AI活用のチャンスは中小企業にもある!「AIで何ができるの?」を10の事例で考えよう

創業手帳

身近に感じるAIはおもしろい!AI導入からビジネスへの活用方法をIT専門ライターが解説

AI導入
「AI」と聞くと自社での導入は難しいと考える企業が多いのではないでしょうか。

しかし、現在はAIを導入することは技術的にはそれほど難しくはありません。難しいのは、それをいかにビジネスの収益や生産性向上に結びつけるかです。

生産性向上や新しい働き方を模索する上で、その起爆剤として期待されるAI技術。

本記事では、AI導入の基本的な手順や、AI活用のアイデアになるような事例について紹介します。企業の成長にAI活用の可能性を考えている経営者や担当者はぜひ参考にしてください。

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この記事の目次

AIってなに?

AIによるアルゴリズム
AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、コンピュータによる計算で人間の知能を再現しようという技術です。AIの構想や研究は実は1950年頃には始まっていますが、何度も技術的な壁に阻まれて頓挫と再開を繰り返してきました。

近年、AIが再び脚光を浴びるようになってきたのは、コンピュータの性能が向上してきたことやIT化で多くのデータが取得可能になったこと、そして機械学習と呼ばれるアルゴリズムが登場したことが理由です。現在、AIと表現されている技術のほとんどはこの機械学習のことです。

AI・機械学習の基本的な特徴は以下のとおりです。

AIはプログラムであり、ロボットではない

SFの世界ではAIは人間のように自立して考えるロボットやコンピュータとして表現されているため、AIをロボットやコンピュータだと考えている方が多いのではないでしょうか。

しかし、AIの本質は入力された情報に対し、計算や分析を行って結果を出力するためのプログラムです。そのため、AIの導入そのものはソフトのインストールで簡単に行うことができ、大がかりな設備は必要ありません。

個人のパソコンでも十分に使うことができ、無償で提供されている機械学習のソフトや、インターネット上で従量課金制となっているAIも多々あります。

AIには「育てる」段階と「使う」段階がある

機械学習では、主に「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」という手法でAIを育てて、育てたAIに目的とするデータの処理を行わせます。つまり、「AIを育てる」段階と「AIを使う」段階が別になっているのが特徴です。

AI利用にはデータの量と質が必要

AIはプログラムである以上、「入力」「処理(=計算・分析)」「出力」が必ずあります。そのため、何の刺激もなく自動的にAIが働いてくれることはありません。

AIを利用するためには、「AIを育てる」ためのデータと、実際に現場で「AIに処理させる」データが必要です。適切なデータを選ぶことが精度の高いAIを育てるために重要で、データの量だけでなく質も大切です。

AIの判断はブラックボックスであることに注意

学習段階では、AIは与えられたデータと求められる結果からその過程を推測します。そして推測の精度が高まった段階の学習データ(計算・判断の方法)を使ってデータを処理します。

データ項目が多くなるほど、判断のための処理が複雑になり、人間側で判断材料を把握できないブラックボックス化が起こります。そのため、説明責任を厳しく追及されるような案件におけるAIの使用には慎重な検討が必要です。

AIの得意分野と不得意分野

AIを事業に活用するためには、AIの得意分野と不得意分野についても理解しておくことが大切です。

データ解析は得意。ただし数字・文字列のみ

AIはコンピュータのプログラムであり、数量の計算を行うものです。AIがさまざまなデータを解析してくれるとしても、扱う対象は基本的に数字・文字列です。

そのため、人間の言語や文章の解析などでは、特殊な処理(自然言語処理)を行ってから解析しなくてはなりませんし、画像解析では画像を数字データとして認識して処理を行っています。

AIは人間のようにデータから何かを感じたり考えたりすることはできません。

自動化も可能。ただし計算と判断のみ

AIはさまざまな分野での自動化処理を期待されていますが、あくまでAIで自動化できるのは計算とその結果としての判断のみです。出力された結果をどのような形で落とし込むかは別の技術です。

たとえば、自動運転であれば走行ルートや速度の判断はできますが、アクセルやブレーキ、ハンドルの向きを調節するのは別の技術が必要になります。

結果に対し、意図的に特例を作るのは難しい

AIは入力されたデータに対して処理を行って結果を出力します。アルゴリズムの種類にもよりますが、出力される結果は多少のバラツキはあるものの高い確率で一致します(そうでなければ実用には向きません)。

