ライドシェアはいつ解禁される?現状の問題点や認められている範囲などを解説!

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解禁論が再度唱えられるようになったライドシェア


海外では多くの国で導入されているライドシェアですが、日本国内では現在有償のライドシェアは禁止されています。
しかし、新経済連盟によって規制の撤廃を目指す動きも出ており、解禁論が唱えられるようになりました。なぜ解禁論が再浮上してきたのでしょうか。

今回は、ライドシェアの解禁論について解説しつつ、現状の問題点や認められている範囲などをご紹介します。
ライドシェア解禁について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

そもそもライドシェアとは?


そもそもライドシェアとはどのようなサービスなのでしょうか。まずはライドシェアの特徴や市場規模、解禁論の目的や再浮上した理由についてご紹介します。

ライドシェアの仕組み

ライドシェアは、「ride(乗る)」と「share(共有)」を合わせた言葉で、相乗り・配車サービスを指します。
自動車の持ち主と自動車に乗りたい人を結び付けてくれるサービスです。ライドシェアにも様々な種類があり、主に4つの形式に分かれます。

  • カープール型
  • バンプール型
  • カジュアルカープール型
  • TNCサービス型

 
カープール型は業者ではなく個人が運転するマイカーに相乗りすることです。バンプールはカープールのバン型で、多人数が乗車できます。
カジュアルカープール型はヒッチハイク形式で相乗りを行うサービスです。
TNCサービス型はアプリなどを活用してマッチングする車を探し、そこに相乗りするサービスを指します。

ライドシェア解禁の目的は?

ライドシェアが解禁されることで様々なメリットを受けられます。
提供する側のメリットは、所有している車を活用できる点と移動にかかるコストを抑えられる点の2つあります。
車を持っていても移動手段以外に活用することは難しいですが、ライドシェアが解禁されることで車を活用してスキマ時間に副収入を得ることも可能です。
ライドシェアは運転ができて車を持っていれば誰でもドライバーになれるため、多くの人がチャレンジしやすい副業といえます。
また、高速代やガソリン代、駐車料金などは相乗りした人と割り勘する形になるため、自分たちだけで移動するよりもコストを抑えられます。

ライドシェアを利用する側のメリットとしては、移動の利便性が高まる点とタクシーよりコストを割安に抑えられる点が挙げられます。
ライドシェアが解禁されると、タクシーがつかまりにくい地域や、多くの人がタクシーを利用する観光地などでの移動が便利です。
一般的なタクシーと比べて割安なサービスであるため、利用する側にとっても大きなメリットがあるのです。

カーシェアリングとの違いは?

ライドシェアとカーシェアリングは似ているように思えるかもしれませんが、実際にはサービス内容に大きな違いがあります。
ライドシェアはドライバーや同じ場所へ移動したい人を探し、相乗りによるドライブが行われます。

一方、カーシェアリングは車を貸し出すことが目的のサービスです。車の貸し出しが目的となるため、例えば行き先は自身で自由に変更できます。
ただし、提供されるのは車だけであるため、自らが運転するか、ドライバーを用意しなくてはなりません。

どちらも車を所有しないことから維持コストや交通費を抑えられるメリットがあります。
しかし、使用される車の台数はライドシェアのほうが少なくなるため、渋滞の緩和や排気ガスの排出量減少による環境への貢献などを考慮すると、ライドシェアが有利になります。

ライドシェアの市場規模はどのくらい?

日本国内ではまだ解禁されていないものの、世界ではすでに多くの国が導入しているサービスです。世界の市場規模は2020年で約764億ドルに上っています。
また、2021年から2028年までの年間平均成長率が16.3%、2028年には2,437億ドルに達すると予測されています。

世界的に新型コロナウイルスの感染が広がった2020年は、ライドシェアの需要も落ち込んでしまいました。
しかし、2023年現在はパンデミック直後と比べて落ち着きを取り戻しつつあり、今後はさらにライドシェアサービスの需要が高まると考えられます。

ライドシェアの解禁はいつ?

