農業にAIを導入するメリット・デメリットは?日本で実際に導入した事例もご紹介

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農業にAIを導入するメリットは大きい!それでもスマート農業が普及しない理由は何?導入事例もご紹介

農業の分野でも、AI化、スマート化の波が押し寄せてきています。農業にAIを導入することで、業務効率化や、生産物の品質向上などが期待できます。

その一方で、いまだに農業のAI化、スマート化はそこまで進んでいません。その背景には、AI化のデメリットや障壁もあります。

本記事では、農業のAI化をすることによるメリット・デメリットや、日本で農業にAIを導入した実際の事例などをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

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農業にAIを導入するメリットは?

あらためて、農業にAIを導入するメリットについてご紹介します。農場にAIを導入するかどうか悩まれている方はぜひご覧ください。

精密農業の実現

農業へのAI導入の主要なメリットとして、精密農業の実現が挙げられます。AIを活用したセンサー技術や高度な画像解析により、作物の生育状況や土壌条件をリアルタイムかつ正確に把握することが可能になります。これにより、水や肥料、農薬の使用量を各作物や圃場の状況に応じて最適化できます。結果として、環境負荷を大幅に低減しながら、収穫量と品質の向上を同時に達成することができます。さらに、AIによる気象データの分析と組み合わせることで、より精度の高い収穫予測や病害虫の発生予測も可能になり、効率的な農業経営を支援します。

高精度な収穫予測が可能

農業へのAI導入の重要なメリットとして、予測精度の向上が挙げられます。最新のAI技術は、気象データ、過去の収穫記録、衛星画像、さらにはIoTセンサーからのリアルタイムデータなど、膨大かつ多様なデータを統合的に分析します。これにより、従来の経験則を超えた高精度の収穫予測が可能となり、農家は最適な収穫時期を逃すことなく、効率的な作業計画を立てられます。さらに、病害虫の発生予測においても、AIは気象条件と過去の発生パターンを学習し、高い精度で警告を発することができます。これらの予測に基づいて、農家は事前に適切な対策を講じることが可能となり、収量や品質の損失を最小限に抑えつつ、農薬使用量の削減にもつながります。結果として、農業経営のリスク管理が大幅に向上し、安定した生産と収益確保に寄与します

労働力不足の解消

農業へのAI導入の重要なメリットとして、深刻化する労働力不足の解消が挙げられます。自動運転トラクターやAI搭載の収穫ロボットの導入により、従来人手に頼っていた多くの作業を自動化することが可能になります。これらの先進技術は、単純作業だけでなく、熟練の技を要する複雑な作業もこなすことができ、労働生産性を飛躍的に向上させます。特に高齢化と人口減少が進む農村地域では、この技術革新が農業の持続可能性を大きく高める可能性を秘めています。若い世代の新規就農を促進し、ベテラン農家の知識や経験をAIシステムに取り込むことで、世代を超えた技術の継承も可能になります。さらに、重労働や危険を伴う作業をAIロボットが代替することで、農業従事者の労働環境も大幅に改善されます。

品質管理の向上

農業へのAI導入の重要なメリットとして、品質管理の向上が挙げられます。最新のAI画像認識技術を用いることで、収穫物の形状、色、大きさ、さらには内部品質まで、高速かつ高精度に判別することが可能になります。これにより、従来人の目に頼っていた選別作業を自動化し、大幅に効率化できます。その結果、品質の均一化と全体的な向上が図れるだけでなく、人為的ミスも最小限に抑えられます。さらに、AIは膨大なデータを学習することで、微妙な品質の違いや、人間の目では見逃しがちな欠陥も検出できるようになります。市場ニーズに合わせたきめ細かな等級分けが可能となり、農産物の付加価値向上にもつながります。また、リアルタイムでの品質データ収集により、栽培方法の改善や新品種開発にも活用でき、長期的な品質向上戦略の立案も可能になります。

マーケティングの最適化

農業へのAI導入の重要なメリットとして、マーケティングの最適化が挙げられます。最新のAI技術は、ソーシャルメディアの分析、購買データの追跡、気象予報との連携など、多様なデータソースを統合し、消費者の嗜好や市場動向をリアルタイムで分析します。これにより、農家や農業法人は需要の変化を迅速に把握し、それに合わせた作付け計画や生産調整を行うことが可能になります。例えば、特定の野菜や果物の人気が高まると予測された場合、その生産量を適切に増やすことができます。

農業にAIを導入するデメリット・問題点は?

農業にAIを導入することにはメリットがたくさんある一方で、デメリットも存在しています。以下では、農業にAIを導入する際に考えられるデメリット・問題点をご紹介します。

データの信頼性と品質への不安

農業へのAI導入における重要な課題の一つとして、データの信頼性と品質への不安が挙げられます。AIシステムの性能は、そのアルゴリズムだけでなく、入力されるデータの質に大きく依存します。しかし、農業データの収集は自然環境に左右されやすく、気象条件や地理的要因によって大きく変動します。例えば、センサーの誤作動、通信障害、極端な気象現象などにより、データの欠損や歪みが生じる可能性があります。また、土壌や作物の状態は場所によって微妙に異なるため、均質なデータ収集が困難な場合もあります。これらの要因により、常に高品質で一貫したデータを得ることは容易ではありません。不正確または不完全なデータがAIシステムに入力されると、誤った分析や予測につながり、最悪の場合、農作業の失敗や収穫量の激減を引き起こす可能性があります。

