キンコーズ・ジャパン 渡辺浩基|お客様の“伝える”に寄り添う!新スローガン「PARTNERS」とともに育む未来志向の価値観
オンデマンドプリントのパイオニア集団のトップが語る、協賛社会を目指す意義
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛の影響により、市場規模が減少したオンデマンドプリント業界。長引くコロナ禍で、各社揃って対策を講じながら市場回復に努めています。
そんななか、新たなブランドスローガン「PARTNERS」を掲げ、常に未来を見据えながら時代に合わせた改革で話題を呼んでいるのがキンコーズ・ジャパンです。「お客様の“伝える”に寄り添う」を理念とし、多彩なソリューションサービスを提供しています。
今回は代表取締役社長を務める渡辺さんの社長に就任するまでの経緯や、未来志向の価値観について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
キンコーズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
ホテル業界、IT業界、飲食業界で店長を経験したのち2004年に現在のキンコーズ・ジャパン株式会社に入社。店長として店舗や工場立ち上げを経験後、エリアマネージャー、部長、取締役を経て2021年に代表取締役社長に就任。社会の働き方変化を捉えたキンコーズ店舗24時間営業廃止など、常にフットワーク軽く決断実行をしていく。座右の銘:百聞は一見に如かず。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
ホテルマンとしてキャリアスタート!長年の経験を活かし代表取締役社長に就任
大久保:まずはご経歴についてお聞かせ願えますか。
渡辺:ホテル科のある専門学校を卒業後、第一ホテル東京に入社し、ホテルマンとしてキャリアをスタートしました。現場業務から営業、ブライダル、新規ホテル立ち上げなど幅広い実務経験を積んでいます。
8年ほど勤務した後、ITを活用した旅行会社に転職。約3年半の間、パートナー企業が参画するホテルの事業運営や、あらゆるコンテンツ制作などに携わり、それから飲食業界に移りました。
飲食業界で店舗の運営責任者として実績を重ねたところで、これまでのキャリアをすべて活かす形で2004年にキンコーズ・ジャパンへジョインしました。常にお客様に寄り添いながらサービス提供する運営方針や在り方に共感したからです。
入社当初から店長として店舗・工場の立ち上げまで成功させた後、エリアマネージャー、店舗運営部長、取締役を経て、2021年4月に代表取締役社長に就任しました。
大久保:現場で培われた多彩な実務経験とホスピタリティマインドを活かした参画だったんですね。現場を知り尽くす渡辺さんが社長に就任された理由についてお教えください。
渡辺:直接理由を聞かされたわけではないのですが、長引くコロナ禍や加速するペーパーレス化の時代背景、それからこれまでの経緯ややりとりを考えると「この難局をポジティブに乗り切るためには、お客様に寄り添う現場中心でいこう」というメッセージを託されたのではないかなと感じています。
就任前後から店舗閉鎖・縮小など、ポジティブな発信がしづらい状況だったんですね。それでも「現場に対してなにを発信していくのか?」「その先にはどんな未来が広がっているのか?」を常に意識しながら伝えてきました。
その結果として、もともと好評だったオンデマンドプリンティングビジネスのデジタル化に合わせたアップデートをはじめ、デジタルソリューションビジネス、マーケティングサービスビジネス、コワーキング・イベントスペース運営など、順調に事業が広がっています。
2023年は新たな勝負の年と位置づけていますので、さらなる飛躍を目指したいです。
より高いレベルでインプットとアウトプットを両立!新たな学びでMBA取得
大久保:代表取締役社長に就任される直前から、名商大ビジネススクールに通いMBAを取得されたそうですね。
渡辺:はい。実際に経営者として会社の舵取りを担うには、高いレベルでインプットとアウトプットを両立させる必要があります。社内外のコミュニケーションを考えたとき、やはりもっと深めていくためにもきちんと学んでおきたいなと。
名商大ビジネススクールを選んだのは、ケースメソッドを通じて創造的思考力や起業家精神を培えるMBAコースが用意されていたからです。約2年間でおよそ300ケースに取り組むことができ、経営者視点でのインプット・アウトプット能力を高めることができました。
