偽装フリーランスとは?問題点や判断基準、企業の対策まで徹底解説

創業手帳

偽装フリーランスにならないために判断基準や対策を学ぼう


働き方の多様化によってフリーランスとして働く人が増えています。
「令和4年就業構造基本調査」によると、本業がフリーランスの方は209万人、副業のみフリーランスの方は48万人いることがわかりました。
1つの働き方として一般的となってきたフリーランスですが、現在「偽装フリーランス」という問題が浮上しています。
もしフリーランスとして働いているのであれば、自分自身が偽装フリーランスになっていないか確認してみましょう。
また、偽装フリーランスにならないための判断基準や対策も知っておくことが大切です。

今回は、偽装フリーランスの問題点や判断基準などを解説します。最後に雇用する企業側としての注意点も解説しているので、企業担当者の方もぜひ参考にしてみてください。

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偽装フリーランスとは


偽装フリーランスは「フリーランス白書2020」の中で紹介され、定義された言葉です。
偽装フリーランス(偽装請負)は、請負契約でありながら、その実態はまるで企業に勤めている労働者のように扱われているフリーランスを指します。

労働者と同じように扱われていると言っても、労働者は労働基準法などで保護されていますが、フリーランスは法的な保護の対象にはなりません。
そのため、労働者と同じように働いていながら法的な保護を受けられない点が問題となっています。

フリーランスとの違い

フリーランスは、働き方の裁量や経済自立性などが前提であり、業務に対する責任を自身がすべて負うことになる自律的な働き方を指します。
例えば案件ごとに企業と契約を交わし、業務を請け負っていきます。勤務時間や仕事をする場所、仕事量などは自分である程度決められるため、自由度の高い働き方に憧れる人も多いでしょう。自分で仕事を取りに行ったり、仕事を安定して請け負えるようになるまでは収入が不安定になったりするなど、デメリットになる部分もあります。
しかし、その分自由度の高い働き方が可能です。

偽装フリーランスの場合、フリーランスであるにも関わらずまるで企業に勤務しているような働き方になり、自由度がほとんどありません。
フリーランスの大前提である自律的な働きができなくなってしまいます。

個人事業主との違い

個人事業主は、法人は設立せずに個人で事業を営んでいる人を指します。
開業届は事業を始める際には税務署に開業届を提出しますが、特に提出していなかったとしても罰せられることはありません。
ただし、個人事業主は基本的に税務署へ開業届を提出している傾向にあります。

フリーランスは開業届の提出に限らず、仕事に合わせて契約を自由に結ぶことが可能です。
個人事業主もフリーランスと同様に契約は自由に結べますが、仕事や取引先などがある程度決まっている点は個人事業主のメリットと言えます。
偽装フリーランスだと仕事は決まっているものの、契約は自由に行えなくなってしまいます。

偽装フリーランスは何が問題なのか?


企業に勤めているような感覚で仕事を行っている偽装フリーランスは、どこに問題があるのでしょうか。ここでは、偽装フリーランスの問題点をご紹介します。

自分の裁量で働けない

第一に、自分の裁量で働けない点が問題として挙げられます。上記でもご紹介したように、そもそもフリーランスは働き方の裁量や経済自立性などが前提にあります。
この前提があるからこそ、仕事に対する責任を自分で負い、業務を行うのがフリーランスです。
しかし、偽装フリーランスは基本的に企業の指示に従い、時間や仕事量などが細かく決まっています。
これでは企業に在籍する労働者とほとんど変わらず、自分の裁量で働けないのが問題点です。

労働基準法が適用されない

偽装フリーランスの問題点として、労働基準法の適用を受けない点も問題とされています。
企業と雇用契約を結ぶ労働者は、不当に扱われないよう労働基準法によって守られています。
偽装フリーランスの場合、雇用契約ではなく業務請負契約となるため労働基準法は適用されません。

例えば労働基準法であれば一定の労働時間を超えて働いた場合、残業代が支払われますが、偽装フリーランスはいくら長時間働いても残業代はありません。
自由な働き方を企業によって制限されているにも関わらず、労働者の権利や保証も受けられないため、さらに弱い立場になってしまうのが問題となっています。

労災が利用できない

労働者は業務上の事由でケガをした場合、労災を利用することで治療費や休業補償などの給付金を受けられます。
また、万が一ケガや病気などで働けなくなったとしても、不当に解雇してはいけないと法律でも保護されています。
この労災保険は労働者1人でも雇用する際に適用されるため、企業規模に関わらず利用することが可能です。