そのため、たとえば「社員割引」「株主優待」などはそれを示すデータがない限り適用できず、特例への対応は手作業になります。

ビジョンやアイデアがあれば難しくないAIの導入方法

ビジョン、アイデア、データの融合でAIを活用
AIを導入するとき、どのような手順を行うのか大まかに紹介します。

1.AIでやりたいことを決める

AI導入では、AIを導入することが目的ではありません。AIで実現したいことを社内でよく検討し、その実現可能性について専門家とよく相談します。

実現したい目的に対し、AIを利用する部分を具体的にすることが大切です。

2.関係する分析用データを集める

機能特化したAIを育てるために、必要と思われる分析データを精査します。一般的に公開されているデータや自社保有のデータだけではうまくいかない場合、データの収集や加工から行う必要があります。

3.教育・訓練によって実用レベルにする

収集したデータをもとに、AIを訓練して理想とする結果に近づけていきます。基本的にはその業務の専任担当者に近い判断ができるところまで訓練します。

与えるデータが適切かどうか、また十分な検証ができるかはやってみなければわからない面があります。そのため、プロジェクトの継続も含めて期間を区切って行うのが普通です。

4.運用し、スケーリングしていく

おおよそAIができあがったら、その結果をユーザーの求める形で出力するためのプログラムや装置を用意し、運用を始めます。テスト運用から狭い範囲での実運用を行い、問題が生じないようなら広い範囲に展開していきます。

AIは一度できあがれば低コストでスケーリングができるのが強みです。

こんなにも身近にAIが?!AI活用事例からビジネスチャンスをつかむ

それでは、実際にどのような形でAIが活用されているのか、さまざまな分野での事例を紹介します。

事例1:AIで個人に特化した広告配信サービスを提供

株式会社Nommocは、無料交通手段の提供の実現に向けて取り組んでいるベンチャー企業です。

同社では、移動を無料にする手段として広告配信サービスを提供し、ドライバーには広告料、ユーザーには無料の移動手段の提供を行っています。すでにメディアにも多く取り上げられ、注目を集めている事業です。

一般的なデジタルサイネージ(※)は場所や内容が固定されているものですが、Nommocではサービスを利用する個人に対して個々の有用な広告が車内で提供されるよう AIが活用されています。

たとえば、目的地周辺のイベントやお店の情報など質の高い広告体験を提供することができます。

※ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するメディアの総称

事例2:AIでセキュリティ製品のサイバー攻撃対策

セキュリティソフト大手のトレンドマイクロでは、同社が提供するセキュリティ製品においてAIを利用しています。近年はサイバー攻撃も多様化し、従来のようなパターンマッチング方式では処理が追いつかなくなっています。こうした課題の解決に向け、AIが活用されています。

同社ではセキュリティ団体で共有されているウイルスやサイバー攻撃の情報、また同社の顧客から収集している攻撃の情報をもとに、未知の攻撃についてもAIが挙動などからその危険性を判断し、通知やブロックといった防御措置を実行する機能を製品に導入しています。

従来のパターンファイルは増えるほどデバイスやソフトが重くなる問題がありましたが、AIによる特徴の解析により動作の軽量化も実現しています。

事例3:骨格データ解析による「見守り」サービス

株式会社AXIVEは、監視カメラやAI技術で人見守りのソリューションを提供しているベンチャー企業です。

病院や介護施設では、介護対象者の状況を確認するために職員による見回りが24時間体制で行われており、職員の大きな負担となっています。また、プライバシーの関係から浴室やトイレなどの個室におけるトラブル対応が難しい問題があります。

同社では、カメラの映像から骨格データだけを抽出する技術と、骨格データの動きをAIで解析し、トラブルを速やかに解析する見守りシステムを開発・提供しています。
医療・福祉施設だけでなく、家庭内の介護や、長距離トラックやバスのドライバーへの適用など、今後の応用も期待されています。

事例4:多言語対応で接客をこなすホテル用チャットボット

株式会社ビースポークでは、AIを利用したさまざまな製品・サービスを提供していますが、ホテル用に特化したチャットボット「Be-bot」は多言語対応で外国人訪日客に喜ばれています。

外国人訪日客の対応のためにスタッフの人数を増やしたり、外国語を学んだりするのは時間も費用もかかるという経営者の悩みに応えてくれるサービスです。

24時間365日リアルタイムでお客様の対応を行うことができ、飲食店の予約も可能となっています。また、AIがやりとりからゲストの感情を読み取って滞在を喜んでいるゲストに対してクチコミ投稿を依頼し、ポジティブな情報を増やすことが可能です。

事例5:脳科学とAIでヒットソングの予測

株式会社NTTデータ、株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社阪神コンテンツリンクは、2020年9月3日にヒットソングの楽曲の特徴(脳情報・歌詞・コード進行など)を分析し、トレンドを予測する技術の開発に成功したと発表しました。

