個人事業主が仕事場にエアコンを設置|経理処理はどうすればいい?
個人事業主がエアコンを経理処理する際の仕訳例と家事按分などについて解説
個人事業主が自宅や借りている事務所にエアコンを購入して設置する場合、エアコンの金額によっては全額を経費にできない可能性があります。エアコンの経理処理の方法は、エアコンの設置費用を含めた取得費によって異なります。この記事では、エアコンの経理処理の基本的なルールや、購入費ごとの経理処理、家事按分が必要なケースなどについて解説します。
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この記事の目次
エアコンにかかる費用の経理処理の基本
最初に個人事業主が事務所や仕事場に設置する、エアコンにかかる費用の経理処理について解説します。
エアコン代の基本の勘定科目
エアコンの購入費に対応する勘定科目は、エアコンの価格によって大きく分けて減価償却費と消耗品費の2種類です。それぞれについて解説します。
減価償却費
購入したエアコンの価格が10万円以上の場合、減価償却によって分割して経費計上していきます。
減価償却とは長期間使用する資産の取得価額を、耐用年数に応じて1年分ずつ分割して経費計上することです。購入価額10万円以上で使用可能期間が1年以上の資産は減価償却で経理処理を行う決まりです。
減価償却では購入した資産を、「備品」のような勘定科目で会計処理します。その後、分割して「減価償却費」を計上していきます。
消耗品費
エアコンの購入価額が10万円未満の場合、購入した年に「消耗品費」として全額を費用計上できます。
その他経費にできるエアコンにかかる費用
エアコンに関する費用は、エアコン本体の購入費以外も経費計上が可能です。経費にできる費用の種類と、勘定科目を解説します。
設置工事費
購入したエアコンを設置する場合、エアコン本体とは別に設置工事費も発生します。通常、エアコンの購入を会計処理するときには、本体価格に設置費用を含めて経費とします。
エアコン本体価格が10万円未満で設置費用を加算したら10万円以上になった場合、減価償却で処理する点に注意しましょう。
修理代・クリーニング代
エアコンが故障した場合の修理代やエアコン内部のクリーニング代は、一般的に修繕費として経費計上します。
修繕費とは事業に必要な固定資産などを修理・改修するために支払った費用のことです。
購入費によって異なるエアコンの経理処理
エアコンの経理処理は購入費が10万円未満であれば消耗品費として経費計上、10万円以上であれば資産として減価償却していくのが基本です。ただし、条件によっては10万円以上でも短期間で償却できる特例を利用できます。以下は、エアコンの購入費ごとの大まかな経理処理の分類です。それぞれの経理処理について、詳しく後述していきます。
購入費 | 10万円未満 | 20万円未満 | 30万円未満 | 30万円以上 |
経理処理 | 消耗品費 | 一括償却資産 | 少額減価償却資産 | 通常の減価償却 |
対象 | 法人・個人問わず | 法人・個人問わず | 青色申告をしている中小企業者等 | 法人・個人と問わず |
年間の上限額 | なし | なし(全額を3年均等償却) | 300万円 | なし |
期限 | なし | なし | 2024年3月31日まで | なし |
通常の減価償却
エアコン代の経理処理の基本ともいえる、購入費が10万円以上の場合の減価償却の経理処理について解説します。
エアコンの耐用年数
エアコンの法定耐用年数は業務用、家庭用によって以下のように定められています。
エアコンの種類 | 耐用年数 |
業務用(出力22kW以下) | 13年 |
業務用(出力22kW超) | 15年 |
家庭用 | 6年 |
上記のように業務用と家庭用では、耐用年数に大きな違いがあります。業務用は家庭用と違い、本体が大きく耐久性も高いため、耐用年数は長くなります。
個人事業主の場合、高額のエアコンの購入費を一括で経費計上すると、その年の所得が大幅なマイナスになるかもしれません。減価償却によって分割して計上すると償却期間中の経費負担が平準化され、財務が安定します。
定額法による減価償却の経理処理
定額法とは耐用年数の期間内で、毎年一定額の減価償却費を計上する方法です。1年ごとの減価償却費は、以下の計算式で求めます。
減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
