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2022年7月22日サンリット・シードリングス株式会社 東樹 宏和|生態系の診断に基づくコンサルティング事業で注目の企業
生物群集及び生態系の診断に基づくコンサルティングや生物機能を利用した製品および生産システムの開発及び開発支援、持続可能な食糧生産システムの設計事業などで注目されているのが、東樹宏和さんが2020年に創業し、石川奏太さんが現在代表を務める、サンリット・シードリングス株式会社です。
グローバル社会によって世界が一つに繋がったり、最先端の技術開発によって社会や生活の効率が上がったりしている裏側で、地球上にある生態系の乱れが危惧されています。
私たちの努力の行動が、図らずも地球温暖化や環境破壊や外来種の増加などを招き、それによって環境が変化することで、本来ならばその地域に存在しているはずの生物や植物が急激に減少したり、最悪の場合は絶滅してしまい、その結果、連鎖的にさらなる絶滅種の増加や環境の激変に繋がるといった状況を生み出しているのです。
一言で「生態系」と言っても、そこに関わる種の数は膨大、それらの関わり合い方も非常に複雑で、今まで明確に示されることはほとんどありませんでした。
それがゆえに、意図せず生態系を崩してしまったり 一度崩してしまった生態系を元に戻すことが非常に難しかったりしました。
さらには、生態系のもたらしてくれる恩恵を社会や経済活動に上手に結び付けられず、非常に惜しい状況にあるとも言えます。
生態系を把握して体系化し、うまく活用できる方法を見出すことが出来れば、例えば、土壌中の生物多様性の機能を最大限に活かした資源循環型農業の実装など、過度な科学技術によらずとも自然の力を活用した進化・発展の道筋も見えてくるはずです。
持続可能な社会を目指そうとしている今、野外調査をベースとして地球環境という複雑なシステムの謎に迫る生態学、顕微鏡やDNA分析技術を駆使してミクロの世界を探査する菌類学、最新のビックデータ分析技術を取り入れて生態系を構成する生物同士のネットワークを解き明かすネットワーク科学をつなぐ異分野融合科学が鍵を握っていると言えます。
こうした中、自然生態系という複雑なシステムを科学的に解明しようと挑戦するサンリット・シードリングス株式会社の『生態系リデザインⓇ』という取り組みに、大きな注目が集まっています。
『生態系リデザインⓇ』とは、“いまある生態系” の構造と価値を分析し、“いまある生態系” が持つ潜在能力を活かして経済社会的な価値が高められた “望ましい生態系” を設定し、設定した生態系を科学的に誘導する(生み出す)ことを言います。
サンリット・シードリングス株式会社の石川奏太さんに、事業の特徴や今後の課題などについてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
・農地や森林をはじめとする産業活動の基盤となる生態系に関する調査
・産業活用できる生態系の資源やサービスの抽出
・経済的・社会的インセンティブに基づく望ましい生態系の未来像の設計
・望ましい生態系への誘導を可能にする資材・技術の提供
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
・自社の事業活動が自然環境や生物多様性に及ぼす影響・依存度に関して定量評価やリスク分析の情報を求める人
・生態系(エコシステム)と企業活動の関連性を意識した具体的な取組により持続的な環境マネジメントに貢献し、社会的責任を果たすことにより自社のESG評価を向上させたい人
・来たる生物多様性戦略の取組に向け、環境(生態系)と産業活動の持続可能性を重視した新しい実業モデルをいち早く構築し、生物多様性戦略の生み出す新たな市場でニッチを獲得したい人
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
・土壌劣化・気候変動・資材高騰によりもたらされる農業の持続可能性の破綻、食料危機
・管理放棄森林の増加による災害リスクの上昇
・生物多様性の損失と生態系サービスの劣化による、一次産業の生産性減少、人獣共通感染症による健康リスクの顕在化、宗教・生活習慣・教育・景観などの伝統的な文化の喪失
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
創立タイミングとコロナ禍の第一波が重なったことで、営業活動などを通じたネットワーク形成が遅れたことです。
オンラインでのコミュニケーションや非同期的な情報共有に役立つツールを創業初期より導入し、人の接触を極力減らしながら企業活動を持続させる体制をいち早く構成しました。また、農地や森林での野外作業では感染リスクが低いことを生かし、「実業現場で直接的に技術導入試験を行う」業務を優先して行い、実用化への近道となる実績を蓄積しました。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
ポスト2020生物多様性枠組をはじめとし、脱炭素の次に国家戦略として挙げられるであろう「生物多様性・生態系サービスと産業活動の連携」という事業分野にいち早く参入し、新しいルールのもとで形成される市場の中で先行者として道筋を示せる先端企業を目指します。
そして、農業・林業だけでなく、様々な分野に生物多様性や生態系サービスの知見・資源・技術を導入することで、持続可能な産業・社会を実現する旗持ちとなるサービスを展開していきます。
・今の課題はなんですか?
・技術開発、サービス品質管理を定常的に行える技術者の不足
・様々な産業分野でサービス利用者を獲得するための技術営業人材の不足
・上記を含め、持続的なサービス提供を可能にする社内体制の整備
・読者にメッセージをお願いします。
地球上に生息する無数の生物たちをよく知り、その機能を生態系というレベルで最適化すれば、資源循環型の社会を設計・実現していくことが可能であると私たちは信じています。一万年後も、いまと同じように、むしろより良い状態で、人々の衣食住が続いている、そんな地球環境の実現を目指します。
会社名 | サンリット・シードリングス 株式会社 |
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代表者名 | 石川奏太(いしかわ かなた) |
創業年 | 2020年1月 |
社員数 | 5名 |
所在地 | 606-8307 京都府京都市左京区吉田上阿達町17番地 |
サービス名 | 生態系リデザインⓇ |
事業内容 | 生物群集及び生態系の診断に基づくコンサルティング ・生物機能を利用した製品および生産システムの開発及び開発支援 ・持続可能な食糧生産システムの設計及び管理 ・地球環境の健全化に関する戦略策定及びその実務 |
創業者・代表者プロフィール | 創業者・取締役(CSO):東樹宏和 京都大学理学部卒業、同理学研究科修士修了、九州大学大学院にて博士号(理学)。日本学術振興会特別研究員(SPD;産業技術総合研究所)を経て京都大学白眉センター特定助教、同人間・環境学研究科助教、スタンフォード大学生物学部Visiting Scholar、科学技術振興機構さきがけ研究者(兼任)等を経て京都大学生態学研究センター准教授(現職)。生態学・進化学・昆虫学・微生物学から分子生物学やネットワーク科学に研究を展開。日本生態学会理事等を歴任。受賞歴・称号に日本生態学会宮地賞、文部科学大臣表彰 若手科学者、京都大学白眉研究者、HFSP (Human Frontier Science Program) Awards 2019等。 代表者:石川奏太 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | ESG グリーンインフラ サンリット・シードリングス 東樹宏和 環境保全型農業 生態系サービス 生物多様性 石川奏太 |
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