電子帳簿保存法の対象書類とは?対象外の書類や対応させるための方法を解説

創業手帳

電子帳簿保存法の対象書類・対象外の書類を把握して体制・環境を整えよう


電子帳簿保存法の改正により、対応しなければいけない企業や個人事業主が多く見られます。
帳簿や書類を扱う際には、電子帳簿保存法の対象になるかを把握しておかなければいけません。対象外となる書類や対応させるための知識も必要不可欠です。

そこで今回は、電子帳簿保存法の対象書類と対象外の書類、紙の領収書やレシートを対応させる方法、対象書類を保存していない場合の罰則などについて解説していきます。

電子帳簿保存法への対応は大企業のみでなく、個人事業主にも関係がある改正です。ただ実際にどのような対応をしたらよいか、イマイチわからない方が多いようです。そのようなまだ電帳法改正にイメージがわかない人は、是非この「電子帳簿保存法改正 対応ステップシート」をご活用ください!対応が必要な事を網羅しつつ、最低限、いつまでにどの程度対応しておいたら問題ないのかをわかりやすく解説!無料でご活用いただけます。



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電子帳簿保存法の対象となる書類


電子帳簿保存法の対象となる書類は、あらかじめ確認しておくべきポイントです。まずは、どのような書類が対象になるのか解説していきます。

国税にかかわる帳簿 国税にかかわる書類 電子取引による情報
仕訳帳
総勘定元帳
現金出納帳
固定資産台帳 など
決算関係書類 取引関係書類 Web請求書
メールデータ
EDI取引
クラウド取引 など
試算表
棚卸表
賃借対照表
損益計算書 など
請求書
領収書
納品書
見積書 など

1.国税にかかわる帳簿

国税に関わる帳簿は、会社のお金がどのように動いているか記録したものです。含まれる書類をいくつかピックアップしてご紹介します。

・仕訳帳
仕訳帳は、会計業務において重要な主要簿です。金銭や権利の増減などが記されています。

・総勘定元帳
総勘定元帳は、取引きを勘定科目ごとに分類した帳簿です。それぞれの勘定科目の残高を知りたい場合などにチェックされます。

・売上台帳
売上台帳は、取引きで生まれた売上げだけを記した書類です。売上帳と呼ばれる場合もあります。

・仕入台帳
仕入台帳は、仕入れによって動いた売金の流れを記した書類です。補助簿のひとつで、主要簿の補助的な役割を担う書類として活用されています。

2.国税にかかわる書類

国税にかかわる書類は、決算や取引きで使用した決算関係書類や取引関係書類が該当します。含まれる書類をいくつかピックアップして確認していきます。

・貸借対照表
貸借対照表は、企業の資産状況を示す書類です。決算時に作成する財務諸表のひとつです。

・損益計算書
損益計算書は、企業の利益を把握する際に確認する書類です。どの事業でどのくらい儲けているのか、損失が出ているのか、といった点が明らかになります。

・請求書
請求書は、取引先に納品した商品やサービスの対価を請求する際に発行する書類です。請求漏れや金額の食い違いをなくすために必要となります。

・領収書
領収書は、金銭などの支払いを受けたことを示す書類です。支払日や金額、取引内容などが記されています。

3.電子取引による情報

電子取引による情報は、メールやインターネット上で交わされる書類に含まれるものです。国税に関係しないものを指します。
含まれる書類をいくつかピックアップしてご紹介します。

・Web請求書
Web請求書は、Web画面上で請求書の作成や発行を行います。そのまま取引先に送信したり、受領したりできるシステムです。

・クラウド取引
クラウド取引は、その名のとおりクラウドサービスを通じて行う取引きを指します。

・EDI取引
EDI取引は、取引きで発生する発注書や請求書、納品書などを電子化した上で取引きする方法です。メールや郵送でやり取りする手間が省けます。

これらは電子的に授受するので、電子データのまま保存可能となっています。

電子帳簿保存法の対象外となる書類


前述した書類の中には、電子帳簿保存法の対象外となるものもあります。続いては、どのような書類が対象外となってしまうのか解説していきます。

対象外となるのは、手書きの総勘定元帳や仕訳帳、請求書などの書類です。手書きの書類は、スキャナ保存をしても対象になりません。
スキャナ保存するだけではなく、紙の原本を7年間保存しておかなければいけないため、注意が必要です。

ただし、これらの帳簿をクラウドへの移行や会計ソフトに打ち込んでいれば、電子データの保存が必要になります。
つまり、対象外となるのはあくまでも手書き帳簿だけで処理している場合のみです。
請求書などの書類をスキャンまたは撮影して電子データとして保存することもできるため、事業者がどちらを選ぶか決めなければいけません。

紙の領収書・レシートを電子帳簿保存法に対応させるには?