大久保:会社とご自身の新たな価値の創造を視野に入れ、お忙しいなかで誠実に勉強されたのが素晴らしいですね。
渡辺:おかげさまでこれまで培ったキャリアに、経営者として成功するためのスキルがプラスされましたので、事業の立て直しや新規事業を軌道に乗せることができました。
大久保:御社は2012年6月よりコニカミノルタのグループ会社になっていますが、親会社から出向されてきた経営陣や社員とのコミュニケーションや調整もスムーズだったと伺っています。渡辺さんが注力されたポイントについてお教えください。
渡辺:私が役員になった際に気をつけていたのは「うまく社長に花を持たせる」でした。これは決して媚びを売るのではなく、協調と共闘の姿勢を貫くということです。
それぞれの経歴やルーツは違っても、全員の目標が「キンコーズの増収増益」で一致しています。そしてその大前提として存在するのが、お客様に“寄り添う”弊社のマインドです。
だから敵対してしまうと、誰にとっても良くないんですよ。こうした私の想いを、親会社の人間も部下たちも深く理解してくれたのがありがたかったですね。
大久保:ホスピタリティマインドにあふれる渡辺さんならではの優れた人心掌握術でもありますね。
渡辺:社長に抜擢された理由として、お客様に寄り添う現場中心でいくために現場出身者の私に白羽の矢が立ったとお話ししましたが、社内外問わずあらゆる人間の立場や能力、想いを加味しながら牽引するタイプであることも影響しているかもしれません。
経営陣・現場サイド・株主のそれぞれの視点を意識し、お互いがより良いパートナーとして歩めるように心がけてきました。今後も発展し続けるために尽力していきます。
積極的にデジタルを活用!進化を支える理念は「お客様の“伝える”に寄り添う」
大久保:先ほど現在御社が展開する事業として、現代社会に対応したオンデマンドプリンティングビジネスやデジタルソリューションビジネスなどをお話しくださいました。さらに事業内容についてお聞かせください。
渡辺:弊社は店舗ビジネスと、法人向けのBtoBビジネスの両輪で発展してきました。ペーパーレス化が加速した新型コロナ以降、この方向性が大きく変わってきています。
具体的に申し上げると、積極的にデジタルを活用したビジネスを手掛けるようになったことです。いずれも長引くコロナ禍や、社会的に増加したリモートワークを見据えてブラッシュアップしています。
代表的なところでいうと、店舗では従来の各種プリントサービスに加え、キンコーズ・スマートメンバーシップにご登録いただくと全店舗で好きなときにプリント可能な定額制サービスを開始しました。
顧客の課題解決および業務効率の最大化を支援する各種デジタルソリューションの企画・開発・サポートサービスを提供するデジタルソリューションビジネスでは、販促物管理業務を変革するクラウド型ソリューション、働く場所に依存しない働き方改革ソリューション、ペーパーレス時代に合わせたデジタルプロセス支援ソリューションなどにオンデマンドサービスを組み合わせて課題解決に取り組んでいます。
大久保:御社はこれまでアウトプットが中心でしたが、インプットサービスを打ち出すようになったんですね。
渡辺:はい、上流工程のサービスを増やしています。
デザインやDTP関連では、定額制の創業者サポートコンテンツを用意しました。DTPの未経験者が学習できるサービスです。
紙のアナログから、データやデザインにアウトプット媒体が切り替わってきた時代背景を踏まえたラインナップを意識的に増加させていますね。
大久保:これまで一般的に「紙なのか?デジタルなのか?」で語られがちでしたが、その前段階で多彩なサービスを展開できるということですね。
渡辺:弊社の理念である「お客様の“伝える”に寄り添う」を考えたとき、人によっては“伝える”が紙だけではなくデザインとしてのアウトプットかもしれないわけですよね。特にここ数年、人それぞれで“伝える”が変わってきていると実感しています。
そこで弊社では、新たなブランドスローガンとして「PARTNERS」を掲げることにしました。
一人ひとりの想いに目を向け、本当に「叶えたいこと」に少しでも寄り添いたい。このスローガンは私たちが大切にしている価値観であり、お客様・仲間・協力会社・社会との関係性を示しています。
「刷る」から「叶える」へ。弊社は一丸となって日々進化しています。
協賛の社会を推進するために。新たなブランドスローガンは「PARTNERS」
大久保:今後の展望をお聞かせください。
