すると経済的です。
しかし、電子申請を行う際にはPDF変換ソフトや電子印鑑証明書、カードリーダライタ―といったシステムが必要になります。初期費用が発生するため注意してください。

登記費用

法人登記とは、会社の名称や所在地、代表者の氏名、事業の目的などを法務局に登録して一般に開示できるようにするシステムを指します。
申請する際には、設立登記申請書のほかに必要書類があるため用意してから法務局に申請を行います。申請方法は、直接窓口で行うほか、郵送やオンラインといった方法がります。
オンラインの場合は、事前に専用のソフトをダウンロードする必要がありますが、不備があった際にはオンライン上で訂正できるので、法務局へ出向く手間が省けます。

登記を行う際は登録免許税を支払う必要があります。費用は法人の種類によって異なるので注意してください。

  • 株式会社:資本金額×0.7%または15万円のいずれか高い金額
  • 合同会社:資本金額×0.7%または6万円のいずれか高い金額
  • 合名会社、合資会社、一般社団法人、一般財団法人:申請件数一件につき6万円

資本金

会社を設立するにあたり、出資者から払い込まれたお金を資本金といいます。ビジネスを運営する上での元手金でもあり、運転資金として活用できます。
借入とは異なり返済する必要がないため、資本金が多い方が財務上の余力があることを証明できます。
しかし、売り上げや業績には直結していないため、資本金が少ないからといって必ずしもマイナスなイメージを持たれるとは限りません。

法人化する際の資本金は1円から設定可能です。
費用を抑えたい場合は1円に設定したいと考える方もいますが、金融機関から信用を得られず、融資に苦戦するケースもあるので注意してください。
資本金の額は、業種によっても異なります。例えば、人材派遣事業を手掛ける会社は、資本金2,000円以上という条件があります。
相場としては、運転資金の3カ月~半年程度を用意する企業が多いので参考にしてみてください。
また、資本金1,000万円以上は課税対象者になるので、消費税の納付義務が発生します。以上の点に注意しながら資本金を決めていきましょう。

印鑑代・印鑑証明書の取得費用

法人登記を申請する際には、原則として会社の印鑑を提出する必要があります。登記の申請では、会社実印を用意しなければいけないのでご注意ください。

会社実印とは会社用の実印であり、オンライン申請の場合は不要になります。
しかし、窓口での申請時に必要になるだけではなく、銀行や取引先との契約締結といった場面で必要になるケースもあるので、持っておいた方が便利です。
作成費用は印鑑の材質によって異なります。20,000円~60,000円ほどが相場だと考えておきましょう。

また、会社実印を作成したら印鑑届書の提出も必要です。
届け出には費用は発生しませんが、印鑑証明書を取得する際には手数料として390円~450円ほどかかるので、あらかじめ覚えておいてください。

実印以外にも必要な印鑑は複数あります。法人口座を開設する際には銀行印が必要です。
代表者印でも問題ありませんが、経理担当者が管理をすることも考えられ、紛失を防ぐためにも代表者印とは別に銀行印を作成した方が便利です。
その他にも、請求書や発注書で使用する角印や領収書や封筒に記載するゴム印も必要に応じて作成してください。

法人化した後にかかる費用


法人化をした後にも様々な費用があるので、負担する額を覚えておくと資金繰りに役立ちます。ここでは、法人化後に発生する費用を解説していくので参考にしてください。

税金

法人化すると個人事業主のころとは異なる税金を納めなければいけません。主にかかる税金は以下の通りです。

  • 法人税:年間の所得によって発生する
  • 法人事業税:事業所がある都道府県に納める
  • 特別法人事業税:法人事業税と併せて国に納付する
  • 法人住民税:登記している都道府県に納付する
  • 消費税:消費やサービスの取引に対して加算される
  • 固定資産税:土地、建物、償却資産が課税対象で企業の継続に使われる資産

赤字の場合、法人税・法人事業税・特別法人事業税の支払いの義務はありません。消費財に関しては、条件に該当する場合のみ支払いの義務がなくなります。
しかし、法人住民税は赤字でも一部のみ支払う必要があるので覚えておいてください。

税金の種類によって納付する額の算出方法は異なります。目安としては、1,000万円の利益があった場合、約300万円の税金が発生するようなイメージです。
ただし、あくまでも目安であり、会社のある地域や業種、従業員の数によって変動するので注意してください。

