歯科医の開業は何が必要?開業を目指す人が知っておきたい情報を紹介します

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歯科医開業のメリット、必要な資金、成功に向けた手順を解説


歯科医として現在働く人の中には、開業しようと考えている人もいるのではないでしょうか。診療科目や年収に、それぞれの理想があるでしょう。

現実として、開業する歯科医すべてが成功しているわけではありません。
開業する時には、ほかの歯科医院とどう差別化するか、患者さんをどのように集めるかも考えておきたいポイントです。

この記事では、歯科医師の開業にあたってのメリット・デメリット、必要な資金、開業までの流れを解説します。

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歯科医開業のデータと現実を知っておこう


歯科医として、自分の理想とする医院を作りたい、積み重ねた経験を活かしたいと開業する人はたくさんいます。
しかし、多くの人は自分が開業する際には、失敗に終わるイメージは抱きません。
歯科医の開業について紹介するにあたって、まずは歯科医開業のデータについて現状を解説します。

歯科医師が多いのは本当?

歯科医師が多いといった話は、巷でも度々聞かれます。
実際には歯科医師の数はどの程度なのでしょうか。

厚生労働省が発表した『令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』によると、全国の届出歯科医師数は107,443人です。
これは前回の調査よりも2,535人(2.4%)増加した数字です。また、人口10万対歯科医師数は85.2人となっています。

さらに、歯科医師数を施設や業務の種別ごとにみていきます。
歯科医のうち、診療所で働いているのは91,789人で85.4%。
診療所の開設者や法人の代表者は、58,867人で54.8%でした。

一方で、比較として医師をみてみます。
医師のうち、診療所で働いているのは107,226人で31.6%、うち開設者は72,586人で21.4%でした。
つまり、医師と比較しても歯科医の開業の割合は高いといえます。
歯科医師が人口に対して多いか少ないかは人の見方によっても異なるかもしれませんが、歯科医院が増加傾向にあり、開業する人の割合が多いことはわかります。

人口減少で歯科医開業も変わる

歯科医院であっても、治療を求める患者さんの需要とそれに対する医療の供給がうまくいかなければ経営難に陥ります。

総務省の人口推計によると、2022年9月1日の人口は約1億2,475万人。
出生率も下がり、日本の人口は右肩下がりの減少を続けている状態です。
しかし、前述の厚生労働省の調査によると、歯科医は増加傾向にあることが示されています。
そのため、いずれは人口に対して歯科医が多くなり、需要と供給のバランスが崩れるリスクがあると考えられます。

これらの数字だけでいえば、開業する歯科医の環境は厳しくなると考えられますが、歯科医療サービスのあり方は近年変化しつつあり、歯科医と人々の関わり方も変わってきました。

今までの歯科医は、虫歯などの治療がメインで通院した患者さんに対して歯科医療を提供することで完結していましたが、近年では口腔衛生の意識が高まっています。
患者さんの状態に応じて地域医療と連携、口腔機能の維持や回復、予防医療を提供する歯科医も増えてきました。
これからの歯科医療は、より専門性が高い、顧客のニーズに対応できる歯科医療を提供するといった戦略性も求められます。

歯科医開業のメリット

開業は、歯科医にとって大きなターニングポイントです。メリットとデメリットの両方を考慮してから、進むべき方向性を定めてください。
以下に、歯科医院開業のメリットとデメリットを紹介します。

自分が理想とする方針で経営できる

歯科医として独立開業すれば、自分がその医院のトップとして仕事できます。
勤務医の立場では、診療方針や患者さんへの対応も自分だけの裁量にはできず、組織の考えと個人の考えや理想の間で葛藤を抱えてしまうこともあるかもしれません。

もちろん、勤務医であっても理想の診療は目指せるものの、いずれは自分が目指す診療を提供できる医院を開業したいと考える人も多いはずです。
制限に縛られず、自分が決めた方針を追求したい人にとって、開業は大きな意味を持ちます。

立地や規模を選べる

歯科医院の開業では、開業場所や規模もある程度自由に選べます。
そのため、小児歯科を専門とするのであれば子育て世帯が多いエリアといった形で、自分の求める診療に適した立地や規模を選択可能です。
ホワイトニングの機器や矯正器具も何を採用するかを決定できるため、提供したい治療に合った医院を立地や規模から自分で選んで作り上げられます

成功すれば年収が高い

勤務医の場合、その勤務先ごとのテーブルで給料が計算されます。
一方で、開業した場合には成功すれば勤務医以上の年収を受け取ることも可能です。
経営者としてのリスクはありますが、年収を増やしたい、自分の実力を発揮したいと考える人にも開業は適した選択肢といえます。

