フリーランスのトラブル事例6選│発生後の対応策&未然に防ぐ方法を紹介

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フリーランスは立場の弱さからトラブルに巻き込まれやすい


自由な働き方が魅力のフリーランスですが、その反面、会社員と比べて法律や契約に関する保護が薄く、トラブルに巻き込まれやすい立場です。
報酬の未払いや納品後の一方的な修正依頼など、実際に多くのフリーランスが何らかの問題を経験しています。

この記事では、フリーランスが直面しやすい代表的なトラブル事例を6つ紹介し、それぞれの対応策や、同じ失敗を繰り返さないための予防法も解説します。
これからフリーランスとして活動を始める人はもちろん、すでに経験がある人もぜひ参考にしてください。

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フリーランスに起こりやすいトラブル事例6選


フリーランスでは具体的にどのようなトラブルに巻き込まれやすいのでしょう。まずは、フリーランスが直面しやすいトラブル事例を解説します。

1.報酬の未払い・遅延

フリーランスのトラブルで起こりやすいのが、報酬の未払い・遅延に関するトラブルです。
依頼された業務を遂行し、成果物をクライアントに納品することで報酬は支払われますが、納品後も一向に報酬が支払われないケースもあります。

クライアント側が単純に支払いを忘れていることもありますが、その場合は問い合わせれば解決するでしょう。
しかし、催促しているにも関わらず、様々な理由を付けて支払ってくれない、または未払いの状態で連絡がつかなくなることもあります。

例えば、動画制作を手がけるフリーランスは、ある会社から依頼を受け、十分な打ち合わせを経て報酬についても納得してもらい、仕事を受けることになりました。
しかし、いざ完成した動画を納品したところ、クライアントから「この出来だと報酬の3分の1しか出せない」といわれてしまったそうです。

2.やり直しの要請・受領拒否・返品

クライアントと打ち合わせした内容を反映させ、成果物を作ったものの、修正を受けてしまうことは少なくありません。
修正すること自体は問題ありませんが、フリーランスに非がないのに費用を支払わず、過度な修正・追加作業を求めてくる場合もあります。
また、修正以外にも成果物の受け取りを拒否されたり、一度受け取ったにも関わらず返品されたりするケースもあります。

このようなトラブルが発生する背景は、フリーランスは修正対応をするのが義務だと考える人が多いことです。
公正取引委員会と厚生労働省が実施した「フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)」の中で、「不当なやり直しがあった」と認識している人の割合がフリーランスで13.7%だったのに対し、委託者は0.4%しかいませんでした。
つまり、クライアント側は何度も修正をかけることに対して不当だと認識していないことが、トラブルにつながっていると考えられます。

3.知的財産権の侵害

知的財産権とは、創作活動によって生まれた作品・アイデアなど、無形の資産を保護するための法律を総称したものです。
知的財産権の中に、特許権や著作権なども含まれています。
フリーランスでもデザイナーやイラストレーターなどが、商品のデザインを考え、納品することは多いです。
この時、知的財産権を侵害されるトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。

例えば、あるフリーランスが商品のデザインについてサンプルを作成・納品しましたが、結果的にそのデザインは採用されませんでした。
しかし、企業側は別のデザインにサンプルをそのまま採用してしまいます。
契約上サンプルのデザインに関して著作権の取り決めを行っていなかったため、無断で使用された形となります。

4.発注の一方的な取り消し・変更

クライアントから仕事を受けたにも関わらず、突然キャンセルを受けたり、仕様が突然変更になったりするトラブルも多いです。
仕様が変更になってもすぐに修正ができる範囲なら問題ないですが、場合によっては根本から修正が必要な場合もあり、一から作り直さなくてはいけないこともあります。
また、突然キャンセルとなった場合は作業や準備をしてきた分の支払いもなく、生活に支障をきたす恐れがあります。

実際に、一定量を発注する予定があると聞き、業務委託契約を締結したフリーランスは、ほかの仕事を受けられないほどの作業量が想定されたため、半年先まで入っていた仕事を断っていました。
しかし、依頼を受けてから数カ月後に突然、解約するという通知を受けてしまいます。その結果、フリーランスは収入が大きく減少してしまいました。

