【第一回】ITベンチャーの活路を開く、日本ヒューレット・パッカード「EcoSystem」の挑戦
実績とリソース不足のベンチャー企業にとって、創業直後の販路開拓は大きな課題です。
日本ヒューレット・パッカード社では、販売力、あるいは開発力に課題を抱えるIT企業を全国で集め、マッチングできる「場」を提供し、新たなビジネスを創出することを目的としたスキーム「EcoSystem」を展開しています。
「助け合い」や「共存共栄」を掲げる同社の「EcoSystem」は、ITベンチャーや中小企業にどんなイノベーションをもたらすのでしょうか?
日本ヒューレット・パッカード社のエンタープライズアカウント営業統括本部長である角谷修氏に、2回に渡って話を伺いました。
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日本ヒューレット・パッカード エンタープライズアカウント営業統括本部長。外資系IT企業を経て日本ヒューレット・パッカード社に中途で入社し、直販営業として流通業界立ち上げを行う。
その後、中部西日本エリアのパートナー営業で活躍し、2013年から現職。
限られた顧客を奪い合う今のIT業界で、生き残るために必要なこと
角谷:ITベンチャーや中小企業はいま、非常にビジネスチャンスに飢えています。
そんな企業のお手伝いをすることが、我々の「EcoSystem」の目的です。
ビジネスチャンスへの飢えの要因は、上位「20%の顧客」を奪い合っているIT業界の現状です。
20%の顧客が80%の売上をもたらすと言われている「80対20の法則」がフレームワークにあるからです。
そのため、多くの企業が上位「20%の顧客」を対象としたビジネスを展開しています。
上ばかりを見て、それ以外の80%もの企業にまで目を向けられていないのです。
このビジネスの構造を例えるなら、高級車の商法と一緒です。
移動手段としての役割は軽自動車も同じで、十分に目的を達成できます。
そして、高級車のメーカーにだって100万円の軽自動車を作る方法はある。
それでも1,000万円以上もする高級車を作っています。
なぜそんなことをするかというと、やはり「20%の顧客」を中心に考えるからです。
我々日本ヒューレット・パッカードもそうですが、多くのIT企業が「20%の顧客」にターゲットを絞った製品、もしくはソリューションを多く作り販売します。
しかし今本当に必要なのは、その他の「80%の顧客」に目を向けた、軽自動車を作ったり販売できる力なのではないかと、私自身、地方を中心とした営業の経験で気づきました。
地方と都心のビジネスの違い
角谷:地方はそもそも顧客の数が少なすぎて、「20%の顧客」だけをターゲットにしていたら商売になりません。
つまり必然的に「80%の顧客」にも目を向けたビジネスをする必要がある。
でも実は、地方だけでなく首都圏においても同じことが言えるのです。
ところが東京にいると、これにまったく気が付かない。
20%の顧客が80%の売上をもたらしてくれる状況ですからね。
それから、首都圏のビジネススタイルは地方では流行りません。
東京で出来たものが3年以内に地方に行くだろうと思っているのは地方の大企業だけです。
大企業が地方の企業のうちどのぐらいを占めているかと言うと、ほんのわずかです。
そういうところに「20%の顧客」にターゲットを絞った製品を持っていっても売れません。
ところがIT企業はいまだにそういった商品を作って、地方では売れないと言っている。そこが問題だと感じています。
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(取材先:日本ヒューレット・パッカード株式会社)
(創業手帳編集部)