一般社団法人が収める税金とは?税金の種類や確定申告の流れなどを解説
一般社団法人の運営にも税金がかかる!
一般社団法人という名称を聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、これは大きなくくりで、一般社団法人には普通法人型と非営利型に分けられます。
それぞれ課税される所得が異なるので、違いを把握しておかなければいけません。
今回は、普通法人型と非営利型の違いや、税法において収益事業とされている事業、一般・公益社団法人にかかる税金と税率、確定申告の方法について解説していきます。
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この記事の目次
一般社団法人の税制は2種類
一般社団法人の税制は、普通法人型一般社団法人と非営利型一般社団法人の2種類です。
この2つは、課税対象となる所得が異なります。まずは、普通法人型と非営利型の違いについてみていきます。
すべての所得が課税対象となる普通法人型
普通法人型は、すべての所得が課税対象になります。株式会社と同じような扱いです。法人税や法人事業税、法人住民税の支払いも発生します。
普通法人型の法人税は株式会社と同じなので、以下のような税率になります。
-
- 年間800万円以下の所得部分:15%
- 年間800万円超の所得部分:23.2%
ただし、すべて同じというわけではありません。例えば、一般社団法人は事業目的に制約はありませんが、株式会社は営利性のある事業を行う必要があります。
また、構成員は一般社団法人が2名以上、株式会社は発起人となる株主1名以上で設立が可能です。
収益事業のみの所得が課税対象となる非営利型
非営利型は、利益を配当しない一般社団法人を指します。利益が出ても法人社員に配当できないだけなので、利益を出す分には問題ありません。
事業によって得た利益を活動費用に充てる方法が採用されています。
非営利なので利益を出してはいけないのではないか、収益事業を行えないのではないかと思われる方もいますが、それは違います。
利益を出して役員報酬の支払いや従業員の雇用も可能です。お金が余っても配当できないだけです。
非営利型の場合、法人税と法人事業税は収益事業のみに課せられます。収益事業を行わなければ、法人税は支払う必要がありません。
法人住民税は公益目的の事業だけ行っている場合、都道府県によっては免除される場合もあります。
公益社団法人は税制上の優遇措置が適用される
公益社団法人は、一般社団法人の中で公益な事業を行うことが目的の法人を指します。公益目的事業は指定された公益性に関する23事業です。
社会全般を対象とし、不特定多数の利益を増進に貢献する以下のような事業が当てはまります。
-
- 学術および科学技術の振興を目的とする事業
- 思想および良心の自由、信教の自由または表現の自由の尊重または擁護を目的とする事業
- 障がい者もしくは生活困窮者または事故、災害もしくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
- 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
- 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
- 衛生の向上を目的とする事業 など
税法上で収益事業となる34事業とは
税法上で収益事業となる34事業は以下のとおりです。
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- 物品販売業
- 不動産販売業
- 金銭貸付業
- 物品貸付業
- 不動産貸付業
- 製造業
- 通信業
- 運送業
- 倉庫業
- 請負業
- 印刷業
- 出版業
- 写真業
- 席貸業
- 旅館業
- 料理店業・その他の飲食店業
- 周旋業
- 代理業
- 仲立業
- 問屋業
- 鉱業
- 土石採取業
- 浴場業
- 理容業
- 美容業
- 興行業
- 遊技所業
- 遊覧所業
- 医療保健業
- 技芸教授事業
- 駐車場業
- 信用保証業
- 無体財産権の提供などを行う事業
- 労働者派遣業
ただし、収益事業に定義されていても以下に該当する人が従業員の半数以上を占めていて、該当者が生活の保護に寄与している場合は収益事業として扱われないので注意が必要です。
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- 身体障害者福祉法に規定されている身体障がい者にあたる
- 生活保護法によって生活保護を受けている
- 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターなどから知的障がい者と判定されている
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている
- 年齢65歳以上
- 母子家庭の母
一般・公益社団法人にかかる税金の種類や税率
