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2023年12月26日令和5年度補正・令和6年度当初予算案のポイント(中小企業庁・小規模事業者・地域経済関連)
2023年12月22日、中小企業庁は、令和5年度補正・令和6年度当初予算案のポイント(中小企業庁・小規模事業者・地域経済関連)について発表しました。
基本的な課題認識と対応の方向性
・物価高や、構造的な人手不足等、厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者に対する価格転嫁対策や資金繰り支援、省力化投資支援等に万全を期す。
・さらに、GX/DX等といった産業構造転換の中、中小企業・小規模事業者の成長に向けた取組を予算・税等の政策手段を総動員して支援。これらを通じ、持続的な賃上げにつなげる。
・また、事業承継、社会課題解決、工業用水道の整備の支援等を通じて地域経済の活性化を図る。
・予算は、令和5年度が1,090億円だったのに対し、令和5年度補正予算は5,420億円+令和6年度当初予算案として1,082億円を組み込んでいます。
物価高、人手不足等の厳しい経営環境への対応
・適切な価格転嫁が行われるよう、価格交渉促進月間等を通じた取引適正化の促進を強化する。また、資金繰り支援を通じて中小企業・小規模事業者の事業継続を強力に支援するとともに、経営者保証改革を進める。
・目の前の需要を人手不足のためにとりこぼすことがないよう、省力化投資を強力に支援し、持続的な賃上げに向けた環境整備を図る。
<価格転嫁対策>
中小企業取引対策事業【28億円(当初)】+【8.3億円(補正)】
価格交渉促進月間(3月/9月)のフォローアップ調査に基づく企業名公表や、大臣名で経営トップへ「指導・助言」。下請Gメンを330名に増強し、取引実態の把握を強化。下請かけこみ寺での相談対応や、「パートナーシップ構築宣言」の実効性の向上
<資金繰り支援>
日本政策金融公庫補給金【147億円(当初)】
日本政策金融公庫からの融資における金利を引下げるため、利子補給を実施
中小企業等の資金繰り支援【680億円(補正)】(財務省計上分51億円含む)
金利引下げ、資本性劣後ローンの供給等の継続・運用見直し。処理水放出に伴い売上減少に直面した水産加工業者に対する支援等
中小企業信用補完制度関連補助・出資事業【71億円(補正)】+【14億円(当初)】
新たな借換保証制度、経営者保証を徴求しない創業時の信用保証制度を創設。保証協会による中小企業等の経営支援を実施
中小企業活性化・事業承継総合支援事業【146億円(当初)】+【52億円(補正)】
中小企業活性化協議会による事業再生支援、事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引継ぎ支援等を実施
<省力化対策・賃上げ対策>
中小企業省力化投資補助制度【1,000億円(補正)】(既存基金の活用等含め総額5,000億円規模。事業再構築補助事業を再編)
人手不足に悩む中小企業等のため、省力化投資に関して、カタログから選ぶような汎用製品の導入への簡易で即効性ある支援を新設
中堅・中小大規模成長投資補助金【1,000億円(補正)】(国庫債務負担含め3,000億円)
地域の雇用を支える中堅・中小企業が、人手不足等の課題に対応するために行う、工場等の拠点の新設、大規模な設備投資を促進
環境変化に挑戦する中小企業・小規模事業者等の成長支援
・GX/DXを含む新たな産業構造への転換等に当たり、中小企業・小規模事業者等による生産性向上等に向けた設備投資を支援する。
・また、「新規輸出1万者支援プログラム」を踏まえ、新規輸出に挑戦する中小企業等を支援し、売上高100億円以上など飛躍的成長を目指す中小企業の振興を図る。
中小企業生産性革命推進事業【2,000億円(補正)】(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継引継ぎ補助金)
中小企業・小規模事業者の設備投資、IT導入(インボイス制度への対応支援含む)、販路開拓、事業承継等を支援
事業再構築補助金【既存基金の内数】
