個人事業税は経費にできる?仕訳・勘定科目、計算方法などを詳しく解説!

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個人事業税は経費計上可能!


個人事業主になった場合、所得税の確定申告を毎年行い、税金を納めなくてはなりません。納める必要があるのは所得税・住民税以外に、消費税と個人事業税もあります。
こうした税金の支払いを経費として計上できるのか疑問を抱く方もいるかもしれません。
実は、消費税と個人事業税はどちらも経費として計上することが可能です。

今回は、個人事業税にスポットを当て、支払う対象者や仕訳・勘定科目、計算方法について詳しく解説していきます。
個人事業税の節税ポイントなどもご紹介していくので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

創業手帳では確定申告について多くの人が迷われるポイントに焦点をあてて解説した「確定申告ガイド」をリリース。どのような人が確定申告の対象者になるのか、青色申告や白色申告の違いなども解説しています。また、「2割特例」「簡易課税」「本則課税」など、わかりにくい消費税の確定申告についても掲載しています。無料でお読みいただけますので、是非ご活用ください。



個人事業税とは「地方税」に分類される事業税


そもそも個人事業税とは、法律で定めた事業を営む個人事業主に対して課される税金です。都道府県に納めることから地方税に分類されます。
開業届を出していなかったとしても、法定業種にあたる事業を手掛けていると「個人事業主」であると判断され、個人事業税を納める義務が発生します。
これは、個人が事業を手掛けている中でインフラや公共のサービスなどを利用した際の行政経費を負担することが目的です。

より詳しく個人事業税について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

個人事業税について、詳しくはこちらの記事を>>
確定申告後に払わなければならない「個人住民税」「個人事業税」とは?

個人事業税を支払う対象者とは?


個人事業税は事業を手掛けるすべての人が対象となるわけではありません。具体的に誰が対象者となるのか解説していきます。

個人事業税の課税対象となる業種

個人事業税の課税対象となるのは、法定業種の事業を営む個人です。業種は第1種・第2種・第3種の区分に分かれており、それぞれ税率が異なります。
法廷業種に当てはまらない場合、個人事業主でも納税義務は発生しません。

副業の場合は課税対象になる?

副業の場合、個人事業の開業届を提出していない人もいます。
この場合、給与以外の所得が20万円以下だと原則確定申告は不要となるため、個人事業税を納めなくても問題ありません。
しかし、20万円以上になると確定申告を行う必要があり、個人事業とみなされるようになるため納税義務が発生します。

個人事業税を計上する際の仕訳・勘定科目について


個人事業税は経費として計上することが可能です。この時、勘定科目は「租税公課」で処理することになります。
租税公課とは、国や地方自治体に対して納める税金(租税)と、国や公共団体に対して支払う交付金・会費など(公課)を合わせた勘定科目です。
租税公課は個人事業税以外にも、固定資産税や都市計画税、自動車税などを仕訳する際に用います。

そのほか、個人事業主がよく使う勘定科目について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

勘定科目について、詳しくはこちらの記事を>>
個人事業主必見!よく使う勘定科目について詳しく解説

個人事業税の計算・仕訳方法


個人事業税は業種の区分によってそれぞれ税率が異なり、この税率をもとにして納税額が決まります。ここでは、個人事業税の計算方法や仕訳方法についてのご紹介です。

個人事業税の税率

個人事業税では3~5%の税率がかけられ、業種の区分ごとに異なります。第3種に関してはさらに2つの税率に分かれています。

区分 事業の種類 税率
第1種(37業種) 物品販売業、運送業、運送取扱業、料理店業、飲食店業、保険業、広告業、商品取引業、電気通信事業、金銭貸付業、倉庫業、不動産売買業、物品貸付業、代理業、不動産貸付業、請負業、仲立業、製造業、印刷業、問屋業、駐車場業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、興信所業、写真業、旅館業、公衆浴場業(むし風呂等)、周旋業、遊覧所業、船舶定係場業、席貸し業、演劇興行業、遊技場業 5%
第2種(3業種) 畜産業、水産業、薪炭製造業 4%
第3種事業(30業種) 医業、歯科医業、歯科衛生士業、歯科技工士業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、弁理士業、税理士業、司法書士業、社会保険労務士業、公証人業、行政書士業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、計理士業、土地家屋調査士業、理容業、美容業、海事代理士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業、公衆浴場業(銭湯) 5%
あん摩・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業 3%