ライドシェアの全面解禁がいつになるか、具体的な日程などはまだ決定していません。
ただし、2023年12月20日のデジタル行財政会議中間取りまとめで公表された内容によると、2024年4月から都市部を含め、タクシーの配車アプリにより、タクシーが不足する地域・時期・時間帯の特定を行い、これに基づきタクシー事業者が運送主体となり、地域の自家用車・ドライバーを活用し、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを 提供していくと発表しています。

またタクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024 年6月に向けて議論を進めていくという発表もあり、近いうちにライドシェアが解禁される可能性が高いと考えられます。

解禁論が再浮上した理由とは?

ライドシェアの解禁論が再浮上している理由として、タクシードライバーの人手不足が挙げられます。
全国ハイヤー・タクシー連合会による調査では、2008年度の法人タクシー事業者数が7,106社ありますが、2020年度には5,828社に減少しています。
2020年から新型コロナウイルスの感染拡大で需要が低下し、給与の少ない状態が続いたことが原因で、現在の人手不足につながったのかもしれません。

また、地方都市ではバス路線が赤字による廃止に追い込まれており、交通空白地域も増えてきています。
すでに各自治体でデマンドタクシーやコミュニティバスといった対策を講じているところもありますが、株式会社の参入は認められていないなどの制限もあり、限定的な運用になっているのが現状です。
こうした問題点からライドシェアの解禁論が再浮上しています。

ライドシェアを提供する側の問題


ライドシェア解禁によって様々なメリットがもたらされることをご紹介しましたが、導入による問題点がないわけではありません。
ここでは、ライドシェアを提供する側の問題点を2つご紹介します。

労働環境が不安定になる恐れがある

ライドシェアのサービスはドライバー一人ひとりが稼げるようになるものの、アプリなどを使って集客するためにもプラットフォームを利用する必要が出てきます。
プラットフォーム側と個人ドライバーは提携し、ドライバーは基本的に個人事業主としてサービスを提供する形になるでしょう。

しかし、プラットフォーム側との関係性で問題も発生しています。
2018年にはアメリカの元ドライバー3人がプラットフォーム側に対し、失業保険の受給資格を求めて裁判を起こしました。
結果的に受給資格が認められましたが、各州によってその判断が異なっています。
日本でも規制解禁に伴い、ドライバーの雇用形態や提携時にプラットフォーム側はドライバーに対してどこまで権限を持ち、管理すべきなのかが決まっていないと問題になる可能性が高いです。

タクシー業界が不利益を被るという懸念がある

ライドシェアが解禁されることで不利益を被ってしまう可能性が高いのは、タクシー業界です。
タクシー業界が反対する理由として「ライドシェアでは運行の安全性が保てない」としていますが、競合が増えてしまうことも反対の理由に挙げられます。

しかし、日本国内のタクシー会社は海外に比べてサービスの質が高いことでも知られています。
そのため、ライドシェアが解禁されたとしても個人ドライバーとはサービスの差別化を図れ、共存できる可能性は高いです。

ライドシェアを利用する側の問題点


ライドシェアを利用する側にも問題点が潜んでいます。それは、ドライバーとのトラブルです。
例えば、海外ではドライバーが乗客の女性を誘拐し、性的暴行を加えた事件が発生しています。
また、殺人事件に発展したケースもあり、サービスを凍結した事業者もあるほどです。
乗客に向けられた犯行ではないものの、ドライバーの飲酒運転や違法薬物が認められた事件も発生しています。

現在はプラットフォーム側で安全対策に力を入れており、ドライバー登録の厳密な審査や車載レコーダーの設置などが行われています。
また、アプリによってスマートフォンの持ち方や操作からユーザーが酩酊状態にあるか判断するシステムの特許申請も行っており、安全に利用できるサービスを目指しています。

日本国内におけるライドシェアの法規制


ライドシェアは日本国内だとまだ規制されている状態です。ここでは、どこからどこまでが規制されているのか解説します。

有償のライドシェアは道路運送法によって規制されている

日本で現在規制されているのは、有償のライドシェアです。
道路運送法第78条の中で災害時や国土交通大臣の許可を得ていない場合、公共福祉の確保を目的とする場合以外で、有償によるライドシェアを行うことは禁止されています。
実際に、アメリカの大手配車サービス事業者が日本で2015年実証実験を行ったものの、道路運送法に抵触する恐れがあることから行政指導が入りました。