一般社団法人と公益社団法人にはそれぞれ税金がかかります。続いては、かかる税金の種類や税率について解説していきます。
法人税
法人税は、法人が事業活動で得た所得のかかる税金です。法人税が課せられる所得は、益金から損金を差し引いた金額になります。
益金は、商品や製品などの販売で得た売上げ、土地・建物の売却益などです。
法人税が課せられるのは一般社団法人です。公益社団法人は基本的に法人税がかかりません。
しかし、法人税法で規定されている物品販売などの収益事業を行って得た利益がある場合は、法人税の課税対象になるので注意が必要です。
「課税所得×税率-税額控除額」という計算式で算出できます。税率は以下のとおりです。
区分 | 法人税率 | |||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者※ | 19% | |||
年800万円越の部分 | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.20% | |||
公益法人 | 公益社団法人や公益財団法人、非営利型法人など | 収益事業から生じた所得(年800万円以下の部分) | 15% | |
収益事業から生じた所得(年800万円超の部分) | 23.20% |
※前3事業年度における1年間の平均所得金額が15億円を超えている法人
法人住民税
法人住民税は、事業所がある地方自治体に対して納める地方税です。法人税割と均等割で構成されています。
法人税割は、法人税の税額をベースとして課税される住民税です。
税率は、道府県民税が1.0%、市町村民税が0.6%となっています。ただし、地方公共団体によって税率や税額が変わるので、気になる点は税理士に相談するようにしてください。
均等割は、資本金の金額や従業員数などに応じて算出されます。区分や税額は以下のとおりです。
資本金の額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割 従業者数50人超 |
市町村民税均等割 従業者数50人以下 |
1,000万円以下 | 2万円 | 12万円 | 5万円 |
1,000万円超1億円以下 | 5万円 | 15万円 | 13万円 |
1億円超10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
50億円超 | 80万円 | 300万円 | 41万円 |
収益事業を営んでいない公益社団法人の場合、均等割が免除となります。
法人事業税・特別法人事業税
法人事業税は、基本的に事業を行うすべての法人に課せられる税金です。
収益事業で発生した所得がある場合は、公益社団法人も法人事業税や特別法人事業税の課税対象になるので、収益金額課税法人と呼ばれる場合もあります。
法人事業税率は事業の開始年度によって区分けが決定され、税率は都道府県によって異なります。
東京都の法人事業税税率は以下のとおりです。
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- 課税所得が年400万円以下の部分:3.5%
- 課税所得が年400万円超年800万円以下の部分:5.3%
- 課税所得が年800万円を超える部分:7.0%
また、特別法人事業税の税率は以下のようになっています。
課税標準額 | 法人の種類 | 税率 |
基準法人所得割額 | 外形標準課税法人・特別法人以外の法人 | 37% |
外形標準課税法人 | 260% | |
特別法人 | 34.5% | |
基準法人収入割額 | 小売電気事業や発電事業、特定卸供給事業などを行う法人以外の法人 | 30% |
小売電気事業や発電事業、特定卸供給事業などを行う法人 | 40% |
消費税
消費税は、原則として国内で行われる対価性のある取引きに対して課せられます。
申告義務の有無は、2事業年度前の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判断されます。
ただし、前年上半期の課税売上高および人件費が1,000万円を超えた場合、自ら課税事業者を選択した場合にも申告義務があることを忘れてはいけません。
公益社団法人に関しては、補助金や会費、寄付金など対価性のない収入割合が多くなっています。そのため、特定収入による控除制限が適用となります。
特定収入の割合は、「特定収入の合計額/(課税売上高(税抜き)+免税売上高+非課税売上高+国外売上高+特定収入の合計額)」という計算式で算出可能です。
一般社団法人の法人税の確定申告方法
事業活動で得た所得に課せられる法人税では、税務署に確定申告をする必要があります。最後に、確定申告の必要性や必要な書類、手続きの流れなどについて解説していきます。
一般社団法人も事業年度の終了後に法人税の確定申告が必要
一般社団法人も、事業年度が終了したら法人税の確定申告が必要になります。
基本的には、株式会社と同じです。決算後2カ月以内(延長申請を済ませてある場合は3カ月以内)に確定申告書を提出しなければいけません。
