年末調整の保険料控除とは?種類や手続きの注意点を解説

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社員が年末調整で利用できる保険料控除の知識を身に付けよう


年末調整は、社員が支払うべき所得税を適正に納付するために必要です。社員がいる企業は、必ず年度末に実施しなければなりません。
重要な手続きである年末調整の手続きの中には保険料控除というものがあります。

今回は、年末調整が企業の義務であること、保険料控除は4種類あること、把握しておくべき注意点などについて解説していきます。
税理士に依頼するメリットも解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

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年末調整は会社の義務!目的や罰則は?


年末調整は社員を雇用する企業側が毎年行うよう義務付けられています。まずは、年末調整を行う目的や行わなかった場合の罰則について解説します。

年末調整の目的は所得税の差額の精算

年末調整を行う目的は、所得税の差額を清算することにあります。年末調整を企業が怠ると、社員は支払い過ぎた税金の還付を受けられなくなります。
支払うべき金額が不足していた時は追加で徴収が行われるため、年末調整はかならず行わなければいけません。

所得税は給料から差し引かれていますが、その金額はあくまでも概算です。その年の所得税が確定したタイミングで再計算し、適切な金額を納税しなければいけません。
正確な税額とこれまでに支払った税額を比較し、過不足を社員に還付もしくは徴収することが年末調整の重要な役割となっています。

副業や兼業で他からも収入を得ている場合を除き、年末調整をすれば確定申告は不要です。
ただし、医療費控除などを受ける場合や副業で収入を得ている場合などは、個別で確定申告が必要になります。

年末調整を行わないと罰則を科せられる

企業側が年末調整を怠ると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、10年以下の懲役または200万円以下の罰金、過少申告税や延滞税の課税といった罰則を受けることになります。
それぞれがどのようなケースで課せられるのか解説していきます。

・1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられるケース
年末調整を行わずに社員から適切な所得税を徴収していなかった、年末調整の書類に虚偽の内容を申告して税務署から承認を受けていた、といったケースです。
所得税法第242条に抵触し、罰則の対象になります。

・10年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられるケース
社員から源泉徴収した所得税を税務署に納付していなかった場合、10年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。
所得税第240条に抵触する行為で、懲役刑と罰金刑の両方が課せられる場合もあります。

・過少申告税や延滞税の課税が行われるケース
過少申告加算税は、所得税の納税後に金額が不足している場合に発生する税金です。延滞税は、期限を過ぎてしまった場合、1日ごとに加算されます。

正社員だけではなく非正規社員の年末調整も行う

年末調整の対象になるのは正社員だけではなく、非正規社員も含まれます。
パートやアルバイトとして働いている従業員も、扶養控除等(異動)申告書を提出すれば年末調整の対象となるので抜かりなく行う必要があります。

年末調整の対象となる社員は、1年を通じて勤務している、年の途中で就職して年末まで勤務している、という条件に該当する人です。
さらに、年の途中で退職した人も該当する場合があります。例えば以下に該当する人は年末調整が必要となります。

  • 死亡が原因で退職した人
  • 心身障害で退職した人(同じ年度中の再就職が見込まれない場合)
  • 12月の給与支払い後に退職した人
  • パートタイマーで給与の総額が103万円以下の人
  • 年の途中で海外転勤などを理由に、非居住者(国内の住所を1年以上持たない)となった人

年末調整の対象から外れるケースもある

年末調整は基本的に全社員に対して行われるものですが、年末調整の対象から外れるケースもあります。対象から外れるのは具体的に以下のケースです。

  • 主たる給与の収入額が2,000万円を超える人
  • 災害による被害を受け、源泉所得税や復興特別所得税の徴収猶予もしくは還付を受けた人
  • 2ヶ所以上から給与の支払いを受けていて、他の給与支払い者に扶養控除等(異動)申告書を提出している人
  • 年末調整を行う時までに扶養控除等(異動)申告書が提出されていない人
  • 年の途中で退職したものの年末調整の対象には当てはまらない人
  • 非居住者
  • 継続して同一の雇用主に雇われることがない日雇い労働者など(日額表の丙欄適用者)

