会計士の愛した数式「単価×数量」は数字の苦手な経営者が覚えておきたいたった1つの数式

資金調達手帳

会社の数字は単価と数量の掛け算に分解して考えよう

会社の数字は単価と数量の掛け算に分解して考えよう

Q. 都内で小売店を経営しているTと申します。難しい数字の話は苦手なのですが、会社の数字ついて最低限何を意識すればよいでしょうか。ちなみに、算数はマイナスの掛け算で挫折しました。
A. 都内で会計事務所を経営しております会計士のEです。まずは、「会社の数字 = 単価 × 数量」ということを意識してみてください。

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数式を見ると眩暈がする、蕁麻疹が出る、歯茎から血が出る・・・これまで会ったことのある経営者中でも、特に重症の患者の方々の症状です。

そんな数字が苦手の経営者でも大丈夫。多くの企業経営者をサポートしてきた会計士は言います。数字の苦手な経営者が会社の数字をみるために最低限覚えてもらいたいのは、「たった1つの数式だけです」と。

今回は、そのたった1つの数式「会社の数字 = 単価 × 数量」について語ります。

会社の数字は単価と数量の掛け算でできている

経営者は何よりもまず、常に会社の数字を以下のように分解して考えるようにしましょう。

会社の数字 = 単価 × 数量

売上であれば、

売上高[円] = 販売単価[円/個] × 販売数量[個]

です。[ ]の中身は単位です。「/個」は「1個あたり」を示します。

いろいろな勘定科目における単価とは?数量とは?

この式は、いろいろな勘定科目にも適用できます。

在庫であれば、  在庫 = 在庫単価[円/個]×在庫数量[個]
人件費であれば、  人件費 = 平均給与[円/人]×従業員数[人]
地代家賃であれば、 地代家賃 = 坪単価[円/坪]×坪数[坪]

以上のように、売上以外に会社の数字も「単価」×「数量」に分解することができます。

在庫単価とは在庫1個あたり値段で、坪単価とは1坪(約3.3平方メートル)あたりの値段です。単価は、「何あたりの値段なのか?」を間違わないように、常に単位を意識しましょう。

なぜ単価と数量の掛け算に分解するのか?

ではなぜ、単価と数量の掛け算に分解して会社の数字を見るようにすると良いでしょうか?

それは、会社の数字を分解した式を意識すると、数字の増減に影響を与えている理由がわかりやすくなるからです。

なぜ単価と数量の掛け算に分解するのか?例えば、自動車メーカーの決算書上の在庫が1億円とします。ここでの単価とはクルマ1台の値段([円/台])です。単価と数量の掛け算に分解すると、1億円をみて「当社のクルマは1台125万円だから在庫台数が80台か。予算よりも販売できずに在庫が残ったな。」などと瞬時で判断ができます。

また、オフィスの賃料が月に90万円だとします。1坪3万円/月で30坪借りていれば、3万円×30坪=90万円となり、「1坪3万円でスペースで5坪分が荷物に埋もれて使われていない。無駄なオフィススペースに月15万円も払っている。もったいないな。」のような判断をすることもできます。

このように会社の数字を分解することで、実は会社の数字がすべて積み上げでできていることが意識できるでしょう。

単価による影響なのか?数量による影響なのか?売上分析をする

売上が伸びたのであれば、「販売単価が上がったのか?」あるいは「販売数量が伸びたのか?」を分析することができます。
unitpriceandquantity-fig03例えば、前期に100万円の商品を50人に販売した会社の売上は、100万円×50人=5千万円 です。前期と今期の売上高を販売数量と販売単価に分解します。

上図のように、今期の売上が増減した原因について、「販売単価が上がったのか?」あるいは「販売単価が下がったのか?」、「販売数量が伸びたのか?」あるいは「販売数量が減ったのか?」など、「販売単価×販売数量」をみることで売上分析ができるのです。

ただ売上が増えた、減ったで一喜一憂するのではなくしっかりと会計を意識して売上を分析してきましょう。

単価と数量のどちらを上げるか?販売戦略を考える

もう少し、この例を取り上げて話を続けましょう。先ほどの分析結果をもとに、今後の販売戦略を立てることができます。

売上を増やすには,「販売単価を上げる」か「販売数量を増やす」の2つの方法があります。単価と数量の両方がUPするのが理想ですが、経営資源が限られる場合には、どちらに注力するかを考えます。

単価と数量のどちらを上げるか?販売戦略を考えるここで難しいのは、思惑通り単価や数量を上げるのはバランスが必要だということです。

例えば、販売数量を上げるために、手っ取り早いのが値下げ(販売単価を下げる)です。商品の値段(単価)を下げて,販売数量を増やすと、いわゆる「薄利多売」戦略になりますが、思ったより販売数量が伸びず、結果としては売上が減ってしまうかもしれません。

逆に,それほど販売数量が増えなくてもよいので,商品の値上げ(販売単価を上げる)をした場合は、販売数量が伸びないどころか減少する可能性もあるでしょう。

どんな販売戦略をとるにしても、単価と数量のどちらにも注意を払っておく必要があります。

「会社の数字 = 単価 × 数量」のまとめ

1万円の売り上げでも100億円の売り上げでも、その背景は「売上高 = 販売単価 × 販売数量」です。どんなに大きな売上高であっても小さな数字が積み上がってできていることを意識しましょう。

売上に限らず、会社の数字を「会社の数字 = 単価 × 数量」で常に意識をすることが、あなたの経営者としての会計力を上げていきます。

あなたが「会社の数字 = 単価 × 数量」を常に意識できるようになったら、続いて全社員が「会社の数字 = 数量×単価」で意識するような企業文化をつくっていきましょう。

「社長の愛した数式」を「社員の愛した数式」にするのです。会社のスタッフ「みんなが愛した数式」は、あなたの会社を成長させる原動力になっていくことでしょう。

(監修:江黒公認会計士事務所 江黒崇史 公認会計士 )
(編集:創業手帳編集部)

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