赤字経営でも会社はつぶれない!?メリットやデメリット、黒字化の方法を徹底解説

資金調達手帳

赤字経営でつぶれてしまう会社は一握り!


赤字=経営難、倒産といったイメージを持っている方もいるでしょう。
しかし、赤字でもずっと経営を続けている会社もあれば黒字なのに倒産する会社があるように、赤字だからといって必ずしも経営難とは限りません。

そこで今回は、赤字経営とは何か、黒字経営との違いも含めて解説していきます。
また、赤字経営のメリット・デメリットや、赤字経営を立て直し黒字化する方法もお伝えしますので、経営に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

そもそも赤字経営とは?


赤字経営とは、収入よりも支出のほうが多い状態のまま経営を続けることをいいます。
つまり、売上高から人件費や仕入代金といった経営するためにかかる経費を差し引いた純利益がマイナスであれば、その会社は赤字経営であるということです。

ここでは、赤字経営についてより詳しく理解するために、黒字経営との違いや赤字=倒産ではない理由について解説していきます。

黒字経営とは何が違う?

黒字経営は、収入が支出を上回っている状況のことをいいます。決算で純利益が1円でもプラスであれば、黒字経営です。
黒字経営は、支出よりも収入が多く利益を生み出している状態のため、会社の経営としては順調に見えるかもしれません。

しかし、黒字経営でも会社が倒産するリスクは存在します。
例えば、利益は出ていても手元の資金に余裕がない場合です。
売掛金の入金が遅れたり倒産して売掛金を回収できなくなったりすると、仕入れや人件費などを支払うことができなくなります。
そうなると、経営上は黒字であっても、倒産する可能性があります。
特に、銀行から借りた融資や借入金の返済、手形の決済ができなければ、取引きが停止される恐れもあるため注意が必要です。

赤字=つぶれる、黒字=経営が順調というわけではない!

国税庁が行った「2019年度 国税庁統計法人税表」では、日本にある会社の約6割以上が赤字経営という結果が出ています。
しかし、これらの会社がすべて倒産するかといえば、そのようなことはありません。

黒字倒産の例を見てもわかるように、会社が倒産する原因は、損失の有無よりも手元の資金がなくなることに端を発しているケースが多いです。
そのため、決算上は赤字であっても、現金や預貯金といった手元の資金が十分にある、銀行から借入れできる状況であるなど、支払能力があればすぐに倒産するリスクは低いといえます。

赤字=つぶれる、黒字=経営が順調であるとは限らないのは、こういった資金繰りの影響が大きいことも関係しています。

赤字経営の会社の特徴3つ


赤字経営の会社には、3つの特徴があります。以下では、これらの特徴についてより詳しく解説していきます。

1.収入よりも支出が多い

赤字とは、収入よりも支出が上回っている状況をいいます。支出が収入を上回っていれば、赤字経営ということになります。
ただし、収入よりも支出が多ければ赤字になるためすぐに会社が倒産するか、といえばそのようなことはありません。

たとえ今月が赤字だったとしても、先月は黒字であり、会社の資金にも余裕があれば問題ないのです。
会社が倒産するのは、手元の資金がなくなった時です。
つまり、一時的に支出が上回ったり、利益が出なかったりして赤字経営の会社の特徴を満たしたとしても、必ずしも倒産するとは限りません。

2.売掛金が回収できていない

決算上は黒字であっても、売掛金が回収できず手元の資金に余裕がないのも赤字経営の特徴です。
売上げが支出より多く、表向きは黒字であっても赤字経営の場合もあります。

例えば、売掛金を回収できず、手元の資金に余裕がないケースがあてはまります。黒字=経営が順調と思われがちですが、黒字倒産する会社が多いのはこのパターンです。
どんなに売上高があって黒字だとしても倒産する可能性があるため、事実上の赤字となっている状態です。

3.借入金や減価償却費などが売上げを上回っている

会社の純利益は、売上高からすべての経費を差し引いて計算します。
借入金や減価償却など会社を経営する際に発生する経費が上回っている状況も、一見すると赤字となります。

しかし、これは会計上赤字になっているだけで、実際にお金がなくなっているわけでないため、経営上問題がない場合が多いです。
赤字経営だからといってすぐに倒産とは限らないのは、こうした経理の処理の関係で赤字になっている会社もあるからです。

赤字経営でも倒産しないのはなぜ?