年末調整における保険料控除は4種類


年末調整では、保険料控除が行われます。保険料控除には、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控、小規模企業共済等掛金控除の4種類があります。

社会保険料控除

社会保険料控除は、1年間で支払った社会保険料の金額が対象になります。
保険料を支払った人すべてが対象になるので、正社員だけではなくパートやアルバイト、派遣社員なども控除を受けられます。
対象となる社会保険料は以下のとおりです。

  • 国民年金保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 国民健康保険料(保険税)
  • 後期高齢者医療保険料
  • 年金基金の保険料

介護保険は、40歳以上で国民健康保険や健康保険に加入している人が加入しなければいけないものとなっています。
民間の生命保険で加入している任意のものは、生命保険料控除の対象になるため、間違えないようにしてください。

必要な書類は以下のとおりです。

年末調整 確定申告
給与所得者の保険料控除申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
確定申告書
保険料の金額を証明する書類

会社で年末調整を行う場合は、11月末~12月に申告書を交付してもらい、社員が必要事項を記入して提出しなければいけません。
この時、控除証明書も必須となります。確定申告をする場合は会社から源泉徴収票を受け取り、翌年2月16日~3月15日までの期間中に手続きを行います。

生命保険料控除

生命保険料控除は、1月1日~12月31日までに支払った所定の生命保険料のうち、一定の金額が保険契約者の所得から差し引かれる制度です。
生命保険料控除には新制度と旧制度の2種類があるので、混同しないように注意しなければなりません。

・新制度

所得税 住民税
区分 年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額
一般生命保険料
介護医療保険料
個人年金保険料
(税制適格特約付加)
2万円以下 全額 12,000円以下 全額
2万円超4万円以下 (払込保険料×1/2)+1万円 12,000円超32,000円以下 (払込保険料×1/2)+6,000円
4万円超8万円以下 (払込保険料×1/4)+2万円 32,000円超56,000円以下 (払込保険料×1/4)+14,000円
8万円超 一律4万円 56,000円超 一律28,000円

・旧制度

所得税 住民税
区分 年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額
一般生命保険料
個人年金保険料
(税制適格特約付加)
25,000円以下 全額 15,000円以下 全額
25,000円超5万円以下 (払込保険料×1/2)+12,500円 15,000円超4万円以下 (払込保険料×1/2)+7,500円
5万円超10万円以下 (払込保険料×1/4)+25,000円 4万円超7万円以下 (払込保険料×1/4)+17,500円
10万円超 一律5万円 7万円超 一律35,000円

地震保険料控除

地震保険料も控除の対象になります。
過措置の対象となる旧長期損害保険料は、2006年12月31日までに契約を結んでいる、満期返戻金などがあって10年以上の契約となっている、2007年1月1日以降に変更していないといった条件を満たす保険です。

地震保険料 過措置の対象となる旧長期損害保険料
年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額
所得税(国税) 5万円まで 全額 1万円まで 全額
5万円超 一律5万円 1万円超2万円まで 払込保険料の1/2+5,000円
2万円超 一律15,000円
住民税(地方税) 5万円まで 保険料の1/2 5,000円まで 全額
5万円超 一律25,000円 5,000円超15,000円まで 払込保険料の1/2+2,500円
15,000円超 一律1万円

地震保険料と過措置の対象となる旧長期損害保険料の両方ある場合は、以下のようになります。

年間払込保険料額 控除される金額
所得税(国税) 2つの合計控除額が5万円以下 合計額全額
2つの合計控除額が5万円超 一律5万円
住民税(地方税) 2つの合計控除額が25,000円以下 合計額全額
2つの合計控除額が25,000円超 一律25,000円

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、対象となる共済制度の掛け金を支払うと利用できる制度です。控除の対象になるのは以下の掛け金です。

