playground 伊藤 KG 圭史|エンタメDXクラウド「MOALA」でエンタメ運営を最も便利なかたちに

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年04月に行われた取材時点のものです。

スポーツ・エンタメをDXすることで「リアル観戦」の価値がより高まる


「集団行動」を尊重する傾向が強い日本教育とは対照的に、「個人の意思」を尊重するのがイタリアから世界中に広まった「モンテッソーリ教育」です。

このモンテッソーリ教育を、アメリカ、ボストンのハーバード大学管轄の保育園で受け、日本に帰国後は上智大学に進学。起業サークルを通じて、多くの起業家と出会ったことがきっかけで、起業家になることを決意したのがplaygroundの伊藤さんです。

そこで今回は、伊藤さんの人格形成に影響した幼少期から大学時代のご経験や、2社目の起業としてスタートしたスポーツ・エンタメをDXする「playground」が起こす変革について、創業手帳の大久保が聞きました。

伊藤 KG 圭史(いとう けいじ)
playground株式会社 代表取締役/CPO
米国出身。上智大卒業後、IBMにて戦略/ITコンサルを経験したのち起業&売却した連続起業家。上智大学卒業後、IBMにて戦略/ITコンサル業務を経験したのち起業し、2.5年で売却。2017年、エンタメ業界のDXを推進するplayground 株式会社を設立。エンタメDXクラウド「MOALA」(SaaS)を展開し、国内トップクラスのシェアを持つ電子チケットやライブ配信サービスをぴあ/吉本興業等に提供。ユニバーサルな入場認証技術BioQR*やスマホに押印できる電子スタンプ*、世界初の来場証明NFT等、新技術開発にも注力。 *特許取得

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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起業家教育とも言われる「モンテッソーリ教育」を受けた幼少期

大久保:モンテッソーリ教育を受けたとお聞きしたのですが、まずは伊藤様が育った環境について教えていただけますか?

伊藤:生まれは兵庫県姫路市ですが、父がアメリカのボストンの大学院に入学したことをきっかけに、幼少期のほとんどをアメリカで過ごしました。

当時は、ハーバード大学系列の保育園だったらしく、研究を目的としてハーバードの大学院生が子供一人に対して一人つく特殊な環境で育ちました。

そこでは「モンテッソーリ教育」という制度を導入しており、すること全てに対して「あなたはどうしたい?」と常に問いかけられていました。それに対して、意見を言うと、自分の意思が必ず反映される環境でした。

例えば、みんなで遠足に行くという行事の日にも、自動的に連れて行かれるのではなく「あなたも遠足に行きたい?」と聞かれ、「お絵描きをしていたい」と答えると、遠足に行かずお絵描きをさせてもらえました。

あとで親に背景を教えてもらって「そういえば!」と思い出す程度ですが、今考えるとすごい環境だったなと思います。

大久保:日本の教育方針とは、全く違いますね。

伊藤:日本では、集団行動を求められ、場を乱さない人を生み出す教育方針が多い傾向にあると思います。

しかし、私が育った環境は、集団行動とは真逆で、自分で意思決定をして、それに伴ったデメリットも自分の責任として受け入れる、というアメリカでも特殊な保育園でした。

大久保:生まれながらの起業家教育という感じですね。

伊藤Googleの創業者たちも、モンテッソーリ教育を受けていたと、話題になりましたよね。

大久保:将棋の藤井さんもですよね。

起業家を志したきっかけは上智大学在学中の「起業家との出会い」

大久保:日本の教育を受ける様になって、当然ギャップを感じたと思いますが、いかがでしたか?

伊藤小学校6年生のときに、日本に帰国しましたが、学校には行かず、塾にだけに行く生活をしていました。

塾に通うようになった理由は、昔から算数の問題を解くことが大好きだったので、もっと難しい算数の問題を解きたいと親に伝えたことがきっかけでした。当時は受験という存在すら知らなかったのですが、気づいたら受験することになっていました。

塾では、国語の授業も自動的に入れられてしまいましたが、私が受けたかったのは算数だけだったので、国語の授業を受けるつもりはないと意思を示し、1年間宿題を出さずに終えました。

大久保:最終的には、上智大学に入学されたと思いますが、そこの環境ではどうでしたか?