日本にある会社のほとんどは中小企業ですが、その中の約6割以上が赤字経営の状態です。
しかし、赤字経営であっても倒産しない会社には、いくつかの共通する理由があります。ここでは、赤字経営でも倒産しない理由について、詳しく解説していきます。

時代のニーズに合わせた事業転換を行っている

赤字経営の会社の中には、赤字だった翌年は黒字化し数年後に赤字になるものの、また黒字になるというサイクルを繰り返しているところもあります。
このような会社は赤字化した際に時代の流れとニーズに合わせて事業転換を行っているため、一時的に赤字経営になることはあっても、倒産せずに事業を継続できています。

中には、事業転換した際に成果がすぐに出なかったり、新しく始める事業の初期費用がかかったりすることで一時的に赤字を出しているケースもありますが、手元に資金があればすぐに倒産することはありません。
小規模な会社は時代のニーズや経済の動向に合わせて対応しやすいため、事業転換することで赤字経営であっても事業が継続できています。

意思決定が早い

大企業と違い、中小企業は人数が少ないことから、経営者と社員の距離が近い場合が多いです。
さらに、経営者の一存によって物事を決定できるため、判断を下すまでのスピードが早いという特徴もあります。

そのため、倒産の危機に直面しても、スピーディな意思決定により危険を回避しているケースもあります。
赤字経営であっても、素早い意思決定により倒産を回避できれば事業を継続することは可能です。

現金や担保にしやすい資産を保有している

会社を経営していると、現金はもちろん土地や建物といった何らかの資産を持っている可能性は高いです。
仮に売上げがあっても売掛金を回収できなかった場合、銀行からお金を借りることができなければ、黒字であっても倒産するリスクはあります。

しかし、持っている資産を現金化したり土地や建物を担保にして銀行からお金を借りたりできれば、赤字であっても事業を継続できます。
中小企業の場合、経営者個人の預金をはじめ、土地や建物も資金調達する際の担保にしているケースが多いです。

また、連結決算の対象となっており、親会社や提携先が補填するケースもあります。大企業では経営者個人の資産を充てるのは難しいため、中小企業ならではの方法です。

赤字経営のメリットとデメリット


赤字経営だからといってすぐに倒産するとは限らない上、赤字経営ならではのメリットも享受できます。
しかし、赤字経営によるデメリットも存在します。ここでは、赤字経営を行うことのメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

赤字経営のメリット3つ

最初に、赤字経営のメリット3つをより詳しくお伝えします。

1.法人税の還付がある

大企業と違い中小企業は資本が充実していないことから、赤字となった期は前期で支払った法人税から還付を受けることが可能です。
対象となるのは、資本金が1億円以下であり、青色申告書で確定申告しているといった条件を満たしている会社です。

還付される上限は前期で支払った分までで、それよりも前に支払った法人税は対象外となります。
しかし、たとえ当期は赤字で前期は黒字だったとしても、青色申告していなければ還付は受けられないので注意してください。

法人税の優遇制度では、青色申告書で確定申告していることが条件である場合が多々あります。
赤字経営となった際にいつでも利用できるように、確定申告は青色申告書で提出しておくと安心です。

青色申告について、詳しくはこちらの記事を>>
知っておきたい青色申告の基礎知識とメリットデメリット

2.赤字分の繰り越しや相殺が可能

赤字決算の場合、課税される法人税はゼロになるだけでなく、赤字分を翌年以降に繰り越したり相殺したりすることが可能です。
繰り越した場合、税務会計上は繰越欠損金となるため、翌年が黒字であったとしても課税所得から控除でき、法人税を抑えられます。

2018年4月1日以降に開始した事業年度であれば、最大10年間赤字の繰り越しができる上、黒字が出た際の相殺も可能です。
つまり、繰越欠損金が500万円あった場合、今期が300万円の黒字であったとしても全額控除できるため、課税所得はゼロになります。

ただし、赤字の繰り越しや相殺はすべての会社ができるわけではありません。資本金が1億円以上ある会社の場合、控除できる金額に制限があるため注意が必要です。
また、繰り越しや相殺をするには、欠損金が出た事業年度に青色申告書で確定申告していること、そしてその後の事業年度でも確定申告していることが条件です。