紙の領収書・レシートを電子帳簿保存法に対応させるにはどうすればいいのか知りたいという方もいるでしょう。次は、対応させるためのやり方を2つご紹介します。

1.帳簿・書類をデータ化する

ひとつ目は、帳簿・書類をデータ化する方法です。紙の帳簿や書類を会計ソフトに入力します。
会計ソフトに入力してデータ化することにより、多くのメリットを享受できるのです。

データ化するメリット①管理にかかる費用を削減できる

書類をデータ化することによって、管理コストの削減効果が期待できます。
紙媒体で保存していると、用紙やインクなどの物品費、プリンターの維持費などがかかります。
また、書類を収納するためのキャビネットや、キャビネットを置くためのスペースも必要です。

しかしデータ化すれば、これらのコストやスペースは不要となります。スペースの有効活用もできるため、データ化することで得られるメリットは大きいです。

データ化するメリット②帳簿・書類探しが楽になる

帳簿・書類探しが楽になることも、データ化することで得られる大きなメリットです。
しばらく見返すことがない書類は、オフィス以外の倉庫などに保管しているケースも見られます。
そのような場合、過去の書類をチェックしなければいけなくなった時に保管場所から探し出すのは非常に手間がかかってしまうものです。

一方、電子化されていればキーワードや日付などから簡単に検索可能です。すぐに探し出せるかどうかが重要になるので、電子化する意味は大いにあります。

データ化するメリット③劣化や紛失のリスクを防げる

紙の領収書やレシートは、破れてしまったり、色褪せてしまったりする可能性があり、そのような状態になると文字が判別しづらくなります。
また、場所を動かす時に紛失するリスクや、火事・水害など予期せぬ災害で消失するリスクもゼロではありません。

担当者が変わってどこに保管されているかわからなくなることも考えられます。管理のルールが決まっていないと、ほかの書類に紛れてしまうこともあるでしょう。

データ化をして保管するフォルダだけ伝わっていれば、どこにあるかわからないという事態を防ぐことができます。

データ化するメリット④経理業務を効率化できる

経理業務を効率化できることも、データ化によって享受できるメリットのひとつです。

多くの企業で帳簿書類を年度ごとに分けて保管していますが、数ある書類から必要なものを探すのは大変です。
探すのに時間を取られてしまうとほかの作業が滞り、作業効率も悪くなってしまいます。

電子データとして保存していれば書類を探す時間なども短縮し、効率性アップにつながります。
また、クラウド上ならオフィス外からでもチェックできるようになるので、外出先からの閲覧もしやすくなるでしょう。

2.スキャナで画像データをとる

スキャナで画像データをとり、電子帳簿保存法に対応させるという方法もあります。
電子帳簿保存法のスキャナ保存制度は、紙で受領または作成した書類を画像データとして保存することを認めた制度です。

スキャナ保存制度を利用するためには一定の要件を満たさなければいけませんが、紙媒体の書類が多い場合は利用を前向きに検討することをおすすめします。
2022年の法改正で保存要件が緩和され、スキャナ保存を取り入れる企業も増えています。

電子取引と混同されがちですが、電子取引は電子メールなどの電子データで受領した取引情報をそのまま保存するため、根本的な部分が異なります。
また、スキャナ保存制度の対応は任意、電子取引制度は義務となっている点にも注意が必要です。

スキャナ保存の対象書類

スキャナ保存の対象書類は、国税にかかわる書類に含まれている取引関係書類です。

決算関係書類も国税にかかわる書類に含まれていますが、スキャナ保存の対象ではありません。
また、取引関係書類は重要書類と一般書類に分類されることも把握しておくべきポイントです。

重要書類に含まれるのは、契約書や領収書、預かり証、信用証書、預金通帳、有価証券受渡計算書、社債申込書、契約の申込書などです。
一般書類に含まれるのは、検収証や入庫報告書、貨物受領書、見積書などになります。

