12月になる前に経営者がやるべきこと|経費・契約関係の見直しで新年をスムーズに
年末は経費・契約関係の見直しのタイミング

年末といえばお正月に向けて忙しくなる時期です。経営者にとっても経費の整理と契約内容の見直しをするための絶好のタイミングです。
いつかやろうと考えていた経費・契約関係の見直しに手を付けましょう。
経費・契約関係の見直しは、無駄な支出を減らすだけでなく節税や資金繰り改善にも直結します。12月に見直しの習慣をつけておけば、新年をスムーズに迎えられます。
本記事では、12月になる前に確認しておきたい経費・契約関係の見直しポイントを整理しました。
年末の経費見直しは、翌年の経営を軽くする第一歩です。
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この記事の目次
12月前に経費・契約を見直すメリットとは?

12月はプライベートでもクリスマスや冬休み、お正月とイベントが続きます。プレゼントや旅行などプライベートの準備で忙しい人も多いかもしれません。
しかし、12月だからこそ経費・契約を見直すチャンスです。なぜこの時期に経費・契約を見直したほうがいいのか、メリットを紹介します。
節税効果を最大化できる
節税対策の基本は無駄な経費を減らすことです。法人税や事業税は、課税所得を計算してから税率をかけて算出します。
経費計上すればその分だけ課税所得は減少するため、納税する額を少なくできるのです。
年内に経費や契約を整理しておけば損金算入できる支出を正確に計上でき、適切な節税につなげられます。
また、日ごろから経費を整理しておけば税務署に指摘される部分があったとしても、落ち着いて対処できるでしょう。
支払いの中には、未払いとなっている経費や過払いが含まれていることもあります。
余分な税負担を避け、効率的に資金を確保するために定期的に経費を確認するようにしてください。
翌年の資金繰り改善につながる
契約整理により無駄な固定費を削減できれば、その分だけ翌年の資金余裕を生み出すことが可能です。
固定費の中には使っていないサブスクやリースもあるかもしれません。契約を見直して支払いスケジュールを最適化してください。
経費の種類、支払いが少なくなればキャッシュフロー管理も容易になります。不必要な契約を整理することで、余剰資金を新規投資や事業拡大に活用できます。
不要な支出を削減できる
経費のチェックでは、使っていないサービスや過剰な保険料などの契約も整理します。
経営コストを圧縮するためには、固定費の削減を考えてみてください。
通信費や光熱費の見直しをする時には、同等のサービスを低コストで維持することが可能か、サービスごとに最新の情報を確認してください。
また、福利厚生費や交際が過大支出になっていないかをチェックしておくと、無駄な支出を抑制でき利益率を改善できます。
経費や契約の“見落とし”で起こりがちなトラブル

経費や契約は日常的に発生します。普段からやっていることだからこそ、うっかり見落として大きなトラブルに発展するかもしれません。
経費・契約の見落としでどのようななトラブルが発生するのかをまとめました。
サブスク契約の自動更新による無駄な支出
サブスクは短期間であれば安くても、長期間加入していると高額になってしまいます。
さらに、多くのサブスクが自動更新なので契約を解除し忘れてしまえば、年間で数十万円規模の無駄な支出が発生しているかもしれません。
実際に、一定期間無料のサブスクを利用して契約内容や更新日を確認せずに放置している、解約のタイミングを逃して不要な費用を払い続けているといったケースも発生しています。
どのような契約をしているのか管理を徹底し、サービス利用状況を定期的に見直すことで、不要な支出を事前に防いで資金効率を改善してください。
保険やリース契約の更新忘れによる費用負担
保険やリース契約も更新期限を過ぎると自動更新され、必要のない保険料やリース料を払い続けることになります。長期間になると資金を圧迫する原因になるかもしれません。
これらの契約は、会社が置かれている環境に適しているかどうかも検討するようにしてください。
例えば、事業や資産の変化によってすでに必要なくなっている保険があるかもしれません。
契約内容が現状に合わないまま継続すると、補償過多や無駄な支払いが発生し、経営効率を低下させてしまいます。
期限や契約条件を把握し、不要な契約は適切に解約手続きを行うことでコストを最適化してください。
未払い経費の計上漏れによる税務リスク
原則として、事業年度内に発生した経費は損金として計上しなければいけません。経費の発生は金銭の受け渡しではなく、取引きの発生によって判断してください。
未払いになっている経費がある場合には、未払い経費として計上してないと損金算入ができず、法人税や消費税の負担が増加する可能性があります。
請求漏れや支払い漏れを放置すると、決算書の正確性が損なわれるため金融機関の信用にも影響します。
取引先とのトラブルを防ぐためにも支払い履歴を確認し、未払い分を年内に整理しておくようにしてください。
キャッシュフロー悪化による資金ショート
不要な契約や経費は少額であっても積み重なると資金繰りが悪化し、運転資金が不足する恐れがあります。
うっかり契約の更新を忘れたり、未払費用を溜めてしまったりすれば、いずれ突発的な支出を招き資金ショートの原因になるかもしれません。
経費は資金繰り表と連動させながら点検することが大切です。安定したキャッシュフローを確保するためには、経費の適正管理を怠らないようにしてください。
見直すべき経費のポイント