ヒットソングのトレンド予測が可能になることでアーティストたちに対するリリース曲の選定サポートや、楽曲による脳への刺激を踏まえたCMタイアップ曲の選定サポート、新人発掘などの利用が今後期待できるそうです。海外ではすでに楽曲に対し、AIがヒットを予測しアドバイスするサービスも出ています。

事例6:AIで英語のスピーキングを強化

株式会社DEFアニバーサリーは2020年10月に英語学習アプリ「英音学」をリリース。単語や文法だけでなく、英語で重要となるリスニングとスピーキングも身につけられる音声を中心とした学習システムを提供しています。

英語教育においてスピーキングの指導は属人性が強く、効果的な教育が難しいという課題をAI利用によって改善する試みが行われています。

同社のアプリでは、学習者のスピーキングのデータを収集し、そのデータと正しい発音との差異をAIで分析し、指導することで学習効果を見える化し、教育効果を高める工夫が行われています。

事例7:AIによる文章の自動要約

信濃毎日新聞社は富士通との共同研究による記事の自動要約サービスを2018年から実用化しています。

メディアでは記事要約をSNSなどに発信する作業が欠かせません。しかし、要約作業は記事選定、要約、見出しの作成、校閲などの多くのステップがあり、1記事あたり3分から5分が必要で、担当者の負担になり、発信数にも限度がありました。

AIによって記事中から重要な内容を抽出するなどの作業が自動化され、要約・発信までの時間が半分ほどにまで縮まっているそうです。こうしたシステムは多くのメディアを運営する企業や自治体での活用が進んでいます。

事例8:画像からAIが食事のカロリーを推定して健康管理に貢献

ライフログテクノロジー株式会社が提供しているアプリ「カロミル」では、AIが食事の画像からカロリーを推定して健康管理に活かすことができるようになっています。
これによりダイエットや健康管理のためにカロリーを気にしている人は多いものの、実際のカロリーの把握が難しいという問題の解決を支援します。

画像分析を行うAIによって食品に含まれる食材や栄養素を分析し、自動で栄養計算と記録を行ってくれます。記録され蓄積された情報を分析し、食生活の改善に役立てるため、今後はスポーツや医療への応用も期待されています。

事例9:AIで顔認証・体温測定と出退勤打刻を同時にサポート

各種セキュリティシステムの企画・開発を行う株式会社セキュアは、AIによる顔認証、体温測定と出退勤打刻が同時にできるクラウド入退室管理ソリューションを提供しています。

このサービスでは複数事業所のオフィスや勤怠の状況を一元管理することも可能で、コロナ拡大によって難しさを増すオフィス管理や勤怠管理に悩む担当者をサポートします。

マスクを着用していても本人をしっかりと認識でき、マスクをつけていない場合には着用を促すアラートを出すことが可能です。表情や出退勤時刻などから異常を検知して従業員のメンタルヘルスの支援やセキュリティをサポートしてくれます。

事例10:AIドローンで災害時の道路の通行可否を確認

システム開発やコンサルティングを手がけるアヴァント株式会社では、AIドローンの自動運転によって、「災害発生直後の車両通行可否判断システム」の開発に関わります。

災害時には浸水や土砂崩れなどの影響で道路が塞がり、車両交通が不能になることがあり、迅速な調査が求められていました。

ドローンによる航空撮影はこうした事態の迅速な把握を可能にします。ドローンでは気流の流れや鳥などによってプログラムで安定した飛行は難しいですが、AIドローンは安定した自動飛行を可能にするため、さまざまな利用が期待されています。

AI利用はアイデア勝負!まずはビジョンを考えてみよう

現在のAIは機械学習のアルゴリズムによって機械が自動的に計算や判断を行ってくれるシステムを意味します。技術の進歩や多くの情報によって、AIを利用すること自体は簡単になっており、大企業や専門の技術者でなくとも利用することができます。

しかし、AIを使えば自動化や効率ができたり、新しい事業ができたりするのではありません。多くの事例では具体的なニーズやビジョンをもってAIを活用しています。

また、それぞれが事業で培ってきた専門性とAIを組み合わせることで新たなソリューションやサービスを提供していると言えるでしょう。

AI利用は技術力の勝負ではなく、アイデアの勝負と考えることができます。技術はシステム開発企業に協力してもらうことができますが、実現したいビジョンやそのためのアイデアは自社の中からしか生まれません。

AI活用に関心があれば、まずはニーズやビジョンの方向から検討してみるとよいでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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