会社設立する時の「定款の書き方」
株式会社を設立する時の、正しい定款の書き方とは
(2018/05/24更新)
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この記事の目次
定款とは
会社設立において、「定款」は避けては通れません。「定款」とは、会社設立時に必ず作成するもので、会社の事業目的、構成員など様々な項目で成り立つ、会社の基本的な規則が記載された文書を指します。
ネットで検索すれば、ひな形もたくさんあるので、穴埋めするだけで、簡単に定款の作成が可能です。ただし、この方法で出来上がるのは、あくまで基本形です。会社設立後の運営をスムーズに進めるためには、本当に必要な事項、適切な事項が記載されている定款が求められます。
定款変更は、かなり面倒!
もし、会社設立後に事業目的に必要事項が記載されていない事業の許認可を受ける際には、定款の目的変更が必要になります。加えて、登録免許税も3万円必要になるのです。こういった余分な手間、時間をかけないためにも、会社設立時に、最大限に手間隙をかけて、“本当に適切な事項”が記載されている定款を作ることが求められます。
ただし、“本当に適切な事項”が記載されている定款を作るには、会社法、株式などに関して、ある程度の基礎知識が必要になります。それを自分で調べる、身につけるには、かなりの時間を要します。そんなときに役に立つのが、「定款」の作成時に、最低限決めておくべきこと、そして、その方法を知っておくことです。今回ご紹介する方法は、基本形なので、しっかりと抑えておきましょう。
会社設立のパターンによって定款の書き方が変わる
「定款」は会社設立のパターンによっても、書き方が変わります。例えば、株式会社の場合には、定款を作成しただけでは効力を生じません。公証役場での手続きが必要になります。これを認証といいます。しかし、合同会社の場合には、定款を作った時点で効力が生じます。自分の作る会社がどのパターンなのか、しっかりと確認する必要があります。
定款の書き方
さて、ここからは実際に、定款の書き方をご紹介していきます。まずは、定款のひな形をダウンロードしましょう。ダウンロードしたものを書き換えながら、読み進めていくと良いでしょう。
定款作成時に「最初に決めること」
会社の名前
まず、最初に決めることは、会社の名前です。商号といいます。商号=会社名をつける際には注意点があります。
- 同一所在地に同一名の会社がないか
- 「商標登録」されている商品名がないか
- 有名企業と同じ会社名ではないか
です。①については、法務局の「商業調査簿」で調べることができます。
②については「特許電子図書館」のホームページを参考にしましょう。③については、聞いたことあるかな?と疑問に思ったときには、インターネットで検索するのがベストです。もし、その会社が大企業でなくても、「不正競争防止法」にあたるものであれば、使用できないので、きちんと調べることを心がけてください。
事業目的
次に考えるべきことは「事業目的」です。あなたの会社が何をしている(していく)会社なのかを記載する必要があります。注意すべきポイントは次の4つです。
- 許認可を受ける予定がある場合には、必要な事業目的を入れる
- 行う予定がない事業目的は記載しない
- 事業目的に記載することで融資が難しくなるケースがある業種もある
- 営利性のあるものを記載する
です。
①は、必要な事業目的を入れておかなかった場合には、許認可が降りない可能性があるので注意が必要です。
②に関しては、例えば、取引先や銀行などの金融機関とのやりとりで、「一体何をしている会社なんだろう」という疑問を抱かせてしまう可能性があるので、行う予定のない事業目的は、記載しないようにしましょう。
③に関しては、例えば「金融業」「遊興娯楽事業」「風俗営業業種」などが事業目的に入ると、金融機関からの融資などを受けることが難しくなるケースがあるので、ご注意ください。
そして④。営利性がないものとは、具体的には、ボランティア活動や、慈善団体への寄付などです。
最初に少し触れましたが、事業目的を後から追加する場合には、「登録免許税」が3
万円ほどかかることも覚えておきましょう。
本店所在地
そして次に考えるのが、「本店所在地」です。これは、本社の住所を指します。自宅兼事務所、賃貸店舗などを借りるというケースが多いですが、最近多いのが、バーチャルオフィスです。会社設立上、本店所在地にバーチャルオフィスを設定するのは、問題はありません。しかし、法人口座の開設の際に、金融機関から「NG」がでるケースもあります。それはなぜか。振込詐欺などの犯罪に使われることが多い法人口座が、バーチャルオフィスを本店登記していることが多いという理由からです。
その他、決めるべき内容としては「広告の方法」「資本金の額」「事業年度(決算月)」「発起人の人数」「取締役の人数・任期」「発行可能株式総数・株式の譲渡制限」「取締役会設置の有無」などがあります。こちらに関しては、別途またご紹介して行きたいと思います。今回は、まずは、これらが会社設立、定款作成時に抑えておくべきポイントということを覚えておいていただければと思います。
具体的な定款の書き方
会社名の記入
さて、実際に書き進めていきましょう。
まず、冒頭の「株式会社◯◯◯◯定款」という部分に、会社名を入れてください。
作成日の記入
次に下記に作成日を記入しましょう。下の2つの記入は不要です。
平成○年 ○月 ○日 作成
平成○年 ○月 ○日 公証人認証
平成○年 ○月 ○日 会社設立
第一章 総則<事業目的・本店所在地・公告の方法>
第一章 総則に移っていきます。
第1条 当会社は,株式会社××××××と称する。
上記☓の部分に、会社名を入れてください
第2条 当会社は,次の事業を営むことを目的とする。
(1) ××××××××××××××××××
(2) ××××××××××××××××××
(3) ××××××××××××××××××
(4) ××××××××××××××××××
(5) ××××××××××××××××××
(6) 全各号に附帯又は関連する一切の事業