経費の見直しは定期的に実施しなければいけません。しかし、ポイントを絞っておかなければどこから見直せばいいのかと頭を抱えてしまいます。
見直すべき経費についてそれぞれ紹介します。
未払い経費の整理
適正に支出を計上するためには、未払い経費が正確に計上できているか確認してください。
未払い経費を年内に計上することで損金算入でき、法人税の節税効果を適切に得られます。
請求漏れや支払漏れを未払いのままで放置すると、決算書の信頼性が低下してしまいます。正しく会計処理ができない企業は、キャッシュフローの悪化にも気が付きません。
金銭にルーズな会社として金融機関や取引先からの評価に悪影響を与えてしまうリスクもあります。
取引先とのトラブル防止のためにも、支払い期日を管理し正確な記録を残すことが不可欠です。
福利厚生費・交際費の確認
福利厚生費や交際費は税務上の取扱いが厳密に定められており、適正範囲を超えると損金算入できません。
適正範囲に則した社内規定を設定するとともに、社内規程に沿った支出かどうかを確認してください。
福利厚生費や交際費が適正であると証明するためには、普段から証憑や領収書を整備しておきます。
どのような内容の経費で同席者が誰なのかを説明する準備をしておくと税務調査を受ける時の対策になるでしょう。
ルールに沿っていても過大な交際費は資金繰りを圧迫する原因のひとつです。費用対効果を検証し、削減できる部分を明確にしておくようにしてください。
サブスク・クラウドサービスの見直し
サブスクやクラウドサービスは、使っても使わなくても定額の費用を払う契約です。利用頻度の低いサブスクを継続するのは無駄な支出です。
契約を見直す時には、使用実績を確認して解約判断をしてください。
また、月額契約と年額契約を比較することで必要なサービスに限って割安なプランを選択できます。
複数サービスを利用する時には機能が重複していないかを精査し、一本化して経費削減できないか検討してください。
リース契約・保険契約のチェック
リース契約や保険は自動更新されるものが多いので、必ず更新期限を把握しておきましょう。
なんとなく自動更新するのではなく、不要な契約である場合には解約手続きをしてください。
その会社の置かれた環境や内部体制によって必要となる補償は違うはずです。保険契約は補償内容が現状に適しているかを確認し、過剰補償や不足補償を修正します。
リース契約は総支払額と資産購入のコストを比較し、長期的な費用対効果を検証することが重要です。リース契約で割高な場合には中古品の購入なども検討してください。
通信費・光熱費の最適化
会社の経費では、エネルギー費の割合も少なくありません。
スイッチをこまめにオフにする、無駄な電気を使わないといった日常的な取り組みもありますが、契約しているプランの見直しも定期的に行いましょう。
例えば、法人契約プランに切り替えることで通信費の割引が適用され、年間コストを削減できる場合があります。
さらに、通信や電力の契約先を比較し直すことで、同等のサービスをより低コストで利用できるかもしれません。
省エネ対策を実施する企業は、省エネルギー投資促進支援事業費補助金を利用できるケースがあります。
これは省エネのために設備を導入した場合などに経費の一部が補助されるものです。
光熱費の使用量を定期的に点検して無駄を発見したら、省エネ投資の申請も検討してみてください。
外注費・委託費の点検
業務内容に対して外注費が過大であれば、内製化や取引条件見直しでコスト削減を検討してください。
また、委託費も定期的にチェックしたい費用です。成果に対して委託費が見合わない契約は、契約更新の際に条件変更を検討しましょう。
業務効率化ツールを活用することで、外注に依存せず費用を抑えられるケースも多くあります。
現在どのような外注費、委託費があるのか整理してから必要なものを精査してください。
固定資産の減価償却費の確認
固定資産台帳を確認し、未計上になっている減価償却費があれば年内に計上して節税につなげてください。
減価償却の計上漏れは、決算数値の正確性を損ない、金融機関の信用を下げる要因です。
さらに、固定資産台帳を確認して使用していない資産があれば除却や売却を検討しましょう。
保有しているだけで修繕や税金といった費用が発生する固定資産は、処分することで翌年以降のコスト削減を図れます。
経営者が経費・契約関係の見直しを進めるステップ