これまで実施してきた、事業・業種転換等といった企業の思い切った事業再構築への支援は、執行面等での必要な見直しを行う前提で、実施
中小企業海外展開総合支援事業【中小機構交付金の内数(当初)】
新規に海外市場の獲得を目指す中小企業・小規模事業者等による輸出(越境ECを含むブランディング・プロモーション等)を支援
グリーントランスフォーメーション対応支援事業【中小機構交付金の内数(当初)】
中小機構への相談窓口の設置や支援機関の人材育成等によりカーボンニュートラルに向けた取組を支援
省エネ診断【21億円(補正)】+【10億円(当初)】
省エネの専門家が中小企業を訪ね、エネルギー使用の改善をアドバイスする「省エネ診断」を、中小企業が安価で受けられるよう支援
省エネ補助金【1,160億円(補正)】※国庫債務負担行為を含め2,325億円
工場のボイラや工業炉、ビルの空調設備や業務用給湯器などを、省エネ型設備へと更新することを支援。複数年の投資計画にも対応
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)【128億円(当初)】
大学等と連携して行うものづくり基盤技術及び高度なサービスに関する研究開発を支援、「イノベーション・プロデューサー」を通じたイノベーションの創出支援
地域の中堅・中核企業の経営力向上支援事業【21億円(当初)】
専門家・企業間のネットワーク構築や「地域の人事部」の取組を支援。人材活用ガイドラインの普及を通じ人材の戦略的な活用を促進。地域での即戦力DX人材を育成
事業承継、再編を通じた変革の推進
・経営者の高齢化の進展が進む中、地域の経済と雇用の基盤を支えるため、事業承継の円滑化を強力に推進する。
・さらに、事業承継等を契機に変革に挑戦する企業の生産性向上・成長を支援する。
後継者支援ネットワーク事業【4.4億円(当初)】
後継者同士の切磋琢磨できる場を創出し、既存の経営資源を生かした新規事業アイデアを競うイベント開催
中小企業活性化・事業承継総合支援事業【146億円(当初)】+【52億円(補正)】(再掲)
中小企業活性化協議会による事業再生支援、事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引継ぎ支援等を実施
事業承継・引継ぎ補助金(再掲)※中小企業生産性革命推進事業の内数
中小グループ化・事業再構築支援ファンド出資事業【120億円(補正)】
中小機構の出資によりファンドを組成し、グループ化・事業再構築を通じた成長を目指す中小企業等に対し、リスクマネー供給、ハンズオン支援を実施
伴走支援・経営支援の推進
・多様な経営課題を抱える地域の中核企業や中小企業・小規模事業者等に対し、伴走・経営支援を推進するとともに、企業における人材確保に向けた戦略策定等をサポートする。
小規模事業対策推進等事業【54億円(当初)】
中小企業支援機関等を通じて行われる小規模事業者への巡回指導・窓口相談などを支援
事業環境変化対応型支援事業【112億円(補正)】
商工会、商工会議所等や、よろず支援拠点の相談体制を強化。インボイスに係る課題解決に向け相談受付窓口を設置
中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【35億円(当初)】
各都道府県によろず支援拠点を整備するなど、中小企業・小規模事業者が抱える様々な経営課題に対応するための体制を整備
中小企業経営支援事業【中小機構交付金の内数(当初)】
成長志向企業の価値創出や中堅企業への成長に向け専門家による総合的な課題に対するハンズオン支援(伴走支援)を実施
地域の中堅・中核企業の経営力向上支援事業【21億円(当初)】(再掲)
専門家・企業間のネットワーク構築や「地域の人事部」の取組を支援。人材活用ガイドラインの普及を通じ人材の戦略的な活用を促進。地域での即戦力DX人材を育成
社会課題解決をはじめとした地域における取組への支援等
・地域の社会課題解決に向けた取組や、地域の企業立地を支える工業用水道の整備、地域の実情を踏まえた小規模事業者の販路開拓、災害復旧等の取組を支援する。
地域の社会課題解決企業支援のためのエコシステム構築実証事業【6.0億円(当初)】
