確定申告の修正のしかた|訂正申告や修正申告、更正の請求の違いと方法
確定申告の間違いに気づいた!さて、どうする?
確定申告は、1年間の収支や諸控除、納税すべき金額などについて、文字通り「確定した」金額を申告するものです。起業家や個人事業主には毎年おなじみですね。
もちろん、人がやることですから間違いはつきもの。そのため、確定申告時には、間違いを修正するための仕組みが用意されています。
今回は、確定申告した内容のミスや間違いに気づいた場合の対応方法をご紹介します。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
状況によって変わる確定申告の修正方法
確定申告の修正は、間違いに気づいたタイミングが申告期限の前か後かによって手続きが異なります。
また、申告期限以後に修正する場合は税金の納めすぎ(または還付金が少なすぎ)か、納税額が少なすぎ(または還付の受けすぎ)かによって手続きが分かれています。
申告期限を迎える前に、確定申告の間違いに気づいた場合は「訂正申告」を行います。
申告期限後、確定申告の間違いに気づき、納税額が多い場合は「更正の請求」を行います。
申告期限後、確定申告の間違いに気づき、納税額が少ない場合は「修正申告」を行います。
なお、消費税課税事業者の場合、消費税の確定申告の修正が発生する場合もあります。この記事では主に所得税及び復興特別所得税、法人税の確定申告の修正を題材にご紹介しますが、消費税の場合も基本的な考え方は同じです。(提出書類などは異なります。)
訂正申告
「訂正申告」は、「申告期限を迎える前」に一度提出した申告書の間違いを発見した場合の手続きです。
ご存知の通り、所得税等、法人税等の確定申告期限は、個人と個人事業主は毎年3月15日、法人の場合は通常、決算日の翌日から2ヶ月以内ですので、それまでに確定申告書を提出することになります。
ところが、例えば税務署に申告書を提出して事務所に帰ってきて、ふと申告書の控えを見たら、計算の間違いに気が付いた……。そんな時は訂正申告を行います(税務署側で不備や間違いを発見して電話などで連絡が来た場合は指示に従って処理してください)。
訂正申告を行う場合は、同じ書式を使って、新たに正しく計算した確定申告書を作成して税務署に提出します。そのときに、申告書と控えの余白に朱書き(赤ペンや赤いボールペン)で「訂正申告」と書き、「当初申告の日付」「前回間違って申告した税額」を記入しておきます。
提出の際は、本人確認書類の提示またはコピーの添付が必要です。
税務署では、法定申告期限前に2枚以上の確定申告書が提出された場合は、最後に提出されたものを確定版として扱います。つまり、法的には、間違いがあれば何回でも訂正申告することができることになっています。
添付書類は、最初の申告時に提出済みになっているはずですので通常は不要です。しかし、訂正の原因に関わる書類がある場合は添付が必要です。
例えば、保険料控除が抜けていたなら保険料控除証明書を、収支の金額に誤りがあった場合などは、正しい青色申告決算書や収支内訳書などを添付します。
e-Taxの場合は、訂正した申告データを作成して再送信し、追加の添付書類などを郵送などで提出します。詳しい手順はe-Taxのウェブサイトを確認してください。なお、訂正申告を紙で作成して提出することもできます。
訂正申告は納めるべき税額の増減、還付金の増減のいずれのケースでも手続きは同じです。ただし、1回目の申告にもとづいて税金の還付手続きがすでに行われていると訂正申告ができなくなる場合がありますので、気づいたらできる限りすみやかに手続きを行いましょう。
更正の請求
「更正の請求」は、申告期限を過ぎた後で、計算間違いなどにより多く納税していたことに気づいた場合に、還付を受けるために行う手続きです。
ただし「医療費控除よりもセルフメディケーション税制を利用した方が得だった」といった、一度した選択を変更することによる請求は認められません。更正の請求が認められるかどうかは審査次第ですが、還付を受けるためにはしかるべき理由と、その理由の証明が必要です。
更正の請求を行う手順は以下の通りです。
- 更正の請求書を用意する(税務署で配布しているほか、国税庁HPからダウンロードも可能)
- 更正の請求書に必要事項を記入する
- 更正にあたって必要な書類を用意する
- 税務署に提出する
更正の請求書には、更正に至った理由を記入する欄があります。審査にかかわるため、詳細に記入してください。
例えば、消耗品費の計上漏れの場合「経費計上漏れ」では不足です。「●月●日に支払った●●円の消耗品について計上漏れがあり、事業所得が過大になっていたため」などと記載し、決算書と帳簿、領収書を添付します。
なお、更正の請求は国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーから、オンラインでの手続きも可能です。
税務署では請求について調査や審査を行ったうえで、適正であれば還付を行います。
更正の請求の期限は、通常、法定申告期限から5年以内です。還付金には納付してから還付されるまでの期間に応じて還付加算金(利息にあたるもの)が加算されます。
なお、更生の請求は行わなくても罰則はありません。
修正申告
修正申告は申告期限が過ぎた後で、納税額が少なかったことに気づいた場合に行う手続きです。
所得税等の修正申告をする場合は、確定申告にも使う「申告書第一表」(見出しを「修正」申告書とします)と「第二表(第一表と同様に、見出しを「修正」申告書とします)」と、その他、修正に関わる別表の明細書等に必要事項を記入して税務署に提出します。
「修正申告」は脱税事件のニュースでもしばしば登場するなど、今回ご紹介する3つの手続きの中では最も耳なじみがある言葉かもしれません。もとより故意の脱税はあってはなりませんが、単なるミスが原因でも、放置するとペナルティがあります。
税務署の調査を受けてから修正申告すると、過少申告加算税(10%または15%)が課されます。確定申告自体をしていなかった場合には無申告加算税、不正な脱税とみなされると重加算税(35%または40%)が課されます。
また、延滞税(その時々で利率が変わりますが、延滞2か月までは最大7.3%、それ以降は最大14.6%)が原則、日数に応じて加算されていきます。
ただし、税務署から調査通知(税務調査に入る予定などのお知らせ)が来る前に自主的に修正申告をすると、過少申告加算税は課されません。
ひらたく言うと、バレそうになってから慌てて修正申告してもペナルティを取るけれど、自発的に間違いを改めて正しい納税に努めるならよし、という制度です。
「ほんの少しの過少申告だから」と放置せずに、気づいたら一日も早く修正申告を行いましょう。
個人が修正申告をする際の手順は以下の通りです。
- 確定申告書第一表の「種類」欄「修正」に○をつける
- 「第3期分の税額」欄に正しい税額を記入する
- 「修正申告」欄「修正前の第3期分の税額(還付の場合は前に△を記載)」に、修正申告前の税額を記入する
- 「修正申告」欄「第3期分の税額の増加額」に、「2」から「3」を引いた税額を記入する
- 修正申告書を税務署に提出する
- 「4」の金額を納付する
まとめ
確定申告でミスがあった場合、故意的でなかったとしても、脱税の容疑をかけられることにつながりかねません。
間違いを見つけたら、まずは慌てずに再度計算しなおし、すみやかに税務署等に相談するようにしましょう。
創業手帳では別冊版『 確定申告ガイド』をご用意しました。複雑で難しいと遠ざけてしまいがちな確定申告ですが、手順ややり方は一度つかんでしまえばそれほど怖くはありません。このガイドブックでは、おさえておきたい重要なポイントなどをわかりやすく解説。修正申告の記入方法についても記載をしています。無料でお配りしてますので、あわせてご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)