ガレージバンク 山本 義仁|モノの価値を最大限レバレッジできる社会を作る

創業手帳人気インタビュー

物の価値をお金に変換できるサービス「カシャリ」。画期的なサービスはいかにして生まれたのか?


「パソコンをモノとして保有したままで、パソコンの価値の分お金を受け取れるサービスがある」と聞いて、どのように感じますか。「詐欺なんじゃないの」と思われる方もいるでしょう。しかし、「セールアンドリースバック」というスキームで、そのようなことを可能にしたサービスが「カシャリ」です。

世界的にも類を見ないサービスである「カシャリ」を生んだガレージバンク代表CEOの山本義仁氏は、いかにしてこのサービスを着想したのでしょうか。その裏には共同創業者の磯田岳洋氏との出会いや、勤務されていた金融機関での気づきがありました。

そもそも「カシャリ」というサービスはどのような仕組みなのかや、起業に至った経緯などについて、創業手帳の大久保が聞きました。

山本 義仁(やまもと よしひと)
ガレージバンク株式会社 Co-Founder / CEO
2011年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、2011年株式会社三井住友銀行入行。法人営業を経て、人事にて人材評価・処遇管理システムの企画・開発を担当。2019年株式会社助太刀入社。個人事業主向けファクタリング事業やプリペイドカード事業、保険事業の事業開発・運営に携わる。2020年ガレージバンク株式会社を共同創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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「カシャリ」の仕組み

大久保:「カシャリ」のサービス概要について教えていただけますか。

山本:「カシャリ」は、モノの価値を可視化して、価値を資金化するまでをシームレスに実現するサービスです。アプリに物を登録すれば、モノの資産価値が査定されて数値で確認でき、お金に変えたければ「セールアンドリースバック」のスキームを利用して即座にお金を得ることもできます。

大久保:「セールアンドリースバック」のスキームというのは、どういったものなんですか。

山本:「セールアンドリースバック」とは、簡潔に言うと、モノを「売る」取引と「借りる」取引をくっつけた取引です。

不動産の例を考えるとわかりやすいです。例えば、お金がない会社が自社ビルを一度売却して、売却した後も賃貸で元の自社ビルのテナントとして留まっているようなケースは結構ありますよね。これは「セールアンドリースバック」のスキームを使っています。

大久保:なるほど。それはわかりやすい例えです。

山本:このスキームをモノに応用したサービスが今までなかったので、我々が「カシャリ」というサービスとして世に出した、という次第です。「カシャリ」の場合、日常的に利用するモノを対象に「セールアンドリースバック」のスキームが使えます。

例えば、お手元に普段使うパソコンがあるとしましょう。そのパソコンを「セールアンドリースバック」すると、自宅にパソコンがあるままで、お金をもらうことができます。これはパソコンを我々に販売し、我々がすぐに貸し出している、ということになります。

パソコンを保有し続けたければ、我々から買い戻すこともできますし、リース料金を支払い続けることができなければ、我々にパソコンのモノ自体を引き渡し、支払いをやめることもできます。

『闇金ウシジマくん』という漫画があるじゃないですか。あの漫画を読むと、借入をして返せなくなるから不幸になるんですよね。でも「セールアンドリースバック」であれば、最初はモノを使い続けることもできるし、お金がなければモノを手放しさえすれば後で返済する必要はない。だから返済できずに不幸になることもないんです。

大久保:リースされているので、リース料金が支払えない場合はモノを明け渡せばいい、ということですね。

山本:おっしゃる通りです。ユーザーには20代〜30代の方が多いですね。スタートアップに勤めているようなテックに関する関心が高い方や、地方在住の女性などにもよくご利用いただいています。

「セールアンドリースバック」の対象となるモノにはパソコンやスマートフォン、ゲーム機などのデジタルガジェットが多いですね。

4月からは、モノを売却すること、寄付することもできるようになります。モノの価値をより自由に管理できるモノ資産を管理するプラットフォームサービスとしての機能を拡充したかったためです。

