個人事業主必見!電子帳簿保存法の対応方法や注意点などを徹底解説

創業手帳

電子帳簿保存法は個人事業主も対象に!


電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類を電子データで保存する際の要件などを定めた法律です。
仕訳帳や総勘定元帳、損益計算書や貸借対照表といった決算関係書類、請求書や領収書が当てはまります。
1998年に制定された法律ですが、2022年に電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の3つの区分すべてを対象にした改正が行われました。
電子帳簿保存法は法人のみが対象と考えている方もいますが、企業規模を問わずすべての事業者で対応しなければいけないため、個人事業主も対象です。

そこで今回は、個人事業主にも影響を与えている電子帳簿保存法について説明すると共に、対応方法や理解しておくべき内容をご紹介していきます。個人事業主の方はぜひ参考にしてください。

個人事業主にも関係がある…と聞いても、実際にどのような対応をしたらよいか、イメージできていますか?まだ対応について何も検討されていないという方については、是非この「電子帳簿保存法改正 対応ステップシート」をご活用ください!対応が必要な事を網羅しつつ、最低限、いつまでにどの程度対応しておいたら問題ないのかをわかりやすく解説!無料でご活用いただけます。



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電子帳簿保存法は個人事業主にも影響を与える


電子帳簿保存法は、法人だけではなく個人事業主にも関係してくるものです。詳しく解説しながら、保存要件についてもご紹介します。

法人だけではなく個人事業主も対象になる

国税に関する書類の多くは、10年程度の保管が義務付けられています。
従来は紙での保存がメインでしたが、2022年に施行された法改正で電子データでの保存が義務付けられました。
その対象は法人のみならず個人事業主も対象で、デジタル化やペーパーレス化を検討していなかった事業主も対応する必要性があります。

電子帳簿保存法は前述したように、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の3つの区分があります。

  • 電子帳簿等保存:自らがパソコンなどで作成した帳簿や書類をデータのまま保存
  • スキャナ保存:紙で受領した領収書や請求書をスキャンして保存
  • 電子取引:電子取引で授受した書類を電子データのまま保存

上記のうち電子帳等保存とスキャナ保存は任意ですが、電子取引はすべての法人・個人事業主で義務化の対象です。

ただし、「すぐには対応できない」といった事業所も多いため、2年間の猶予期間が設けられています。
2024年1月までには電子取引が義務化されるので準備を進めなければいけません。

電子データの保存要件を満たさなければいけない

電子帳簿保存法には一定のルールがあるので、要件を満たす必要があります。
3つの区分によってそれぞれ定められた要件に違いがあるので、要件に沿ってデータを保存してください。

・電子帳簿保存
改ざんされていないことを証明するための真実性の確保と、誰でも確認できる状態を示すための可視性の確保それぞれを満たさなければいけません。
真実性の確保においては、削除した部分や訂正した箇所の編集履歴を残すことや他書類との相互関連性を明確化する、操作説明書や事務処理マニュアルといったシステム関連書類を備え付けなければなりません。
可視性の確保では、見読可能性の確保のためにデータ管理をする設備の操作説明書といったマニュアルを備え付け、すぐに出力できるようわかりやすい状態に整理する必要があります。

また、勘定科目や取引年月日、取引金額といった主要な項目を検索条件に設定し、日付や金額の項目においては範囲指定での検索ができるよう検索機能の確保が求められています。

・スキャナ保存
スキャナ保存の真実性の確保では、入力期間の制限があります。
また、解像度200dpi相当以上で赤・緑・青の階調が256以上といったカラー保存が要求され(一般書類は白黒でも可能)、読み取り時のデータを確認できるような保存が求められています。
タイムスタンプの付与やデータの入力者・直接監督を行った者に対する情報の確認も実施しなければなりません。

可視性の確保に関しては、帳簿と関連書類との相互関係性の確保を確認できるようにします。
また、カラーディスプレイや14インチ以上の画面、4ポイント文字が読めるといった機器の備え付け、取引年月日・取引金額・取引先といった項目を検索できる機能の確保も求められています。

