経営計画の立て方を長期・中期・短期で解説!メリットや実現する方法も紹介
経営計画の立て方は長期・中期・短期の3段階で分ける!
事業主の中には、経営計画が本当に必要なのかと疑問に思う人がいるかもしれません。
しかし、経営計画があることで、企業がすぐに取組むべき課題や見据えるべきゴールが明確になります。
経営計画は、長期計画をベースに中期、短期の3段階で立ててください。経営計画の立て方をまとめました。
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この記事の目次
経営計画の立て方とは
企業は事業を維持するだけでなく、持続的な成長が求められます。
自社が持つビジョンや目標を明らかにして、具体的なアクションまで落とし込んだ経営計画が必須です。
経営計画は、長期、中期、短期に分けることが可能です。長期は5~10年のビジョン、中期は3~5年、短期は1年ごとの行動方針を策定します。
ここでは、経営計画の必要性や構成要素についてまとめています。
経営計画の必要性や目的
経営計画がなくても企業経営はできるのに、策定する目的がわからない人もいるかもしれません。
経営計画を立てる目的は、現在の課題を整理して進むべき方向を共有することです。
自社の現状を把握すれば、課題を整理して必要な行動の優先順位がわかるようになります。
経営者は、将来的な事業展開や人材の獲得などの問題に対して、ビジョンや目標を見据えて経営判断をしなければなりません。
従業員も経営者が考えている計画を理解して、長期的な視点を持って働くことが求められます。
経営者や出資者、従業員が同じ目標を共有するために事業計画が大切な役割を果たします。
経営計画に必要な要素
経営計画は、長期経営計画から逆算して3~5年程度の中期経営計画、中期経営計画から逆算して短期経営計画を立てることがスムーズです。しかし、10年後のことをイメージするのは困難です。
経営計画に必要な要素をまとめました。
経営理念
経営理念は、企業が目指すビジョンや重視する価値であるバリュー、達成すべきミッションを示す項目です。
経営計画の方向性は経営理念をもとに決定するので、経営理念の策定から経営計画が始まります。
経営理念を作成するには、企業がどのような目標を達成したいのかを明確にして伝えるようにします。
経営理念は、多くを詰め込むよりもシンプルでメッセージがこもったものにしてください。何を大事にしているのか、信念を文書化していきます。
経営戦略
経営戦略は、経営理念に策定したビジョンやゴールを達成するための具体的な方針です。
社会の中で自社が果たすべき役割や課題を分析して、優先順位を付けて取組みます。
経営戦略で重要なのは、外部環境分析と内部環境分析が必要です。
外部環境分析は、その業界や競合他社の動向を指します。内部環境分析は、自社が持つ経営資源について強みや弱みを分析するものです。
経営戦略を立てることで、自社の外部環境や内部環境を把握でき、現実的な視点に立って目標達成に向けたロードマップが完成します。
事業戦略
事業戦略では、経営戦略に基づいて企業の事業領域ごとに達成すべき目標と具体的な活動内容を定めます。
経営戦略の内容を、より細分化して事業レベルの意思決定や活動に落とし込んだのが事業戦略です。
事業戦略を立てる時に使われるフレームワークとして、3C分析やSWOT分析が挙げられます。
他社と差別化するために、各事業部門がどのような戦略が必要なのか策定します。
数値目標設定
数値目標は、事業領域ごとにどのように利益を出すかを定めていきます。
数値目標を設定する過程で、売上計画や予算計画、販売計画や資金計画を策定しなければなりません。
数値目標に対して、いつまでにどれだけの売上高で経費を計上し、利益がどれだけ出せるかを数値目標で明確にします。
数値目標は、中期経営計画や短期経営計画で作成します。より具体的に根拠がある数値を提示することが大切です。
経営計画を立てるメリットは?