伊藤上智大学に入学したものの、面白い人がいないと思い、1年生の夏には大学に行かなくなってしまいました。

そのタイミングで、堀江貴文さんが大阪近鉄バッファローズを買収に乗り出したというニュースを目にしました。

そのニュースを見て「野球の球団が買えるんだ」と衝撃を受けたことを覚えています。

当時、大学で唯一仲良くなった大学6年生の先輩に起業を学びたいと言ってみたところ、周りに興味持っている人がいるからと、先輩が立ち上げていたサークル内に経営を学ぶ部門を立ち上げることになりました。

私のように堀江さんの影響を受けた大学生は少なくなかったようでこの頃から起業ブームが始まって、東京大学、早稲田大学等でも、近しいサークルが立ち上がっていたので、外部の大学生との交流も増え、ひたすら課外活動をする大学生活を送るようになりました。

大久保:起業サークルや課外活動としては、どのようなことをしていましたか?

伊藤やっていたこととしては、イベント作ったり、企業にインターンシップに行ったり、起業家の講演会を企画したりしていました。

その時に出会った起業志望の他大生たちを見て「世の中、こんなすごい人ばかりなのか」と危機意識を持っていたのですが、今となってはそのとき出会った人たちがちゃんと日本の各領域でトップになってくれたのである意味で安心しています(笑)。

グローバル視点のビジネスを学ぶために「IBMに入社」

大久保:大学卒業後のお話も伺わせてください。

伊藤:起業サークルや課外活動を通じてお会いしていた方々が、すごい人たちばかりだったので、すぐに起業するということがイメージできませんでした。そのため、まずは組織や事業ができあがった世界No. 1企業に入って学びを得たいと考え、IBMに入社しました。

IBMは企業向けのハードウェアシステムを提供することで、80年代まで強くなってきましたが、90年代から一変して、PC市場が伸びて負けてしまいました。

当時、30万人の社員がいたのですが、10万人の社員を切るといういわゆる「ガースナー改革」には驚きました。

このような日本の企業では絶対にありえない合理的な判断を日々行い、結果、持続的な成長を実現している企業を中から見させてもらって、多くの学びを得ることができました。

大久保:当時私も、IBMは絶対に大丈夫だろうと思っていたところ、一度落ち込んでしまい、コンサルで息を吹き返した時は驚きました。

伊藤:日本の大企業は簡単に変わることができないですし、ビジネスモデルが大きく変わる事例も多くないですよね。それに対してアメリカの企業はたとえ大企業であっても、社会の変化に適応するべく、ドラスティックに舵を切っていきます。

IBMでの経験を通じてコンサルという第三者の立場で日本企業を支援していても未来はない、スタートアップを創ることを通じてしか日本の未来に貢献し得ないと確信しました。

1社目の起業経験から「playground」への気づきを得る

大久保:日本企業にもまだチャンスがあるとお考えですか?

伊藤:海外の方とお話をする機会はよくありますが、日本を羨ましがられる面があります。

それは、日本人はチームワークが強く、チームプレーができるということです。

つまり、一度歯車が合えば、一気に伸びるというのは日本人の特性だと思います。

この国民性は、ビジネスとの相性は良いはずなので、方向を示してあげる人がいれば、グローバルでも強い戦力になると考えています。

一方で、日本社会は、これは日本人の良さでもあるんですが、高度成長期に示された「正解」で生まれた慣性が未だに続いています。コンサルと起業、双方経験したからこそ感じることですが若い優秀層が大企業やコンサルで「キャリア」を築くのではなく、スタートアップで「事業」を築くことが当たり前な社会に切り替えないと、日本は成長できないな、と思います。

大久保:playgroundを起業する前に、別の会社を起業して2.5年で売却したご経験があると伺っているのですが、その時はどの様なことをされたのでしょうか?

伊藤:IBM時代は、人にも恵まれ、貴重な経験を多くさせていただきました。幸いIBMでも、高い評価をいただけてましたが、大企業での経験や評価の延長線上に「事業を築く」というイメージはないことに気づき始めていました。

そんな中、友人が起業するということでIBMを休職して手伝うようになり、色々あって、その会社を私が買い取り、代表になりました。そこからは、2年ほどで売却まで一気に成長させることができました。

スポーツ・エンタメをDX化する「playground」で2度目の起業

大久保:そこから2社目の起業に繋がると思いますが、playgroundを起業した経緯から教えてください。

伊藤1社目では、「イノベーションを起こす」「○○のNo1企業にする」みたいな曖昧なミッションを掲げていて、今考えると、とにかくお金儲けを第一優先に考えていたな、と思います。

