GE流、スタートアップで活かせる仕事術

創業手帳

日本GE 代表取締役 安渕聖司氏 インタビュー

日本GE 代表取締役 安渕聖司氏 著書『GE 世界基準の仕事術 プレゼントキャンペーン!!こちら

(2015/1/14更新)

世界最大のコングロマリットであるGE。その事業内容は、航空機エンジンから医療機器、金融事業と多岐に渡るが、それを支えるのは社内に存在する画期的な仕事のやり方だ。GEでは社員全員がリーダーシップを育むためにユニークな人材育成や人事評価を取り入れるなど、多くの企業が見習うべきところがある。そこで日本GEの代表取締役かつ金融部門GEキャピタルのCEOでもある安渕聖司氏に、GEの仕事術をベースに、起業したばかりの会社でも実践できる仕事術について話を伺った。
世界の巨人GEから学ぶ「グローバルな仕事術」

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安渕 聖司(やすぶち・せいじ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、三菱商事に入社。1990年ハーバード・ビジネススクールMBA修了。2006年にGEコマーシャル・ファイナンス・アジアに事業開発担当副社長として入社し、2007年9月にGEコマーシャル・ファイナンス・ジャパン社長兼CEOに就任。2009年よりGEキャピタル社長兼CEO。日本GE(株)代表取締役。

社員全員にリーダーシップを持って欲しい

ーGEでは、人を育てること、特にリーダーシップの育成に力を注いでいますが、改めて安渕さんが思うリーダーに必要なものを教えてください。

安渕:我々は常に「変化を起こしていく」ということを大事にしています。変化を起こすためには、リーダー自らが学び続けることが必要になってきます。リーダーにとって一番大事なことは、次々と仮説を立てて変化をドライブしていくこと。そして周りを巻き込む影響力を持ち、常に与えられた権限以上のことを達成していくこと。仕事をしていると、お客様も外の社会もテクノロジーも変わっていきます。そういった変化をキャッチアップして先取りしていくことがリーダーには必要です。もう1つ、結果を出すということもリーダーにとっては非常に重要と言えるでしょう。

ー他に必要なものはありますか?

安渕:常にベースになくてはいけないのが「Integrity」、つまり企業道徳や企業倫理のようなものを持つ必要があります。また、自分が人からどう見えているのかという自覚「Self-awareness」を持つことも非常に大事で、我々もそのためのトレーニングを取り入れています。

ー弱い部分がある人でもトレーニングによって伸びるのでしょうか。

安渕:もちろん伸びます。我々は基本的に、何かを教えられてリーダーシップが身に付くという考え方ではなく、トレーニングによって目覚めるという考えでやっています。理想とするものを見せてそうなりたいと思うかどうか。今は「Education」でなく「Learning」の時代なので、自分で気付く「Learning Organization」を目指しています。また、我々はリーダーは1人ではなく、社員全員がリーダーシップを持つべきと考えています。

ー創業したばかりの小さな会社の場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。

安渕:組織が小さければ小さいほど、自分が何をすべきか、この会社は何を目指しているのかということを全員でシェアしなくてはいけません。各々の役割以上に「もっとこんなことをやったらいいのではないか」ということを自分で考え、自発的に持っていく。小さい組織はそのアクションをどんどん起こして、全員で前に進んでいく必要があります。これは突き詰めるとやはりリーダーシップなのです。ですから、組織が小さければ小さいほど1人1人がリーダーシップを持つ必要があります。

創業したばかりの会社が最低限やらなくてはいけないことを挙げていくと、それだけで従業員の人数分以上の仕事量になってしまいます。それに対して個々がきちんと「自分はこれをもっとやっていこう」という自覚を持ち、毎日いろいろなアイディアを出していく。創業期の会社というのは、極端に言えば毎日状況が変わっていくわけですから、その変化のスピード感をそれぞれが持っていると非常に役に立つと思います。

「報告連絡相談」を全部やっていると自分で決めなくなる

「報告連絡相談」を全部やっていると自分で決めなくなる

ーリーダーシップを取るのが苦手だという人間がいたら、どのように育成すれば良いのでしょうか。

安渕:我々は「ストレッチ」と呼んでいますが、少し高めの目標を立てるようにします。それが達成できたらまた少し目標を上げる。その中で少しづつ良くなっていくということを体感してもらいます。

ーその時はあまり口出しはせず?