経営計画は決算報告書や事業計画書と異なり、作成する義務はありません。そのため、多大な時間や手間をかけてまで作る必要がないと思う人もいるでしょう。
ここからは、経営計画を立てるメリットを紹介します。
ビジョンや目標を社内で統一できる
経営計画を立てる最大のメリットは、ビジョンや目標の共有です。
経営計画は、経営陣だけでなく、従業員が理解して現場で業務をしなければ成果を出せません。
目標を決めるだけでなく、実現までの道筋を共有することで、従業員が何をすべきか明確になります。
社内で一丸となって、ビジョンや目標に進むために経営計画が役立ちます。
会社の経営状況や課題を把握できる
経営計画を立てる中で、現在の業務の流れや自社の強みと弱みを明らかにします。
経営計画を策定する過程で仮説を立てて検証することで、自社の課題を把握できます。
現在の課題とともに、その課題の状況や解決する優先順位を付けられる点もメリットです。
現在の課題は、将来のリスク要因でもあります。リスク要因を把握すれば、より将来の経営計画を現実的に策定できます。
経営の軸が整う
経営計画を明確にするためには、企業にとって何が必要なのかを突き詰めて考えます。その過程で経営の軸ができると、進むべき道筋への迷いがなくなります。
多くの業界や多くの業種では商品やサービスのコモディティ化や市場の成熟化が進んでいて、よりスピーディーな事業判断が必要です。
経営の軸が整うことで、よりスピード感がある決断が可能になります。仮に計画から脱線しても、指針があるためすぐに軌道修正ができるでしょう。
会社の信用度がUPする
経営計画があることで、会社の外部からの信用が高まります。具体的には、金融機関から融資を受けるためには経営計画書(事業計画書)を提出しなければなりません。
経営計画には、企業の環境や競合他社、市場分析といった多面的な視点が求められます。
会社のビジョンや根拠がある分析結果を経営計画書で示すことによって、融資を受ける際にも有利に働きます。
3つの経営計画のそれぞれの違い
経営計画には、長期経営計画と中期経営計画、短期経営計画があります。
最も長期的なものが長期経営計画で、5~10年のスパンで自社がどのような取組みをすべきか、外部環境が変わっても設定したビジョンを実現するための取組みを示します。
中期経営計画は、3~5年の期間で長期経営計画を実現するために成し遂げる内容を策定するもので、具体的な数値目標を掲げて目標達成への道筋を示さなければなりません。
短期経営計画は、中期経営計画の数値目標を達成するための行動方針です。1年間の販売計画のほか、仕入れや人件費、部署と語の数値目標などを含みます。
計画の進捗を定期的に評価して、問題があれば速やかに修正してください。
長期経営計画 | 中期経営計画 | 短期経営計画 | |
計画期間 | 5~10年 | 3~5年 | 1年 |
目的 | 長期的な経営方針や展開する事業分野を定める | 長期経営計画の内容を実現するために、企業が中期的に目指す事業の方向性を定める | 中期経営計画に基づいて経営計画を業務レベルまで落とし込む |
主な内容 | 経営方針や今後事業展開する事業分野 | 中期的に目指す事業の方向性、目標を達成するための方法や方針 | 中期経営計画に基づく1年間の具体的な行動計画 |
長期経営計画の立て方
経営計画は、長期経営計画から逆算して中期経営計画を立て、さらに逆算して短期経営計画を立てるのが一般的です。
長期経営計画の方向性が定まっていないと、ほかの経営計画にまで影響を及ぼします。
長期経営計画の立て方を紹介します。
1. 経営理念の大枠を策定
長期経営計画では、経営理念の大枠を策定します。
企業の存在意義や価値観、実現したい会社像を決めるもので、中期経営計画ではその内容を深堀りしてきます。
10年後といわれてもイメージしにくいかもしれません。これから先の10年でどのように社会に貢献するのか、存在意義がどこにあるのかを考えていきます。
2. 10年後のミッションや会社像の策定
長期経営計画では、企業が目指すべき姿やミッションを明らかにします。
市場や社会でどのようなポジションにあるのか、組織や人事はそれに対応しているかなどを考えてください。
経営だけでなく、人事や営業、商品、財務といった柱に沿って策定していきます。
3. 10年後の数値目標の策定
数値目標として、10年後の売上高や経常利益を掲げることも大切です。
10年後にこれだけの経常利益を出すためには、原価や人件費、売上げはどれだけ必要かとなどの視点から数値を具体化していきます。
具体的な数値目標があることで、経営者と従業員がより明確にゴールをイメージできるようになるでしょう。
中期経営計画の立て方
中期経営計画は、長期経営計画を達成するために必要な行動指針を示します。
長期経営計画の内容を詳細化、細分化して落とし込むことで、より実現に近づけることが可能です。
中期経営計画の立て方を紹介します。
1. 内部・外部環境の分析
経営計画は、将来的なビジョンを達成するまでのロードマップです。