5.ハラスメント

フリーランスがクライアント側からハラスメントを受けてしまう場合もあります。
クライアントからの要求がすべてハラスメントになるわけではないものの、一方的に強要してくる場合は問題があると判断されます。

例えば、フリーランスが成果物に関する著作権の取り扱いについてクライアント側の担当者と議論になった際、その後のやり取りで人格否定や暴言を受けてしまいました。
クライアントによっては「フリーランスに仕事をやっている」という認識を持ち、上から目線で対応する人もいるようです。
また、不要なプレッシャーを与えてきたり、契約の範囲外にあたるような無理な要求をされたり、高圧的な言動によって仕事を強制してきたりする場合も、ハラスメントに該当します。

6.偽装請負

フリーランスに起こりやすいトラブルの中でも、近年特に注目されているのが「偽装請負」です。
本来フリーランスは企業と業務請負契約を結び、その契約に基づいて仕事を行います。

業務請負契約の場合、企業と雇用関係にある労働者とは異なり、就労場所や就業時間、業務量の調整などは自由に行うことが可能です。
しかし、就労場所や時間が固定されていたり、業務量を自由に調整できなかったりするなど、業務請負契約を結んでいるはずが労働者と同じ働き方になってしまうことを偽装請負といいます。
偽装請負のトラブルに巻き込まれた場合、自由な働き方が制限されてしまうだけではありません。
労働者と同じ働き方なのに労働者保護法の対象外だったり、社会保障制度も適用外だったりします。
また、労働者ではないことで契約を突然打ち切られてしまうリスクもあり、不当な扱いを受けたとしても声を挙げられないという問題点もあります。

フリーランスのトラブル発生時の対応策


上記で紹介したようなトラブルが発生した場合、フリーランスはどのような対応を取れば良いのでしょうか。ここで、トラブル発生時の対応策を紹介します。

契約内容を改めて確認する

契約に関するトラブルが発生した場合、まずは冷静になって契約内容を確認することが大切です。
契約内容を確認せず、クライアントのいうことばかり信用してしまうと、大きな損失を被ってしまう可能性もあります。
契約内容を確認する際には、以下の項目をよく確認してみてください。

  • 報酬の支払期限、支払方法
  • 損害賠償義務
  • 修正回数や範囲
  • 著作権の取り扱いについて
  • 契約解除に関する条件や方法

クライアントと話し合う

トラブルが発生してしまう要因として、クライアントとのコミュニケーション不足や齟齬があったというケースが多いです。
そのため、契約に関するトラブルが発生した場合、まずはクライアントと話し合うことも重要となってきます。
話し合いで自分と相手の認識に違いはないかを確認した上で、契約内容のすり合わせや変更・解除に関して確認することが大切です。

また、話し合いをする際にはやり取りの内容を記録するようにしてください。万が一訴訟対応になった場合、その記録が証拠になる可能性もあります。

相談窓口を活用する

クライアントとの話し合いでトラブルがすべて解決されれば良いですが、難しい場合もあります。
中にはクライアントと連絡が取れなくなったり、取り合ってもらえなかったりするケースもあるかもしれません。
自分だけで解決するのが困難と判断した際や、契約トラブルなのか客観的にみてもらいたい場合は、相談窓口を活用するのがおすすめです。

相談窓口の中には無料で利用できるところもあります。
例えば、第二東京弁護士会が運営する「フリーランス・トラブル110番」は、相談から解決に至るまで弁護士がワンストップでサポートしてくれる窓口です。
また、中小企業庁が取引上の悩みなどを解消するための機関の「下請かけこみ寺」も、相談窓口として活用できます。

フリーランスが未然にトラブルを防ぐためのポイント


フリーランスがトラブルに巻き込まれないようにするためには、事前の対策も必要です。ここで、フリーランスが未然にトラブルを防ぐためのポイントを解説します。

信頼できるクライアントと取引をする

契約に関するトラブルを防ぐ方法として、信頼できるクライアントとだけ取引をすることが挙げられます。
信頼できるクライアントかどうかを判断するためにも、事前にその企業についてリサーチしておくのも大切です。

例えば、過去にその企業と取引したフリーランスが、口コミで注意喚起を行っている場合もあります。
特にクラウドソーシングサイトで案件を探している場合は、実際にその企業と契約した人のレビューをチェックできます。
ほかにもその企業の事業内容や実績、取引先なども確認しておくと安心です。

