電子定款の認証は専門家に頼んだほうがいい? 作成から認証までの流れとコストを解説

創業手帳

電子定款の作成・認証について解説します

(2020/08/01更新)

株式会社を設立する時、定款を作成して公証人の認証を受ける必要があります。定款には、紙で作成する紙定款と、電子データで作成する電子定款の2種類あります。

電子定款にすると、印紙税4万円をカットできるメリットがありますが、一方で、電子定款を作成して認証を受けるまでは、かなり複雑なステップを踏む必要があります。電子定款の作成から認証までの基礎知識を解説します。

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紙定款と電子定款の違い

紙定款と電子定款の主な違いを表でまとめました。

紙定款 電子定款
公証人手数料 50000円 50000円
印紙代 40000円 なし
申請 FAX、メールまたは公証役場に持参 オンラインで申請
受け取り 公証役場で直接行う 公証役場で直接行う
メリット 手続きの手間が少ない 印紙代がかからない
デメリット 作成の費用が高い 手続きが煩雑で、ハードルが高い

定款の内容作成は紙と同じ

電子定款は、Wordファイルなどで作成した定款を、PDFの形式で電子データ化して認証手続きを行います。

電子データ化する前に、まずは定款の内容を確定させる必要があります。紙で作成する場合とやることは同じです。定款の作り方についての詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。

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まずは定款の内容を作成する

定款に間違いなどがあった時、修正・訂正するためには株主総会で承認得たあと、法務局に変更内容を再申請する必要があります。こちらは電子定款も同じです。コストをカットするために電子定款にしたのに、修正のための手数料で帳消しになってしまった、といったことにならないよう、作成は慎重に行いましょう。

電子化する前に、作成した内容を法務局や公証役場で確認してもらうこともできます。プロのチェックを受けてから電子化に進むほうが、より確実です。

作成した定款を電子データ化する

定款の内容が確定したら、Wordファイルなどで作った定款をPDFデータに変換します。通常、ドキュメントファイルをPDFに変換する際には無料のソフトなどを使って簡単に行うことができますが、電子定款の場合は文書の正しさを証明する「電子署名」を挿入したデータを作成する必要があります。電子署名を挿入できる変換ソフトは基本的に有料(「Adobe Acrobat」など)ですので、変換ソフトを持っていない場合は用意しなくてはなりません。

PDFデータに電子署名を挿入するためには、電子証明書つきのマイナンバーカード(もしくは住基カード)を、PDFデータに読み込む必要があります。電子証明書つきのマイナンバーカードをもっていない場合は、交付申請をして取得しましょう(交付まで1か月程度かかります)。電子証明書の読み込みは、ICカードリーダライタという機器を使うか、スマートフォン※のリーダライタモードを活用して行います。

※対応するスマートフォンの機種についての情報は、地方公共団体情報システム機構の「公的個人認証サービスポータルサイト」で確認できます。

電子化した定款を公証人に提出する

定款の電子化が完了したら、公証人に提出します。法務省のHPにアクセスし、登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」から「申請用総合ソフト」をインストールします。必要な情報を入力して申請書を作成し、電子化した定款のデータを添付して送信すれば、申請が完了します。

公証役場に行き、認証済みの電子定款を受け取る

電子定款は、オンライン上で受け取ることができません。紙と同様に、公証役場に直接出向いて受け取る必要があります。受け取る際の持ち物は以下のとおりです。

  • 発起人(出資者)全員の印鑑証明書
  • 電子署名をした発起人以外の委任状(発起人が複数いる場合)
  • 受け取りに行く人の身分証明書
  • 受け取りに行く人の印鑑
  • 認証手数料:50,000円
  • その他手数料:合計1,700円ほど
  • USBメモリまたはフロッピーディスク、CD-R(電子定款のデータ受け取り用)

電子定款を作成するためにトータルでかかるコスト

電子定款を作成して、受け取るまでの大まかな流れを解説しました。電子定款にすると印紙税4万円をカットできますが、Adobe Acrobatなど有料のソフトを用意する場合は、数万円単位でお金がかかるため、金銭的メリットはあまり大きくないと言えます。また、作成までのステップも複雑で、手間がかかります。すでに必要な機器が会社に揃っており、かつ定款の作成について一定以上の知見がある場合でなければ、トータルのコストは大きくなりがちです。

税理士や司法書士など専門家に依頼したり、電子定款の認証を代行しているサービスを活用することで、手間と費用を抑えることができます。代行サービスの場合、数千円~1万円程度の価格帯で提供しているところが多いようです。

また、会計ソフトfreee(フリー)のように、Adobe Acrobatなどのソフトを揃えなくても電子定款の作成を完結できるサービスもあります。電子定款の作成を考えている経営者は、事業の状況に応じてコストのかからない手段を比較検討しましょう。

無料で利用できる創業手帳の冊子版では、会社設立・経営の初期に役立つノウハウをまとめて解説しています。定款の作成のほかにも基本的な情報を知りたい方は、ぜひ活用してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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