安渕:「報告連絡相談」を全部やっていると時間もないし、自分で決めなくなってしまいます。自分で考えてとりあえず右に走ってみたけれど、ここまで来て行き止まりました、というところで相談すればいいわけです。少し大きめのプロジェクトを任せると、自分1人ではできないことが分かってくる。そうなってくると、社内で必ず何かしら問題が起きますが、そういったトラブルに伸びてきている優秀な人を充てるのです。

これを私はよく「良質な修羅場」と言っていますが、問題が起きたときは優秀な人間に委ねます。今まで想定していなかった事態が起きているので、そこでいろいろなことを考えなくてはいけない。しかしそれらを考え抜いて、アクションを取って問題を解決すると、その経験がまた本人を伸ばしていくのです。

ー「良質な修羅場」ですか!ではその「良質な修羅場」が起こった時に行うGEならではの改善方法を教えてください。

安渕:一番はワークアウトという手法です。問題が起こった時、まずその仕事に携わっているメンバーを集めて問題の原因を考えます。ポストイットに1人1人が思い付く原因を全部書き出し、さらにそれをいくつかの原因に分けていく。そして原因が分かったら次は対策を考えます。すぐできるもの、時間とお金がかかるもの、効果の小さいものから大きいものまで4象限くらいに分けて、それをまたポストイットを使って整理します。そうすると、すぐにできてコストもあまりかからないものが出てきます。それはすぐに責任者を呼んで実行に移します。

ーそれ以外のことはどうするのでしょうか。

安渕:時間がかかるものはその場で別プロジェクトを作り、メンバーと内容とデッドラインを決めて進めます。我々は「デイリーのリズム」と言っていますが、一番重いときは問題の頻度や重要性によってそういった会議を毎日やっています。それが少し落ち着いてきたら間隔を延ばし、緊急性や重要性を鑑みて頻度と中身を変えていく。GEの会議で特徴的なのは、会議が終わるときには常にネクストアクションと担当者とデッドラインが決まっていることです。

私が最初にGEの会議に出て驚いたのは、突然人が立ったり座ったりすることでした。会議室には必ずホワイトボードがあって、各々が立ったり座ったりしながら自由にホワイトボードに書き始めるのです。口で議論していると問題そのものが段々分からなくなってくるので、問題点を書き出して軸に分けて整理する。そうすると、ポストイットを使わなくてもワークアウトができるようになってきます。

ーなるほど。

安渕:意思決定というのは、すごくトレーニングが必要なところがあります。常に決めてくれる人がいると思っていると、考えが選択肢から選ぶメニュー方式になってしまう。私も部下から選択を求められることがありますが、それは受け付けずにまずどれがいいと思うのかを聞き返します。意見を求めるのであれば、まず自分の意見を言う。そこから話がスタートするのです。

ー常に相手から考えを引き出すわけですね。

安渕:チーム全体が強くなるためには、1人が考えて決めるより、やはりそれぞれに自分で考える力を付けてもらうのが一番です。チーム全員がある程度決められるようになると、お互いが信頼できるようになってきます。取り返しのつかないこと以外はどんどん決めて、どんどん前へ進む。転んでもつまずいてもいいからやらないと、仕事は前に進んでいきません。慎重になって会議室で議論しているうちに、競合が先行してしまい、手遅れになるわけです。

理念達成の方法論は変わっていってもいい

理念達成の方法論は変わっていってもいい

ーGEではユニークな取り組みを数多く行っていますが、中でも人事評価は珍しいと感じました。
9block

GE 9 blocks(原典:GE. 図は創業手帳編集部作成)