歯科医開業のデメリット

歯科医の開業はメリットが多くある一方で、デメリットも少なくありません。
特に資金面、経営面は慎重に考える必要があります。
ここからは、歯科医開業のデメリットを紹介します。

自分で経営しなければいけない

歯科医にとって、経営は専門外で未経験だと感じる人もいるのではないでしょうか。
しかし、開業医となれば医院のトップとして運営していかなければいけません。

運営方針や医院のコンセプトを決めるのはもちろんのこと、患者さんに知ってもらうための広告やスタッフの教育なども業務内容です。
診療技術の向上や新しい医療の勉強をする時間を取りたいと思っていても、経営に関する業務が多ければ、その時間が捻出できなくなるかもしれません。

また、歯科医院はブランディングも重要です。
医院のイメージによって、来院する人々の層も変わります。
自分の技術や知識だけでなく、医院を経営する能力も求められることを忘れずに覚えておきましょう。

代表として責任を負う

開業することによって、代表者としての責任も負う必要があります。
医院経営がうまくいかずに負債を抱えてしまった場合や、ミスやトラブルが起きてしまった場合にも自分が責任を負う点は、勤務医との大きな違いです。
医院を開業する場合には、これらのリスクにどうやって対処するかも考えておく必要があります。

集客が必要

新しく開業した医院の多くは、認知度が低いために患者さんを集めるにも苦労します。
そのエリアですでにかかりつけ医を見つけている人も多いため、新しい医院は不利になってしまうことがあります。

広告を出したり、ホームページを作成したりと初めのうちは医院について知ってもらえるような施策を行ってください。
地道な広告や宣伝を実施しても実を結ぶのはすぐではなく、先のことになります。
初めのうちは利益が出にくいと考えて、資金繰りには事業が安定するまでの費用も計算しておきます。

資金を準備しなければいけない

歯科医開業にあたって、避けては通れないのが資金の問題です。
物件の購入や家賃だけでなく、歯科医院は診療台や医療機器の費用がかかります。
また、医院の内装や宣伝にも費用がかかるため、負債を抱えながら経営している歯科医院もあります。

歯科医開業に必要な資金

歯科医に必要な資金は、開業するエリアや物件、規模によってもまったく異なります。
おおよそ5,000万円以上は必要といわれますが、資金は主に設備投資資金と運転資金の2つに分けられます。

設備投資資金

設備投資資金は、歯科医院を開業するための初期費用として必要なお金です。
建物や医療機器を購入するほか、電子カルテや予約システムにかかる費用、医院の内装や外装費用も含まれます。

また、物件を購入する場合はその費用、借りる場合には礼金と敷金が必要です。
設備投資資金は大きくなりがちですが、医療機器や設備を安くしようとすると提供できる医療やサービスの質が低下してしまう恐れもあります。
医療機器はリース契約で初期費用を抑えるといった手段も検討してください。

運転資金

運転資金は医院がオープンしてから経営が安定するまでに使う資金です。
保険診療の診療報酬は、診療を行ってから請求して入金するまでにタイムラグがあります。
最初のうちは手元にお金が残りにくいため、それも踏まえて運転資金に余裕を持って用意しておくようおすすめします。

歯科医の開業タイプを考えよう


歯科医と一言にいっても、誰にどのような診療を提供するかによってタイプが細分化されます。
「歯科」と表示してある場合には、一般的な歯科診療がすべて含まれていますが、診療科ごとに専門性は高まります。
ひとりで多くの診療科を担当するのは困難であるため、複数の医師が在籍しているケースも多いようです。
どういったタイプの歯科医院があるのかを紹介します。

保険診療中心のクリニック

いわゆる歯科医院としてイメージしやすいのが、保険診療中心のクリニックです。
保険診療をメインとしているため、患者さんが支払う費用も安価で全体の1~3割を支払います。
利用者も多く、地域に貢献したい、多くの人の口腔衛生を改善したいといったニーズにも適した形態です。

ただし、保険診療中心のクリニックは、国が決めた報酬メインとなるため収益面で課題を抱えることも少なくありません。
保険診療を中心としつつ、一部を自費にしてインプラントを提供するといった部分的に自由診療を取り入れる形態も検討すると良いでしょう。

自由診療中心のクリニック

自由診療のクリニックでは、保険外になるような治療も可能で、高度な機材も自由に使えます。
治療費も歯科医院が自由に決められるため、収益面で余裕がある経営をしやすい点もメリットです。

ただし、治療費が高額のクリニックは、通う患者さんも限られるため集客が課題となる場合もあります。
基本的な治療は保険診療のケースもありますが、中には自由診療に限定する医院もあります。