社会保険料

法人化すると、従業員の健康保険や厚生年金保険に加入しなければなりません。
従業員の数や役員報酬、給与額によって納付額には違いがあります。社会保険は、以下の3種類があります。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 厚生年金

従業員1人に対して会社が負担する社会保険料の額の目安としては、給与額の約15%となります。
そのため、30万円の給与を支払いいている従業員がいれば会社は約4万5,000円の社会保険料を負担する必要があります。
従業員の数が多ければ多いほど、負担額が増える点を覚えておいてください。
具体的な支払額に関しては、社会保険労務士といった専門家に相談すると詳しく説明が受けられます。

決算公告費用

法人の財務内容を後悔することを決算公示と言います。
株式会社に義務付けられており、決算以外にも合併や資本減少といった組織変更される場合には公示が必要になります。
公示をする範囲は会社の規模によって異なります。
大会社(資本金5億以上もしくは負債計上額の合計額が200億円以上の会社)は、貸借対照表と損益計算書を公示する必要があり、大会社以外の場合は貸借対照表のみを公示します。費用相場は以下の通りです。

  • 官報(国の広報誌):約7万円~20万円
  • 日刊新聞紙:約50万円~
  • 電子公示(自社のホームページなど):0円~

費用を抑えたいなら電子公示がおすすめです。
しかし、決算書類の全文掲載が必要になるほか、計算書類承認後5年を経過する日まではホームページに掲載し続けるといった規定があるので、詳細について把握してから掲載する必要があります。

株式総会費用

株主で構成されている株式会社の意思決定機関が株主総会です。会社の所有者は、会社に出資をしている株主にあります。
そのため、重要事項を株主が決定するほか、事業の成果や決算を会社から株主に報告しなければなりません。
事業年度終了後、一定期間内に総会を実施する義務があります。株式総会は対面とオンラインの2種類があり、それぞれで費用が異なります。

  • 対面:会場代、お弁当やお茶代、お土産代、資料作成代
  • オンライン:機材代、資料作成代
  • オンラインと対面両方:会場代、お弁当とお茶代、お土産代、資料作成代、機材代

対面は、会場の広さやお土産の個数によって費用が高くなるので、オンラインも同時に実施することで会場が狭くなるのでコストダウンにつながります。
オンラインのみでの実施が最も費用を抑えられますが、オンラインのみでの株式会社は上場企業にしか認められていません。
法人化した当初は、対面かオンラインと対面の両方を活用することになるので覚えておいてください。

その他維持費や専門家への報酬

上記でご紹介した費用以外にも、会社を維持するためには様々な費用が発生します。

  • 賃貸料
  • 光熱費
  • 在庫管理費
  • 給与
  • 福利厚生費

また、役員の交代や事業場所の変更があった場合には定款の書き換えが必要になるので2万円~4万円ほどの費用がかかります。
そのほかにも、税理士や弁護士と顧問契約を結ぶ際には年間で20万円~50万円ほどの費用がかかるので、あらかじめ把握しておいてください。

法人化した後にかかる費用を抑える方法


費用をかけずに会社を維持したいと考える方も多いでしょう。
その場合は、市町村の支援があるかどうかをチェックしてみてください。会社のある都道府県によっては、創業支援を実施している可能性があります。

例えば、創業支援事業計画の認定を受けた市区町村であれば、創業支援事業を活用できます。
内容は、それぞれの自治体によって違いがあるので、あらかじめ確認しておくとスムーズに申請を行えます。

支援の例としては、長野県の松本市では一定の条件を満たせば登記の際に必要になる登録免許税を削減できます。
通常、資本金×0.7%もしくは15万円の登録免許税が発生するところ、創業支援事業を活用すれば、資本金×3.5%もしくは7.5万円となるので50%を削減できる仕組みです。

個人事業主から法人化する5つのメリット


個人事業主が事業拡大をしたい場合、法人化を考えるかもしれません。しかし、税制面で異なる部分が多く理解するまでには時間がかかります。
そこでここからは、法人化を目指している方や法人化にすることを悩んでいる方に向けて、法人化するにあたってのメリットを解説していきます。

1.社会的信用度が高められる

取引先や顧客からの信頼獲得はビジネスを成功する上で重要な要素になります。
個人事業主であれば廃業届を出せば事業をすぐに辞められますが、法人の場合は簡単には廃業できません。