購入価額40万円の家庭用エアコンの1年ごとの減価償却費は、6万6,800円(30万円×0.167)です。毎年6万6,800円ずつ、6年目のみ6万6,000円の減価償却費を計上します。
減価償却の仕訳には、直接法と間接法の2種類があります。直接法は購入価額から減価償却費を直接差し引く方法です。一方、間接法は減価償却費の相手勘定に減価償却累計額を使用し、それまでの累計を表す方法です。
以下は、上記の減価償却費の直接法と間接法それぞれの仕訳例です。
【直接法】
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 66,800円 | 備品 | 66,800円 |
【間接法】
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 66,800円 | 減価償却累計額 | 66,800円 |
定率法による減価償却の経理処理
定率法は耐用年数の期間内で、毎年一定割合ずつ減価償却費を計上する方法です。1年ごとの減価償却費は、以下の計算式で求めます。
減価償却費 = (購入価額 - 前年までの償却費の合計額) × 定率法の償却率
未償却残高は年々減少していくため、減価償却費も毎年減っていきます。
40万円の家庭用エアコンを購入した場合の減価償却費は、以下のように求めます。
1年目:40万円 × 0.333 = 13万3,200円
2年目:(40万円 - 13万3,200円) × 0.333 = 8万8,844円
上記の1年目の減価償却費の仕訳例は、以下のとおりです。
【直接法】
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 133,200円 | 備品 | 133,200円 |
【間接法】
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 133,200円 | 減価償却累計額 | 133,200円 |
少額減価償却資産の特例
エアコンの購入価額が30万円未満の場合、条件を満たすと「少額減価償却資産の特例」を利用できる可能性があります。
少額減価償却資産の特例とは
少額減価償却資産の特例とは、30万円未満の減価償却資産の購入価額相当額の損金算入を認める税制上の措置です。10万円未満の少額の資産の購入価額は全額損金算入ができるため、実質的に対象となるのは10万円以上30万円未満の償却資産です。
この特例が適用されるのは、その事業年度中に購入した少額減価償却資産の取得価額の合計300万円が上限となります。
少額減価償却資産の特例の対象となる条件
少額減価償却資産の特例の適用を受けるには、以下のような条件を満たす必要があります。
適用対象となる中小企業者とは
個人事業主の場合、青色申告をしていて常時使用する従業員数が1,000人以下であれば、少額減価償却資産の特例の適用を受けられます。一般的な個人事業主やフリーランスであれば対象になると考えられます。
法人で少額減価償却資産の特例の適用を受ける条件は、以下のとおりです。
- 青色申告法人である
- 資本金または出資金が1億円以下
- 常時使用する従業員数が500人以下
- 前3事業年度の所得金額の平均が年15億円以下
- 大規模法人から2分の1以上の出資を受けていない
- 複数の大規模法人から3分の2以上の出資を受けていない
適用対象となる資産
少額減価償却資産の特例の対象となるのは、購入価額30万円未満の償却資産です。ただし、主要な事業(リース業など)として行われるものを除き、貸付けの用に供した減価償却資産は除外されます。
また、1事業年度で損金算入できる上限は、償却資産の購入価額の合計300万円までです。
適用対象となる期間
少額減価償却資産の特例は時限的な措置です。適用対象となるのは2024年3月31日までに取得して、事業の用に供した資産です。
少額減価償却資産の特例の経理処理
少額減価償却資産の特例の経理処理では対象の固定資産を取得した際に一度資産に計上してから、取得価額の全額を減価償却費として計上します。ここでは、25万円のエアコンを仕事用に購入した場合の直接法と間接法の仕訳例を紹介します。
直接法の仕訳
エアコン取得費を少額減価償却資産の特例で処理する場合の、直接法の仕訳例です。
借方 | 貸方 | ||
備品 | 250,000円 | 現金預金 | 250,000円 |
減価償却費 | 250,000円 | 備品 | 250,000円 |
間接法の仕訳
こちらは、少額減価償却資産の特例の間接法の仕訳例です。