その一方で、フリーランスは労災が利用できません。行っている業務は労働者と同じなのにフリーランスということで契約上労災が利用できないのです。

偽装フリーランスかどうかの判断ポイント


いまいち自身が一般的なフリーランスなのか、それとも偽装フリーランスに該当しているのかわからない方も多いでしょう。
偽装フリーランスかどうかを判断する際には、以下のポイントをチェックしてみてください。

  • 指揮監督下の労働になっていないか
  • 労働に見合った対価が支払われているか
  • 労働基準法における「労働者性」は強くないか

指揮監督下の労働になっていないか

あくまでもフリーランスは自分で仕事を選べる立場にあります。
しかし、仕事を選ぶことができず、企業の指揮監督下で労働を行っている場合は偽装フリーランスに該当する可能性が高いです。

諾否の自由

発注者から仕事の依頼や業務に従事するよう指示があった時、その仕事を受けるか受けないかをフリーランス側が決められるかを考えてみましょう。
例えば、締結した契約には含まれていない仕事まで依頼された場合、断る選択肢がなければ偽装フリーランスに該当してしまいます。
追加の依頼はフリーランス側のスケジュールやできる範囲なども加味した上で、特に問題がなければ受けても良いです。
しかし、ここで断るという選択肢がなかった場合、諾否の自由はないと言えるでしょう。

指揮監督の有無

労働者であれば業務を遂行する上でマニュアルに従って仕事を進めていきますが、フリーランスの場合は業務の性質上の理由がなければ、業務遂行の手順や進め方まで任せるべきだとされています。
そのため、業務の内容や遂行方法などに関する発注者側の具体的な指揮命令があるかどうかも偽装フリーランスの判断ポイントです。

例えば、業務の性質として、期限が決められている際に納期を示したり、一貫性を持たせるために仕様書やレギュレーションなど示したりする場合は許容範囲内となります。
しかし、マニュアルに記載された手順を遵守するよう指導された場合は、指揮監督はあると言えます。

拘束性の有無

発注者側から勤務時間や仕事をする場所が指定され、労務・勤怠管理が行われている場合は拘束性があるとして、偽装フリーランスに該当します。
例えば業務を遂行するために必要なミーティングをオフィスで行う際に、日程調整を事前に行った上で出社を求めることは問題ありません。
しかし、毎日の勤務時間を指定して、勤務時間や休憩時間になる度に開始・終了報告を求められる場合は拘束性が高いと判断できます。

代替性の有無

フリーランスに代わって他の人が労務提供することや、補助者を使うことが認められているかどうかも、偽装フリーランスを判断するためのポイントです。
例えば発注者から仕事を請け負った場合、その仕事を第三者に再委託することを双方で合意していれば特に問題ありません。
逆に発注者から第三者への再委託を禁止されている場合、代替性がないと判断され、偽装フリーランスに当てはまる可能性があります。

労働に見合った対価が支払われているか

フリーランスの場合、基本的には契約内容に応じて業務を遂行したことに対して報酬を受け取ります。
つまり、労働に見合った対価が支払われているか確認できれば、偽装フリーランスではないと言えます。

一方、労務提供した時間に対して報酬が支払われている場合、偽装フリーランスの可能性が高いです。
例えば契約上示された稼働目安時間よりも早く業務を遂行したにも関わらず、時間が余っているからと別の業務を与えて消化させているケースは注意が必要です。

労働基準法における「労働者性」は強くないか

偽装フリーランスを判断するポイントとして、労働者性が強くないかどうかも基準となってきます。

事業性の有無

機械や器具、衣装の負担などをすべてフリーランスが負担している場合、事業者性はないと判断できます。
ただし、セキュリティ上の理由などから必要な機材をフリーランスに貸与している場合は許容範囲です。

また、仕事に対する報酬額において、同じ業務に従事する労働者と比べて高額に設定されている場合、事業者性はないと言えます。
なぜなら、企業はフリーランスに外注を依頼することで高い専門性を得たり、フリーランスの経費や社会保険料負担なども踏まえたりすることで、労働者の水準よりも高くなりやすいからです。

専属性の高さ

労働者性の強さは、特定の発注者に対する専属性によっても判断することが可能です。フリーランスは独占契約を結ばない方が労働者性は弱くなります。
もし発注者がフリーランスに対して他の事業者から請負契約を受けることを禁止している場合は、偽装フリーランスに該当する可能性が高いです。