「起業」に憧れがあった大学時代

大久保:いつ頃から起業を意識されていたのでしょうか。

山本:大学時代からぼんやりとではありますが、起業については意識していました。「起業したい」とは思っていたのですが、学生起業はやはり天才ではない自分にはリスクが大きいと思い、「まずは知識を蓄えたい」と考えていましたね。

大学1年生のときにサークルを介して共同創業者の磯田と出会いました。磯田の実家が質屋を経営していたので、「質屋って意外と利用されているんだよ」ということや、「ブランド品だけじゃなく、パソコンなども取り扱う」などと、質屋の情報についていろいろと情報交換していました。「カシャリ」も、磯田との出会いがなければ生まれてなかったかもしれません。
その後も現在までずっと磯田とは連絡を取り合ってきました。

大久保:たしかに、「カシャリ」は質屋をオンラインにしたようなサービスですよね。

山本:そうなんです。磯田との出会いがありつつ、大学でデジタルメディアの研究などを行った後、新卒で三井住友銀行に入行することになりました。

銀行でファイナンスを学ぶなかで着想


大久保:銀行に入行されたのはどういった理由からでしょうか。

山本起業するにはファイナンスの知識は不可欠という理由ですね。日々お客様と触れ合うなかで、「どういうビジネスチャンスがあるのかな」とアンテナを立てながら働いていました。

法人営業を5年間、個人向け営業を3年間担当したのですが、そのなかで「法人向けの金融サービスはたくさんあるのに、個人向けサービスは少ない」ということに気づきました。またそこで、「『セールアンドリースバック』のスキームを個人向けに提供したらいいのではないか」という着想も生まれました。ビルなど不動産の流動化についてはよくある話なので、それをパソコンなどでもできないかな、と磯田とも連絡しつつ思ったんです。

大久保:なるほど。質屋に対する関心とファイナンスとの知識が組み合わさって、そのようなアイデアが着想されたんですね。

山本:おっしゃる通りです。その後、助太刀というスタートアップに転職し、個人向けファクタリング事業に従事するなかで、フリーランスや個人事業主など信用力が低い方々が資金調達に非常に困っている現状を目の当たりにしました。

「ファクタリングって手数料は相応にかかるけれど、フリーランスの方からはこんなに需要があるんだ」と思ったんです。

そこで、前からあった「セールアンドリースバック」を個人向けに提供するという着想で、「イケる」と思ったんです。そこから磯田とも本格的に話を進め、貸金業法など、諸々の法制もクリアできることもわかりました。

大久保:たしかに、フリーランスの資金調達手段としてファクタリングはすごく人気がありますからね。それに代替する手段が出てくるのは必然だったのかもしれません。

山本:「イケる」とわかったので、社会人向けプログラミングスクールに通ってプログラミングを習得し、習った知識でデモプロダクトを作ってピッチをこなし、資金調達とともに会社を作りました。

サービスの伝え方に苦労した1年目


大久保:プロダクトをリリースしてからは、順調にグロースさせてきたのではないかと思われますが、いかがですか。

山本:いえ、全然そんなことはありません。資金提供を行うサービスですので、悪意を持って利用される方も一定数いらっしゃいます。最初はそうした方々との戦いでした。

大久保:それは大変でしたね。

山本:GPS機能や、機械学習を用いた査定システムで偽物を偽物と見抜けるのですが、それでも抜け穴を作ろうとして悪い人たちがあの手この手で申し込んできました。彼らによってサービスが鍛えられていった面もありましたが、本当に大変でした。

また、一般的に「セールアンドリースバック」という仕組みは馴染みがないので、伝え方には非常に苦労しました。あとは口コミで広がるサービスでもないので、その点も難しいところです。法人が「資金調達しました」というとかっこよく聞こえますけど、個人が「資金調達しました」なんて言わないですからね(笑)。