借方 | 貸方 | ||
備品 | 250,000円 | 現金預金 | 250,000円 |
減価償却費 | 250,000円 | 減価償却累計額 | 250,000円 |
一括償却資産
エアコンの購入費が10万円以上20万円未満の場合は、「一括償却資産」としての経理処理が可能です。
一括償却資産とは
一括償却資産とは1年分の少額の資産の購入価額を合算し、3年間で均等に経費に計上していく会計処理です。対象となるのは、購入価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産です。
一括償却資産の対象となる条件
一括償却資産の適用を受けるには、少額減価償却資産の特例のような条件はありません。法人(一部対象外の法人もあり)も個人事業主も対象になり、年間の上限額もありません。また、時限的な措置ではないため、10万円以上20万円未満の減価償却資産であれば、いつでも適用を受けられます。
一括償却資産の特例の経理処理
一括償却資産の経理処理では資産の取得時に費用の全額を資産計上し、決算時に1/3の額を減価償却費に振り替えます。ここでは、15万円のエアコンを仕事用に購入した場合の仕訳例を紹介します。
【取得時の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
一括償却資産 | 150,000円 | 現金預金 | 150,000円 |
決算時は以下の仕訳を2年目、3年目も同様に行います。
【決算時の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 50,000円 | 一括償却資産 | 50,000円 |
消耗品費
エアコンの購入費が10万円未満の場合は、消耗品費として全額の経費処理が可能です。
消耗品費の対象となる条件
消耗品費として全額を経費処理するためには、対象の資産が以下のどちらかの条件を満たす必要があります。
- 使用可能期間が1年未満
- 購入価額が10万円未満
消耗品費の経理処理
エアコンの購入費が8万円の場合の経理処理は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 80,000円 | 現金預金 | 80,000円 |
自宅兼オフィスの場合|エアコン関連費用の家事按分について
自宅で仕事をしている個人事業主が、プライベートでも利用できる状態でエアコンを取得および設置した場合、全額を経費計上できない点に注意が必要です。ここからは、エアコン関連費用の家事按分について解説します。
家事按分とは
家事按分とはプライベートと仕事を兼ねた支出に対し、業務用の部分を経費として計上することです。家事按分の対象となる主な経費は、以下のとおりです。
- 家賃
- 水道光熱費
- 自動車関連費用
- 通信費
- パソコン・プリンターなど
エアコンに関する費用もプライベートで使用する場合は、家事按分が必要となります。
購入費の家事按分が必要となるケース
エアコンの設置場所が自宅以外の事務所や自宅の仕事専用の部屋であれば、全額を事業用として経理処理をしても問題ありません。
ただし、自宅で仕事とプライベートを兼ねたスペースに設置する場合は、家事按分が必要となります。
家事按分の割合には明確なルールがありませんが、合理的な基準でなければなりません。エアコンの場合、業務での使用時間などを基準に割合を決める方法が一般的です。たとえば、週5日、1日あたり5時間使用するのであれば、約15%を事業分として計上できるでしょう。
電気代の家事按分の考え方
自宅に設置したエアコンの購入費が全額業務用として経理処理できる場合でも、電気代は家事按分が必要になります。
その場合、使用時間で算出する以外に、事業で使用している部屋のコンセント数で算出する方法もあります。自宅にあるコンセント数のうち、事業で使用するコンセント数の割合を按分率として使用するのです。
家全体のコンセント数が20個で、仕事部屋のコンセントが2個の場合、電気代の10%を経費として計上します。
まとめ
エアコンのように長期間の使用が前提の設備は資産計上し、耐用年数に応じて減価償却費を計上していく経理処理が基本です。ただし、少額の場合、短期間での償却も認められています。それぞれの条件を確認し、状況に合った適正な経理処理を行いましょう。
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(編集:創業手帳編集部)