3.法人税自体を軽減できる

法人税とは、事業活動をする中で得た所得にかかる税金のことです。
会社は通常、年に1回決算日を設け、決算を迎えると法人税を計算し申告します。そして、1年間の利益を元に出した法人税額を、定められた期限までに納めます。

ここでポイントとなるのが、法人税は利益が出た時のみ課税されるという点です。
赤字決算は利益が出ていないことから法人税を支払う必要がないため、赤字経営なら法人税自体を軽減することが可能です。
ちなみに、法人税額を計算する法人税率は会社の規模や利益(所得)、所在する自治体によって異なります。

赤字になった年の法人税について、詳しくはこちらの記事を>>
赤字になった年の法人税はどうなる?免除や還付の有無は?

赤字経営のデメリット3つ

赤字経営には様々なメリットがある一方で、デメリットも存在します。ここでは、赤字経営となることで生じるデメリットについて詳しく解説していきます。

1.債務超過による倒産リスクがある

赤字=すぐに倒産ではないものの、赤字経営が続けば手元の資金も徐々に少なくなります。
最初は余剰金などで穴埋めできたとしても、いずれできなくなれば累積赤字がとなり、債務超過によって倒産するリスクが高まります。

赤字経営となることでメリットもありますが、長期間続けることは経営上好ましいとはいえません。
事業を継続させるには、利益を出すことが重要です。

2.銀行などから融資を受けにくくなる

赤字経営になると銀行の信用格付けが低下するため融資を受けにくくなり、資金調達が難しくなる恐れがあります。
融資が受けられなくなれば運転資金が足りなくなり、倒産するリスクも高まるでしょう。

赤字経営は節税効果が期待できますが、長期間に渡り続けていると会社に対する信用が失われることになります。そうなると経営上好ましくないため、注意が必要です。

3.税務調査の対象になる可能性が高まる

赤字経営が続くと、税務調査の対象になりやすい点もデメリットのひとつです。
本来は黒字なのにもかかわらず赤字にして節税しているのではと疑われた場合、税務調査によって細部までチェックされます。

その上でおかしな点があれば、追徴金としてさらに税金を納めなくてはならない可能性もあります。

赤字経営を立て直し黒字化する方法


赤字経営はメリットがある一方で、デメリットも大きいです。
倒産するリスクも高まるため、赤字が続いていたり赤字分を自己資金や借入金で補填したりしている場合は、できるだけ早く黒字化することが重要です。

コストを見直す

赤字の原因が仕入れや製造原価などにある場合、コストを見直し、不要なものは削減することが大切です。
仕入れの調達ルートや方法を改善したり、製造方法を見直したりすることをおすすめします。

商品の過剰在庫を抱えている場合は、セール価格で販売するなどして早期に処分できるよう検討するのも方法のひとつです。
また、広告・宣伝にかかる費用や営業費、配送費は適切なのか確認することも重要です。様々な部分を見直すことで、不要なコストが見つかり、削減できる可能性があります。

ただし、コストを抑えたいからといって、品質まで低下させることがないように注意してください。

キャッシュフローを管理する

赤字から黒字に転換するには、事業におけるお金の流れであるキャッシュフローの管理も重要です。
会社経営では帳簿上はプラスであっても、実際手元にあるお金はマイナスであるといったズレが生じます。
この時にお金の流れが把握できていなければ、手元に入ってきていない売掛金をあてにして仕入れを行い、資金繰りに悪影響を及ぼすことも考えられます。

そうならないためにも、入ってくるお金と出ていくお金の予定を少なくとも半年分は記載するなど、常にどのくらいの資金があるのか把握できる状態を作りましょう。
資金不足になりそうなタイミングが事前にわかれば、あらかじめ資金調達しておくといった適切な対応を取ることが可能です。

まとめ

赤字経営であっても、すぐに倒産するとは限りません。むしろ、赤字経営となることで、法人税の還付が受けられたり赤字分を繰り越しできたりといったメリットも存在します。

しかし、銀行などから融資を受けにくくなったり倒産リスクが高まったりと、メリットに比べてデメリットが大きいのも事実です。
会社経営をするならば、できるだけ早期に黒字化したほうが安心だといえます。

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(編集:創業手帳編集部)

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