大久保:たしかにそうですね(笑)。消費者金融でお金を借りても「借りました」なんて言わないですからね。

山本:そうなんですよ。SNSなどで口コミが出るわけもなく、地道にサービスを広めていくしかなかったんです。今でもレピュテーションの管理には苦労していますね。

貨幣価値が揺らいでもモノの価値は安定的

大久保:これからフリーランスが増えていくなかで、「カシャリ」の需要もどんどん増えていきそうですね。

山本:おっしゃる通りです。雇用の形態もライフスタイルも多様化していくなかで、信用力に頼らない資金調達の形はより注目されていくと考えています。そのなかの一つの選択肢として「カシャリ」のサービスを利用する方も増えていくのではないでしょうか。

大久保:マクロ経済的に見ても、追い風が吹いてきそうですね。

山本:はい。スタグフレーション(※)がこれから進んでいくと、景気後退局面にもかかわらずモノの価値が上昇し、貨幣価値が揺らいでいきます。そのため、「貨幣よりもモノで資産を保有しよう」という人たちも増えてくるはずです。そうなったときに、モノの価値を最大限レバレッジできる「カシャリ」のサービスを利用する方も増えていくと見込んでいます。

(※)スタグフレーションとは…不景気にもかかわらず、モノやサービスの値段が上がっていく(インフレ)こと。

今後のサービスの広がり


大久保:今後、「カシャリ」はどのようにサービスを展開されていくのでしょうか。

山本:「カシャリ」のサービスは「モノの価値を知る」、「モノの価値をお金に換える」、「お金に換えたモノの価値を再度モノに換える」という3つの軸でできています。今後はこの3つの体験をより深化させていく予定です。

例えば、今最優先で取り組んでいるのは、取扱アイテムの拡充です。今はパソコンなどのデジタルガジェットがメインですが、自動車やトレーディングカード、不動産などにも対象を広げていきたいと考えています。直近では自動車に力を入れていますね。

大久保:自動車を「セールアンドリースバック」できれば、数十万円〜数百万円単位で即座に資金調達できるので、多くのフリーランスにとって朗報ですね。

山本:はい。それだけの金額を即座に調達できる個人向けのファイナンス手段は、融資以外にないですからね。

グローバル展開も準備中です。例えば、フィリピンで銀行口座を保有しているのは人口の約3割程度しかおらず、ほかの人たちは質屋を利用することで資金調達しています。インドネシアやマレーシアも同様に質屋がよく利用されている地域です。質屋のスキームに慣れているこれらの国であれば「カシャリ」との親和性も高い、と考えています。

大久保:なるほど。グローバルのプラットフォームになれる可能性もありそうですね。

山本:そうなれるよう頑張りたいです。
我々と類似のサービス提供事業者はありますが、グローバルで見ても、我々と全く同じサービス提供事業者は幸いいません。だからこそ、プラットフォーマーになれるよう今が勝負だなとは思いますね。国内では特許を持っていて、国際特許の優先権も持っています。

大久保:期待したいところです。

山本:細かいところで言えば、モノの価値の可視化についてもよりサービスを拡充させていきたいと考えており、モノの価格を細かく確認できる価格表機能も準備しています。

大久保:自分が保有するモノの価値を常に把握しておける世界になるわけですね。

山本:そうです。モノの価値を最大限レバレッジするためには、常に保有しているモノの価格を知っておく必要がありますからね。

起業家へのメッセージ

大久保:最後に、起業家へのメッセージをお願いします。

山本:起業すると、常にドキドキです。いい意味でも悪い意味でも、ですが(笑)。

今までCMで見てきたような一流企業と取引ができるようになることはとてもうれしくワクワクする一方で、月に何百万、何千万円ものお金を扱うようになってヒヤヒヤすることもあります。

でもその両面を楽しんでしまえば、何も怖くないのではないでしょうか。ぜひ楽しんでいただきたいです。

大久保:本日は、「セールアンドリースバック」というスキームで個人のファイナンス事業を革新する「カシャリ」を運営するガレージバンク山本さんから貴重なお話を伺えました。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: ガレージバンク株式会社 Co-Founder / CEO 山本 義仁
(編集: 創業手帳編集部)

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