スキャナ保存をするための要件

スキャナ保存をするためには、要件をクリアする必要があります。なぜなら、真実性や可視性を確保しなければいけないためです。

要件は書類によって異なるので確認しておいてください。

要件 重要書類 一般書類 重要書類
【過去分】
入力期間に関する制限
一定水準以上での読み取り
(200dpi以上)
カラー画像による読み取り
(赤、緑、青がそれぞれ256階調)
タイムスタンプの付与
解像度や階調情報の付与
大きさに関する情報の保存
バージョンの管理
(訂正もしくは削除の事実、内容の確認を行う)
入力者などの情報確認
適正事務処理に関する要件
スキャン文書・帳簿の相互関連性の保持
見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイや4ポイント文字の認識など)の備付け
整然・明瞭出力
電子計算機処理システムの開発関係書類などの備え付け
検索機能の付随
税務署長の承認

電子化した領収書・レシートの原本は捨てられる?


2022年1月からは、スキャナ保存していれば原本の破棄が認められるようになりました。電子帳簿保存法は国税関係帳簿書類の保存義務者を対象としたものです。
そのため、法人だけではなく確定申告を行っている個人事業主も、要件を満たしたスキャナ保存をしている場合に限り、原本の破棄は可能となっています。

ただし、2023年10月から始まるインボイス制度の適用になる場合は、写しを7年間保存しなければいけません。
仕入れ額の控除などを受けられなくなってしまうので、必ず保存しておいてください。保存期間は、消費税の申告期限から7年間となっています。

電子帳簿保存法の対象書類なのに保存していないとどうなる?


電子帳簿保存法の対象書類を保存していない場合、どうなるのか知りたい方も多いでしょう。
電子帳簿保存法が施行されたのは2022年で、2023年12月までは経過措置が取られているため紙媒体で保存していても問題ありません。

しかし、2024年以降は本格的な対応をとらないと罰則の対象になる可能性があります。
罰則は、過少申告加算税が課せられること、会社に過料が科されること、個人事業主だと青色申告が取り消されること、などです。

過少申告加算税が課せられる

申告内容に不備があるとみなされるので、過少申告加算税が課せられる場合があります。

過少申告加算税は、申告漏れなどで本来支払うべき納税額よりも少ない時に課せられるものです。
しかし、正しい方法で申告する義務を果たしていない場合にも課せられるケースがあるので、念頭に置いておく必要があります。

そのほかにも、電子帳簿保存法にしっかりと対応していないとみなされた場合、重加算税が加算される可能性もないとはいい切れません。
これらのリスクを防ぐには、適切な対応が必要不可欠です。

会社に過料が科せられる

電子帳簿保存法に対応していないと、会社法に違反していることになってしまいます。そうなった場合、罰金が科せられるので注意が必要です。
会社法第976条(科料に処すべき行為)に該当し、100万円以上の罰金が科せられる恐れがあります。
書類や帳簿の改ざん、不正などを指摘された時に対象になります。
したがって、電子帳簿保存法の対象書類なのに保存していないことを指摘されてしまうと、会社法違反になるので注意しなければいけません。

さらに、企業の財務状況や社会的評価にもネガティブな影響を及ぼす恐れがあります。マイナスな影響を回避するためにも、きちんと電子帳簿保存法に従う必要があるのです。

個人事業主だと青色申告が取り消される

個人事業主の場合は、青色申告が取り消される可能性があります。電子帳簿保存法は、法人でも個人事業主でも公平に扱われます。
ミスや対応不足があって要件を満たせなかったとしても、すぐに青色申告を取り消されてしまうわけではありませんが、悪質性が高いとみなされる場合は例外です。

青色申告ができなくなると、最大65万円の特別控除を受けられなくなってしまう、赤字を翌年の黒字と相殺できなくなってしまう、事業主として信頼を損なってしまう、といったデメリットが生まれます。
デメリットが多いため、取り消し処分とならないように気を付けてください。

まとめ

電子帳簿保存法は、電子帳簿保存法の改正で対象となる企業や個人事業主が増えました。
電子帳簿保存法の対象となる書類を適切に把握し、きちんと対応することが重要になります。

対象書類を保存していないと罰則を受ける可能性もあるので、今からしっかりと準備しておきましょう。




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(編集:創業手帳編集部)

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