ロードマップを作成するために、自社がどこにいるかを正しく把握してゴールまでの距離を知らなければなりません。
内部環境分析では自社の強みと弱み、人的資源や組織力、経営データを客観的に把握します。
外部環境分析は、自社の周囲を取り巻くマーケットやトレンド、競合他社を分析してリスクやビジネスチャンスを分析します。
どれだけ優れた商品やサービスを提供しても、世の中に受け入れられなければ利益につながりません。外部環境と内部環境どちらも分析することが大切です。
2. 3~5年後のビジョンを策定
環境分析を踏まえた上で、3~5年後の自社がどうなっているか、目標とする姿を設定します。
ビジョンの策定は数値目標を設定することを意識してください。目標だけでなく、目標達成に必要な人材や設備、経費などの経営資源を数値化します。
また、目標達成のために解決すべき課題やそのための業務も列挙しましょう。経営計画の実現性にかかわる部分なので、より具体的な数値、行動を掲げてください。
3. 経営・事業戦略の策定
今までの分析や策定したビジョンをもとにして、経営・事業戦略を策定します。
自社の強みを発揮できる市場がどこにあるか、その市場でのビジネスチャンスを戦略として策定していきます。
ここでは中期的視点で、どのような事業、商品が必要なのかを明確にしてください。
4. 利益・資金・人員の数値目標の策定
数値目標は、利益や資金、人員の項目に分けて考えます。区分別の売上げと限界利益目標の設定のほか、経費計画や設備投資計画も重要です。
これから新しい事業を立ち上げて売上目標を達成するためには、人員がどれだけ必要なのか、何に投資すればよいのかを考えてください。
企業の経営計画は、単体ではなくそれぞれの計画が連動して考えられています。
最善と感じる数値目標を立てても、資金不足などが原因でうまくいかないかもしれません。
それぞれの計画が円滑に進むように複数の計画を立てて比較することをおすすめします。
短期経営計画の立て方
短期経営計画は経営計画の中でも最も期間が短く、すぐにスタートできる内容が求められます。
「これから何をしなければならないのか」を明確にするために短期経営計画を立ててください。
1. 中期経営計画の数値目標を細分化する
短期経営計画を立てるためには、中期経営計画の数値目標をベースにします。
短期経営計画は、日々の数値管理・会計管理の結果であり、現場レベルの行動指針にまで落とし込まなければなりません。
中期経営計画の内容を、部署や担当部門別に細分化します。細分化した上で実現可能かどうか、実現のために解決しなければならない課題はどこにあるかを探ります。
2. 人材・人員の見直し
数値目標や利益計画を達成するためには、人材や人員の見直しも必要です。
今までの目標を具体的な行動レベルまで落としこんで、必要な人材がそろっているかどうか検討します。
売上げが増えればバックオフィスの人員が必要になります。人員が不足する場合には、社内の人事計画や採用についても再考してください。
3. 定期的な実績の分析
短期経営計画を立てたら、定期的に計画と実績の差異を分析してください。
短期経営計画の内容がどれだけ進んでいるのか、進んでいない原因と今後の動きを明らかにします。
Plan(計画)からスタートして、Do(実行)とCheck(検証)、Action(対策)に進むPDCAサイクルを繰り返していきます。
経営計画を実現するために必要なこと
経営計画は実現するために作るものです。どうすれば実現に近づくのか、実現のために必要な行動をまとめました。
経営計画やビジョンを社内で共有する
経営計画や将来のビジョンは、社内全員で共有してください。自社の進むべき道を示すことによって、社員の仕事に対する姿勢も変化します。
経営計画を策定する時点で、現場の声を採用しておくとより従業員のモチベーションアップにつながります。
修正を繰り返す
事業が経営計画の通りに進むとは限りません。外部環境の変化などで実現から遠ざかることもあります。
定期的に効果測定を行うとともに、必要があれば内容を修正してください。
進捗状況の確認と共有をする
経営計画は、進捗の確認と共有を定期的に実施します。
進捗状況を把握する時には、組織内のコミュニケーションや部門間の合意形成を図ることを意識してください。
進捗の共有で関係者と意見交換することで、お互いの理解が深まります。
報告は具体的かつ客観的なデータを用意するとともに、進捗を可視化できるグラフなども活用してください。
まとめ・経営計画の立て方は分析と見直しも大切!
経営計画は会社の将来を示し、社員が一丸となって目標達成に向かうために欠かせません。
経営計画を共有することによって、社員の仕事に対する目的意識が高まります。
また、経営計画を策定することで、企業の現状を把握して目標達成のための道のりも明確になります。
経営陣だけでなく全社員が理解できるように、可視化して共有するようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)