渡辺:もともと弊社では「必要なときに必要な分だけ」をコンセプトにオンデマンドサービスを開始し、印刷からオンデマンドプリント市場を目指して事業を推進してきました。
今後は「必要なときに必要な分だけ」に留まらず、「お客様にとって本当に必要なものを提供しながらサポートしていく」という方向性にシフトチェンジしていきます。
「お客様にとっての“伝える”とはどういうことか?」を真剣に突き詰めていくと、場合によっては弊社だけでは叶えられないケースもあるでしょうし、お客様と一緒に取り組む必要もあると考えています。
そのためにも「PARTNERS」のスローガンが重要なんですね。積極的に産学連携プロジェクトに関わっていることも本質的に同じです。
ともに作り上げる。協賛の社会を推進していく。そして、率先して社会貢献につながる働きを行う。
こうした世の中の実現を目標に、行動で見せていくのが弊社の使命だと捉えています。
大久保:社会課題の解決にもつながる見事な展望ですね。あらゆる取り組みを体験できる場として店舗を活用する新たなビジネスも計画されてらっしゃると伺っています。
渡辺:はい。すでにクリエイター向けのサービスとして、スペースを提供し展示会を開催しています。会期中はそのアーティストの案を取り入れて店舗のガラスをすべて変更し、空間一体を使った演出を可能にするなど、柔軟性の高いコラボレーションです。
また、必要な分だけ展示会特別グッズを製作することもできます。売上はクリエイターに還元し、活動のバックアップができるよう運営しているのが特徴です。
まだ一部の店舗のみのサービスですが、今後は全店舗で実施できるよう計画しています。もちろんクリエイターだけでなく、起業家の方々も応援する内容として準備しているところです。
大久保:どんどん新たな策を打ち出してらっしゃるんですね。渡辺さんのリーダーシップにより、時代とともに進化するスピーディーな事業展開を実現されているのはもちろんですが、社員の皆さんも一丸となって取り組んでらっしゃるからでは?という印象を持ちました。
渡辺:「なぜうまくいっているのか?」については、もしかすると私よりも現場の社員に聞いてもらったほうがいいかもしれません(笑)。
彼ら一人ひとりが力を発揮してもらうために私が特に気をつけているのは、大きく分けて2つです。
1つ目は、先ほど申し上げた「現場に対してなにを発信していくのか?」「その先にはどんな未来が広がっているのか?」を常に意識しながら伝えていること。
そして2つ目は、一人ひとりの声をきちんと拾い続けることです。
こまめに現場を回り、良い取り組みをピックアップしたり社をあげて表彰するなど、形にしながら讃えることを大切にしてきました。と同時に、積極的にチャレンジしてほしいので「失敗をどうやって共有するか?」を重視しています。
年間2回の賞として用意しているのは、「思い切り失敗しようよ!」という想いを込めた「フルスイング賞」(失敗を自慢しよう賞)です。このほか、毎月社長賞を設けています。
社員のモチベーションを上げるために試行錯誤しながら継続しているのですが、こうした積み重ねが大事だなと。一人ひとりの努力がすべて身を結ぶように会社経営を成功させたいと、代表として責任を感じながら運営しています。
ユニークな会社として発展した歴史をもつ、面白い人材の集合体が目指す未来
大久保:最後に、起業家やユーザーに向けてのメッセージをいただけますか。
渡辺:弊社はユニークな会社として発展してきた歴史があり、面白い人材が集まって成り立っています。
このユニークさを今後も大切に残しながら、あらゆる立場の方々とパートナーシップを結んで成長を続けたいです。
相乗効果でお互いがより良くなる未来を目指し、ぜひお声がけいただければうれしいですね。
大久保の感想
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(取材協力:
キンコーズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 渡辺 浩基)
(編集: 創業手帳編集部)
現場から抜擢された社長らしい取り組みが目立つ。コロナのような危機的な状況になると、親会社出身の社長という慣例を打ち破るような人事も起こりうる。危機こそ隠れた人材が世に出るチャンスとも言えるだろう。
キンコーズは都心型の印刷サービスということでコロナ及びリモート、ペーパーレスの影響をもろに食らった業種だが、抜群の知名度と、ビジネスの上流のサービスに進出することを狙っており、今後の展開が注目される。