確定申告の際は決算書を作る必要があります。決算書は会社法で定められた期間に承認を受けます。
その後、確定した決算に基づいて納めなければいけない法人税などの計算をし、税務署などに申告しなければいけません。
法人税の確定申告に必要な書類
法人の確定申告では、申告する税金によって定められた提出書類が異なります。法人税の確定申告で必要な書類は以下のとおりです。
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- 法人税申告書
- 各事業年度の所得に係る申告書
- 同族会社等の判定に関する明細書
- 所得の金額の計算に関する明細書
- 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
- 租税公課の納付状況等に関する明細書
- 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除に関する明細書(試験研究費の特別控除の適用を受ける場合)
- 適用額明細書(必要な場合のみ)
- 法人事業概況説明書もしくは会社事業概況書
- 勘定科目内訳明細書
- 決算報告書
法人税の確定申告のステップ
法人税の確定申告をスムーズに行うためには、どのような流れで行われるのか把握しておくことも重要です。そのため、法人税の確定申告のステップも確認しておいてください。
1.取引きの記帳や決算書を作成する
まずは、取引きの記帳や決算書の作成を行います。法人の決算と確定申告を行うためには、当期の記帳はすべて完了させておく必要があります。
決算前にまとめて記帳すると作業に膨大な時間がかかってしまい、ミスを誘発しかねないため、日頃から記帳しておくことがポイントです。
決算書は、決算期における売上げと支出をすべて計上し、決算期間の収益または損失を求めます。
会社の資産状況を確認するためにも重要な作業です。決算書類は主に以下の3つがあります。
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- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
会計ソフトを使ったり、会計士などの専門家に依頼したりすると、担当者の負担を軽減できるのでおすすめです。
2.確定申告書を作成する
次に、確定申告書を作成します。確定申告書を作成するには、決算書の当期純利益から税金を計算するための税務調整項目を加減し、課税所得を求めなければいけません。
そして、法人税額や納税額を求めます。
会計ソフトで作成したり、会計士や税理士に作成を依頼したりすることも可能です。また、税務署に決算書を持参すれば、作成のサポートをしてもらえます。
確定申告書に添付する以下の書類も、忘れずに準備してください。
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- 勘定科目内訳明細書
- 法人税事業概況説明書
- 適用額明細書(租税特別措置を適用する場合)
- 税務代理権限証書(税理士に作成を依頼した場合)
3.確定申告書を提出・納税する
確定申告書の作成が終わったら、提出と納税を行います。提出方法は、税務署への直接持参・郵送・e-Taxの3つから選択できます。書類を提出後、納税するという流れです。
・税務署への直接持参
税務署の窓口や時間外収受箱への投函で提出できます。業務センターへ直接持参することはできません。
・郵送
確定申告書は信書にあたるので、郵送する場合は郵便物(第一種郵便物)もしくは信書便物として送付してください。
・e-Tax
「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書などを作成した場合は、自動計算ができます。さらに、e-Taxでの送信も可能です。
e-Taxを利用するには、事前に市区町村などで電子証明書を発行したり、代表者のマイナンバーカードの事前登録をしたりしなければいけません。
提出書類は7~10年間保存が必要
確定申告の提出書類は、一定期間保存することも忘れてはいけません。税法上では7年、会社法では10年の保存が必要とされています。
保存しなければいけない書類をあらかじめ確認し、定められた期間中は適切に保管しておいてください。
税務申告書や税務届出書などは税法で保存期間が定められていません。
しかし、企業の歩みを示す重要な資料になるので、決算書などと合わせて保管しておくことをおすすめします。
まとめ・税金を理解して一般社団法人の設立・運営をしよう
一般社団法人を設立するためには、税金に関する理解を深めることが重要です。適切な知識がないと、納税に関するトラブルが発生する可能性も高くなってしまいます。
正しい知識をあらかじめ把握していれば、確定申告などもスムーズに進められるので、設立前から知識を身に付けておくようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)