上記☓の部分に、事業目的を入れてください
第3条 当会社は,本店を××県××市に置く。
上記☓の部分に、本店住所を入れてください
第4条 当会社の公告は,××××××により行う。
上記☓の部分に、公告方法を入れてください。
- 公告とは
聞きなれない用語かと思いますので、少し解説します。
「公告」とは、債権者や取引先などに大きな影響を与える事項を、広く一般に知らせることをいいます。これは法令上義務付けられており、違反すると、100万円以下の罰金があります。
第二章 株式<発行株式総数・認証機関>
第5条 当会社の発行可能株式総数は,×××株とする。
上記☓の部分に、発行可能株式総数を入れてください。
第6条 当会社の株式を譲渡により取得するには,×××の承認を受けなければならない。
上記☓の部分に、認証機関を入れてください。
第三章 株主総会<招集手続きの省略・決議>
書面投票、電子投票の制度を利用しているときは、招集手続の省略をすることができません。
「決議の省略(簡略化)」をしている場合、招集手続を省略してしまうと、株主の意思表示の機会を奪うことになりかねないからです。
2 会社法第309条第2項に定める決議は,議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。
株主総会の議決の「出席した当該株主の議決権の過半数」は過半数以下に下げることもできます。ただし、役員選任の決議は3分の1未満に下げることはできません。
また、会社法第309条第2項に定める決議とは特別決議を指します。
第四章 取締役<取締役任期>
第7条 取締役の任期はその選任後××年以内に終了する異形年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 補欠又は増員により選任された取締役の任期は,前任者又は他の罪人取締役の任期の残存期間と同一とする。
上記☓の部分に、取締役の任期を入れてください。
第五章 計算<事業年度>
第8条 当会社の事業年度は年1期とし,毎年×月×日から翌年×月×日とする。
上記☓の部分に、事業年度を入れてください。
第六章 附則<決算日・発起人の氏名・住所・株式数>
第9条 当会社の設立後の資本金の額は,金×××万円とする。
上記☓の部分に、最初の決算日を入れてください。
第10条 当会社の最初の事業年度は,当会社成立の日から平成×年×月××日までとする。
(設立時の役員)
第11条 当会社の設立時取締役及び設立時代表取締役は,次のとおりとする。
設立時取締役 ×××
同 ×××
設立時代表取締役 ×××
(発起人)
第12条 発起人の氏名,住所及び発起人が設立に際して引き受けた株式数は,次のとおりである。
住所 ○県○市○町○丁目○番○号〇〇○
氏名 ×××× 〇〇株 金〇〇○万円
住所 ○県○市○町○丁目○番○号〇〇○
氏名 ×××× 〇〇株 金〇〇○万円
(法令の準拠)
第13条 この定款に規定のない事項は,すべて会社法その他法令に従う。
以上,株式会社×××の設立のため,この定款を作成し,発起人が次に記名押印する。
平成○年○月○日
発起人 ○ ○ ○ ○ ㊞
発起人 ○ ○ ○ ○ ㊞
㊞ ㊞ ㊞
上記空欄の部分に、それぞれ発起人の氏名、住所、株式数を入れてください。
【補足】取締役会非設置会社と取締役会設置会社って?
取締役会非設置会社
取締役会を設置するには、3人以上の取締役が必要になります。つまり、2名以下で会社設立をする場合には、取締役会を設置する必要はありません。取締役を設置しない場合には、意思決定機関=株主総会となります。以下、取締役会設置会社の項目で詳しく説明していきます。
取締役会設置会社
取締役会を置くメリットは、意思決定のほとんどを取締役会だけでできるという点にあります。取締役会を設置しない場合には、意思決定機関は株主総会となるためです。
取締役会を設置した場合には、さらに監査役を置く必要があります。理由は、意思決定を取締役会だけでできるので、取締役がきちんとその役割を果たしているのかどうかの監視をする必要があるからです。取締役会を置かない場合には、監査役を置くかどうかは任意となります。通常は置きません。
定款を書く際の注意点
冒頭でも少し触れましたが、ネットで検索すればひな形がたくさん出て来るので、穴埋め程度で基本の定款が出来上がってしまいます。しかし、ひな形はあくまでひな形。会社にピッタリ合った定款を作ることが求められます。本当に自分の会社に必要な事項かどうかをしっかり見極めながら、プラスマイナスしていくことをおすすめします。
ポイントは、今後の変更の必要性が最小限で収まることです。定款の変更は、手間も、時間も、費用も余分にかかることを頭に入れて、最初にしっかりと作りあげておきましょう。
提出の仕方
株式会社の場合には、定款作成で終了ではありません。冒頭でも少し触れましたが、公証役場での「認証」が必要になります。定款認証時に必要なものは下記の通りです。
- 定款(印刷したものを合計3部)
- 発起人全員の印鑑証明書(原本を書く1枚ずつ)
- 身分証明書
- 収入印紙(4万円分)
- 発起人の実印(発起人以外は認め印でOKです)
- 代理人による申請の場合には委任状
①の3部のうち、1部は公証役場の控えとなるので、2部戻ってきます。1部は次の手続きである登記申請用、そして、残りの1部が会社保管用となります。原子定款という位置づけになります。原子定款は、会社設立後に行う税務署への開業届、銀行口座の開設手続きなどに必要になるので、大切に保管しておきましょう。
会社設立の手続きは、インターネットなどを上手に利用すると、かなり安くできるケースもあります。自分でできるところは、なるべく自分でしていくと、初期費用をグッと抑えることができます。時間がない、設立の手続きのための予算はある、安心できる専門家に任せたいといった場合には、会社設立代行サービスなどを上手に使ってみてはいかがでしょうか。
(編集:創業手帳編集部)
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