他の従業員と同じルール・システムの適用

企業には所属していないフリーランスでありながら、発注した企業の就業規則・服務規程などの遵守を求められた場合、労働者性が強いです。
就業規則に限らず、従業員と同じルール・システムが適用されている場合は労働者性が強くなっています。
ただし、フリーランスの就業環境を向上させることが狙いで、有料または無料で福利厚生と同じようなサービスが提供されている場合は許容の範囲内と言えます。

偽装フリーランスとして働かされないための対策


偽装フリーランスとして働かされないためには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。ここでは、偽装フリーランスにならないための対策を紹介します。

偽装フリーランスの問題について理解する

そもそもフリーランス自身が「なぜ偽装フリーランスが問題なのか」「企業はなぜ偽装フリーランスとして働かせようとするのか」を理解することが大切です。
2023年4月にフリーランス新法が可決され、フリーランスが安定した労働環境で仕事をするための法律が設けられました。
政府も偽装フリーランス問題を解決しようと、フリーランス新法を可決して安定した労働環境下で仕事ができるように努めています。
しかし、それでも現状の問題を解決するには自ら行動しなくてはなりません。そのためにも、偽装フリーランスの問題についてしっかりと理解する必要があります。

複数のクライアントと取引する

フリーランスは発注者を1つに絞らず、複数のクライアントと取引することが大切です。
近年はフリーランスが仕事を受けるためのプラットフォームも整備され、仕事が受けやすくなりました。
しかしその一方で、突然仕事がなくなってしまう可能性もあります。最低でも3社以上と継続して取引を行えることが1つの目標になってくるでしょう。

万が一巻き込まれた場合の相談先も知っておく

将来的に自分自身が偽装フリーランスに該当するような働き方になってしまった場合に備え、相談先を知っておくことも大切です。
「フリーランス・トラブル110番」は、契約や仕事上トラブルが発生した際に、弁護士が相談から解決までワンストップで対応してくれるサービスです。
担当する弁護士はフリーランス関連の法律問題にも詳しく、相談自体にお金はかかりません。
匿名でも相談できるので、偽装フリーランスかもしれないと疑わしい場合は気軽に相談してみましょう。

雇用する企業側も偽装フリーランスに注意が必要!


ここまでフリーランス側の立場から、偽装フリーランスの判断ポイントや働かされないための対策などをご紹介してきました。
偽装フリーランスを生み出さないためには、雇用する企業側も注意しなくてはならないポイントがあります。

契約時における注意点

契約時における注意点は、以下の3つです。

再委託を禁止するなら契約書に明記しておく

フリーランスが第三者に再委託をするかどうかは自由に決められますが、企業によっては再委託を禁止するよう伝えている場合もあります。
再委託を禁止すると労働者性が強いと判断されてしまうので注意が必要です。
もし、セキュリティ上の問題やフリーランス自身のスキルを買っていて再委託を禁止する場合は、その旨を契約書に明記してください。

適正な報酬を支払うために基準を決める

請負契約は労務提供した時間ではなく、成果物に対して報酬を支払います。
そのため、労働時間を基準に報酬額を決めてしまうと偽装フリーランスに該当する可能性が高まります。
適正な報酬を支払うためには、まず職種や分野などで請負契約をした場合の一般的な相場を確認してみてください。

専属契約の強要はNG

フリーランスは自分の裁量で他社からも業務を請け負うことができます。場合によっては専属契約でも認められる可能性はありますが、企業側が強要するのはNGです。
専属契約を結んでしまうと、他社から業務を請け負うことが難しくなってしまい、労働者性が強いと判断されてしまいます。

また、他社からの業務を受けられないように追い込んでしまうと、独占禁止法第3条に抵触し、違反する恐れがあるので注意が必要です。

偽装フリーランスと判断された場合の罰則

もしも企業側が偽装フリーランスとして相手を働かせていた場合、実態的には請負契約ではなく雇用契約となるため、結果的に労働基準法の違反が成立する可能性が高いです。
例えば、偽装フリーランスに対して法定労働時間以上の労働を行わせた場合、労働基準法第119条の規定で6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されてしまうかもしれません。
企業側にとってもリスクが高いため、偽装フリーランスにならないよう業務の割り振りや契約内容などを改めて確認してください。

自身が偽装フリーランスになっていないか今一度確認しよう

多くの企業でフリーランスへの請負契約を活用していますが、気を付けないといつの間にか偽装フリーランスに該当する働き方をしている可能性もあります。
今回ご紹介した判断するポイントを参考にしつつ、自身が偽装フリーランスに当てはまっていないか、今一度確認するようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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