フリーランス保護新法とは?制定によって何が変わる?下請法との関連も含めて解説

創業手帳

2022年秋、フリーランス保護新法が成立する予定です!中小企業にどのような影響があるのかを説明します

ランサーズ株式会社の調査によると、2021年度時点で、我が国におけるフリーランス人口は1,577万人。総務省統計局による労働力人口の2021年平均は6,880万人なので、労働者のおおよそ23%がフリーランスということになります。そのため、フリーランスの事業者としての権利や立場をいかに保護するかは、喫緊の課題です。

そのような状況のなか、内閣官房は2022年9月13日に「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」を示し、パブリックコメントを公募しました。それに基づき、2022年秋の臨時国会中にも「フリーランス保護新法」が成立すると報道されています。

そこで今回は、フリーランス保護新法が成立すると何がどう変わるのか、中小企業にはどういった影響があるのかなどを解説します。下請法との関連も含めて詳しくお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

【現状と課題】フリーランス保護新法が設立される背景

フリーランス保護新法の背景にあるのは、フリーランス人口の増加に伴い、取引先とのトラブルを経験するフリーランスが増えているという現状です。

内閣官房による「フリーランス実態調査結果」では、事業者から業務委託を受けて仕事を行うフリーランスのうち、37.7%が取引先とのトラブルを経験しているとの結果が示されました。トラブルの内容は以下のように、報酬支払いの遅延や一方的な減額、仕事内容に関する揉め事などです。

図:フリーランスが経験した取引先とのトラブル内容

出典:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」

またフリーランスには、1つの発注者に大きく依存しやすいという傾向が見られます。事実、上記の調査結果によると、フリーランスのうち、1社のみと取引している者は40.4%、2社と取引をしている者は18.0%です。

以上より、現状フリーランスは、事業者として危うい立場にいることがわかります。適正な取引は保障されておらず、受注の安定性にも欠けています。こうした現状と課題を解決すべく設立されるのが、フリーランス保護新法というわけです。

【方向性】フリーランス保護新法によって何が変わるか?


フリーランス保護新法の大まかな方向性としては、以下の2点が示されています。

  • フリーランスの取引を適正化することで、フリーランスとして安定的に働ける環境を整える
  • 上を達成するため、フリーランスに業務委託する事業者に対して遵守事項等を定める

上記を踏まえ、具体的には次のような事柄が実現される予定です。

1. フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項が規定される

中小企業を含め、フリーランスに業務委託を行う事業者には、以下の義務や禁止事項などが課されます。

(ア)業務委託の開始・終了に関する義務

①事業委託の際の書面の交付等

事業者がフリーランスに対して仕事を依頼するときは、「業務委託の内容(仕事内容)、報酬額等」を記載した書面を交付するか、メールなど電磁的記録を提供しなければなりません。

また一定期間以上、継続してフリーランスと仕事をする場合、契約期間や契約の終了事由、中途解約時の費用などをあわせて記載する必要があります。

②契約の中途解約・不更新の際の事前予告

フリーランスと継続的に仕事をする場合、契約の中途解除や期間満了後の不更新を選択するなら、「中途解除日または契約期間満了日の30日前まで」にその旨を予告しなければなりません。

またフリーランスから求められれば、事業者は契約の終了理由を明らかにする必要があります。

(イ)業務委託の募集に関する義務

①募集の際の的確表示

不特定多数のフリーランスを対象に、仕事を募集する場合は、正確かつ最新の情報を伝えなければなりません。虚偽の表示や誤解を生むような表示は禁止されます。

②募集に応じた者への条件明示、募集内容と契約内容が異なる場合の説明義務

事業者は、応募してきたフリーランスに対し、仕事内容や報酬等を明示しなければなりません。また募集時点で明示した情報と異なる内容で契約したい場合は、その旨を説明する必要があります。

(ウ)報酬の支払に関する義務

事業者は、フリーランスから納品物やサービスの提供を受けた日から60日以内に報酬を支払わなければなりません。

(エ)フリーランスと取引を行う事業者の禁止行為

フリーランスと一定期間以上、継続して仕事をする場合、事業者は以下1〜5の行為をしてはいけません。また6、7の行為により、フリーランスの不利益を与えることも禁止されます。