安渕:我々は縦軸と横軸の2つの座標軸を基本にした「9ブロック(ナインブロック)」という方式で人事評価を行っています。仕事において何を達成したかという業績が縦軸で、それをどう達成したかという方法が横軸です。横軸のベースになっているのは5つの「グロースバリュー」と言われるもので、社員の行動基準になっています。

上司は部下をこの表にプロットしていきますが、縦軸の評価は例えば営業であれば販売戦略などで達成できるのでそれほど問題ではありません。逆に困るのは横軸の評価が奮わない人。会社としての行動基準に外れているということになるので、そこは評価というよりは日頃からのコーチングになりますね。

ー5つのグロースバリューについて教えていただけますか?
GE Growth Values

GE Growth Values

安渕:1つ目は「外部思考」、いわゆる「External Focus」です。企業というのはどうしても内部を見がちなので、お客様や市場、競合、規制などを見て仕事をしようというのが外部思考です。

2つ目が「Clear Thinker」。明快でわかりやすい思考で、難しい問題をなるべく分かりやすく解きほぐしていく。

3つ目は「Imagination & Courage」。イマジネーションと勇気のことで、新しいアイディアをどのぐらい思いついて実行していくかです。実行するのは当然勇気がいりますが、そのイマジネーションを会議で発言できるかということです。

ーあとの2つは何でしょうか。

安渕:4番目は「Inclusiveness」。包容力のことで、多様性の裏返しですね。会社というのは多様な人を入れていろいろなアイディアを生み出していきますが、それをしっかり受け入れて多種多様な人たちと共に働いていく力が包容力です。

5番目が「Expertise」、つまり専門性で、専門知識とテクノロジーをどれだけ使えるかということです。この5つのグロースバリューについてはかなり細かく文章にして全社員に配っているので、社員は自分が一体どういう行動を取るべきなのかということが分かります。実はこの5つのグロースバリューは全世界共通で、GEではどこにいっても同じやり方で評価されます。

ーそれは小さな会社でも応用できますか?

安渕:起業の根本には「何をしたいか」というのが必ずあるはずです。それに沿って、どのような仕事をすれば目標達成につながるのかということをみんなで話し合う。それが行動基準やバリューになっていくと思います。理念と達成したいものがはっきりしていれば、方法論は変わってもいいわけです。逆に方法論というのはどんどん変わっていかなくてはいけない。

例えばDeNAはネット・オークションから始まりましたが、創業してオークションをやろうと思ったときに、まさかヤフーの方が先に始めるという想定をしていなかった。これは創業者の南場さんが自分でおっしゃっていますが、「マッキンゼーのスーパーコンサルタントとして人にあれだけ競合のことを予測して動けと言っていた私が、なぜ分からなかったのか」と。そこからDeNAはどんどん仕事の中身を変えていきましたが、今でも起業理念である「ネットで世界を変える」というところは変わっていませんね。

ベンチャー企業の強みは決断の速さ

ーGEのような大企業から見て、ベンチャーはどのような存在ですか?

安渕:ベンチャー企業は壁にぶつかったり上手くいかなかった時の決断が速いですが、それは強みだと思います。上手くいかないことを延々やり続けて、儲からなくてもやっていけるのは、他に儲かるものを持っている大企業です。でも本当は大企業だってそんな余裕はないし、資源と人の無駄遣いになってしまう。ですから、我々もベンチャー企業のそういったところから日々学ぼうとしています。

ー最後に、起業家に向けたメッセージをお願いします。

安渕:どんなにつまずいても失敗しても、志の幹の部分は変えずにやり続けるということでしょうか。私は諦めずに成功するまでやり続けるのが起業だと思っています。ただし方法論はどんどん変えてよいのです。これはGEの創始者エジソンの思想でもあります。彼は「私は一度も失敗したことがない。今まで1万回くらい上手くいかない方法を発見したのだ」という言葉を残していますが、それくらいやり続けたからこそ成功があったのだと思います。ですから我々も諦めずにやり続ける。しかし、変化は速くということです。
ベンチャー企業の強みは決断の速さ

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