  • 確定拠出年金法による個人型年金加入者掛金
  • 確定拠出年金法による企業型年金加入者掛金
  • 自治体が行っている心身障害者扶養共済制度の掛金

控除額は、1年間に支払った全額となっていて、上限はありません。
控除を受けるためには、年末調整の書類である「給与所得者の保険料控除申告書」に記載し、控除証明書を添付する必要があります。

確定申告を行う場合は、「小規模企業共済等掛金控除」の欄を記入し、控除証明書の第一表⑭および第二表を添付します。
e-Taxで確定申告を行うのであれば、証明書の添付は不要です。

年末調整での保険料控除に関する注意点


年末調整で保険料控除を行う場合、いくつか注意すべき点があります。それが、社会保険料の項目に記入してもらう必要がある場合と、保険料控除証明書が提出されているか確認する必要があることです。それぞれの注意点について解説していきます。

社会保険料の項目に記入してもらう必要があるケース

年末調整の社会保険料控除欄は、勤務先から天引きされた保険料以外を記入します。
勤務先が社会保険の加入しておらず、社員が国民年金保険料や国民健康保険料を支払っている場合は、当然記入してもらわなければいけません。

また、年の途中で就職し、それまでは国民年金保険料や国民健康保険料を自分で支払っていた場合も記入が必須です。
中には、配偶者が親、子どもの代わりに国民年金保険料と国民健康保険料を支払っているケースもあります。
そのような場合も、社会保険料の項目に記入してもらわなければならないので、記入漏れがないか会社側でもチェックする必要があります。

保険料控除証明書が提出されているか確認する

保険料控除証明書が提出されているかどうかについても、確認しておかなければならないポイントです。

社会保険料控除証明書は、被保険者当宛に発行されます。配偶者や親族の国民年金保険料を控除したい時は必ず準備してもらいましょう。
国民健康保険や介護保険に関しては、控除証明書の提出は不要です。

生命保険料控除証明書は、対象となる払込保険料がある場合に保険会社から送られてきます。
年末調整で使用するので、送られてきた証明書を年末調整の書類に添付するように再度周知してください。

地震保険の控除を受ける場合は地震保険料控除証明書、小規模企業共済掛金の控除を受ける場合は小規模企業共済掛金払込証明書が必要です。
年末調整までに準備するように社員に伝えましょう。

年末調整は税理士に依頼できる


年末調整を税理士に依頼している会社は多く見られます。自社で行うことももちろんできますが、複雑な計算が必要になるなど手間がかかるでしょう。
そのため、年末調整を税理士に依頼するのが一般的になっています。

税理士に任せればミスなく手続きができる

税理士に依頼することで、所得控除漏れなどのミスをなくせます。年末調整では確認すべき事項や必要な書類が多く、税金の計算も複雑です。
社員全員分を自社で行おうとした場合、非常に手間がかかってしまい他の業務が後回しになるなどの影響も考えられます。

経理専任の社員がいない会社では、経営者が年末調整を行うケースも見られます。そのような場合は、特に普段の業務に支障が出やすくなってしまいます。
しかし税理士に依頼すれば、年末調整にかかる手間を大幅に削減でき、正確な計算に基づいた書類を作ってもらえるのでメリットは大きいです。

税理士に年末調整を依頼する際の費用相場

年末調整を税理士に依頼する場合、社員1名あたりで計算するのが一般的です。
基本料金を設定し、一定の社員数までは基本料金の範囲内で収め、それを超えた分は1名ごとに追加していく従量制を採用している税理士事務所も多くなっています。

基本料金が1万~3万円(社員10~15名は基本料金で対応)、人数が多い場合は1名ごとに+1,000~3,000円といった形になります。
この料金に源泉徴収票や給与支払報告書などの作成費用が含まれている場合もありますが、そうでない場合もあるので事前に確認するようにしてください。

まとめ

年末調整では、保険料の控除ができます。
控除できる保険の内容を把握しておくことはもちろんですが、正社員だけではなく非正規雇用社員も年末調整を行う必要がある点も理解しておかなければなりません。
適切に年末調整を行うためには、専門的な知識を持つ税理士に依頼するのがおすすめです。

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(編集:創業手帳編集部)

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