泣きを見たくない社長は今すぐ経費支払いの社内手続きを整備すべき

創業手帳

“号泣”兵庫県議会議員の不適切経費処理から学ぶ社内手続き整備の必要性

1年間に195回の日帰出張を繰り返したとされる兵庫県議会の野々村議員の「政務活動費」の不適切な支出が世間を賑わしている。

城崎!いいところだ。カニは美味いし、温泉もあるし。「温泉エエな~、カニ鍋エエな~ 県議に嫉妬」との想いは、創業手帳編集部だけではないと思うが、問題の議員の行動について、現時点(平成26年7月7日時点)では、県議会がその法的責任を問うというような報道はなされていない。

庶民の一般的な感覚からすると、明らかに不適切な行動であるとも思われるが、これはどういうことであろうか?

今回は、この議員の行動に関する法的問題を考えながら、企業における経費清算にも目を向けてみよう。

法律違反なのか?

政務活動費に関連する法令を見てみると、政務活動費とは「議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費」とされており(地方自治法第100条第14項)、兵庫県においては、より具体的に、

「調査研究、政策提言、研修、各種会議への参加、広報広聴、要請陳情、住民相談等地域の課題のみならず広く県政全般の課題とこれに対する県民の意思を的確に把握し、県政に反映させる活動その他の県民福祉の向上及び県勢の発展に必要な活動に要する経費」

兵庫県政務活動費の交付に関する条例第2条第1項

と定められており、幅広い活動に関して、政務活動費が認められている。

このうち、例えば、「広く県政全般の課題とこれに対する県民の意思を適格に把握し県政に反映させる活動」との関係でみれば、「同じ温泉宿に通ってその温泉宿の従業員と世間話をする」というような活動であったとしても、ここで認められている活動に当たらないと言い切るのは難しい。

よって、「温泉エエな~、カニ鍋エエな~ 県議に嫉妬(2回目)」と嫉妬は募るばかりだが、現段階では、問題となっている支出が適切であったかどうかはともかく、法令違反があったとまでは言い切れないのである。

もちろん、今後、議員の活動が上記のいずれにも該当しないことが明らかでなった場合や、報告内容に虚偽があること等が明らかになった場合には、議員の法的責任が問題となるであろう。

政務調査費の手続きの問題

今回の件について、議員本人の問題はともかく、そもそも、政務調査費の支出に関する手続きに問題は無いのだろうか?

政務活動費の支出に関する手続については、「兵庫県政務活動費の交付に関する規程」に定められている。

実際に、この規程の内容どおりに運用がなされているかまではわからないが、少なくとも、この規程では、具体的な活動内容の報告までは求められていないようである(兵庫県政務活動費の交付に関する規程|9頁参照)

議員活動には様々なものがあるので、毎回、具体的な活動内容を報告させるというのが煩雑に過ぎる気がする。

とはいえ、「一定の条件に合致するものについては、ある程度具体的な報告をしなければいけない」というように決められていれば、今回のようなことは起こらなかった可能性が高いだろう。

ベンチャー企業における経費支払に関する手続整備の必要性

ベンチャー企業においても、経費支払の手続を整備する必要があることは言うまでもない。

企業法務に詳しい弁護士は語る。「不正な経費支払がなされてしまった場合、もちろん、不正な行為を行った者が悪いことは間違いないが、それを止めることが出来なかった原因の1つに、社内手続の未整備があることは多い。」

起業直後の創業期にあるスタートアップベンチャーでは、人手も不足気味だ。よって、経費清算のような雑務は、出来るだけ手間をかけずに済ませたいところではあるが、不正支出でキャッシュフローに大きな狂いが起きれば、それこそ経営者が「号泣」する事態になりかねない。

少なくとも一定金額以上の高額の支出については具体的な報告を求める等、社内手続については最低限のルールを定めておきたいところだ。

(監修:田中尚幸 弁護士)
(創業手帳編集部)

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