契約内容をよく確認してから締結させる

クライアントと業務請負契約を結ぶ際に、サッと契約内容を確認しただけで契約してしまう人もいるかもしれません。
しかし、よく確認しないで締結してしまうと、トラブルに発展した際に企業側から「契約書にはそのようなことが書かれていない」と押し切られ、泣き寝入りすることになる可能性もあります。
こうした事態を回避するためにも、契約書の内容をよく確認した上で締結させることが大切です。

契約内容に関するやり取りはすべて文面に残す

契約内容に関わるような重要なやり取りがあった場合、口頭ではなくすべて文面に残しておくことも大切です。
口頭だけでやり取りをしてしまい、後からトラブルに発展した場合、言った・言わないの水掛け論になる恐れもあります。
そのため、契約内容に関するやり取りは、すべて書面または文面に残すようにしてください。
例えば、契約内容に変更があった際に、電話だけでなくメールやチャットをすることで、そのやり取りをしたという文面が残せます。

クラウドソーシングやエージェントを活用する

なるべくトラブルを回避したい場合は、クラウドソーシングやフリーランスエージェントを活用するのがおすすめです。
これらのサービスを利用すると手数料は発生してしまうものの、案件の仲介・報酬の支払管理なども行われているため、未払いのトラブルは起きにくくなります。
また、取引きの記録も管理されているため、万が一トラブルに発展した場合でも証拠を提示してもらうことが可能です。

フリーランスエージェントも、万が一トラブルが発生した際にエージェントがクライアント側との交渉を代行してくれる場合もあります。

損害賠償保険に加入しておく

フリーランスは労働者とは異なり、業務請負契約を結んで仕事を行います。
そのため、万が一重大なミスをして第三者に損害を与えてしまった場合、すべての責任を1人で背負うことになります。
「ミスをしなければ良い」と考える人もいますが、フリーランスで仕事をする中で、リスクがゼロになることはありません。
そのため、万が一トラブルが発生した際に対応できるよう、フリーランス向けの損害賠償保険に加入しておくと安心です。

フリーランスのコミュニティに参加する

フリーランスは自由な働き方ができる反面、1人で活動することがほとんどなので気軽に相談できる相手がいない場合も多いです。
相談に加え、トラブルに巻き込まれないための情報を収集するためにも、フリーランスのコミュニティに参加し、同じフリーランスの仲間を作ってください。

コミュニティに参加することで同じような悩みを持つ人と出会えたり、実際に経験した人から話を聞いたりすることもできます。
また、コミュニティ以外にもフリーランス向けに開催されているセミナーや勉強会、イベントなどに参加し、積極的にコミュニケーションを取ることで、横のつながりを増やしていけます。

【2024年11月より施行】フリーランス法でトラブル回避へ!


フリーランスは、立場の弱さからトラブルに巻き込まれてしまうケースも少なくありません。
しかし、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために、2024年11月からフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。
このフリーランス新法では、業務委託をしている企業に対して様々な義務を設けています。
例えば、取引条件を明示する義務や、報酬の支払期日は成果物を受け取った日から60日以内のできるだけ短期間内に定めること、一度決めた期日までに必ず支払うことなどです。

また、1カ月以上フリーランスに業務を委託した場合、以下の行為を禁止しています。

  • 受領拒否
  • 報酬の減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更・やり直し

フリーランス新法が施行されたことにより、フリーランスにとって働きやすい環境が整備されました。
もしフリーランス新法に違反するような取引がみられた場合は、厚生労働省の申出受付フォームを使って申し出てください。

まとめ・トラブルに巻き込まれないために事前の対策も必要

フリーランスは報酬の未払いや遅延、不当なやり直しの要請、成果物の受領拒否など、様々なトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
こうしたトラブルに遭わないためにも、契約書の確認やクラウドソーシング・エージェントの活用などがおすすめです。
2024年11月からフリーランス新法が施行されたものの、場合によっては不当な扱いを受けてしまう場合もあります。
その際は相談窓口や申出受付フォームに違反している可能性があることを相談してみてください。

フリーランスとしての経験は、将来の起業にも大きな力になります。ただし、事業を広げるほどにトラブルやリスクも増えるもの。
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(編集:創業手帳編集部)

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