雇用への影響

農業へのAI導入における重要な課題の一つとして、雇用への影響が挙げられます。AIやロボット技術の導入により、特に単純作業を中心に多くの雇用が失われる可能性があります。例えば、収穫、植え付け、除草などの作業が自動化されることで、季節労働者や臨時雇用の需要が大幅に減少する可能性があります。農村地域の経済や社会構造に大きな影響が出る可能性もあるでしょう。特に、農業が主要産業である地域では、雇用機会の減少が人口流出や地域の衰退につながる可能性もあります。

初期投資と維持コストの高さ

初期投資と維持コストの高さも、農業にAIを導入する際のデメリットです。最新のAIシステムやスマート農業機器の導入には、多額の初期投資が必要となります。例えば、高性能センサー、ドローン、自動運転トラクター、AIソフトウェアなどの購入費用は、従来の農業機器と比べて格段に高額になる傾向があります。さらに、これらの先端技術を効果的に運用するためには、高速インターネット回線の整備やデータストレージの確保など、インフラ面での投資も必要となります。

日本で農業にAIを実際に導入した事例

日本で農業にAIを実際に導入した事例をご紹介します。ぜひそれぞれの導入事例を読んで、自社の農業を効率化・高付加価値化する参考にしてみてください。

デンソー(スマート農場)

デンソーと浅井農園が2018年に立ち上げた「AgriD(アグリッド)」は、最先端のスマート農業を実践する革新的な取り組みです。2019年12月から稼働しているこのハウス農場では、浅井農園の高度な施設栽培技術と品種開発ノウハウに、デンソーの先進的な工業化技術が融合しています。

「AgriD」の特徴は、デンソーの持つ環境制御技術、作業効率化のノウハウ、そして自動化による省人化技術を農業に適用している点です。これにより、大規模ハウスでの効率的な農業経営を実現しています。両社の目標は、この取り組みを通じて生産性の高い持続可能な次世代園芸モデルを確立し、国内外の農業発展に寄与することです。

デンソーは「AgriD」において、農業特有の「ムリ・ムダ・ムラ」の解消に焦点を当てた実証実験を進めています。農業は生物と自然を相手にする産業であり、予測不可能な要素が多く存在します。例えば、作物の生育状態を常に監視し対応する「ムリ」、収穫期の突発的な人員補充や非効率な作業重複による「ムダ」、作業者の経験やスキルの差による品質のばらつきという「ムラ」などが挙げられます。

これらの課題に対し、「AgriD」では最新のテクノロジーを駆使した解決策を展開しています。その一例が「生産統合管理システム」です。このシステムは、管理者からスタッフへの指示出し、実績収集、結果分析を自動化し、さらには従業員の勤怠管理やロボットへの作業指示まで一元管理します。これにより、ハウス内の全作業を効率的に統括することが可能になりました。

加えて、AIを活用した様々な取り組みにより、農場経営の多方面での効率化を実現しています。これらの革新的なアプローチにより、「AgriD」は経営圧迫要因を最小限に抑えつつ、持続可能な農業モデルの構築に貢献しています。このプロジェクトは、テクノロジーと農業の融合による新たな可能性を示す、画期的な取り組みと言えるでしょう。

JAふらの(タマネギ選果システム)

北海道のJAふらのが導入した最新のタマネギ選果システムは、人手不足問題に革新的な解決策をもたらしています。AIカメラと重量計付きロボットアームを駆使した自動選別システム、そして4つの選果場を1カ所に集約するという戦略的な取り組みにより、選果作業に必要な人員を約130人から約60人へと劇的に削減することに成功しました。

この画期的なシステムの中核を成すのが「プレソーター」と呼ばれるAIカメラ搭載装置です。この装置は、タマネギ1個につき3台のカメラで計12枚の画像を撮影し、外部と内部の品質を高精度で判定します。これにより、問題のある商品を効率的に手選別ラインへ振り分けることが可能となりました。

さらに、「キャリスター」と呼ばれるロボットアームは、各タマネギの重量を精密に計量します。これにより、箱詰めの際の重量誤差を最小限に抑え、年間で最大1億8000万円もの潜在的な損失を防ぐことができます。

自動倉庫システムもこの革新的な選果場の重要な要素です。市場向けタマネギを100%パレット化することで、選果場内の荷役作業を大幅に削減。さらに、トラック運転手の荷役時間も短縮され、物流の効率化にも貢献しています。

これらの先進技術の導入により、JAふらのは人口減少が進む中でも、全国へのタマネギの安定供給体制を確立しました。9月から翌年1月のピーク時には1日約220トンものタマネギを道外に出荷する能力を維持しています。

壱岐市(AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」)

壱岐市は、労働集約的なアスパラガス栽培の革新的な取り組みを進めています。全国有数の収穫量を誇る同市では、栽培環境の最適化と作業負担の軽減が長年の課題でした。この課題に対し、最新のスマート農業技術の導入を通じて、抜本的な解決を図ろうとしています。

その中核を成すのが、AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」です。このシステムは、精密な土壌センサーと気象情報を組み合わせ、AIが最適な肥料と水分の量を算出します。さらに、ハウス内の地下部環境を自動制御することで、従来熟練農家の経験に頼っていた複雑な管理作業を大幅に簡略化します。

この取り組みは、単に既存農家の負担軽減にとどまりません。新規就農者にとっての参入障壁を下げ、若い世代を農業に呼び込む効果も期待されています。また、スマート農業技術の活用により、省力化と高収益化の両立を目指しています。これは、農業を軸とした新たな事業創出や雇用機会の拡大にもつながる可能性を秘めています。

農業にAIを導入して効率化・高付加価値化しましょう

以上、農業にAIを導入するメリット・デメリットや、実際の導入事例などをご紹介しました。

ぜひあなたも、AIを導入して効率化・生産性向上してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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