個人事業税を求める計算式

個人事業税を求める際に使用するのは、以下の計算式です。

個人事業税=(事業所得額-(繰越控除+事業主控除))×税率

事業所得額は事業の総収入額から必要経費を差し引くことで求められます。
事業主控除とは、個人事業税で年間290万円の控除が認められており、法定業種であっても年間290万円の事業主控除を上回らなければ課税されません。
事業主控除に加えて繰越控除を上乗せすることも可能です。繰越控除とは、以下の損失額を指します。

  • 青色申告者で赤字となった分の損失額
  • 白色申告者で被災した場合の損失額
  • 事業用資産を譲渡した際に発生した損失額

後は法定業種の区分に合わせて3~5%の税率をかけることで個人事業税が算出できます。
この計算方法を使って実際にどれくらいの個人事業税になるのかシミュレーションしてみてください。
東京都内で1年以上物品販売業(小売業)を手掛けている個人事業主は、収入が800万円、経費が400万円、繰越控除が0円でした。
この時、個人事業税は以下のようになります。

((800万円-400万円)-290万円)×5%=55,000円

個人事業税を経費計上する際の仕訳

個人事業税を実際に経費として計上する場合の仕訳例は以下です。

借方 貸方 摘要
租税公課 30,000 現金 30,000 個人事業税

この仕訳例では貸方を「現金」としていますが、支払い方法に合わせて変更してください。なお、個人事業税の支払い方法については後ほど詳しく解説します。

個人事業税を経費計上できるのはいつ?

個人事業税の申告は所得税の確定申告と同時期に行います。会計年度翌年の8月・11月の2回に分けて納付する仕組みです。
なお、納税額が1万円以内だと8月に一括で納付することになります。
納付してから経費として計上できる時期は、個人事業税を納付した年度です。

例えば2023年度の確定申告を2024年3月に行った場合、2024年8月頃に個人事業税の納付書が送付されてきます。
ここで納める個人事業税は2024年度分の経費として計上されます。
ただし、年度内に事業を廃止した場合、廃止した年分の所得に課税される所得税は、個人事業税の課税見込み額を該当する年度分の廃止した事業にかかる所得金額の計算上、必要経費に算入させることが可能です。

個人事業税の節税には支出管理が重要


個人事業税の計算式では、課税対象が所得金額になっていることがわかります。そのため、所得金額が増えれば増えるほど納税額も増えていきます。
個人事業税を節税するためには正しく経費計上を行うことが大切です。そこで、ここで正しい経費計上につなげるための支出管理のポイントについて解説します。

家事按分する

家事按分とは、自宅を仕事場としている場合にプライベートで使用した分と事業として使用した分の費用を分けることを指します。
例えば、家賃や水道光熱費などはプライベートと事業のどちらの支出にも該当するものです。
事業の経費として計上するためにも、業務で利用した分はしっかりと家事按分をして算出しておく必要があります。
家事按分に明確なルールはないものの、基本的には第三者が見ても納得できる根拠を用意しなくてはなりません。

例えば家賃10万円の自宅(約80㎡)で6畳の書斎(約10㎡)を仕事部屋にしていた場合、家賃10万円のうち80分の10にあたる12,500円を事業用の家賃として計上することになります。

経費とプライベート関連の支出をきっちり分ける

事業経費を計上する際には、どれくらいの金額を支払ったか、どこに支払ったのかがわかる証明書類が必要です。
一般的には支払いの際に受け取ったレシートや領収書を保管することになります。

ただし、レシートの中には店名・商品名が書かれていない場合もあります。
後で帳簿を作成する際に支払いの内訳がわからなくならないように、レシートを受け取ったら記載内容を確認し、必要な情報が書かれていない場合はすぐに追記してください。

また、現金払いだと事業とプライベートの支出を分けるのが困難な場合、事業用のクレジットカードを使って支払うと支出管理が楽になります。

個人事業税はどうやって支払う?