起業は自分の人生の大半を賭け、人を巻き込むことになる選択です。自分は誰を幸せにしたいのか、どういう社会を作りたいのか、自分は何に挑戦する人生を過ごしたら死ぬ前に後悔しないのか、というところに、素直に向き合いました。

その結果、私が昔から好きだった夢を与える仕事=スポーツ・エンタメ業界をもっと発展させること、同じ気持ちを持った人に幸せになってもらうことに人生を使いたいと思い、playgroundを起業しました。

実はこの領域は収益性が低く、参入障壁が高く、一方で好きな人が多いので競合は多いという、起業家目線では最悪な市場です。儲けようと思ったら絶対に選ばなかったと思います。

大久保:一度、死ぬ気で儲けるための事業を考えたからこそ、自分の好きな分野での起業に振り切れたのかもしれませんね。

伊藤:短期的に儲けるため、となると、ミッションやチームが誰であろうとどうでも良いですよね。そうではなく、人生をかける、人を巻き込む、という話になると、お金儲けではない明確な約束ごとが必要になると思っています。

エンタメDXクラウド「MOALA」でスポーツ・エンタメの運営をDXする

大久保:改めて、貴社の事業内容を教えていただけますか?

伊藤スポーツ・エンタメの運営を包括的にDXする「MOALA」というSaaSを提供しています。

例えば、フェス運営者は弊社のサービスを使っていただくことで、チケットの販売からグッズ販売、入場者の管理、ライブ配信に至るまで全てを「デジタル」で完結できます。

運営がデジタルで完結しているイベントはイノベーションに強くなります。例えば、最近、NFT(※1)の来場証明を発行して、会場に来たことをアルバムに残すサービスを始めたのですが、MOALAを導入していれば簡単なシステム連携だけで導入ができてしまいます。

万が一、紙で運営していた場合、QRコードを一人ずつ配る必要があり、チラシを作るデザインが必要で、それを声かけする案内人を手配する、という1ヶ月以上の手間と時間がかかってしまいます。

イベントでも事業でも、どのサービスがヒットするか、当てることは非常に難しいです。なのでトライアンドエラーのスピードがとても大事になります。

MOALAを導入してイノベータブルな状態を作ることが、トライアンドエラーの回転率を高め、ひいてはチームの成長に繋がります。

今、全面的に弊社サービスを使ってくれているヴォレアス北海道は経産省から委託されたコロナ対策の実証実験を1ヶ月で実現し、来場証明NFT導入を2週間で完了させてスポーツ庁から表彰されるほどの成果を挙げました。いま、V1にチャレンジするところですが、V2のリーグ内ではトップの収益を上げています。(※2)

大久保:一見、コストを下げる、手間を減らす、といった守りのサービスと思いきや、DXすることでさらに攻めることができるということですね。

伊藤:そうなんです。もはや人を置くことはなく、サービスがあれば完結する状態です。

※1:NFT・・・「Non-Fungible Token(非代替トークン)」の略で、ブロックチェーン技術を利用して作成された独自のデジタルアセットのことを指します。

※2:インタビュー後にV1昇格が決定しました。

リアル観戦の魅力を最大化するためにデジタルが必要

大久保:コロナもあって、人と会ったり、直接スポーツやエンタメを目にすることの大切さも再認識されたと思います。そこに対して、新しい可能性を大いに感じました。

伊藤スポーツ・エンタメの中で「リアル」という価値は間違いなく高いと思っています。リアルの価値は、デジタルによって加速しています。

インターネットがあった時代と、なかった時代では、前者の方が来場者数が増えています。逆説的な話になりますが、デジタルを享受すればするほど、リアルが求められるようになっているのです。

これからデジタルの時代に進めば進むほど、リアルでのスポーツ観戦の魅力が増していくに違いありません。

一方で、イベント運営はリアルである必要はないと思っています。人が立っている必要はないですし、紙を一枚ずつ管理する手間も必要ありません。

ここを解決するために、デジタルネイティブに作り変えて、現場で走り回っている人は、企画にまわって、どのようなエンターテインメントを提供するべきかを考えるところにエネルギーを使えるようにしたいです。

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(取材協力: playground株式会社 代表取締役/CPO 伊藤 KG 圭史
(編集: 創業手帳編集部)



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