・電子取引
電子取引では非改ざん性の確保における要件が設けられています。
タイムスタンプを付与した後にデータのやり取りを実施することやデータの悪用・改ざんといった不正を防ぐための事務処理規定を設けること、内容の削除や訂正といった記録を確認できるシステムで保存するといった内容です。

可視性の確保の要件としては、データの保存時に操作マニュアルやシステムの概要を備え付けることや検索機能を持たせることが要求されています。

個人事業主が電子帳簿保存法に対応する方法


法改正によって電子取引を実施した際には電子データでの保管を行わなければいけません。電子帳簿保存法に対応するためのポイントを説明していきます。

1.ファイル名と保管場所を決めておく

取引きをした電子データは、税務署からの要請があった際にも迅速にデータを探せるように保管する必要があります。
パソコン上に保管する事業所も多いですが、不具合によってデータが消失してしまう危険性もあります。リスクを考えてUSBにバックアップを取っておくと安心です。
バックアップの更新が面倒な場合は、クラウドサービス上に保存することもおすすめです。

また、保存する際には検索条件を満たさなければいけません。
取引年月日・取引先・取引額で検索できるよう保存し、ファイル名には「2024.0101.企業名.内容」といった検索要件を付与すると利便性が良くなり検索もしやすくなります。

法改正がされた後でも、紙で受領した書類があればデータではなく紙での保管も可能です。
しかし、紙と電子データと2種類の保存が混在すれば管理が困難になってしまいます。取引先にはデータでの送付を依頼し、ペーパーレス化を進めてください。

2.電子帳簿保存法に対応した会計システムに変更する

電子帳簿保存法には前述したようにルールがあり、3つの区分に応じて要件を満たした保存方法が必要です。
加えて検索要件もあるので、個人事業主であると「データ処理を施す時間がない」「手間をかけたくない」「わからない点が多い」と悩み、後回しにしてしまうケースもあるでしょう。

そのような時には、電子帳簿保存法に対応している会計システムの導入を検討してみてください。
会計システムを取り入れれば、管理作業の負担が軽減でき、書類やデータの紛失、保存ミスといったリスクも防げます。

ただし、会計システムといっても種類が豊富です。
選び方としては、電子帳簿保存法の要件適合の指標となる「JIIMA認証」を取得している製品であることや、保存できる書類の種類と機能、コストを考慮することが大切です。
すべての国税関係書類に対応しているシステムもあれば、領収書に特化した会計システム、請求書に特化した会計システムなどもあるので、自社にとって最適なものを選んでください。

3.業務フローを見直す

法改正までには猶予があるので、データを紙に印刷して保管していた個人事業主の方もいるかもしれません。
しかし、同じような流れでは電子データでの管理は困難なケースもあります。

業務フローが確立している場合は、見直しを行うと効率良く運用できます。中でも、受領・発行・保管の部分は見直しが必要になるケースが多いです。

  • データで受領した際の精算方法
  • 支払い申請に必要な項目
  • データの確認や承認方法
  • 会計システムへの仕訳入力方法

細かいルールを決めるだけではなく、社員への周知徹底も必要となります。

4.現在の取引きを整理する

電子帳簿保存法に対応するためにも、自社でどのような電子取引が行われているのか現状を把握して整理する必要があります。
請求書や領収書など、どのような取引書類があるかをチェックし、取引書類ごとの授受方法や保存方法、件数をチェックしてみてください。

  • 授受方法:各取引先の受け取り方法(クラウドサービス・EDI・PDF・FAX複合機など)
  • 保存方法:受け取ったデータの保存先はどこか
  • 件数:月間や年間でどの程度の件数の取引きが実行されているのか