株式会社の場合は、所在地や設立した年月日、役員の情報などが法務局に登記され、第三者でも情報をチェックできるようになっています。
「誰が責任者を務め、どういった事業をしているのか」が、一目瞭然なので、経営体制を整えることで信用度が上がる可能性は十分ににあります。

また、法人は会計処理にも細かい決まりがあるため、事業年度ごとに決算書の作成も実施しなければなりません。
厳密な経営処理を行っている点も社会的信用につながるため、信頼を獲得することにつながります。
信用が得られれば、金融機関からの融資が受けやすくなるだけではなく、優秀な人材の確保もしやすくなるメリットがあります。
事業継続のためにも効果的なので、社会的信用度アップを狙っているなら法人化を検討してみてください。

2.社会保険への加入が可能

法人化すると社会保険への加入義務があります。
支払いの負担が増えるので一見するとデメリットに感じられますが、社会保険への加入は従業員側から見ると大きなメリットです。
優秀な人材の確保にもつながり、事業拡大にも影響を与えます。デメリットだけではない点を理解しておきましょう。

3.節税効果がある

個人事業主と比較すると法人は計上できる経費が多い特徴があります。
役員の給与は役員報酬として経費計上が可能となり、所得税と法人税では税率も違うので一定以上の所得があれば法人化によって税負担を軽減できる可能性もあります。

保険についても契約者を法人名義にすれば経費となるので、節税対策としての選択肢の幅が広がります。
個人事業主として安定した利益を上げているのであれば、法人化をすることで節税しやすくなるでしょう。

4.決算期の変更が可能

個人事業主は、1月1日~12月31日の1年間に生じた所得に応じて、翌年の3月15日までに確定申告をする必要があります。
そのため、毎年事業活動と確定申告の手続きで慌ただしくなる時期があり、手間に感じていた方もいるかもしれません。
しかし、法人であれば決算期を自由に変更できます。事業の繁忙期を避けて設定することも可能なので、事業活動をよりスムーズに進められます。

5.長期にわたって赤字の繰り越しが可能

個人事業主の場合、確定申告をすれば3年間の赤字繰越控除が認められています。
この繰越控除も法人であれば10年間の間赤字を繰り越せるので、個人事業主と比較すると、より長い間繰越控除ができるメリットがあります。
大きな赤字であれば3年で相殺しきれない危険性もありますが、法人であれば期間が長いので相殺も無理ではありません。
赤字の不安がある場合は法人化した方が安心と言えます。

法人化するなら株式会社と合同会社のどちらを選ぶべき?


法人化をするにあたっては、株式会社だけが選択肢ではありません。合同会社もあるので、それぞれのメリットを解説していきます。

株式会社は社会的信用や資金調達のしやすさにメリットがある

合同会社と比べると株式会社は社会的に知名度が高く、守らなければならない法律の規制も多いため信用度も高まる傾向にあります。
そのため、人材の確保や金融機関の融資といった観点からみると合同会社よりも有利です。

また、株式を発行すれば配当金を目的とする投資家からの出資を得られるので資金調達もしやすいメリットがあります。

合同会社は費用や経営の自由度でメリットがある

合同会社を設立する場合、株式会社とは異なり定款の認証が必要ありません。そのため、手数料が発生せず、登録免許税も下限が安いので設立費用を抑えられます。
定款認証が不要になれば、設立までにかかる期間も短くなるため、スムーズな設立につながります。
出資比率に関係なく利益の配分が可能なので、経営の自由度が高い点もメリットです。
優秀な従業員には利益配分比率を高めることもできるため、従業員の定着率アップにもつながります。定款内容の自由度も高いので、事情に応じた定款の作成も可能です。

まとめ・個人事業主は法人化する前に費用を確認しよう

法人化する際には、様々な費用がかかります。
会社運営を維持するためにも費用はかかり続けるので、法人化する前にどの程度費用が必要になるのか、確認することが大切です。
また、費用は自治体によって支援が用意されているので、コストを抑えたい場合には確認しておくとスムーズに申請できるでしょう。

創業手帳(冊子版)では、法人化する際に必要となる情報を多数掲載しています。起業や経営の持続に関する情報を集めたい方はぜひご活用ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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