矯正歯科

矯正歯科は歯並びの矯正を専門に行っており、一部のケースを除いて自由診療となり見た目を重視した治療も実施します。
治療は長期間に渡るのが一般的で、治療だけでなくアフターフォローも行います。
矯正を専門とする医院のほかに、通常の歯科診療と並行して矯正歯科を導入している医院も少なくないようです。

小児歯科

小児歯科は、子どもの歯の治療を専門とする医院です。
乳歯から永久歯への生えかわりや骨格の変化といった成長期における子どもの歯の治療は、大人とも違う配慮や対処が求められることもあります。
治療内容はもちろんのこと、子どもの恐怖心を和らげるような内装や工夫といった点も重要です。

歯科口腔外科

歯科口腔外科は、口腔内やその周辺の病気、外傷の治療を行います。
口腔外科では幅広い治療に対応でき、顎関節症や親知らずの抜歯なども請け負います。
口周りの病気におけるプロフェッショナルなので、虫歯や歯周病の治療をメインとするほかの歯科医院では対応できないようなケースにも対応が可能です。

審美歯科

審美歯科は、歯並びを整えたり、歯のホワイトニングをしたりと、口元と歯の美しさを追求する施術を専門としています。
審美目的の場合には保険適用とならないため、すべて自由診療です。

保険診療で使用した差し歯などが目立ってしまう場合に、差し歯の種類を変えて美しい見た目にすることも審美歯科に含まれます。
ただし、審美歯科は診療科名としては広告できません。
そのため、ホームページで審美歯科の内容を案内することになります。

歯科医開業までの流れ


いずれは独立したい、開業して年収アップを目指したいと漠然と考えていても、具体的に何から手を付ければいいのかと悩む人もいるのではないでしょうか。
最後に、歯科医院を開業するまでの流れを紹介します。

1.事業計画を立てる

開業するためには、自分がどのような医院を目指したいのかを考えてみます。
どのような診療内容にするのか、誰に対して治療を提供したいのかをイメージしてください。
保険診療と自由診療のどちらをメインにするのか、矯正や歯科口腔外科、小児歯科を扱うかどうかも検討することが必要です。
医院の診療内容によって導入する医療機器にも違いが出ます。

また、事業計画ではどのくらいの規模の医院にするかも考えます。
歯科医師は自分だけにするか、ほかの歯科医を雇用するのか、歯科衛生士や歯科助手を何人雇うかも考えてください。

2.エリアや立地の選定

開業する医院のイメージが固まったら、開業するエリアを選定します。
エリアは、開業する医院のターゲット層に合う年齢構成の場所を選んでください。
例えば、小児歯科であれば子育て世帯が多いエリア、審美歯科を提供するのであればショッピング街や駅の近くにある利便性の高いエリアが適しています。

気になるエリアを見つけたら、すでに開業している歯科医院を探してみるようおすすめします。
診療内容の同じ歯科医院がある場合には、差別化できるポイントがあるかどうかも探してみてください。

3.医療機器の選定

歯科医院では、様々な医療機器を使います。
歯科治療ユニットのほか、バキュームなどの機器、X線装置など予算をみながら選定していきます。
資金面で苦しい場合には、リース契約を締結して毎月リース料を支払う方法も手段のひとつです。

4.資金調達

物件や必要な医療機器を選定したら、必要な費用や借入金額を計算してみてください。
毎月の固定費を計算するとともに、開業時にかかる医療機器や診療ユニットの費用も計算に入れます。

事業計画書を作成して、売上目標はいくらなのか、借入金はいくら必要かを記載します。
民間金融機関や政府系金融機関からの融資を受けたい場合には、窓口で相談することも大切です。

資金調達について、詳しくはこちらの記事を>>
開業資金を集めるにはどうすればいい?知っておきたい制度や手法をまとめました

5.人材の確保

開業にあたって、人材の確保も行います。
歯科衛生士や歯科助手、歯科技工士はどれだけ必要か、受付事務は何人雇うか検討します。
人材の募集は、折込広告や転職サイトが便利です。

6.保健所などの手続き

歯科医院を開設するには、保健所で開設届を提出します。
管轄の保健所に、開設して10日以内に提出してください。

構造や設備が基準に適合しなければいけないので、開業計画の段階で相談しておく必要があります。
届け出から承認までに時間がかかることもあるので、スケジュールについても相談して余裕をもたせておくようにします。

まとめ

歯科医は将来的に開業する割合が多い職業です。いずれは独立したい、継承する予定があるなど、人によって開業へのステップが異なります。

立地や診療科目、資金に設備、人材確保など、準備は多岐に渡ります。
自分がどのタイミングで開業するのか、理想のタイミングに開業するためにいつから準備が必要なのかを逆算して動くようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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