ソーシャルビジネスを支援する地域の関係者を中心としたエコシステムを構築するため社会課題解決事業モデルを実証する
工業用水道事業費【20億円(当初)】+【16億円(補正)】
激甚化する災害への対応のための強靭化やデジタル技術活用による広域化・民間活用による施設の合理化や経営の最適化等を進める
(半導体等の国家プロジェクトの生産拠点整備に際する関連インフラ整備の支援に向け、内閣府にて「地域産業構造転換インフラ整備推進交付金」を創設(補正))
地方公共団体による小規模事業者支援推進事業【11億円(当初)】+【2.3億円(補正)】
地方公共団体と連携し、地域の実情を踏まえた小規模事業者の販路開拓・生産性向上に向けた取組(災害復旧を含む)を支援
中心市街地・商店街等診断・サポート事業【中小機構交付金の内数(当初)】
変革意欲のある商店街等の事業推進体制強化に向け、複数専門家による面的伴走支援等を行う
なりわい補助金(令和2年7月豪雨)、グループ補助金(令和元年台風第19号等、令和3・4年福島県沖地震)等の継続措置【43億円(補正)】
被災地域の速やかな復旧及び復興を支援するため、引き続き措置
税制改正事項
賃上げ促進税制(延長・拡充)
中小企業を対象に前例のない長期となる、5年間の税額控除の繰越措置を創設。さらに、教育訓練費を増やす企業への上乗せ措置の要件を緩和するとともに、子育てとの両立支援、女性活躍支援に積極的な企業への上乗せ措置を創設し、適用期限を3年間延長。かつてない高い税額控除率(最大45%)を実現。
中小企業事業再編投資損失準備金税制(延長・拡充)
成長意欲のある中堅・中小企業による複数回M&A(グループ化)を集中的に後押しする観点も踏まえ、適用期限を3年間延長するとともに、抜本的に(準備金の積立割合を2回目のM&Aで90%、3回目以降で100%とし、据置期間を10年に)拡充。
※外形標準課税(見直し)
外形標準課税の対象外となっている中小企業やスタートアップ(資本金1億円以下)については、引き続き対象外となる形で見直し。
交際費課税の特例(延長・拡充)
交際費を800万円まで全額損金算入を可能とする特例措置を3年間延長するとともに、交際費等から除外される飲食費に係る基準を1人あたり10,000円以下に拡充。
法人版・個人版事業承継税制(延長)
中小企業の事業承継を後押しするため、贈与税・相続税を100%猶予を受けるために必要な特例承継計画の提出期限を2年延長。
少額減価償却資産の特例(延長)
中小企業による30万円未満の少額の減価償却資産の即時償却を可能とする特例措置を2年間延長。
地域未来投資促進税制(拡充)
地域経済のけん引役として良質な雇用を生み出すことが期待される、成長志向の中堅企業が行う大規模国内投資を後押しするため、中堅企業枠を創設(税額控除率6%)。
令和5年度補正予算の中小企業対策費は5,420億円です。
主な補助金としては、「中小企業生産性革命推進事業(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継引継ぎ補助金)」に2,000億円、「中小企業省力化投資補助制度」に1,000億円、「中堅・中小大規模成長投資補助金」に1,000億円(国庫債務負担含め3,000億円)、「省エネ補助金」に1,160億円(国庫債務負担行為を含め2,325億円)となります。
前年に続いて中小企業のデジタル化が重点的に支援されるほか、賃上げ対策にも重点的に支援が盛り込まれています。
ものづくり補助金:革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援する事業。補助率は、中小企業は最大2分の1、中堅企業は最大3分の1。
持続化補助金:小規模事業者等が自ら経営計画を作成して取り組む販路開拓等の取組を支援する事業。補助率は、中小企業は最大2分の1、中堅企業は最大3分の1。
IT導入補助金:中小企業等がITを活用した経営革新を図るための事業。補助率は、中小企業は最大4分の3、中堅企業は最大2分の1。
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