上記を確認し、取り決めた保存方法や業務フローに合わせてデータを保存していきます。

5.規定を作る

真実性の確保を満たすための要件として記録が残るシステムを活用しない場合は、事務処理規定を作成する必要があります。
規定を作る場合は、国税庁のホームページにおいて作成例のサンプルを用意しているので参考にすると便利です。

作成する際には、運用可能なものにするためにも、自社の業務フローやシステムに合わせることが大切です。

電子帳簿保存法の改正で個人事業主が知っておくべきこと


法改正によって注意すべき点もあります。法改正でリスクを負わないためにも、以下のポイントを把握しておいてください。

1.青色申告で65万円の控除を受けるには追加条件がある

確定申告の際に売上げから経費を差し引いた利益に対して税金が課せられますが、特別控除が適用される場合は、控除額を差し引いた額に税金が課される仕組みです。

青色申告であれば、最大で65万円の控除が受けられるため個人事業主には有利な制度でした。
しかし、2020年度分の確定申告から、従来の条件のまま申告してしまうと特別控除が55万円に減額されてしまうので注意してください。

  • 仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存している
  • 確定申告書、貸借対照表、損益計算書などの提出をe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使って申告している

上記2つが条件としてプラスされています。
どちらか一方のみ条件を満たせば65万円の控除が受けられるので、電子システムに対応してから確定申告を実施するようにしてください。

2.電子データの保存が義務化される

前述しているように、電子帳簿保存法の中でも電子取引データの保存は義務化されます。
2023年は猶予期間となっていますが、2024年1月からは取引きを行った電子データはそのまま電子保存する義務があります。
個人事業主の場合は、取引先のやり方に合わせて保存・管理をしている方も多いはずです。
しかし、領収書や請求書、注文書や見積書、納品書といった証憑書類は、紙にプリントアウトをして保存できなくなるため注意してください。

証憑書類は、紙で受領した場合は紙で保存することも可能ですが、ペーパーレス化を進めたい場合はスキャナ保存を選択すると管理がしやすくなります。
ただし、スキャナ保存をする場合も訂正や削除をした履歴が残るシステムを導入するなどの要件があるので、クリアできるよう対処しなければいけません。

3.違反すると罰則が課せられる

電子帳簿保存法に違反すると、罰則を受けてしまうことになります。違反した場合の罰則は以下のとおりです。

・青色申告の取り消し
電子帳簿保存法で義務付けられている要件に違反した場合、承認が取り消される可能性があります。
電子データの保存が確認されなくても正しく申告が実施されていれば、すぐに申告が取り消されるわけではありません。
しかし、取り消しの可能性があるのであれば、すぐに対処する必要があります。

万が一青色申告が取り消しになってしまえば、特別控除を受けられなくなるだけではなく、赤字の繰越や減価償却、家事按分などが認められなくなります。
その分負担が大きくなるので注意してください。

・追徴課税
税務署の調査によって過少申告が発覚すれば追徴課税が課せられます。追加で収める税金の5%もしくは10%の過少申告加算税を払う義務があります。

もしもデータに隠蔽や改ざんが見つかれば、35%もしくは40%の重加算税に10%が加重され、通常よりも多くの税金を支払わなくてはなりません。
取引先に知れ渡ってしまえば信用問題にも発展するため、事業の継続に影響が出てくる可能性が高いです。信頼を失わないためにも、正しく申告してください。

・会社法でも罰則が科せられる
帳簿や書類が正しく保管されていないと会社法でも違反したと判断されます。会社法に違反をすれば、100万円以下の過料が科せられるので注意が必要です。

まとめ

電子帳簿保存法は個人事業主も対象です。2022年に法改正が行われ、電子取引でのデータの保存は義務化されています。
紙での保存に慣れていた事業者にとっては不便に感じたり不明な点もあったりと、不安も大きいはずです。対応方法を理解していないと罰則を受ける可能性もあります。
今回ご紹介した内容を参考に、電子帳簿保存法への対応を検討してみてください。




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(編集:創業手帳編集部)

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