経費・契約については膨大な量があるため、一つひとつチェックしていくのは大変です。ここでは見直す時の工程をステップごとに紹介します。
はじめやすい部分からスタートしていきましょう。
1.契約内容や支払い履歴を一覧化する
経費、契約関係の見直しを進めるには、まずすべての契約書や請求書を集め、契約内容や支払い金額、期日を一覧表に整理します。
一覧化することで、重複契約や過剰支払いなどの無駄を可視化しやすくなります。
一覧化していると何のための支出であったか失念しているような費用も出てくるかもしれません。
現状を正確に把握することで、次の仕分けや改善策の判断材料を揃えることができます。
2.必要・不要を仕分ける
一覧化した契約や経費は、事業上必須のものと不要なものに分類してください。費用の優先度を明確にして仕分けしやすくします。
ここで不要と判断された契約は、解約や見直しの対象です。また、必要とされた契約についても継続や条件改善を検討します。
経費の仕分けを行うことで、効率的にコスト削減や資金繰り改善を進めることが可能です。
ただし、必要不要は経営陣の独断ではなく、必ず現場からの意見も集めてください。必要があればアンケートを実施する方法もあります。
3.更新・解約スケジュールを確認する
リースやサブスクの契約は、契約ごとに更新日や解約可能期限を確認し、無駄な自動更新を防ぐスケジュールを作成してください。
更新・解約のタイミングを管理することで、費用発生を最適化しキャッシュフローを安定化させられます。
スケジュールを事前に把握しておけば、経営判断を急ぐことなく計画的に契約整理ができます。解約できるタイミングの1~2ヵ月前には更新するかどうか検討を始めてください。
4.削減効果を試算し、翌年の予算に反映する
契約見直しや経費削減によって浮く費用を試算し、翌年の予算に反映して資金計画を立てます。
試算結果をもとにして不要支出の削減効果を可視化するとともに、経営判断の精度の向上が可能です。
予算に反映すると、翌年の資金余裕を生かした投資や新規事業の計画に活用できるようになります。新しい設備投資や新事業の開始など事業計画を立てておきましょう。
5.社内体制を整備し定期点検を習慣化する
契約や経費の確認は経理担当だけに任せず、経営者主導で仕組み化することが重要です。定期点検は時期を決めておかなければ、うっかり忘れてしまうことがあります。
毎年11月に契約点検を行うなど社内ルール化すれば、見落とし防止と業務効率化につながるでしょう。
経費、契約関連は把握している人が少なく、人の入れ替わりで誰もわかっていない状態になることがあります。
ルール化、体制を整えることで、属人的な管理から脱却できます。経費削減を継続的に実現するためにも、持続できるようなシステムを構築してください。
翌年のコスト削減につながる契約整理

翌年以降のコストを削減するには、自社で契約しているサービスの契約を整理します。
ITツールや外注契約をしている場合には費用対効果を振り返り、成果が低いものは見直すようにします。
不要な契約を解約すれば固定費が軽くなり、資金を新規投資や成長分野へ振り分けられます。
効率的に資金を使うためには、契約整理を恒常的に行う体制が欠かせません。
毎年のコスト削減と経営効率化を継続的に実現するためにも、継続的にモニタリングできるような仕組みを作っておきましょう。
まとめ|経費・契約の見直しが新年の経営をスムーズにする
12月は決算や業務対応が集中する時期です。12月になってから慌てないように、11月中に経費や契約を整理するようにしましょう。
経費や契約の見直しによって節税、資金繰り改善、無駄の削減といった多面的な効果を得られます。毎年の恒例業務として見直しを仕組み化すれば、新年を軽やかに始められる経営体制を構築可能です。
単純に見直しと改善をするだけでなく、それを持続して経費・契約の見直しを継続できるサイクル作りが求められています。
1年の締めくくりは、経費や契約の「ムダ」を見直す絶好のタイミングです。
23の経費科目ごとに削減と節税のヒントをまとめた 創業手帳の「経費チェックリスト」 を使えば、来年のスタートをより軽やかに迎えられます。

(編集:創業手帳編集部)