個人事業税の支払い方法は多岐にわたります。様々な方法があるので、支払いやすいものを選んで納税してください。
ここではそれぞれの支払い方法について解説します。

クレジットカード払い

クレジットカードを使って個人事業税を納めることも可能です。例えば東京都の場合、「都税クレジットカードお支払サイト 」から支払えます。
自治体によってはカード払いに対応していない場合もあるので事前に確認してみてください。
しかし、カード払いだと決済手数料がかかってしまうので、注意が必要です。東京都の場合は、1万円ごとに73円(消費税別)の手数料が加算されていきます。
また、納付できる税額は100万円未満までです。

現金払い

所得税の確定申告や住民税の申告を行い、個人事業税の支払い対象になる方には8月頃に各都道府県から納税通知書が送られてきます。この納税通知書を使えば現金払いが可能です。
現金払いに対応しているのは、税務署や金融機関の窓口です。また、コンビニでも現金払いに対応しています。ただし、コンビニの場合は納める税金額が30万円以下の場合に限られているため、注意してください。

ペイジー払い

ペイジー(Pay-easy)とは、収納機関と金融機関をつなぐネットワークです。
ペイジー払いであれば金融機関の窓口やATMから現金払いができ、なおかつすぐに支払い情報が収納機関へ通知されます。
インターネットバンキングにも対応しているため、自宅から納税できることも魅力のひとつです。

ただし、クレジットカード払いのようにポイント還元が利用できません。また、ペイジー非対応の金融機関も存在します。
ペイジーで個人事業税を納めたい場合は、あらかじめ金融機関が対応しているかどうか確認してみてください。

口座振替

口座振替を利用すると、指定した銀行口座から自動的に引き落とされます。毎回わざわざ窓口に出向く必要もないため、面倒な支払い手続きをなくしたい方におすすめです。
また、口座振替の場合は納期限が翌月になったり、一度支払いを口座振替にしてしまえば後は自動的に納税してくれるので支払い忘れが起きなかったりする点はメリットといえます。

ただし、一部金融機関では未対応であることや、残高不足だと未納になってしまい気付かないうちに延滞金が発生する可能性もあるので注意が必要です。

決済アプリ

個人事業税の納付書にはバーコードが記載されているため、このバーコードを決済アプリで読み込んで納付することも可能です。
窓口に行く必要もないく、カード払いのように決済手数料が発生することもありません。

ただし、納付書での支払いは、基本的に30万円までとなっています。
また、決済アプリだと領収書も発行されないため、経費として計上する際には注意してください。

地方税共通納税システム

地方税共通納税システムとは、2019年10月1日から始まった地方税の納税システムです。
このシステムを活用すればわざわざ窓口へ行かなくても、自宅や会社のパソコンからインターネットを介して納税できます。

地方税共通納税システムを活用するためには、事前に利用者IDを発行する必要があります。
また、IDを発行したらシステム対応のソフトウェアを取得し、金融機関の口座を事前に登録しておかなくてはなりません。
登録後は納付も楽になりますが、それまでに手間がかかるので注意してください。

まとめ・個人事業税を経費計上してうまく節税しよう

個人事業税は経費として、納付した年度に計上することが可能です。経費計上することで所得額を減らせるため、税金の負担も抑えられます。
ただし、個人事業税の節税では支出管理が重要となります。事業用とプライベート用の支出をしっかりと分け、家事按分で事業分の経費を正確に導き出してください。




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(編集:創業手帳編集部)

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