  • フリーランスに責任のある理由なしに受領を拒否す
  • フリーランスに責任のある理由なしに報酬を減額する
  • フリーランスに責任のある理由なしに返品を行う
  • 相場に比べ、著しく低い報酬額を不当に定める
  • 正当な理由なく、物の購入やサービスの利用を強制する
  • 金銭やサービス、その他の経済上の利益を提供させる
  • フリーランスに責任のある理由なしに給与の内容を変更させたり、やり直させたりする

(オ)就業環境の整備として事業者が取り組むべき事項

①ハラスメント対策

事業者には、フリーランスへのハラスメント行為について、体制整備やその他の必要措置を講じ、適切な対応を行うことが求められます。

②出産・育児・介護との両立への配慮

事業者は、フリーランスと継続して仕事をする場合、出産や育児、介護と業務の両立という観点から、フリーランスに配慮しなければなりません。フリーランスから申し出があれば、就業状況に関する交渉や就業条件の変更に応じる必要があります。

2. 違反した場合の対応等が定められる

事業者が上述の「フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項」に違反した場合、行政から必要な履行確保措置が執行される予定です。具体的には「行政上の措置として助言、指導、勧告、公表、命令」などが想定されます。

履行確保措置の程度によっては、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性もあるので、事業者はフリーランスとの公正な契約・取引に努めなければなりません。

3. フリーランスの申告及び国が行う相談対応の実現

事業者に違反行為があった場合、フリーランスはその旨を国の行政機関に申告することができます。事業者はその申告を理由として、フリーランスに契約解除やその他の不利益な取り扱いをすることはできません

また国は、事業者の違反行為に対する相談対応をはじめ、フリーランスが関わる取引環境を整えるため、必要な措置を講じることとされています。

下請法とフリーランス保護新法の関連について


フリーランスは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)といった現行の取引法制の対象外となる場合が多いです。そのため、フリーランス保護新法には下請法等を補完する役割が期待されています

下請法とは、親事業者に対して立場が弱い傾向にある下請事業者を守るための法律です。フリーランスも対象となりますが、下請法が適用されるには、親事業者の資本金が1,000万円を超えていなければなりません

しかし、内閣官房の「フリーランス実態調査結果」によると、フリーランスの約4割は、資本金1,000万円以下の事業者と主に取引をしています。そのため、現行の下請法ではフリーランスの取引を十分に適正化することはできず、フリーランス保護新法が必要です。

フリーランス保護新法は下請法の改正という形になるか?

フリーランス保護新法は、下請法の改正でなく、別途新法を定めるという形で成立する可能性が高いです。

これについては、下請法の適用範囲を広ければ事足りるという意見もあります。たしかにそれでもフリーランスが関わる取引を適正化したり、行政による履行確保措置を可能にしたりはできるでしょう。

しかし、元来下請法は、法人間の取引を適正化するための法律です。そのため、ハラスメント対策や出産・育児・介護への配慮など、個人の就業環境の整備に関する文言を下請法に入れ込むのは難しいといいます。

以上より、フリーランス保護新法は、下請法とは異なる法律の制定という形で成立すると考えられます。その場合、下請法との棲み分けをどうするかが課題になりそうです。

中小企業はどのような対応をすべきか


フリーランス保護新法の中で、中小企業と大きく関係するのが「フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項」です。上述したような義務や禁止事項等を正しく守らないと、行政から指導や勧告などを受ける恐れがあるので注意しましょう。

具体的には、フリーランス保護新法の成立前後に、以下のような対応をすべきだといえます。

  • 契約書や募集内容のフォーマットを作る
  • フリーランスの就業環境を意識し、体制整備を改める
  • マニュアルを配布するなど、同法を社内に周知する
  • 同法に遵守することを社外に対して発信する

有効な対応策は、実際に同法が成立してみないとわからない部分もありますが、多くの中小企業が対応を迫られることになるでしょう。フリーランスの取引先の大半は、スタートアップを含めた中小企業だからです。

まとめ

フリーランス保護新法は、フリーランスが関わる取引を適正化するための法律案です。成立すれば、フリーランスに対する契約書の交付が義務化され、企業がフリーランスに不当な扱いをすることも禁止されます

フリーランスの主な取引先は資本金1,000万円以下の事業者なので、中小企業への影響は必至です。同法は早ければ2022年秋の国会で成立する予定であるため、経営者や起業家、法務担当の方は、どのような内容になるのか注視しておきましょう

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