創業手帳が選ぶ起業経営ニュース
2017年12月30日平成30年度の税制改正、事業承継の支援策を中心に拡充
平成29年12月に発表された、「平成30年度の税制改正」。今回は、その中でも中小企業にかかわる税制の改正ポイントをご紹介します。
もっとも大きな改正点は、事業承継にまつわる税制です。少子高齢化に伴う深刻な承継問題を改善すべく、事業承継時の負担をより軽減させるような内容となっています。
事業承継に関する税制の改正
事業承継税制の適用を受けるには、今後5年以内に承継計画(仮称)を都道府県に提出し10年以内に承継を行う必要があります。
なお、今回の改正措置は10年間の時限措置のため、「2018年1月~2027年12月」までとなっております。
今回の事業承継税制改正のポイントは下記です。
- Point
-
- 自社株承継時の納税負担撤廃
- 雇用維持条件の撤廃
- 経営環境の変化に応じた納税免除措置制度の創設
- 相続時精算課税制度の範囲拡大
- M&Aを通じた事業承継への支援策を新設
【自社株承継時の納税負担撤廃】
これまでは、事業承継時には納税負担がかかっていました。しかし、今回の改正でこの納税負担が撤廃されることとなります。
事業承継時の納税負担には、「対象株式数上限2/3×猶予割合80%」の猶予があり、残りは納税が必要でした。しかし、税制改正後からは対象株式上限の撤廃と、相続時の猶予割合が80%から100%に引き上げられたため、自社株承継時の納税負担がなくなりました。
【雇用維持要件の撤廃】
前述の納税猶予を受けるためには、承継後5年で平均80%の雇用者数の維持が必要とされ、維持できないと全額納付する必要がありました。しかし、今回の税制改正によって、雇用維持要件が撤廃されることとなりました。
ただし、5年で平均80%の雇用者数の維持が出来なかった場合は、都道府県へ下回った理由の報告が必要になるので注意が必要です。
【経営環境の変化に応じた納税免除措置制度の創設】
事業承継をしたあと、後継者が廃業や売却をすることもあると思います。そのような場合、これまでは「承継時の株価」をもとに贈与税や相続税が計算されていました。事業承継後の株価下落などは考慮されないため、大きな税負担のリスクがあったのです。
しかし税制改正後は、一定の要件を満たしていれば、売却・廃業時の株価をもとに税額が計算されるという仕組みに変わり、安心して事業承継ができるようになります。
【相続時精算課税制度の範囲拡大】
相続時精算課税制度は原則として、直系卑属(贈与者の子や孫など)への贈与のみが対象となっていました。
しかし今回の改正で、贈与者の直系卑属ではなくとも、事業承継税制の適用を受ける場合には、60歳以上の贈与者から20歳以上の後継者への贈与を相続時精算課税制度の対象とすることとなりました。
【M&Aを通じた事業承継への支援策を新設】
中小企業等経営強化法の改正により、M&Aによる事業承継が支援対象に追加されました。それにより、事業買収の際に発生する登録免許税や不動産所得税の税負担の軽減措置が行われます。
今回の税制改正は、多様な経営の引き継ぎにも対応しています。次世代の事業承継を強力に後押ししてくれるものになるので、是非活用してください。
中小企業の賃上げ支援
事業承継税制の他、給与受給者の所得向上をねらって制定されている「所得拡大促進税制」の改定にも注目です。
給与の引き上げを行った際、一定の要件を満たすことで税額の控除が受けられる所得拡大促進税制。制度改正後は、要件の緩和と税額控除率の増加が行われます。
従来の制度では、適用には、給与等支給総額が平成24年度比で3%以上の増加すること、給与等支給総額が前年度以上であること、平均給与等支給額が前年度を上回ることが必要要件でした。しかし、今回の改正で基準年度は撤廃され、要件は給与等支給総額が前年度以上であること、そして、平均給与等支給額が前年度比1.5%増加していることの2つに変更となりました。また税額控除も、人材投資や生産性向上に積極的な企業はより大きく優遇されるような形に変わります。
まとめ
今回は、平成30年度の税制改正の中から、事業承継、そして所得拡大促進税制についてご紹介しました。
詳細については中小企業庁の発表資料なども併せてご確認ください。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2017/171225zeiritu.pdf
カテゴリ | 制度改正 |
---|---|
関連タグ | 事業承継 |
制度改正の創業手帳ニュース
関連するタグのニュース
公益財団法人東京都中小企業振興公社は、令和6年度第1回「事業承継支援助成金」の公募について発表しました。 事業承継、経営改善を実施する過程において活用する外部専門家等に委託して行う取り組みに対し、その…
セレンディップ・コンサルティング株式会社は、総額12億円の資金調達を実施したことを発表しました。 引受先は、中部地方の地方銀行や、名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号投資事業有限責任組合などです…
2022年11月8日、Local Design株式会社は、株式会社ドーガンに対して第三者割当増資を行い、資本業務提携契約を締結したことを発表しました。 これによりドーガンは、Local Designの…
中小企業庁は、第4回「アトツギ甲子園」の開催を発表しました。 「アトツギ甲子園」は、後継者が既存の経営資源を活かした新規事業アイデアを発表するピッチイベントです。 先代経営者がこれまでに培ってきた人材…
2021年9月7日、ビジョナル・インキュベーション株式会社は、横浜市信用保証協会と業務提携契約を締結したことを発表しました。 ビジョナル・インキュベーションは、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリー…
大久保の視点
パネルセッション例:中村幸一郎(Sozo Ventures ファウンダー・著名な投資家)、ヴァシリエフ・ソフィア市副市長(ブルガリアの首都) 「Endeav…
2024年10月9日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて、「JX Live! 2024」が新経済連盟主催で行われました。 「JX Live!」は、「JX(Japan…
2024年10月4日、世界最大級のビジネスピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ(SWC)2024」の世界決勝戦が、米国・シリコンバレーで開催されま…