介護、障害福祉業の許可申請をする前に必要な準備について
専門家が解説します
(2019/05/16更新)
少子高齢化が進む日本において、介護業・障害福祉業が近年注目を集めています。
ですが、これらの事業を始める際には様々な準備をしておくことが必須です。
そこで今回は、自身も介護福祉士として長く介護業に携わり、介護業・障害福祉業の許可申請を多数手がけている行政書士の沼田 学氏に、介護業・障害福祉業の許可申請前に準備しておくべきことを伺いました。
まずは「申請日までにどこまでやればいいのか」を知ること
許可申請をするに当たり、まずやっておきたいことがあります。それは、申請する日でどこまでやっておかないといけないのかを知ることです。そうすることで、やるべきことの日程を組みやすくなるからです。
申請書類を作成する上で注意しておくべき要素は3つあります。
(医療協定など、地方自治体によっては細かな注意事項はありますが、本記事では割愛いたします。)
- 物件について(物件を契約し、設備基準に適合する改装を終えている)
- 人員について(必要人員と契約し終えている)
- 事業内容(業務形態や営業時間、休日など)
今回は、その中でも特に重要な「物件」と「人員」について解説します。
申請までに決めておきたいこと(物件編)
物件に関しては、申請日以前より準備しなければいけません。介護業の許可を得るために必要な設備基準を満たしておく必要があるからです。
例えば、居宅介護等の小規模なアパートレベルなら大きな額ではないかもしれませんが、デイサービス等施設系となると数十万円ほどのまとまったお金が申請前にかかります。
物件はサービスの種類により要件が変わってきますので、必ず契約前に役所へ事前相談をしに行きます。ここで設備要件に合うか判断されます。
また、物件を選定する際にチェックするのが、場所及び家賃だと思います。ですが、それに加えて重要なポイントがあります。都市計画法及び建築基準法に適合しているかどうかです。
「介護業を行なって良い区域なのか?」
「事業を行おうと考えている地域が介護業をやってはいけない場合、どのような許可を取れば、事業を行うことができるのか?」
そういったポイントを調査しないといけません。
場合によっては、許可が下りるまで2カ月以上かかる場合があります。行政書士や建築士に調査・許可申請を依頼することになるかもしれませんので、その費用をあらかじめ計算に入れておくと良いでしょう。
申請までに決めておきたいこと(人員編)
契約を結ぶと聞いて多くの方が思い浮かべるのが「雇用契約書」だと思います。しかし、介護・障害事業において必要なものとして「守秘義務契約」も結んでおかなければなりません。利用者様の個人情報を扱う事業だからです。こちらは申請時において必ず添付しなければいけませんので、忘れないようにしてください。
申請が遅れるということは、家賃・人件費が1ヶ月余分にかかることを意味します。
そのため役所としても、要件を満たしており、書類の修正が軽微である場合はできる限り申請月に受理しようと次回の予約を受け付けなど配慮してくれます。
ですが、申請先役所によっては残念ながら受け付けてくれない場合もありますのでご承知おきください。
そのリスクにできるだけ回避するために、雇用契約書に停止条件(※1)を付けるということも一つの方法としてあります。例えば、「許可が出たら雇用契約書の効力が発生する」といった具合です。
しかし、これは雇われる側としては非常に不安定な立場となります。そのため、なかなか契約を結んでもらえなかったり他事業所に取られたりということもあるので、不安に思った方は専門家に相談することをおすすめします。
※1 停止条件:ある条件を満たしたら法律行為の効力が発生する契約のこと。
まとめ
簡単にではございますが、許可申請において考えておくべきことについてまとめました。
私は元々介護士であり、ケアマネジャー、社会福祉士、介護福祉士の資格を持っています。これらの経験の中で、介護に特化して行政書士をやってみようと思ったきっかけがございます。もちろん介護業を長くやってきたという単純な理由はあるのですが、他に全く別の理由があります。
私は、定期巡回・随時対応型訪問介護・看護及び訪問介護の管理者兼サービス提供責任者(以下、サ責)という役職に従事したことがあります。初めて訪問系のサービスを経験した時のことです。それまで管理職も何年も経験していたので、正直何でも分かっているつもりでした。
サ責の業務は、利用者様のプラン作成はもちろん、ケアマネジャーとの連携・ヘルパーの調整など、今まで未経験のものばかりでした。さらに、障害福祉業の許可も取得した事業所だったため、障害福祉業のルールもその時に初めて勉強しました。
業務の多様さに加え、この職種は事業所の中枢となるため、利用者様、関係事業者、会社内スタッフ全ての管理・調整をしなければなりません。業務の量、難度はあらゆる職種の中でも随一と思われます。役職的な要素と業務の難しさから相談する相手もなかなかいないという苦しさがありました。
この、誰にも相談できない苦しい立場を支えられる仕事をしたいと思ったことが、現在の介護に特化(監査顧問など)した行政書士業務に繋がります。
準備することは大変かもしれませんが、要件を満たし書類が完成されたら必ず申請は通ります。
書類作成に不安や申請までの道のりが分からないなどがございましたら、私たち行政書士がサポートしてくれます。是非活用してください。
(監修:行政書士/社会福祉士まなぶ法務事務所 沼田学)
(編集:創業手帳編集部)