カープール型は規制の対象にならない

日本国内でライドシェアが規制されているものの、実際に規制されているのはTNCサービス型であり、カープール型に関しては規制されていません。

例えば以下のケースは規制の対象に含まれません。

  • サービスを利用した人からの給付が好意に対して任意に渡した謝礼の場合
  • 金銭的に価値を換算するのが難しいものや流通性に乏しいものなどによる謝礼の場合
  • ボランティア活動による運送でガソリン代や高速代、駐車場代のみ受け取る場合

ライドシェア導入に向けた特区制度


政府では地域・分野を限定し、大幅な規制緩和・税制優遇などを行う「国家戦略特区」を設けています。この国家戦略特区内では有償ライドシェアが認められています。
ただし、すべての事業者が対象というわけではありません。あくまでも市町村やNPO法人が実施主体となり、ドライバーも二種免許の取得または大臣認定講習を受ける必要があります。

特区制度を初めて活用したのが兵庫県養父市です。養父市では地元住民による自動車を活用した有償ライドシェア「やぶくる」が2018年にスタートしました。
「やぶくる」はタクシー会社に連絡が入ることで個人登録のドライバーに連絡が入り、配車を手配します。
運行範囲は限られており地域内限定での移動となってしまいますが、交通手段の確保だけでなく、地元住民がドライバーとなることで市民の社会貢献にも活用されています。

ライドシェア解禁に向けて行われている実証実験


養父市のように特区制度を活用した取組み以外にも、ライドシェア解禁に向けて自治体と民間企業が連携し、実証実験が行われています。
ここでは、3つの実証実験についてご紹介します。

コネクティビティ技術を活用した実証実験

大手自動車メーカーと自治体が連携し、コネクティビティ技術を活用した実証実験が行われました。
公共交通の空白化による移動手段の不足問題を解決しようと、メーカーは地域に対して車とアプリを提供し、個人ドライバーがライドシェアで送迎します。

この実証実験では、運行を管理するシステムと利用者がサービスを依頼する際に使用するアプリの開発が行われています。
このシステム・アプリによって運営業務の省力化と利用者の増加を図りました。
今回行われた実証実験の結果をもとに、メーカーではコネクティビティ技術と自動運転技術を組み合わせたサービスの開発・提供を目指しています。

住民の移動課題を解決するための実証実験

大手広告代理店と自治体による実証実験も行われています。この実証実験は、地域の移動手段を増やすことで住民の移動課題を解決することが目的として掲げられていました。
地元住民のドライバーがマイカーを活用しつつ、地域の中心部へ送迎してくれる仕組みです。
ドライバーは地元住民なので、利用者は安心して利用できるというメリットもあります。

新たな交通手段を確保するための実証実験

相乗りマッチングサービスを提供する企業と自治体が連携し、新たな交通手段を確保するための実証実験も行われています。
この実証実験では日本初となる地方都市専用の長距離ライドシェアサービスを提供しています。

企業側はサービスの説明会を開催し、電話によるサポート窓口も開設しました。スマートフォンを持っていない・使えない方に向けて電話による代理配車対応にも応じています。
料金は実際にかかるガソリン代を同乗人数で割り勘して負担することになるため、ドライバー側にもメリットがあります。

まとめ・ライドシェアは2024年内の解禁に向けて取組みが進んでいる

政府は2023年度内にライドシェアに関連する新制度を設ける方向で進んでおり、2024年内には本格的にライドシェアが解禁されると考えられます。
ドライバーの質や管理体制などの問題点がある一方で、ライドシェアが解禁された場合、都市部の混雑緩和や地方の交通空白地域における移動手段の確保などが期待されます。
世界的にも市場規模は拡大傾向にあるため、日本で解禁されれば起業のチャンスが増えるかもしれません。

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(編集:創業手帳編集部)

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